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「Razer Blade」2016年モデルをテスト。超薄型のゲーマー向けノートPCは,持ち運べるゲーム環境への期待に応えられるか?
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印刷2016/07/25 00:00

レビュー

Razerの超薄型ノートPCは,唯一最大の問題にどう対応したか

The New Razer Blade / Razer Blade 14”(2016)

Text by 米田 聡


 最初にはっきりさせておこう。新しい「Razer Blade」は,ゲームしていたら熱暴走してお亡くなりになったりしないし,キーボード面に触れるのが危険なほどの尋常でない温度になったりすることもない。

The New Razer Blade / Razer Blade 14”(2016)
メーカー:Razer
問い合わせ先:systems-jp@razersupport.com
実勢価格:24万8200〜27万円程度(※2016年7月25日現在)
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 というわけで,Razer製のゲーマー向けノートPC,同社のWebサイトで「The New Razer Blade」とも「Razer Blade 14”(2016)」とも書かれる新型Razer Bladeである。2014年モデルは,その薄い筐体に当時としては高いスペックを実現する一方,強烈な発熱で大いに話題を集めた(?)が,2年でどれだけの進化を遂げたのか。今回は新モデルを「Razer Blade 2016」と呼ぶことにして,試用結果をレポートしてみたいと思う。

製品ボックスはさすがにRazer,凝っている。基本的には2014年モデルと変わっていないように見えるが,古さは感じない。ちなみに内容物はとてもシンプルで,本体とACアダプター以外には,薄いマニュアルのみだった
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薄型筐体と品質の高い液晶パネル,Nキーロールオーバー仕様のキーボードがインパクト大のRazer Blade 2016


ぱっと見て薄さが目を引くRazer Blade 2016
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 Razer初のノートPCとなったRazer Bladeというシリーズで同社は,基本的なデザインで従来モデルを踏襲しつつ,中身を新しくするスタイルを採用している。なので,Razer Blade 2016の外観は,かつてテストした「Razer Blade(2014)」(以下,Razer Blade 2014)とよく似ている。

 14インチワイドで,IGZO技術を用いて製造される解像度3200×1800ドットのIPS液晶パネルを採用する点や,サイズが実測で345(W)×235(D)×17.9(H)mmと,液晶パネルを閉じたときの厚みが20mmを大きく下回るという部分は,従来モデル譲りだ。重量は実測約1.97kgと,若干ながら2014年モデルより軽くなってすらいる。

天板部にはRazerロゴマークがあり,Razerのイメージカラーにして“毒による状態異常色”(venomous green color)である黄緑に光る
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 また,アルミ削り出しの重厚な筐体はこれまでのRazer Bladeシリーズそのままだ。つや消しブラックに塗装された本体は「質感が非常に高い」と思うか,「指紋汚れが目立つ」と思うかで,意見が割れるだろう。「質感は高いが,指紋汚れも目立つ」あたりが,最も適切な評価かもしれない。

 ただ,もちろん,2016年モデルらしいスペックの強化は入った。液晶パネルが静電容量式のタッチセンサーを搭載したという細かな部分以外にも,搭載するCPUはSkylake世代の「Core i7-6700HQ」(4C8T,定格クロック2.6GHz,最大クロック3.5GHz,共有L3キャッシュ容量6MB),GPUは「GeForce GTX 970M」(グラフィックスメモリ容量6GB)といった具合で,イマドキの仕様となっている。

