レビュー
「4G Dual Sensor」を搭載したRazerの新フラグシップモデル
Razer Mamba 2012
なぜ過去形なのかというと,初代Mambaの後継機「Razer Mamba 2012」(以下,Mamba 2012)が,2011年8月19日に発売されたからである。Mamba 2012は,初代Mambaのボディ形状やボタン構成はそのままに,搭載するセンサーユニットを,3.5G Laser Sensorから初登場の「4G Dual Sensor」に変更した製品だ。
この4G Dual Sensorというのは,レーザーセンサーのほか,レーザーの出力や挙動を自動調整するために用いられる補助的な光学センサーを搭載した,文字どおりデュアルセンサー仕様になっているのがトピックで,これにより前世代のセンサーより高いトラッキング精度を実現しているという。
では,その新センサーによって「Mamba」の使い勝手はどう変化しているのか。じっくり検証してみるとしよう。
形状とボタンは初代Mambaそのまま
バッテリーの大容量化にともない重量のみ微増
Mamba 2012の全体的なデザインは初代Mambaそのものなので,握り心地やボタンの使い勝手については初代Mambaのレビュー記事を参考にしてもらいたいが,一応,本稿でも簡単に解説していこう。
また,本体両脇中央から底面にかけてを削りとったような,初代Mamba独特の形状もそのままだ。マウスを持ち上げるときの取っ掛かりとなるだけでなく,そこにはめこまれているラバーパーツが指先の滑りも防いでくれる。
初代Mambaだとワイヤレス時の重量は130gだったので,それと比べた場合,Mamba 2012は重量が7.5g重くなっていることになる。前述のとおり外観は同じなので,形は同じまま容量が25%増加したという新型のバッテリーユニットが重量増の最大要因という理解でいいだろう。
ちなみに,ワイヤレス時のMamba 2012からバッテリーを抜くと,重量は実測112g。同条件の初代Mambaだと同110gだったので,マウスそのものの重量は,2gしか変わっていない。
とはいえ,初代Mambaの130gの時点で重めなマウスだったので,今更8g増えたところで,大して違いはないような気はする。また,これでも「Gaming Mouse G700」(Logicool Wireless Mouse G700)や「SideWinder X8 Mouse」といった他社のゲーマー向けワイヤレスマウスよりは軽い。
左メインボタンの端に設けられた,縦に2つ並んだ小型ボタンがやや特徴的だ |
指がフィットするよう,波打った形状になっているメインボタンの表面。表面がラバーコートされているホイールは,イルミネーションLEDが埋め込まれている(※詳細は後述) |
左右メインボタンは指を置く部分が窪んでおり,フィットしやすい形状だ。また,いずれのボタンもカチカチとした高級感のあるクリック感が心地いい。
スクロールホイールは,回転させた時の引き込まれる感じが若干弱いものの,使用していて意図しない動作をしてしまうほどではない。ストロークが浅いおかげか,センタークリック時に誤回転するようなこともなく,スクロールホイールのデキは合格点を与えられるといっていいだろう。
最後にサイドボタンは,本体脇の窪みに親指をぴったり当ててマウスを持っていると,指をずらさないと押せない位置にあるのが少々気になる。握ったとき親指を置く位置のすぐ上にサイドボタンが来るので,指を時計回りにひねる感じで動かせば,握りを変えることなく押せるはずだが,持ち方によっては苦労するとか,押せないとかいったこともあると思う。
以上のように,形状やボタン構成は,もともと完成度の高い初代Mambaからまったく変わっていない。マウス全体を手で覆うように持つ「かぶせ持ち」はもちろん,指先と手の付け根でホールドする「つかみ持ち」,さらには指先だけでマウスを持つ「つまみ持ち」と,いずれの握り方でも問題なく使用できるはずだ。
この光学センサーは,サーフェスに合わせたセンサーユニットのレーザー出力調整や,リフトオフディスタンス調整を自動で行うためのものとのこと。先のレビュー記事で指摘したように,初代Mambaは一部のマウスパッドで正常に動作しなかったが,補助センサーの採用によってこの問題を解決しようということなのだろう。
なお,4G Dual Sensorのスペックは,トラッキング速度200IPS,最大加速度50G,トラッキング解像度最大6400DPIと公表されている。トラッキング速度と最大加速度は初代Mambaの3.5G Laser Sensorと変わらない一方,トラッキング解像度は最大5600DPIから向上しているといえなくはない。ただ,5600DPIの時点で過剰気味ではあるので,ゲーマー向けマウスの解像度戦争対策以外の意味はあまりないだろう。
ワイヤレスとワイヤードの切り替えは簡単で分かりやすい
大容量化したというバッテリーユニットは十分な動作時間
初代Mamba最大の特徴である,ワイヤードとワイヤレスの切り替え機能も,とくに変わらぬままMamba 2012に受け継がれている。
切り替えの方法は,Mamba 2012になっても相変わらず非常に簡単だ。付属のMini USBケーブルとMamba 2012本体とをつなぎ,Mamba 2012の底面にある[ON][OFF]のスライドスイッチを[OFF]にすればワイヤードマウス。Mini USBケーブルとレシーバー兼充電台の「Charging Dock」とをつなぎ,さらにMamba 2012側のスライドスイッチを[ON]にすればワイヤレスマウスとして利用できる。
