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[COMPUTEX]スマホで耳と顔の写真を撮るだけで,あなたのためにヘッドフォンのサウンドをフルチューン!? Creativeの新技術「Super X-Fi」を聞いてきた
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印刷2018/06/07 00:00

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[COMPUTEX]スマホで耳と顔の写真を撮るだけで,あなたのためにヘッドフォンのサウンドをフルチューン!? Creativeの新技術「Super X-Fi」を聞いてきた

Super X-Fiのロゴマーク
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 スマートフォン用のアプリでユーザーの耳と顔の形を撮影して,後は使いたいヘッドフォンの種類を選ぶだけで,ヘッドフォンの3Dサウンド環境をユーザーのために最適化してくれる――。
 この一見魔法のような技術「Super X-Fi」を開発したのは,Sound Blasterシリーズで知られるCreative Technology(以下,Creative)だ。同社がSuper X-Fiを発表したのは2018年1月のことだが,COMPUTEX TAIPEI 2018の会場では招待制でデモを行っており,筆者もそれに参加できたので,果たしてこれは何なのか,そしてゲーム用途で可能性があるのかといった部分をお伝えしたい。


スマホ&AI。非常にキャッチーなキーワード満載のSuper X-Fi


 Super X-Fiの利用にあたって絶対的に必要となるのは,AndroidおよびiOSスマートフォン用のアプリ「SXFI App」と,USB Type-C接続の小型サウンドデバイス「Super X-Fi hardware dongle」(仮称,以下 Super X-Fiドングル)だ。

SXFI App
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Super X-Fiドングル。長さは成人男性の小指程度と,かなり小さい
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実際にはこんな感じでほかの人に撮ってもらうことになるだろう
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 ユーザーはまず,早ければ今月末にもGoogle PlayおよびApp Storeで無償リリースとなるというSXFI Appを使って,自分の耳と顔を撮影する必要がある。アウトカメラを使う仕様になっているため,実際には誰かに撮ってもらわないといけないかもしれないが,ともあれ,アプリの指示に従って3枚の写真を撮るわけだ。このタイミングでSXFI Appは画像検出と3D空間上での解析を行う。

右耳の後,顔,左耳と撮影する。アプリ上にワイヤーフレームが浮かんでいるのが分かると思うが,これが解析結果なのだろう
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Super X-Fiの動作イメージ。多次元マップ(※ここでは広いリビング)にマルチチャネルスピーカーセットをホログラムのように描いていく。このことからCreativeはSuper X-Fiを「Headpone Holography」と呼んでいたりもする
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 デモはCreativeのスタッフがこれといった説明なしに行っていたが,次にユーザーは,スマートフォンとSuper X-Fiドングル,Super X-Fiドングルと手持ちのヘッドフォン(やヘッドセット)をそれぞれ接続のうえ,SXFI Appから「組み合わせたいヘッドフォンの種類」と,「再現したい室内音響空間」を選択することになるようだ。すると,クラウドサーバー上で動作する「AI engine」(AIエンジン)が分析結果とヘッドフォンの特性,再現したい空間の情報をまとめて「室内音響の多次元マップ」として合成してくれるという。
 そしてSuper X-Fiでは最終的に,この多次元マップ上へホログラフィのように仮想的なマルチチャネルスピーカーセットを配置する。結果として,ユーザー個人に最適化された仮想的なマルチチャネル再生システムがヘッドフォンの中で完成するという仕掛けである。

 Super X-Fiドングルは内部にCreative独自開発のSoC(System-on-a-Chip)「X-Fi UltraDSP」を搭載。Creativeの従来SoC――おそらく「Sound Core3D」――に対して演算能力とデジタル信号の処理能力は5倍に達し,最大8chの24bit 96kHz出力と100dB以上のS/N比を実現しているという。8ch出力対応ということなので,今後はCreativeのほかの製品でも搭載されることになるのではなかろうか。

Super X-Fiドングル内部の基板。中央に見えるのがX-Fi UltraDSPだ。型番は「CUDSP-600」のようである
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 なお,ここまでの説明を読んで,Super X-Fiはスマートフォンでないと利用できそうにないと思うかもしれないが,デモ機はPC上で動作しており,実際,PCもサポート対象になるようだ。変換ケーブルさえ用意できればゲーム機でも利用可能とのことである。

Super X-Fiドングル,片側のインタフェースはUSB Type-Cで,もう片側は3.5mmミニピンだ。互換性の高いインタフェースである
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デモ会場では大がかりな上位版のデモを体験


 繰り返しになるが,Super X-Fiは基本的に「写真を撮るだけ」でユーザーに最適化されたバーチャルサラウンドサウンドを聞くことができるというソリューションである。ただSuper X-Fiにはもう1つ,マイクで室内の反響などを測定してその結果も組み入れる上位版とでも言うべきソリューションもあり,デモ会場で体験できたのはこの上位版のほうだった。

