インタビュー
「メイプルストーリー」が劇的に変わる? Wizet Studioのえらい人に「シグナス騎士団」の詳細を聞いてみた
7月29日に実装されるという「シグナス騎士団」のアップデートは,ゲームを一新するほどのインパクトを持ったものとなるようだ。今回は,シグナス騎士団のアップデートについて,開発元NEXON Corporation Wizet Studio本部長 チェ・ウンド氏とNEXON Corporation MapleStory室長カン・デヒョン氏というメイプルストーリーの両巨頭をはじめ,MapleStory日本Liveチーム長キム・ヨン氏,国内運営を担当するネクソン 事業部マーケティング2チームMapleStory担当の島嵜直樹氏らに話を聞いてみた。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まず,新しく加わる「シグナス騎士団」とはどんなものになるのでしょうか。
島嵜氏:
まずはプロモーションビデオがありますので,こちらをご覧ください。
ソウルマスター:精霊の力を剣に宿らせて戦う,光の精霊に加護された騎士 |
ナイトウォーカー:精霊の力以外にも強力な毒を使いこなす,闇の精霊に加護された盗賊 |
シグナス騎士団というものが生まれた背景ストーリーとしては,かつて世界を恐怖に陥れた暗黒の魔法使いが復活する兆しが表れたため,メイプルワールドを統治している女王シグナスがそれに対抗するための直属の騎士団を作ったという設定です。
プレイヤーがいちばん気になるのは,シグナス騎士団でなにができるかだと思いますが,シグナス騎士団では,新しい5種類の職業が用意され,プレイヤーは,新しいシグナス騎士団用のキャラをゼロから新しく作ることができます。シグナス騎士団専用のキャラクターを作り,シグナス騎士団専用の新しいエレヴというマップでレベル10に達すると,こちらの5種類の新しい職業に転職できるという流れです。
すでにメイプルストーリーは,普通のほうでは一次転職から四次転職まで実装されていますが,今回,シグナス騎士団では,まず一次職がそちらに書いてあるもの。さらに二次,三次というところまでは用意されております。四次に関しては現在まだ検討中というところで,これから導入する予定となっています。
このような形で新しく5種類の職業が追加されるという認識でいただければと思います。
フレイムウィザード:魔法で精霊の力を自由自在に操る,炎の精霊に加護された魔法使い |
ストライカー:精霊の力を全身にたぎらせた武術を駆使する,稲妻の精霊に加護された海賊 |
ウィンドシューター:精霊の力を弓にのせて力強い矢を放つ,風の精霊に加護された弓使い |
新しいストーリーラインで新しいキャラクターを作って,これらの新しい職業でということですが,それは普通のマップで普通のキャラクターと交じって遊ぶこともできるんですか。
島嵜氏:
はい。転職までは「エレヴ」というマップにいるんですが,そのあとは普通のメイプルワールドに移動できますので,そちらからはほかのキャラクターと一緒にプレイすることになります。
騎士団用のキャラクターは,今回のシグナス騎士団というストーリーの中のクエストをいろいろ受けることができ,シグナス騎士団のストーリーを追いかけていくことができるという感じです。
4Gamer:
今までのゲーム内容と違う職業群というのは,凄く思い切ったことですよね。ほかにこんなことをやったゲームって見たことないですし,これはどういう経緯で始まったものなのでしょうか?
メイプルストーリーでの大規模のコンテンツアップデートというのは初めてではありません。過去には,海賊という新しい職業がありました。海賊は,非常に人気が出まして,効果が高かったことから,6か月ごとに新しい大規模なコンテンツを作っていこうということで専門チームを構成しました。
高レベルのプレイヤーのためのコンテンツは既存のLiveチームが別に用意しているので,新規コンテンツチームでは新規プレイヤーにもっと楽しんでもらえるようなものを作っていくことにしたわけです。そして,海賊のときに効果があったことなどから,新しい職業などを入れることになり,今回は,シグナス騎士団という形で既存の職業に対してイージーモードな職業を作ってみました。効果が高いであろうところをフォーカシングしてみたわけです。その結果,韓国では,今までで最高記録の人気を得ています。
4Gamer:
なるほど。ところで,韓国ではまた新しい職業が出たみたいですね。
はい,アランの話ですね。早ければ日本でのリリースは冬休み頃かなと思っています。
キム氏:
これからのメイプルストーリーでは,新しい職業を用意していく形でのアップデートを続けたいと思っています。
4Gamer:
シグナス騎士団とこれまでの世界は,どのようなつながりになっていますか。
島嵜氏:
メイプルのマップに,今回,エレヴという新しい大陸というか島のマップが入ります。今までのビクトリアアイランド,普通のメイプルアイランドへは,レベル10以上になればいつでも移動ができると。既存のマップでも冒険ができるというわけです。
4Gamer:
ただ,ストーリーラインが違いますよね。そうなると,シグナス騎士団でないと入れないマップとか,これまでのプレイヤーではできないゲームモードやクエストもあるんでしょうか?