薄型筐体を前面から見たところ(左)。天板を開けやすくするための溝がある。右はヒンジ側で,こちらにインタフェースはない
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黄緑色のUSB 3.0 Type-Aポートが目立つ左右両側面。ACアダプター接続端子と2ポートのUSB 3.0,ヘッドフォン&マイク接続端子が左,USB 3.1/Thunderbolt 3とUSB 3.0,HDMI 1.4b Type A各1ポートが右に並ぶ。Thunderbolt 3に対応し,外付けグラフィックスボックス「Razer Core」を利用できるというのも,イマドキのRazer製ノートPCらしいポイントだ。HDMIが2.0対応だとさらによかったが……
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 そのほか細かな仕様はのとおりだが,スペック面は,15.6インチや17.3インチの大型液晶パネルを搭載し,分厚い筐体を採用した他社製品に引けを取らない。あえて重箱の隅を突くとしても,Razer Blade 2016におけるモデル分けの要因ともなっているストレージ容量の選択肢が256GBか512GBの二択であって,モバイルノートPC並みということくらいだろうか。
 ちなみにRazer Blade 2016は直販サイトであるRazer Storeでの取り扱いだが,容量256GBモデルの販売価格は22万9800円(税別),容量512GBモデルは24万9800円(税別)なので,単純計算した税込価格は順に24万8184円,26万9784円だ。

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 先ほど,静電容量式タッチパネルを採用するほかは従来モデル譲りと述べた液晶パネルだが,その発色は,少なくともゲーマー目線で語る限り,文句なしに良好だ。
 ただそれだけに気になるのは,グレア(光沢)パネルのテカりと映り込みのキツさ。ゲーム中の暗いシーンだとほとんど鏡のように映り込んでしまうので,気になる場合は映り込みを抑えるタイプのフィルムを貼るなどといった対策が必要ではなかろうか。

 また,斜めから見ると,画面が暗く感じられるのも気になった。静電容量式タッチパネル搭載の悪影響だろうか?

液晶パネルの発色は良好。右は真っ黒の壁紙を表示させて輝度ムラを確認したところだが,気持ち左上が明るい程度であり,こちらも問題ないレベルと言えるだろう。ただし,下段のカットからも分かるとおり,斜めから見るとかなり暗く感じられる
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Chroma Configurator(上)。ちょっと分かりづらい挙動のツールだが,キーごとの色設定や機能割り当てが可能で,カスタマイズ性は高い。下はRazer Synapseからキーの割り当てを変更している例
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 Razer製ノートPC伝統の,Anti-GhostingおよびNキーロールオーバー対応キーボードはもちろんRazer Blade 2016でも健在だ。「Chroma」機能をサポートするため,「Razer Synapse」――正式には「Razer Synapse 2.0」なのだが,最近のRazerは「2.0」を省いているので,本稿もそれに倣う――クライアントから「Chroma Configurator」(Chromaコンフィグレーター)を使うことで,光り方はキーごとに調整することができる。

 もちろん,Razer Synapseからは,キーアサインの変更やマクロの登録といったことも可能だ。Razer製の単体キーボードでできる機能のほとんどを,Razer Blade 2016でも利用できると考えていい。

約1677万色から好みの色を選択できるキーボード。原稿執筆時点である2016年7月22日時点だと,選択できる配列は日本語のみだ。主要なキーのピッチは19mmで,配列も全体的にはノーマルだが,カーソルキーの配置が独特なので少し慣れが必要かもしれない。なお,キーボードのフォントは(Razer BlackWidow Xシリーズでも採用された)細身の「New Razer Font」になっており,全体的にすっきりしたイメージとなっている
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左から順に赤,橙,黄,緑,水,青,紫,桃,白と光らせたところ。青の出方が若干弱い気もするが,総じて違和感のない発色だと言える
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キーボードはパンタグラフ支持構造付きメンブレンで,ストロークは1mm強と,ノートPCとしてはごく一般的なものだが,スペースキーやシフトキーなど,横長のキーの沈み込みが安定しており,ゲームでも安心して使える
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 ちなみに,Microsoft製Webアプリ「Keyboard Ghosting Demonstration」から確認した限り,Razer Bladeのロールオーバーは最大10キーの対応で,11キー以上を同時押しした場合は,押下していないのに押下したことになったり,逆に押下しているのに反応しなかったりする「Ghosting」(ゴースト)が発生するのを確認できた。
 ただ,両手指以上のキーを押すということはまず生じないので,実用上は何ら問題にならないはずだ。

