インタビュー
「ミュー 奇蹟の大地」移動コマンドついに無料化か? 大型アップデート「ex700」の概要と8周年に向けての展望を運営プロデューサーに聞いた
今回,4Gamerでは,本作の運営プロデューサーを務めるゲームオンの加藤 仁氏に,今回の大型アップデートの概要と,2012年2月に正式サービス開始から8周年を迎える同タイトルの今後の展望などを聞いてみた。
「属性システム」関連コンテンツの導入で中〜高レベル帯に新たな遊びを提供
ex700で導入される要素には多くのものがあるのだが,加藤氏は,ex700を「ほかのタイトルが採用しているシステムを,ミューらしくアレンジして導入するアップデート」と表現する。すなわち日本で8年,開発元の韓国に至っては10年もサービスが続いてきた,いわば旧式のミューのシステムを昨今のオンラインRPGに近づけ,より遊びやすくしようというわけだ。
グリモアには,武器や防具とは別の専用装備枠が用意されるが,3×3のスペースを要する大きなアイテムなので,インベントリの容量制限によってすべての種類の携行はできなくなっている。
グリモアは,武器/防具と同様に+15まで強化可能で,+の数字が上がるごとに属性効果の数値が上昇していく。また,グリモアには,最大4個のソケットが用意されており,そこに同属性の「エーテル」を装着すれば,属性効果を強化できるようになっている。
エーテルには多くの種類があり,単なるグリモアの強化以外にさまざまなオプション効果を付与できる。さらにエーテル自体も専用アイテムを使ってランクアップでき,より強力な効果が得られるという。
武器/防具の強化の成功確率を鑑みると,各属性のグリモアとエーテルを最高レベルまで強化するのに果たしてどれだけの時間と労力が必要になるか気が遠くなる思いだが,これまで長らくミューを遊んできたプレイヤーにとっては挑戦しがいのある新しい目標となりそうである。
このマップは,新たに発見された島という設定となっており,拠点となる村と2つのフィールドで構成されており,進入するためには従来のマップでアイテム「精霊地図の切れ端」を集めて「精霊地図」を完成させる必要がある。
できあがった精霊地図をNPC「スロープ船長」に渡すと新マップとなるアケロンまで連れていってくれる。
アケロンは,レベル300以降の中〜高レベルプレイヤー向けで,さまざまな属性を持ったモンスターが配置されている。マップのどの地域にどの属性のモンスターがいるかは固定されていないので,プレイヤーが効率よく狩りをしようと思うなら,その都度グリモアを装備し直したり,属性を考えてパーティを構成する必要がある。ここで問題となるのが,前述のとおり,インベントリの仕様の関係で一人のプレイヤーが5種類のグリモアを同時に持ち歩くのは現実的に不可能という点だ。加藤氏は,そこに戦略/戦術性が生まれると説明する。
「アケロンを攻略するには,パーティを組んでいただいて,この属性のモンスターが出たら,この人とこの人が前線に出て,残りのメンバーはサポートするといったような属性による役割分担が必要となります。また,アケロンでは一般モンスターなら通常攻撃でもダメージを与えられますが,ボスモンスターには特定の属性攻撃でしかダメージを与えられません。したがって,アケロン上でドロップする各属性のグリモアやエーテルを十分に強化してから挑戦する必要があります。グリモアは,レベル30以降の一般マップでも稀にドロップしますので,アケロンの適正レベルにまだ達していない方も属性システムを体験するチャンスがあります」(加藤氏)
属性システム関連では,新たなギルド戦争システム「アルカ精霊戦争」が登場する。このコンテンツは,通常マップ上に設置される各属性のオベリスクを,ギルド間で争奪するというもの。オベリスクを守護するボスモンスターを倒して占拠すると,1週間,そのオベリスクに応じた特殊バフ効果をギルドメンバー全員が享受できるのだ。オベリスクの属性はランダムで決まり,また当然ながら対人戦の要素も含まれるので,どのギルドも属性を考慮に入れた戦略/戦術を練らなければならないだろう。
このアルカ精霊戦争の参加可能人数は,1ギルド20名のみという制限はあるものの,専用アイテムを使うだけで登録できるので,従来の攻城戦と比較すると参加へのハードルはかなり下がっている。なお,このコンテンツは毎週水曜日に開催される予定である。
また,これに伴って,マスタースキルでランク6〜9のものが実装される。加藤氏いわく,今回はアクティブスキルも増えているので,ディレイなどを考慮して,これまでとは異なる戦い方を構築する必要があるかもしれないとのことだ。なお,これまでサポート役として不遇扱いされてきたエナジー型エルフは,ほかのクラスよりも追加されるスキルの数が多くなっているそうである。
