プレイレポート
コーエー突撃 マスター直前「信長の野望・革新」に触れてきた・1
実のところ,本作はほぼ完成しており,現在はデバッグおよびバランス調整の段階だという。そこで,近日中にも評価用β版を編集部に送ってもらえるとのことなのだが,それがいつになるのか,まだ分からないという状況。
しかし日吉にあるコーエー本社オフィスまで来れば,確実に動いているものを見せてもらえるとのことだったので,早速取材してきた。
今回,本作でプロデューサーを務める阿野越雄氏自らノートPCを使って,デモンストレーションしてくれた。
阿野氏の名前は,"信長の野望"と双璧をなす人気シリーズ,"三國志"に関連して聞いたことがある人も多いだろう。阿野氏は「II」から三國志の開発に携わっていて,「VI」以降ではプロデューサーを務める,三國志シリーズの母親的存在だ(父親は,やはりシブサワ・コウ氏だろう)。その阿野氏が作る信長の野望最新作がどうなるのか,実際にプレイの模様を目撃することで,ずいぶんと分かってきた。
■設定について:武将の生き死にを,細かく設定可能に
環境設定画面も先日掲載したばかりだが,阿野氏から解説があったので,いくつか紹介しよう。
ゲームの難易度は,初級,中級,上級の3段階が用意されている。初級は,本シリーズを初めてプレイした人でも,勝てる楽しみを味わえる難度になっているという。ただ,最初から最後までズーッと弱いのではなく,プレイヤー側がゲームに慣れてくる終盤ともなると,少しずつ違う動きをしてくるかも,とのことだった。
また上級は,文字どおり上級者でも手応えを感じられるものを目指しているという。「きっとパワーアップキットでは超級が追加されるんですよね」と軽く聞いてみたものの,「いや,今回はどうだろう」と阿野氏。上級は,超級の必要がないくらいの手強さを目指しているのだろうか。
「寿命」の項目では,"なし"も選択できるようになった。これは短命の武将を長く使いたいというニーズからだろう。
逆に,新しく「討死」という項目が設けられていることから,史実では長生きした武将も,今作ではあえなく戦場に散る可能性があることが分かる。「川中島の戦い」では多くの有名武将が討ち死にしているが,こういったことが,イベントが発生しなくとも,起こり得るというわけである。
なお,弓矢や鉄砲によって討ち死にすることがあるとのことだが,これは,基本的にはどの武将にも分け隔てなく起こり得る。例えば(自分は鉄砲には当たらないと信じ,常に先陣を切っていたという)上杉謙信でさえも,銃弾の餌食となる可能性はゼロではないようだ。
また,イベントによって強制的な討ち死にが発生するのがイヤだという人は,「歴史イベント」の項目を"なし"に設定すればいい。今川義元や斎藤道三も,強制的に死亡することはなく,(別の戦闘によって討ち死にしなければ)比較的長生きできるだろう。
設定をすべて終えると,設定確認画面が表示される。これも先日のニュースでお伝えしたが,ここでは担当勢力の,"大名武将"を変更できる。例えば織田家を選択して,(勢力内に存在していれば)いきなり羽柴秀吉を大名に設定することも可能だ。
大名を変更した場合,もともとの大名武将は,その勢力に一武将として登場する。そのときの扱いは,"隠居"となる。つまり,勢力内に一門衆がいる場合に使用できる「隠居」コマンドを使用した状態と,同じになるようだ。
ちなみに,歴史イベントの中には,条件に大名武将の指定があるものが存在する。例えば「本能寺の変」なら,織田信長が大名でないと発生しないだろう。そのため,大名武将を変更すると,いくつかイベントが発生しなくなることを覚悟しておいたほうがよさそうである。
■リアルタイム制:いかに早く作業を終わらせるかが重要
発動タイミングが任意なのが大きな違いだろう。
コマンドは基本的に武将に対して出し,その武将が現地に赴いて実行……完了したら戻ってくるので,それを見計らってまた別のコマンドを出す……という流れとなる。「三國志X」の,城主以上の立場のときのプレイスタイルに近いといえるだろうか。