片手のひらでキーを押している例だが,ここでは10キー以上押下しているものの,反応しているのは10キーまでとなる。いわゆる「実用上はNキーロールオーバー」というキーボードなわけだ
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キーボードの両サイドにスピーカーを搭載する
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液晶パネルの上にWebカメラとマイクを内蔵する
 なお,キーボードを挟むような格好で,Razer Bladeは2chステレオスピーカーを内蔵している。ユーザーに向かう上面にスピーカーがあるため音質はとてもクリアで,このサイズのノートPCとしては音質がいい。
 「ただし……」という話はあったりするのだが,その件は後段で述べたいと思う。

 液晶パネル上部には200万画素仕様のWebカメラと2chステレオマイクを搭載している。どちらもビデオチャット用だろう。内蔵マイクは便利だが,スピーカーと同じく「ただし……」という話になるので,こちらも後述したい。

本文で紹介するタイミングがなかったが,付属のACアダプター。サイズは実測60(W)×150(D)×22(H)mmとまずまず小さく,ケーブル込みの重量も実測約425gと,本体とセットで持ち運びやすい。容量は165Wだ
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 ちなみに,プリインストールのソフトウェアは,Razer Synapse以外だと,いわゆるホームシアター用途向けのバーチャルサラウンドサウンド出力設定機能(※ただし一応「ゲーム」プリセットもある)「Dolby Digital Plus」と,標準搭載の無線LANコントローラ専用の設定ツール「Killer Network Manager」の3本のみ。無償のコミュニケーションツール「Razer Comms」,4Gamerでもお馴染みのゲーム用バーチャルサラウンドサウンド機能「Razer Surround」(※無印),そしてImage-Line製の音楽制作ソフトウェア「FL Studio 12 Producer Edition」のフルライセンス版は,別途,必要に応じてダウンロードできるようになっている。
 Dolby Digital PlusとRazer Surroundは扱いが逆でもよかったようには思うが,容量256GBモデルだとストレージ容量はカツカツだったりもするので,選択式というのはアリだろう。

Dolby Digital PlusとKiller Network Managerがプリインストール。一方でRazer製ツール2種とFL Studio 12は好みに応じてダウンロードできる
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従来同様,ヒートパイプと薄型デュアルファンを採用する,Razer Blade 2016の冷却機構


 Razer Blade 2014の例を引くまでもなく,薄型のゲーマー向けノートPCで問題となるのは冷却機構だ。で問題になるのが冷却システムである。Razer Blade 2016はどうなっているだろうか。分解して確認してみよう。

※注意
 Razer Blade 2016の分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生した場合,メーカーはもちろんのこと,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。

 まず,分解前に基本的な話を押さえておくと,「底面から吸気を行い,ヒンジ部のスリットから排気する」というRazer Bladeのエアフローは,Razer Blade 2014から一貫して変わっていない。

吸気は底面から行い,排気はヒンジ部から行う。この仕様は初代Razer Bladeから変わらずだ
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 底面のビスを外すと,カバーを外して冷却システムをチェックできるようになる。

左は底面カバーを外したところ。右は本体のヒンジ側を手前にして撮影したところだ
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 冷却機構は,2基のブロワー型ファンと合計4本のヒートパイプ,ヒートパイプの先にある放熱フィンから成り立っている。写真で左がCPU用,右がGPU用の冷却機能で,ヒートパイプのうち1本はCPU専用,2本はGPU専用で,残る1本はGPUの熱をCPU側のファンへと運ぶためのものだ。