それがエレヴですね。
4Gamer:
エレヴはレベル10まで過ごす街ということですが,それ以降もエレヴは関係してくるんでしょうか。
キム氏:
エレヴと関連した街やNPCが存在します。その前のクエストが終わらないと次に進めませんので,ずっと連携していきます。
島嵜氏:
要は,ほかのマップでもシグナス騎士団でしか受けられないクエストはあるということです。それでストーリーをどんどん追っかけていくという流れになります。
シグナスの新職業はイージーモードに相当
新しい職業については,既存の職業とほぼ同系列の新しいものという理解でよいでしょうか。
キム氏:
はい。
4Gamer:
では,これまでの職業と比べると,共通部分がどれぐらいあって,新しい部分がどれぐらいなのでしょうか?
カン氏:
既存の職業との似た点でいえば,五つの職業が同じ系列のものになっています。既存職業のライトバージョンという感じですね。日本も同じですが,メイプルのメインターゲットは,低年齢層なので,低年齢層がもっと楽しみやすくなるように,ターゲットを絞って開発しました。
ですが,根本的にはシナリオが違います。既存の職業ではいろいろなシナリオがあったという感じでしたが,今回ははっきりしたシナリオが敷かれて,さらに成長速度が速くなっているので,快適なプレイができるという感じですね。
既存職業の足りない部分,プレイヤーのクレームやニーズがあった部分を調べて改善したものになっています。
ちなみに,これまでより簡単だというのは,例えば操作が簡単になっているとか,単に強くなっているとか,どういう部分で簡単にしているんでしょう。
カン氏:
これまでよりレベルアップしやすいという部分ですね。既存職業では成長パターンが多様でプレイヤーが自分なりの成長のさせ方を楽しめたんですが,シグナス騎士団ではシナリオに沿っていけば,それだけで成長する形を取っています。成長過程を単純化したというところでしょうか。
キャラを見てもらうと分かるのですが,シグナスはプレミアム職業ということで,最初からかなりカッコいい装備を持っています。また,同時に攻撃できるモンスター数が,例えば6匹から12匹に増えていたりなど,強力になっています。
スキルの分岐も短くなっていて,既存の職業では50レベルで使えるスキルが,シグナスでは30で使えるという感じです。グループを作ってパーティプレイをすれば,シグナス系の職業のほうが人気あります。
4Gamer:
では,例えば,シグナスのレベルキャップである120のキャラと,既存職業のレベルキャップである200のキャラは,だいたい同じぐらいの強さだったりするんでしょうか?
カン氏:
シグナス系職業は,低レベルでは成長速度が速いのですが,だんだん成長が遅くなって,最終的に,シグナス騎士団のレベル120で既存職業の140レベルと同じくらいの強さになるように調整しています。
4Gamer:
非常に成長しやすくて,強くてと,いいことばかりなんですが,その辺でバランスをとっているということでしょうか。簡単に強くなれるけど,もの凄く強くはなれないと?
チェ氏:
はい,そういうことです。それが特徴です。
ライトな職業であっても,120になってプレイヤーがこれ以上は強くなれないなっていう限界感がくるじゃないですか。そうなったら新しい職業でゲームを続けてほしいのですが,その場合にまたゼロから始めるんじゃなくて,精霊の祝福というシステムを用意しています。これは,最も高いレベルのキャラクターのスキルレベルの一割を,新しいキャラクターのスキルレベルとして受けることができるというものです。
スキルを共有しながらレベルアップできますので,キャラクターを一つずつ育てるのではなく,連動しながら育てられ,いろんな職業を育てやすくしています。
4Gamer:
これは,既存の職業とシグナスの職業のどちらからでも相互に一割ということでしょうか?
チェ氏:
はい,そうです。
ほかのゲームでもそうだと思いますが,また一から始めないといけないというのでは,辞めてしまうプレイヤーが多くなりますので,メイプルではそれを防ぐために,こういう専門スキルの共有を取り入れました。
こういう簡単にプレイできる職業を作って,こちらでまずはある程度慣れ親しんでもらって,既存の職業も使ってと,どちらかというと,既存のメイプルの職業への移行をしやすくするためにこういったものを作ったと考えていいんでしょうか。
チェ氏:
そういう流れもありますね。
また,韓国でリリースしたばかりのアランはハードモードに相当します。操作に慣れた人には,そちらを推奨します。
まとめると,シグナスがイージーモード,既存職業がノーマルモード,アランがハードモードとなります。
日本ではもうすぐ6周年になります。全体的にやり込んだ人が多いですので,新しいプレイヤーがきても,周りが全部高レベルプレイヤーばかりだったら,遊びにくいですよね。新規プレイヤーのためにもこういった大規模なコンテンツを入れて,一緒に楽しめるようにしたいなと思っています。
4Gamer:
新規プレイヤー用にはいいですよね。今回日本に持ってくるのにあたって,なにか変更した部分などはありますか。
キム氏:
日本用にローカライズした部分としては,韓国では最初,既存の職業でレベル20以上のキャラクターを持っているプレイヤーに限ってシグナスキャラを作れるようにしており,2か月後にそれを解除しています。日本では最初から新規プレイヤーもシグナスキャラを作れるように仕様を変更してリリースすることにしました。
4Gamer:
成長しやすいといえば,今までのと比べて何割ぐらい成長しやすいとか,なにか目安はありますか?