阿野氏が最初に見せてくれたのは,「登用」コマンド。これは領土内にいる浪人を雇うためのコマンドだ(敵勢力の武将を迎え入れるのは,「引抜」コマンドを使う)。武将を選んでコマンドを実行したが……すぐには結果が出ない。コマンド選択中は時間が「止まっている」ので,まずは時間を進めなければならない。
阿野氏は"右ダブルクリック"というショートカットを使っていたが,基本的には画面右下にあるボタンをクリックすることで,時間の進行/停止を切り替えられる。時間を進行させると,(今回掲載した画像には映っていないが)画面左上の年月表記部分が動いていく。この右のバーを選択することで,時間を進める速さを3段階に調節できるとのことだ。
しばらくすると,登用に成功した旨のメッセージが表示された。このまま放っておいたらどんどん時間が進んでいくので,また時間を止めて,戻ってきた武将&登用した武将(ちなみに明智光秀)に新たな命令を下していた。
続いて,内政の説明。基本的なことは既報のとおりなので,以前の記事「こちら」を見ていただきつつ,今回実際のプレイを見て分かった細かい部分をお伝えしよう。
内政は基本的に,領土内にベースとなる「町並」を建てて,その周囲に「施設」を建てることで行う。町並は全部で7種類あるが,国によって建設できる町並に違いがある。
さてこの町並を,実際に建設してもらった。阿野氏は,迷うことなく政治力の高い3人の武将を選択して,コマンドを発動した。本作の場合,この3人という単位が重要のようである,別記事であらためて解説する予定の合戦時の"部隊"も,最大で3人の武将を配置できる。内政も一人でも可能だが,3人寄れば文殊の知恵ということか,3人単位で作業に当たらせることができるのだ。
一人の武将を選択したときに,その町並を建設し終わるのに必要な日数が表示された。そして二人目,三人目を選択するたびに,その日数が減っていった。
同じ作業を複数人で行うことの唯一のメリットは,この作業日数の短縮という部分にあるらしい。ついでにいえば,政治力による差も,この作業日数だ。政治力が高い武将ほど早く作業が終わり,また一人より二人,二人より三人のほうが,早く作業が終わる。誰が作業しようが,その日数が違うだけで,町並の質などに変化はないというわけである。
これは,内政も戦闘も技術開発もリアルタイムで行う本作では,実に合理的といえるだろう。どの作業も,いかに短期間で終えていくかが重要なのである。
時間を進め,建設中の町並にカーソルを合わせると,リアルタイムに「耐久」の値が上がっていた。文字どおり建設中のようである。
なおこのとき,ゲーム画面をどんどんスクロールさせていくと,他国の状況も見える。繰り返し報じられているとおり,本作は3Dの一枚マップが採用されているので,このまま日本全国くまなく見られる。とくにフォグのようなものはかかっておらず,常にどこでも見られ,その国で行われている内政の状況や,合戦の模様も,ある程度分かるようになっている(他国の場合,実際にどの武将がどの仕事を行っているか,その仕事がいつまでかかるかは分からない)。
町並に続いて施設も作ってもらった。これまた同じように,政治力の高い3人に当たらせることで,期間を短くできていた。なお町並にしろ,施設にしろ,木材などのリソースは必要なく,必ず金銭を消費して建設していた。
■技術について:大名家の個性を表す,重要な要素
本作のキーワードの一つである,技術についても説明してもらった。
技術を入手する方法は,基本的に三つだ。研究して発見/発明するのが,最もオーソドックスな入手方法である。そして,同盟国との交渉によって入手する方法もある。最後の一つは,文化人から教わるという方法だ。順に説明していこう。
技術開発は,条件が揃ったときに,コマンドを発動して行う。このコマンドは内政作業と同様に,武将を指定して金銭を消費することで,一定時間後(武将の能力によって変化)に開発が終了する。
問題は,この条件である。技術が8系統あるのは,既報のとおり。技術の一覧画面を見ると,この8系統が縦にズラリと並べられている。基本的には,各系統の右の技術ほど,入手が難しい。