写真中央にある,6Pチーズのようなヒートシンクの下でちらっとプロセッサパッケージが見えているのがCPUで,GPUはグラフィックスメモリチップともども大型のヒートシンクに覆われている。ファンのサイズは計測した限り50mm角相当だ
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定番のDDR4メモリチップ「K4A8G165WB」を8枚搭載する
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 CPUのすぐ近くにはSamsung ElectronicsのDDR4メモリ「K4A」が8枚並んでいるのを確認できるが,これがメインメモリである。合計16GBがデュアルチャネルアクセスとなる仕様で,ご覧のとおりのオンボード実装なので,増設は行えない。
 Razer Blade 2016でユーザーがどうにかできるのはSSDと無線LANモジュールだけといったところだが,そのSSDはPCI Express x4(NVM Express)に対応するSamsung Electronics製の「PM951」である。定番中の定番モデルだが,それだけに自己責任を覚悟すれば,同シリーズの大容量モデルへ換装しても相性問題が出たりする可能性は低いのではなかろうか(※保証はしないが)。
 無線LANモジュールはRivet Networks製の「Killer Wiress-AC 1535」だ。

入手したRazer Blade 2016はSSDモジュールとして「MZVLV2576HCHP」を搭載していた。無線LANモジュールはKiller Wiress-AC 1535である
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バッテリー容量は6160mAh 70Wh。モバイルノートPC的な運用ならざっくり5時間以上の運用が可能だった
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 バッテリーパックの容量は6160mAh 70Wh。今回は取り立ててバッテリー運用時間の試験をしていないが,「最新世代の3Dゲームを実行したら1時間も持たないだろう」と推測できる程度のスペックだ。
 Razer Blade 2016ではNVIDIA独自のスイッチャブルグラフィックス技術「Optimus」を採用しており,GPU負荷の低い局面ではCore i7-6700HQ型の統合型グラフィックス機能,Intelが言うところの「Processor Graphics」に切り替わる。試用時にアイドル状態で放置しながら,時折Webブラウザを使うというやり方で使い続けてみたところ5時間以上は使えていたので,非ゲーム用途であれば,2kg弱という重量を活かしたモバイル運用もなんとか可能と考えていいように思う。


GTX 970M搭載のノートPCとして妥当な性能を確認


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 では,Razer Blade 2016の性能を検証しておくことにしよう。
 ……と言っても,Razer Blade 2016のハードウェア構成そのものは,それほど珍しいものではない。「Core i7-6700HQとGTX 970Mの組み合わせのゲーマー向けノートPC」は各社からリリースされているからだ。

 なので,本稿ではRazer Blade 2016で「GTX 970M搭載のゲーマー向けノートPC」らしい性能が得られているかと,実際に3Dゲームをプレイするにあたって,どの程度のグラフィクス設定や解像度が適切なのかを,4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0から,「3DMark」(Version 2.0.2809)と「Far Cry Primal」,「Fallout 4」,「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ),「Project CARS」の5タイトルで確認するに留めたい。

 既報のとおり,3DMarkではDirectX 12版テスト「Time Spy」を含むVersion 2.1.2852がリリース済みだが,今回はテストスケジュールの都合で1つ前のバージョンを用いているので,この点はお断りしておきたい。
 また,ゲームアプリケーションにおけるテスト解像度は,1280×720ドットと1920×1080ドット,そしてRazer Blade 2016のネイティブ設定である3200×1800ドットとした。やや変則的だが,これは先ほど述べたように,プレイできる解像度設定を探るためだ。

 テストに用いた64bit版Windows 10 Proのビルドは10586.494。グラフィックスドライバはテスト開始時の最新版となる「GeForce 368.69 Driver」だ。

 では,テスト結果を見ていこう。グラフ1は3DMarkの「Fire Strike」と「Fire Strike Extreme」「Fire Strike Ultra」の総合スコアをまとめたものだ。過去のGTX 970M搭載機と比較しても同等のスコアが得られており,Razer Blade 2016で,「薄型デザインを採用する代償として性能を抑える」といった制御が入ってはいないことが読み取れる。
 なお,実スコアを見ると,フルHD解像度相当のFire Strikeだとゲームを快適にプレイできそうなスコアが得られている一方,1440p相当のFire Strike Extreme,4K相当のFire Strike Ultraにおけるスコアは芳しくない。このあたりも,GTX 970M搭載のノートPCとしては標準的と言えそうだ。

