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[CEDEC 2005#04]多様なPCスペックに対応する大航海時代 Online
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印刷2005/08/30 23:56

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[CEDEC 2005#04]多様なPCスペックに対応する大航海時代 Online

■現実に80%の人がプレイできる動作環境を目指した

 本日(8月30日)はCEDEC 2005二日目。その第3講ではまたまたゲーマーにとって興味深いセッションが開催された。「大航海時代 Onlineにおける3Dクライアント開発 −PCスペックへの挑戦−」と題して,コーエー 執行役員 ソフトウェア事業部 ソフトウェア5部長の松原健二氏と,その指揮下で開発に携わるソフトウェア事業部 ソフトウェア5部 マネージャーの門脇 宏氏が,クライアントプログラム開発の概要を語る,というものだ。

 先に松原氏が演壇に上がり,大航海時代 Onlineのベンチマークソフトを自身のノートPC「Let's note CF-R3」で動作させて見せた。Intel 855GMEチップセットを採用し,Pentium M/1.10GHzを搭載した一世代前のスペックだが,快適に動作することをアピールした形だ。
 続いて氏はスライド資料とともに大枠での開発方針について説明する。氏が強調するのは「バリュークラスPCで十分に動作する」のを目指したこと。「ファイナルファンタジーXI」や「リネージュII」の動作条件/推奨条件をスライドで示しつつ,松原氏は「大航海時代 Onlineでは推奨スペックを出さなかった。というのも推奨スペックはしばしば,基準,アンカーとして機能してしまう。それよりも,実際にさまざまなスペックのPCで楽しめることを重視した」と語る。
 大航海時代 Onlineが要求するPentium III/800MHz,メインメモリ 256MB,グラフィックスメモリ 32MBというスペックは,正式サービス時点でプレイしたい人の80%をカバーできる線にまとめた結果であり,とくにCPUはほぼ100%カバーしたといってよいのではないかと,コメントを加えた。

 サービス開始時点での想定スペックを固めるに当たって,氏がもう一つ強調したのは,インテルやNVIDIA,主要ノートPCメーカーとの協力関係だ。開発中の新製品やリファレンスマザーボードを借りて検証するに当たっては「信長の野望 Online」で培った関係が重要な役割を果たしたという。



■ボトルネックを解消し,ひたすら軽快な動作を

 続いて,現場での開発を指揮した門脇氏が登壇,「開発に当たってはとにかくボトルネックを解消し,ひたすら軽快な動作を目指した」と述べて,より具体的な開発項目に沿った解説を加えた。

 まず,想定スペックに関して門脇氏は,グラフィックスカードを指標に3クラスに分類したという。

●GeForce 6,GeForce FX,Radeon 9600
●GeForce 4 Ti,Radeon,GeForce 3
●GeForce 2/4MX,GeForce 2,Intel 855GME/865

このうち最低クラスで動作するよう基本を形作り,次に最上位クラスでそれに見合う美しい表現を用意,しかる後に中間のスペックを調整しつつ,全体の開発をまとめていったと述べた。

 そして画面サンプルを含むスライドを示しつつ,最低クラスでは海面をVertex Shader 1.1のソフトウェアエミュレートで処理,空の拡散光シミュレートは既存のシェーダプログラムを使うことなく,汎用の頂点計算方法で処理,スキン(人の肌)表現は,シェーダプログラムのエミュレーション動作で実現したという。
 それに対して最上位クラスでは,波しぶきや波頭,泡の表現にPixel Shader 2.0を使うなど,リッチなハードウェアを活かしてより美しい表現になるよう開発したとのこと。
 また,描画エフェクトについては可能な限りオプションで設定可能にしつつも,シェーダの使用は実際のPC環境を見て動的に切り替える仕様になっていることも言い添えた。これは,例えばIntel 915チップセットの場合,統合グラフィックスコアの能力は高くないものの,そこで動作しているCPUはPentium 4以上であることが確定しているので,Vertex Shaderをエミュレーション動作させても十分に余力がある,といった場合のための措置だそうだ。

 また,DirectXが用意する圧縮テクスチャスキームであるDXTCは,正確さが求められる場面以外ではかなり実用的であることなどを述べつつ,ゲーム内の町の風景を示して,「ここの地形はすべて焼き付けであって,ライト(光源)計算していない」「影は自キャラを除いてすべて"丸カゲ"で,これもライト計算していない」,「リアルタイムに演算させるのではなく,あらかじめ結果をデータとして持たせたため,クライアントプログラムの容量が巨大になって困った」など,ゲーム内におけるかなり大胆な動作軽快化の実例を挙げていった。ご存じのように大航海時代 Onlineのクライアントプログラムはアーカイブ状態で1.5GBあるわけだが,当初は3GBほどであったらしい(!)。

 そして,可能ならば複数のソリューションによる描画コードを用意するのが望ましいこと,プログラムの実行ステップ数をぎりぎりまで減らすより,全体の構造やデータの形を見直したほうが大きな効果を見込めること,システムの大幅なアップグレードは,動作条件を考える限りあまり現実的でないことなどを(開発者向けの講演の)まとめとして述べた。

 関連した質疑応答については下で述べるが,どれもなかなか新鮮な話に思えた。というのも,自社の作品がどれだけ高度な処理を行っているかというデモンストレーションはよく見るが,ターゲットスペックを可能な限り引き下げる努力とて,本当は重要な課題のはずだからだ。その意味から,開発者向けセッションでの"ぶっちゃけ話"として,うってつけの話題だったのは確かだ。

 さて門脇氏の説明は開発の話から,余談ともいうべき広義のサポートの話に移り,「ノートPCやメーカー製PCには最新版のデバイスドライバがインストールされていないことが多く,困ることがある」といった現実的な話や,「QuadroやFire GLといったワークステーション用グラフィックスカード,逆にKYROやデュアルVolariなど今や入手が難しいグラフィックスカードでの検証の必要に迫られて困った」という話など,経験談をユーモアを交えつつ披露した。

 続く質疑応答では,「町の地形が焼き付けだということは,時間や天候による変化にはどう対応しているのか」という,実に的を射た質問が出る。これには門脇氏が「恐れていた質問が来ましたね(笑)」と前置きしつつ,「大航海時代 Onlineでは,時間や天候によって景色の表現が変わることはないです。よくご要望をいただくのですが,先ほど述べた大幅なアップグレードの話のとおり,今動いているPC環境できちんと動くよう作るとなると,これから実装するとしても一部に留まると思います」と,ゲームの内幕に踏み込むやりとりも見られて興味深かった。

 「開発は気合いです。センスとか関係ないです」と門脇氏が述べれば,松原氏は「気合いもあるかもしれませんが,人付き合いもあるということで」と返すなど,なごやかかつユーモラスなやりとりで締めくくられた今回のセッション。老舗メーカーならではの想定スペック配慮の内訳や意外な実現過程という,普段なかなか注目されない話が聞けた点は,実にCEDECらしい場面だったといえよう。(Guevarista)

  • 関連タイトル:

    大航海時代 Online

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