ゲームコンテンツ以外の部分では,UI用のミドルウェアとして定番となっているScaleform UI Engineの導入により,UIが大幅にリニューアルされ,全般にスッキリと分かりやすくなった。ウィンドウのデザインが変わったのはもちろんのこと,ウィンドウの任意移動や複数ウィンドウの同時ポップアップなどが可能になっている。昨今のオンラインゲームタイトルでは当たり前の機能ばかりだが,このリニューアルによって,新規プレイヤーも今まで以上にミューの世界に入りやすくなったといえる。またUIの改善は,今後も,より使いやすいものを目指して手を入れていくそうだ。
ex700の導入と同時に,ミューのイメージイラストも,工画堂スタジオの百瀬 寿氏が手がけたものに変更される。
「前任の山下しゅんやさんのイラストも非常に人気が高かったのですが,今回,新たなスタートという意味で,イメージを一新すべく百瀬さんにお願いしました。新しいイメージイラストの注目ポイントは,"羽根"と"光る防具"です。韓国の開発元であるWEBZEN社は防具を光らせることに大変なこだわりを持っているので,今回のイラストの仕上がりにも満足しているようです」(加藤氏)
2012年の目標は,中だるみ感や有料マップ移動など積年の課題をクリアすること
また,運営チームの方針としては,2011年11月に実施したアンケートをもとに,よりプレイヤーの要望を取り入れたサービスを提供することを掲げていた。ミューでは,現状,レベル280〜300台中盤で離脱・休眠してしまうプレイヤーが多いとのことだが,アンケートの回答を分析した結果,その主な理由はレベル上げの単調さにあると判明している。
「ミューでは,レベル380を超えると遊びにバリエーションが増え,さらにレベル400を超えてマスターレベルになるとスキルの習得方法が変わるなど,キャラクターの成長要素が変化します。したがって,停滞しているレベル帯を乗り越えたら,別のゲームとは言わないまでも,また異なるミューの魅力を感じられるはずなんです。なので,より多くの方にレベル380からマスターレベルでのプレイを体験していただくにはどうすればいいかを考えています」(加藤氏)
加藤氏いわく,そうしたレベル280以降の中だるみ感を解消する方策は,すでにいくつか具体的に検討しているとのことで,その一つが2011年に期間限定で設置したサーバー「エクセレントワールド」である。このサーバーは,獲得経験値が通常サーバーの最大30倍にもなるもので,アンケート結果で休眠プレイヤーがプレイを再開した大きな要因となっており,確かにレベル上げの単調さを改善するためには有効そうに見える。
ただし,この方策を定期的もしくは恒常的に実施するとなると,長い目で見た場合にゲームバランスを崩してしまうおそれがあるため,ほかの方策を視野に入れつつ開発元とともに慎重に検討する必要があると,加藤氏は説明する。
そのほか,ミューでは2007年の基本無料化から,マップ間の移動に有料アイテムが必要となっているが,これに対する改善要望も非常に多い。加藤氏をはじめとする運営チームも,この点をプレイヤーの利便性やコミュニティ形成を阻害する要因として重く受け止めており,撤廃に向けて開発元との協議に臨んでいるとのことである。
「マップ移動の有料化は,2007年当時のミューとしてはアリな選択でした。しかし2012年となった今,ほかのタイトルと比較したときに,必ずしも時代に流れに沿った仕様とはいえません。実際この仕様は,アイテムを購入して遊んでいる方と無料で遊んでいる方との間に大きな溝を作る要因となっています。今後,多くの皆さんに長くミューを遊んでいただこうと考えると,やはりここも改善していく必要があります」(加藤氏)
さてex700の実施,そしてサービス開始から8周年を迎え,2012年から新たなスタートを切るミュー。8周年記念イベントの実施はもちろんのこと,そのあともGMイベントの定期開催などで,運営チームとプレイヤーとの積極的な交流を図っていくという。これまでは,運営の動きが少し見えにくいタイトルだったのだが,よりプレイヤーに近いところでの動きを強化する方針のようである。
「これまで8年間サービスを続けてきた中で,当初は独身だったプレイヤーさん同士が結婚し,今や生まれてきたお子さんと一緒にプレイしているという話を聞きました。そういった喜ばしいエピソードも,長い歴史があってのことです。末永くミューのサービスを提供していくため,皆さんからのご意見をもとに今後も改善を続けていきます。
2012年は辰年です。またミューを象徴する装備といえば,ナイトのドラゴンシリーズです。そしてプロデューサーの私も,奇しくも辰年の年男です。今年はミューが竜のように飛翔できるよう頑張っていきます」(加藤氏)
「ミュー 奇蹟の大地」公式サイト
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