単純に比例するんじゃなくて,こういう形になります(図参照)。
4Gamer:
なるほど。
ちなみに,シグナスキャラでも,既存の普通のクエストはちゃんと受けられるんですよね?
カン氏:
はい。既存のコンテンツは100%共有しつつ,新しいものもプレイできます。
今後の予定,そしてKavatina Storyの日本展開は?
シグナスは,ストーリー的にはまったく独立している感じですが,シグナスのストーリーは,この先がずっと続いていくということでよろしいんでしょうか。
チェ氏:
はい,そうですね。
4Gamer:
今後,騎士団のレベルキャップを開放する予定はありますか。
チェ氏:
はい,未公開ではありますが,いつかは行う予定です。楽しみに待っていてください。
4Gamer:
今後の話になりますが,韓国で予定されているアランの次のアップデートはどのようになるのでしょうか。
チェ氏:
韓国開発チームでは,新規コンテンツチームがLiveサービスチームと別にあり,Liveサービスチームではバグフィックスとかバランス調整を集中的にやっていて,新規コンテンツチームではいろいろな新しい試みをやっています。新しい個性がある職業とか,高レベルプレイヤー専用のコンテンツなどですね。韓国の場合は,公開テストサーバーがちゃんとできているので,そこで試してみて,プレイヤーの傾向を見ながら選択してく予定です。
とにかく,いまはアランをたっぷり楽しんでもらおうかなというところですね。韓国でももうすぐ夏休みになりますので。いろんなコンテンツを用意はしていますが,アランの状況を見てどの方向を選ぶか決めていきます。
分かりました。せっかくWizetを統括しているチェさんもいらっしゃるので,「KavatinaStory」の韓国での状況と日本の予定などを聞かせてください。
チェ氏:
韓国ではファイナルCBTを終えたばかりです。7月16日にやっとOBTが始まるんですが,ターゲットは,やはりメイプルの次の世代というんでしょうか。日本でもサービス中の「アラド戦記」と重なると思います。
まずは韓国で集中して成功したあと,海外ですね。日本を含めて,どこに行くかは決まっていないんで,まずは韓国で成功させることに集中しています。
ちなみに,アラド戦記とKavatinaを比べてどう思いますか?
4Gamer:
全然別のゲームだと思いますが? Kavatinaは,ゲームを見ていて,メイプルストーリーの3D版だなという雰囲気が凄くありますね。
チェ氏:
メイプルともまた違うのですが,同じスタジオで作ったということでイメージがかぶっているのでしょう。
アラド戦記の話をしましたが,アラド戦記と重なるというのは,その中毒性にあるんです。ゲーム性ではなくて,プレイヤーが夢中になって同じダンジョンでプレイを繰り返すというところが似ているんです。そういう面で,プレイスタイルは同じイメージになるかなと思っています。
グラフィックスやプレイヤーパターン,攻撃パターンは,メイプルよりもずっと発達した形です。メイプルよりも上のターゲットのために作りましたので。
4Gamer:
Kavatinaも楽しみにしています。本日はありがとうございました。
もとからエントリー向けのオンラインゲームだったメイプルストーリーが,さらにエントリーモードを付け加えてきたということの意義も大きそうだ。シグナス騎士団をイージーモード,今後登場するであろうアランをハードモードと,ゲーム内容を多彩化することで,より幅広いプレイヤー層にアピールするゲームに変わろうとしている。シグナス騎士団のアップデートに戦々恐々としているメーカーもあるのではないだろうか。
6周年記念では,当然新規プレイヤーなどを対象にしたキャンペーンなども大々的に行われるのだろうが,シグナス騎士団による,より手軽なプレイスタイルの提供はぴったりとマッチしている。このあたりの戦略の連携はさすがといえるだろう。
とにかく,低年齢層向けのオンラインゲームでは圧倒的な支持を集めるメイプルストーリーが,より楽しめる方向で強化されていくというのはプレイヤーにとって歓迎すべきことだろう。日本での反響を楽しみにしつつ実装の日を待ちたい。
- 関連タイトル:
メイプルストーリー
- 関連タイトル:
KavatinaStory
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