条件となるのは,対応する学舎の数と,武将適性,そして金銭だ。また技術によっては,先に別の技術を入手しておく必要がある。逆に条件さえ満たしていれば,順番に関係なく,例えば一番右の技術から研究することもできる。
学舎の数については,過去の記事を熱心にお読みの人には,説明するまでもないだろう。騎馬系統の技術であれば,"騎馬系統の学舎が三つ必要"などの条件があるわけだ。
武将適性とは,配下の武将の能力値のこと。各武将は,8系統の技術に対して適性が設定されている。条件で指示された適性以上の武将が3人いて,初めてその技術を研究できるのだ。
例えば騎馬系統の技術で,条件に武将適性「B」とあれば,騎馬適性がB以上(S,A,B)の武将が,3人必要となる。学舎の条件を満たし,必要な金銭を用意し,武将適性を満たした3人でコマンドを実行することで,ようやくその技術を研究できるのだ。
なお金銭は,コマンド発動時に消費するが,合戦の発生などで研究をキャンセルした場合,たとえ技術開発する直前であったとしても完全にリセットされ,最初に消費した金銭も全額戻ってくるとのことだった。
この技術適性は,当然ながら優秀な武将ほど高い傾向にある。かといって優秀な武将をずっと技術開発に当たらせていては,その間,その武将を内政や合戦で使用できないというわけである。このあたりの人材運用も,本作では常に考える必要がありそうだ。
続いて,交渉による技術の取得について。本作の場合,同盟は一種類,不戦同盟のみとなっている(つまり上下関係は存在しない)。この同盟相手に対し,技術を教わったり,教えたり,交換したりできる。
技術提供の条件は,提供を依頼された側が指定できる。例えば同盟国から特定の技術の提供を依頼されたときには,こちらから条件を提示できるわけだ。まず交渉自体の返事は3種あり,"無条件承諾"と,"拒否",そして"条件付き承諾"。そして提示できる条件も3種で,"金銭"か"別の技術",そして"武将の返還"が選択できる。ちなみに(これは技術提供に限らないが)無条件で承諾した場合は,大名家の名声が上がる。
ここでついでに名声についても触れておくと,これは「民忠」の"上昇度"などに影響を与えるパラメータだ。本作では国(本城)単位で募兵できるが,募兵するときに民忠が10下がってしまう。しかし名声が高ければ民忠の上昇度(例えば"+3"など)が上がり,毎月その上昇度分,民忠が上がっていく。
名声はこのほか,勢力を拡大したり,捕虜を返還したり,要請に応じたり,包囲網に貢献したりすることで上がる。また自勢力の武将を処罰したりすることで,下がるとのことだ。
面白いのは,阿野氏によるプレイで,交渉条件に相手国の持っている技術を指定して,それが拒否されたときのこと。なんと引き続き,別の条件を提示できたのだ。いや,「Civilization」の例を挙げるまでもなく,別に画期的というわけでもないのだが,なんとなくコーエーゲームの交渉は,拒否されたら終わりというイメージがあったので,少し驚いた。どの程度の奥深さまでかは分からないが,なんにせよ,これは嬉しい仕様である。
また技術は,文化人から教わることもあるという。基本的には,すでに他勢力が持っている技術になるようだが,簡単に技術が手に入るのは,願ったり叶ったりだろう。
ただし,文化人は対応する町並がないと訪れないし,国によっては,対応する町並そのものを建設できない。文化施設のない地方の大名家は,地道に研究するか,交渉するしかなさそうである。
結論から言うと,できない。武力で滅ぼした場合も,外交の「勧告」によって,その大名家を丸ごと傘下に収めた場合でも,同じだ。
これは阿野氏の説明によると,大名家ごとの個性を,技術によって表現したいからだそうである。もし武力によって技術が獲得できたら,誰しも技術の開発なんて他国に任せ,ひたすら敵国を蹂躙するだけで済ませてしまうだろう。技術の獲得方法に制限を持たせることで,ある程度大名家が淘汰されてきた頃にも,大名家ごとに個性がある,というわけだ。(Text by Iwahama / Photo by 市原達也)
(以下,次回に続く)
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