ワイヤレスモードでうまく認識してくれない場合は,Charging Dockとマウス底面にあるペアリングボタンを押せば,再度ペアリングが実行されて動くようになる。
レシーバーと充電台を兼ねるCharging Dock |
バッテリーの充電はマウスごとCharging DockにセットすればOK |
ちなみに,ワイヤレスモード時は,当然専用バッテリーユニットを装着しておく必要があるわけだが,このバッテリーユニットは前述のとおり,初代Mambaから大容量化が図られている。公称では16時間の連続使用が可能と謳われており,筆者が実際に使った限りでは,満充電状態なら1日程度は問題なく使用できた。
さすがに10数時間ずっと動かし続けていたわけではないが,ゲームを長時間プレイするのに十分堪えうるバッテリー容量だとはいっていいように思われる。
ソフトウェアはバージョンアップで新機能が追加
Razer USAマウスの上位モデルには,ファームウェアをバージョンアップしないと正常に動作しないものも多いが,今回入手した個体には最初からバージョン1.02が導入されており,問題なく使用できた。
原稿執筆時点では同バージョンが最新版だったので筆者はそのまま使ったが,8月31日現在ではバージョン1.04が公開されているので,これから使う場合はRazerSupport.comからダウンロードし,ファームウェアをアップデートしておくのを勧めたい。
ファームウェアと一緒に公開されているドライバソフトウェアは,「Razer Mamba 2012 PC driver v2.00」。初代Mambaの最新バージョンである1.07と比べて,機能が追加されているのが最大の特徴となる。
さらにいえば,同タブ内の「POWER MANAGEMENT」では,ワイヤレス動作時のみLEDの明るさを落としたり,あるいは完全に消灯させたりと,どちらのモードで動作しているのかを見た目で確認できるよう設定することも可能だ。ワイヤレス動作時はLEDの光量を増やすほどバッテリー消費量も大きくなるので,見栄えを重視するか,長時間の駆動を重視するかで迷うことになるだろう。バッテリー持続時間を最大化させたい場合は,消灯が正解である。
そのほか,ワイヤレス動作時にスリープモードに入るまでの時間を,最短1分から最大15分まで1分刻みで変更できる機能も,POWER MANAGEMENTメニューには用意されている。バッテリーの最大化を狙うならこまめにスリープモードへ入るようにすべきだが,とっさのときに一呼吸空くのが不安という場合は,できる限り大きめの値を設定すべきだろう。
また,細かなところでは,ボタンに割り当て可能な機能に「Temporary Sensitivity」が増え,割り当てたボタンを押している間だけセンサー解像度を任意のDPIにする,ということが可能になっているのも,Mamba 2012で採用されたRazer Mamba 2012 PC driver v2.00の特徴といえる。
そのほか,ポーリングレートは125Hz/500Hz/1000Hzの3通りから選択できたり,1プロファイルにつき5つ,任意のDPIを100刻みで,X軸・Y軸独立して設定できたりするというのも変わらない。
ちなみに,バージョン2.00のソフトウェアは,初代Mambaとの後方互換性を持っているが,今回新たに追加されたSurface CalibrationやTemporary Sensitibvityといった機能や,Lightning and Powerタブの内容は,初代Mambaには(当たり前だが)適用できなかった。
なお,設定した内容は,プロファイルとしてMamba 2012内蔵のフラッシュメモリ「Razer Synapse」に保存可能。保存したプロファイルは,ドライバソフトウェアがインストールされていないPCとMamba 2012を接続した状態でも利用可能だ。プロファイルは5つまで保存できる。
ただ,ワイヤレス接続時の場合は,プロファイルの書き込み・読み出しにかなりの時間――初期状態のプロファイル5つの場合読み出しに少なくとも30秒以上――がかかってしまうということは注意しておきたい。一度だけではあるが,Razer Synapseへの書き込みを行っている最中にソフトウェアの動作が停止してしまい,数分経ってからようやくプログレスバーが動いたというケースもあったからだ。設定を変更する場合は,ワイヤード接続に切り替えたほうがいいだろう。
センサーは追従性の改善が見られる
ただしSurface Calibrationの効果は微妙
それでは,いよいよMamba 2012のキモである4G Dual Sensorの追従性と,マウスパッドとの相性を見ていこう。公開されているセンサースペックは先に述べたとおり,トラッキング速度200IPS,最大加速度50Gと,初代Mambaのそれと変わってはいないのだが,4G Dual Sensorの効果は実感できるのだろうか。
テストに用いた環境は表1,検証方法はその下に箇条書きで示したとおりだ。
●Mamba 2012の設定(ワイヤード/ワイヤレス共通)
- ファームウェアバージョン:1.02
- ドライババージョン:2.00
- 接続方式:ワイヤード,ワイヤレス
- トラッキング解像度:6400DPI
- ポーリングレート:500Hz(デフォルト)
- 「Enable Acceleration」:オフ
- 「Surface Calibration」:オン/オフ(両方を検証)
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