 デモ会場には,ハイトスピーカーをリスナーのほぼ真横に置くという変則的な5.1.2chスピーカーセットが置いてあり,リスナーは(耳と顔の写真を撮ってから)あらかじめ決められた席に着席のうえ,耳の穴に取り付けるタイプのマイクを装着する。この状態でスピーカーから音源移動も含むさまざまなノイズを出力し,マイクで集音して,その結果もマージするというわけだ。

デモ会場。リスナー用の席が6つあり,Dolby Atmos用のハイトスピーカーは座席を左右から挟むような配置になっていた
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ぱっと見はインイヤーヘッドフォンにしか見えない測定用マイク(左)。上位版Super X-Fiのデモ参加者はこれを耳に装着し,この状態で数分の測定中じっとしていることになる(右)
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測定中は正面の画面に「マイクに触れるな」「正面を見ろ」といった具合に指示が出る。なかなかちゃんとできているので売り物かと思った次第だ
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 気になるのは測定機能付き上位版をリリースする予定があるのかということだが,Creativeの担当者いわく「ない」とのこと。そもそもDolby Atmosへ対応するようなハイトスピーカーまで用意できるような環境を構築できているなら,その環境でそのまま3Dサラウンドサウンドを楽しめばいいわけで,まあ,さもありなんといったところか。
 画面の撮影は許可されなかったが,体験中は専任のスタッフがずっと測定ログを追っていたりしたので,おそらくこの上位版は,「すごさ」をアピールするための専用版なのだろう。

 そういうわけなので,“素の”Super X-Fiを体験できたわけではない。その点は誤解のないようお断りしておくが,今回筆者は,Dolby LaboratoriesによるDolby Atmosのデモムービーと,Dolby Atmosに対応する「Overwatch」のデモシークエンス,映画のデモクリップ,ステレオの音楽ソースを2chのアナログ接続型密閉型ヘッドフォンと組み合わせて聞くことができた。

デモ体験中の様子。筆者は前列中央に座ったが,写真奥に見えるハイトスピーカーほどの音の高さは,Super X-Fiからは感じられなかった
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 リアルな5.1.2ch環境と聞き比べてみると,高さの表現では残念ながらスピーカーセットに一歩譲る印象だ。Dolby Atmosのデモムービー「Santeria」は森を模したもので,頭の上を鳥が行ったりきたりするのだが,その高さはリアルなハイトスピーカーより低い。Super X-Fiではより低い場所を鳥が飛んでいる印象があり,またOverwatchはインゲームでなくデモシークエンスだったからかもしれないが,音の上下をほとんど感じられなかった。

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 ただし,ネガティブな感想を持ったのは正直,この部分だけである。あくまでもデモなので細かく後方の音を拾ったわけではないものの,サラウンド感は前後左右,そして上下とも優秀。とくにSanteriaデモにおいてt上空で音源が前後左右,斜めに移動するのをはっきりと,かつ十分な移動量を伴って感じ取れたのは印象的だ。
 また,これは当然と言えば当然なのだが,物理的な距離のあるスピーカーと比べて,耳の近くにスピーカードライバーがあるため,ノイズ感が圧倒的に少なく,音は非常にクリアだ。ダイナミックレンジは5.1.2chスピーカーセットと比べて明らかに広く,それでいて音場は5.1.2chスピーカーセットと同等の広さに感じられる。

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 ステレオソースを再生すると,音が脳内定位せず,バーチャルなフロント2chスピーカーから聞こえてくる。しかもデモでは仮想的な「広い部屋」が選択されていたため,十分な残響感もあった。「ユーザーの前方からステレオサウンドが聞こえてくる」という意味では,Wavesの「NX Head Tracker」を使ったときと似た感じと言えるかもしれない。
 Super X-Fiにヘッドトラッキング機能はないため,頭を動かすとバーチャルなスピーカーも動き,ステレオ再生時だと常に顔の正面から聞こえてくるが,それほど違和感はなかったことも付記しておくべきだろう。


シンプルで効果的なSuper X-Fi。通常版のデキと遅延次第ではゲーム用途でも?


Super X-Fiドングルの背面側には何もなし。クリップはあったほうがよかったかも
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 Super X-Fiドングルは,世界市場だと2018年8月に150米ドル(税別)で発売予定となっている。手持ちのアナログ接続型ヘッドフォンやヘッドセットを組み合わせることができる汎用性の高さと,複雑な測定などなしにスマホで写真を撮るだけで利用できるという“未来感”は,ちょっと試してみたくなる魅力があると思うが,どうだろうか。

 マイクによる測定なしの通常版が持つ完成度,そして処理遅延次第では,ゲーム用途でも十分に使える可能性を感じた。国内発売の楽しみな新製品だと言えそうだ。

※2018年6月12日追記:
 CreativeからAI engineと対応プラットフォームに関する情報のアップデートが得られたため,記事を更新しました。


CreativeのSuper X-Fi紹介ページ(英語)


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