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 グラフ2は総合スコアから「Graphics score」を,グラフ3はCPUのテストスコアである「Physics score」をそれぞれ抜き出したものだ。前者は総合スコアを踏襲したスコアで,後者はノートPC用としては性能の高いCPUを搭載するだけのことはあるという結果になっている。

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 続いてはFar Cry Primalだ。グラフ4は描画負荷の低い「ノーマル」プリセットと,負荷の高い「最高」プリセットのスコアをまとめたが,ベンチマークレギュレーションで「ストレスなくプレイできる」ラインである平均40fpsは,ノーマルの1920×1080ドットと最高の1280×720ドットでクリアしてきた。実際にプレイするときはその間で調整するのがよさそうだ。最高プリセットの1920×1080ドットで平均35fps出ているので,こちらを基準に設定を少し落としていくのが正解だろうか。

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 グラフ5はFallout 4のスコアだが,ベンチマークレギュレーション18.0で合格ラインである平均60fpsをクリアしたのは「中」プリセットの1920×1080ドット以下だ。ただし,「ウルトラ」プリセットの1920×1080ドットでも平均51fpsは出せている。試しにグラフィックス設定プリセットを「高」にしてみたところ,1920×1080ドットで平均60fpsのラインをほぼクリアできたので,実際にはこのあたりの設定がターゲットになるのではなかろうか。

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 続いてFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの結果をグラフ6にまとめたが,スクウェア・エニックスの示すベンチマークスコアの指標における最上位「非常に快適」が得られたのは,「標準品質(ノートPC)」「最高品質」のいずれでも1920×1080ドット以下だ。最高品質&フルHDで「非常に快適」が得られたのは評価していいだろう。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフ6’を表示します
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 最後はProject CARSのテスト結果だ(グラフ7)。
 ベンチマークレギュレーションでは,ひとまずプレイアブルなフレームレートとして平均40fpsで,ハイエンドGPU搭載環境で快適にプレイしたい場合は60fpsを合格ラインとしているが,「初期設定」では3200×1800ドットでも平均40fpsを超えている点に注目したい。
 さすがに「高負荷設定」だと1920×1080ドットでも平均60fpsのラインに届かないが,「ひとまず」のラインは大幅に上回っているので,まずまずの結果が出ているとは言える。

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キーボード面は40℃台前半に抑えられ,ゲームプレイ時にも苦痛はない


 3D性能面ではGTX 970M搭載ノートらしい結果が出たRazer Blade 2016だが,本機における最大の懸念点は発熱である。記事の冒頭で“ネタバレ”をしてしまっているので,少なくとも大惨事になっていないことは把握してもらえていると思うが,具体的ところを見ていくことにしよう。

 それに先だって,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」で,システム全体の消費電力を計測した結果を確認しておきたい。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,ディスプレイの電源がオフにならないよう設定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とすることにした。
 アイドル時の消費電力は,Windowsコントロールパネルの電源設定から,「バランス」と「高パフォーマンス」(以下,グラフ中に限り「HP」)を選択した場合の2パターンで計測している。本機はノートPCなので,後者で使うことが多いだろう。

 なお,バッテリーはフル充電でテストしているが,Razer Blade 2016はバッテリーパックを取り外すことができないため,バッテリーの影響をゼロにはできない。この点はご了承を。

 というわけで結果はグラフ8のとおり。最大の消費電力値を記録したのはFar Cry Primal時の約146Wだ。前述のとおりACアダプターは165W仕様なので,相応に余裕はある。また,「GTX 970M搭載ノートPC」としても違和感のない,標準的な消費電力と述べていいだろう。

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 さて,発熱である。
 Razer Blade 2014を計測したときと同じく,チノー製サーモグラフ「TP-U0260ET」を使って,実際にゲームをプレイしている時の温度を調べてみることにした。ここで用いるゲームタイトルはFallout 4で,同タイトルを実際にプレイし,15分後に中断してその状況をサーモグラフで撮影し,さらに15分プレイして,そこで再度撮影。最後にゲームを終了させて20分間アイドル状態で放置し,その後もう1枚撮影するという流れだ。