- Windows側設定:「ポインタの精度を高める」:オフ
●テスト方法
- ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
- マウスパッドの左端にマウスを置く
- 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速操作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速操作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速操作」の3パターンでマウスを振る
- 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
- 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる
テストに用いたゲームタイトルは「Warsow 0.62」。本テストにおいては,マウスに厳しい条件となるよう,ゲーム内の「Sensitivity」設定を「180度ターンするのに,マウスを約30cm移動させる必要がある」0.12に設定し,読み取り異常の発生を分かりやすくさせている。
以上の条件でマウスパッドとの相性を確認した結果が表2,表3である。表2はSurface Calibrationを有効にし,さらにリフトオフディスタンの調整機能「Liftoff Range」を「Auto」に設定した状態のもので,表3はSurface Calibrationを無効化した状態でテストした結果だ。ワイヤード接続,ワイヤレス接続のいずれを使っても,マウスパッド上での動作に変わりはなかったため,接続方式の違いで表を分けてはいない。
追従性自体はSurface Calibrationの有効/無効にかかわらずかなり高く,高速操作した場合でもネガティブアクセラレーションらしい感覚はまったくない。初代Mambaで相性が悪かった「Icemat Purple 2nd Edition」でも問題なく動作するようになったのは,追従性が向上している証拠といえよう。低センシティビティでマウスを振り回すプレイヤーでも安心して使っていけそうである。
また,3.5G Laser Sensorと一部マウスパッドの組み合わせで見られた「マウスを持ち上げ,設置した直後に動かすとポインタが遅れてついてくる」現象も,Mamba 2012では改善されているようだ。
ちなみに,表2,表3のどちらでも,マウスパッドとの相性やリフトオフディスタンスに大きな違いは見られなかった。そのため,自動キャリブレーション効果がどれだけなのかは今ひとつ実感できていないというのが,正直なところだ。
前述のとおりRazer USAは自動設定を推奨しているが,一応,Lift-Off Rangeを手動設定してみたところ,例えば設定値を0.0にしてZOWIE GEARの「G-TF Speed Version」上で動かすと,リフトオフディスタンスは1円玉1枚の厚みにまで短くなった。ただ,DHARMAPOINTブランドのマウス「DHARMA TACTICAL MOUSE(DRTCM15)」などと比べると,リフトオフディスタンス調整機能の設定幅は狭く,微調整機能といった印象も受ける。たしかにこれなら,自動設定に任せておいたほうが何かとラクかもしれない。
テストして少々気になったのは,3.5G Laser Sensor搭載マウスで見られた「高DPI時にG-TF(もしくはG-TF Speed Edition)以外の布製マウスパッド上でメインボタンをクリックすると,センサーが微妙な沈みこみに反応して動いてしまう」問題が残っている点と,マウスを持ち上げて下ろす行為を繰り返すとポインタが斜め下にズレていく問題,いわゆる「Z-Axis tracking」が残っている点だ。
前者は,G-TF上ですらブレてしまっていた初代Mambaに比べると改善されているし,後者もSurface Calibrationが有効な状態であればかなり改善が見られ,以前に比べるとほとんど気にならないレベルになってはいるが,完全に解消されたわけではないのも,また確かである。Z-Axis Trackingは,リフトオフディスタンスを手動で可能な限り低く設定すれば見られなくなるので,気になってしまう場合は自分の環境にあった設定を探してみてほしい。
やはり高価ではあるが
フラグシップモデルにふさわしい仕上がり
正直なところ,4G Dual Sensorのウリである自動キャリブレーション機能の違いは,あまり実感できない。センサー周りの性能も「多少は改善した」と言えるレベルに過ぎないので,初代Mambaのユーザーからすると,現在進行形でマウスパッドとの相性で悩んでいるとか,どうしてもLEDイルミネーションの色を変えたいとかいうのでなければ,無理に乗り換える必要はないと思われる。
ただ,初代Mamba譲りのしっかりした作りや,高級感,ワイヤードでもワイヤレスでも違和感なく使えるセンサー性能が,十分に評価できるものであるのもまた確かだ。
1万3800円前後(※2011年8月31日現在)という実勢価格はさすがに高く,万人向けとはお世辞にも言えないが,「ワイヤレスでも激しいゲームプレイに堪える,高い性能を持ったゲーマー向けマウスが欲しい」と考えている人であれば,購入して後悔することはないだろう。Mamba 2012は,ハイエンドに相応しい完成度の製品である。
「Razer Mamba 2012」製品情報ページ
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