 ここで一点注意事項を述べておくと,テストを行った日は突然の雷雨があり,その影響でエアコンの効き方が変わったため,ゲーム開始時に約27℃あった室温は,途中で下がって約26℃となっている。なので「室温が若干下がりつつ」のテストになるので,この点は押さえておいてほしい。

 まず,ゲームスタートから15分後のサーモグラム(≒温度分布画像)を見てみよう。
 サーモグラフの仕様上,サーモグラムは左右が反転している。そのため,サムネイルでは左右をあえて反転させ,画像の向かって左側がノートPCの左側を示すようにしてある点を断りつつ話を進めるが,最も温度が高いのは本体右にある[F11]キーの奥あたりで,ここが49℃を超えた。ちょうどGPU側のヒートスプレッダ,ファンの風が直接当たる部分が最も高熱になっているわけだ。ここは,手の触れる部分ではない。
 ではキーボード面はどうかというと,40℃弱から45℃程度。「全然熱くない」と書くと嘘になるが,ゲーム操作をしていて実用性を損なうほどのレベルには達していないのも確かだ。

サーモグラム:机上に置いて,ゲームを15分プレイした状態のRazer Blade 2016
※左右反転済み。クリックすると,計測した画像そのものを表示します
画像集 No.051のサムネイル画像 / 「Razer Blade」2016年モデルをテスト。超薄型のゲーマー向けノートPCは,持ち運べるゲーム環境への期待に応えられるか?

 続いてはゲーム開始後30分後のサーモグラムだが,室温が下がった影響でホットスポットの温度も約1℃下がってしまった。言い換えると,室温に応じて筐体温度も下がっているのだから,Razer Blade 2016は適切に冷却されているということだ。

サーモグラム:机上に置いて,ゲームを30分プレイした状態のRazer Blade 2016
※左右反転済み。クリックすると,計測した画像そのものを表示します
画像集 No.052のサムネイル画像 / 「Razer Blade」2016年モデルをテスト。超薄型のゲーマー向けノートPCは,持ち運べるゲーム環境への期待に応えられるか?

 最後にゲーム終了から20分間放置した後の様子が下のサーモグラムだが,ここで最も温度が高いのは本体の左側に置いてあるACアダプターだった。ACアダプターはファンレス仕様なので温度がなかなか下がらず,ゲームが終了してシステム負荷が下がっても,まだ37℃の温度を記録している。
 一方の筐体側は,ホットスポットが本体中央の電源ボタン付近に移り,そのスコアも約35℃となり,キーボード面は約32℃にまで下がった。

サーモグラム:机上に置いてゲームの終了後20分放置した状態のRazer Blade 2016
※左右反転済み。クリックすると,計測した画像そのものを表示します
画像集 No.053のサムネイル画像 / 「Razer Blade」2016年モデルをテスト。超薄型のゲーマー向けノートPCは,持ち運べるゲーム環境への期待に応えられるか?

 厚さ20mm以下の薄型PCとしてはしっかりとした温度管理下にあると断言していいだろう。Razer Blade 2014の惨憺たる結果が記憶にある読者ほど,まるで魔法が働いたかのように感じるかもしれないが,実のところ,この結果はある意味で当然だったりもする。Razer Blade 2016の搭載する2基のファンは,負荷がかかると,非常に勢いよく回転するのだ。
 高負荷状況になってもファン回転があまり上がらなかったRazer Blade 2014とは,ここが決定的に異なるポイントだと言えるだろう。

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 Razer Blade 2016のファンは,3Dゲームのプレイ開始後,およそ5分程度でトップスピード付近にまで上がり,トップスピード付近で負荷に応じて回転を変えながらプロセッサ温度を制御するという挙動になっている。もちろんその音はかなり大きく,Fallout 4の場合,スピーカーから音を出している場合はその出力音量を最大にしないとキャラクターのセリフが聞き取れないくらいほどだ。先ほどスピーカーの音質について述べたときの「ただし……」はここにつながるわけである。

 実際にコルグ製のポータブルレコーダー「MR-2」を使って録音してみたので,ぜひ聞いてみてほしい。ここでは,MR-2の内蔵マイクを本体液晶パネル面から30cmのところに設置して録音している。
 下にはアイドル時と,ゲームプレイ時それぞれの録音データを置いてみたが,アイドル時は端的に述べてとても静かだ。動作音はまったく気にならない。それに対してゲームプレイ時,ほぼトップスピード前後でファンが回転しているときの音だと,小径のファンにありがちな甲高い音に加えて,ブーンという音が混ざっているのが聞き取れると思う。トップスピード付近になるとファンが振動し始めるようで,ときおり,ブーンやゴーといった低めの音が混ざるようになる。

SOUND PLAYER:このブラウザは未対応です。PCをご利用ください。
※再生できない場合は,Waveファイル(アイドル時ゲームプレイ時)をダウンロードのうえ,手元のメディアプレイヤーで再生してみてください。

 すでに述べたとおり,ファンの騒音でゲームの音が聞き取れないレベルになるので,ゲーム中はヘッドフォンやヘッドセットの利用が必須である。ファンの音がうるさいのは,しっかりと筐体温度を下げることのトレードオフなので,これはやむを得ないだろう。

 参考までに,「GPU-Z」(version 1.9.0)でログを取りながらFallout 4を40分弱ほどプレイした結果をグラフ9へまとめてみたので,こちらもチェックしてほしい。
 Fallout 4の起動から約2分後にGPU温度は80℃を超えるが,5分後くらいにファンがトップスピードに入ったため,GPU温度はいったん10℃以上下がる。その後80℃台に突入するが,85℃を超えることはなく,かなり安定している。Razer Blade 2014だとGPU温度も90℃を超えていたので,Razer Blade 2016では明らかに改善が入っていると断言していい。

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これが完成形。「使える」薄型ゲーマー向けノートPCとして仕上がったRazer Blade 2016


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 「ご臨終」の悲劇から2年。Razer Bladeは,唯一最大の問題点を,「ファン回転を上げる」という,正攻法にしてチカラワザで解決し,さらにイマドキのスペックも獲得したことで,非常に完成度の高い1台となった。モバイルノートPCもかくやという薄型筐体で,見栄えはよく,スペックはサイズを考えると十分すぎるほどに高く,しかもキーボードはNキーロールオーバー仕様なので別途キーボードを用意する必要もない。
 今回筆者は,テストが終わった後も,普段からプレイしているFallout 4を続けてプレイし続けたのだが,最後まで熱による苦痛を感じることはなく,高い完成度を享受できた。

 ファンの音ははっきり言ってうるさいが,これはハイクラス以上のGPUを搭載し,一定以上に薄い筐体を採用したゲーマー向けノートPCに共通の課題であり,「密閉型のヘッドフォンやヘッドセットを装着すればいい」というところも含めて,Razer Blade 2016個有の問題ではない。個人的にはむしろ,液晶パネルの写り込みがキツすぎることのほうが気になったほどだ。

 ストレージ容量256GBモデルで税込25万円弱,同512GBモデルで約27万円という税込価格は,お世辞にも安価とは言えないが,この薄さと破綻のない外観,高い品質の液晶パネルとキーボードも込みと考えれば,少なくとも高すぎと言うことはないだろう。唯一最大の問題が解決した,ひとまずの完成形と言えるスペックなので,もともとRazer Bladeが気になっていたというのであれば,試す価値がある。そうでなくとも,マルチに使えるノートPCを探しているなら,候補に入れるべきだろう。

画像集 No.025のサムネイル画像 / 「Razer Blade」2016年モデルをテスト。超薄型のゲーマー向けノートPCは,持ち運べるゲーム環境への期待に応えられるか?

 なお,Razer Bladeを購入すると,Razer Coreが国内発売になったとき,1万2800円引きで購入できるとのことだ。

Razer StoreのRazer Blade 2016販売ページ

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