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「Razer BlackWidow Ultimate 2018」レビュー。「防塵防滴」はゲーマー向けキーボードに必須の要素となるのか
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印刷2018/08/30 00:00

レビュー

「防塵防滴」はゲーマー向けキーボードに必須の要素となるのか

Razer BlackWidow Ultimate 2018

Text by delave


 Razerの定番キーボードであるRazer BlackWidowシリーズから,2018年2月,「Razer BlackWidow Ultimate 2018」(以下,BlackWidow Ultimate 2018)のが国内発売となった。
 BlackWidow Ultimate 2018は,Razer BlackWidowシリーズとして初めてIEC規格の「IP54」に準拠し,いわゆる防塵防滴仕様を獲得しているのが大きな特徴だが,それはゲーマーに何かをもたらしてくれるのだろうか。登場から時間の経ったタイミングではあるが,検証してみたい。

Razer BlackWidow Ultimate 2018
メーカー:Razer
問い合わせ先:MSYサポートセンター 048-934-5003
実勢価格:1万2800〜1万4000円程度(※2018年8月30日現在)
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Razer BlackWidowシリーズとBlackWidow Ultimate 2018


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 ゲーマーがキーボードを選ぶとき「性能」に注目すべきなのは間違いないが,その「性能」が相対的に評価されるべきなのを忘れてはならない。最低でも,選ぼうとしているキーボードが,所属するブランドの中にあってどのような位置づけになっているかは知っておくべきだろう。

 Razerの主力キーボードであるBlackWidowの名を冠するものは,2018年8月の時点で,公式Webサイトから確認できる現行製品だけでも以下のとおり7つある。

  • Razer Blackwidow Chroma V2
    事実上のシリーズ最上位モデルで,「V2」は第2世代であることを示す。Razer独自のLEDイルミネーション機能「Razer Chroma」に対応。メインキーボードの左に5個の追加キーを搭載し,USBおよびサウンド入出力のパススルーポートを用意し,標準でリストレスト(パームレスト)が付属する。キースイッチの選択肢は「Razer Yellow switch」「Razer Green switch」「Razer Orange switch」の3つ
  • Razer Blackwidow Tournament Edition Chroma V2
    Razer Blackwidow Chroma V2から,10キー部と,メインキーボード左にある5個の追加キー,USBおよびサウンドのパススルーポートを省き,コンパクトにしたモデル。ちなみにRazerは10キーレスモデルを「Tournament Edition」と呼ぶ
  • Razer BlackWidow Ultimate
    Razer Chroma機能を搭載せず,LEDイルミネーションが緑1色となる製品。数年おきに新しくなっており,近年では2014年,2016年,2018年に新モデルが発売となっている。2018年モデルの新要素は防塵防滴で,キースイッチの選択肢はRazer Green switchのみだ
  • Razer BlackWidow X Chroma
    「X」はフローティングデザイン採用かつコンパクトな廉価版であることを示すが,そのRazer Chroma対応フルキーボードという扱いだ。Razer Blackwidow Chroma V2にある追加の5キーやUSBおよびサウンド入出力のパススルーポート,リストレストを持たず,キースイッチのRazer Green switchのみとなる
  • Razer BlackWidow X Tournament Edition Chroma
    Razer BlackWidow X Chromaをベースとした10キーレスモデル
  • Razer BlackWidow X Ultimate
    Razer BlackWidow X ChromaからRazer Chroma対応を省き,LEDイルミネーションの色を緑だけにしたモデル。2016年版Razer BlackWidow Ultimateをベースにした廉価版という紹介もできるだろう
  • Razer BlackWidow X Tournament Edition
    Razer BlackWidow X Ultimateをベースとした10キーレスモデルだが,LEDイルミネーション非搭載となる

 簡単にまとめると,製品名にChromaとあればLEDイルミネーションがキーごとに約1677万色から選択可能で,Tournament Editionとあれば競技シーン向けの10キーレス仕様となり,Ultimateは単色LEDイルミネーション搭載で数年ごとにアップデートが入り,Xが付けばフローティングデザイン採用の廉価版ということになる。

 というわけであらためて本稿の主役となるBlackWidow Ultimate 2018だが,本製品は単色LEDイルミネーションを搭載したフルキー仕様となるRazer BlackWidowシリーズの最新モデルだ。
 冒頭でも紹介したとおり,コンセプトは防塵防滴なので,水に弱いパススルーポートは持たない。また,防塵防滴スイッチを複数展開することのコスト的な問題からか,キースイッチの選択肢は強いクリック感と大きなクリック音が特徴のRazer Green switch(以下,緑軸スイッチ)のみとなる。

入手した日本語版BlackWidow Ultimate 2018。追加のキーなどがない,シンプルな外観だ
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こちらは英語配列モデルの製品イメージ。英語配列モデルはキーの絶対数が少ないため,[Space]キーが日本語配列モデルよりも横長になる。日本語か英語か,自身の慣れている配列のモデルを選べるというのはいい
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 具体的なスペックは下にまとめたとおりで,国内では日本語配列モデルと英語配列モデルを入手可能だが,今回4Gamerで入手したのは日本語配列モデルのほうだ。

●Blackwidow Ultimate 2018の主なスペック
  • 接続インタフェース:USB
  • キースイッチ:メカニカル(「Razer Green switch」の防塵・防水仕様)
  • 基本キー数:日本語108または英語104
  • 実測キーピッチ:1.9mm
  • キーストローク:4mm
  • アクチュエーションポイント:1.9±0.4mm
  • 押下特性:50g
  • ロールオーバー:10キー
  • 複数キー同時押し対応:対応
  • キー耐久性:約8000万回
  • ポーリングレート(USBレポートレート):1000Hz
  • マクロ機能:対応(※ショートカットキーと「Razer Synapse 2.0」による)
  • バックライト:あり(緑1色のみ)
  • 実測サイズ:約447(W)×176(D)×33(H)mm(※公称値は約452(W)×171(D)×20(H)mm)
  • 実測重量:約1311g(※ケーブル含む。公称値は約1380g)
  • 実測ケーブル長:約1.8m
  • 対応OS:Windows 10・8.x・7,macOS X 10.8以降
  • 発売日:2018年2月24日
  • メーカー直販価格:1万4880円(税別)
  • 保証期間:2年間


BlackWidow Ultimate 2018は防塵防滴版BlackWidow Ultimate 2016!?


Synapse 2.0はBlackWidow Ultimate 2018をBlackWidow Ultimate 2016として認識する
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 では,そのハードウェアを見ていきたいと思うが,実際にBlackWidow Ultimate 2018をPCに差すと気付くことが1つある。それは,BlackWidow Ultimate 2018が最新世代の統合ソフトウェアである「Razer Synapse 3.0」(以下,Synapse 3.0)に対応していないことと,従来の統合ソフトウェアである「Razer Synapse 2.0」(以下,Synapse 2.0)が本機を「Razer BlackWidow Ultimate 2016」(以下,BlackWidow Ultimate 2016)として認識することだ。

 樹脂製の外装パネルでキースイッチを覆う,典型的なフルキーボードモデルといった外見は,近年流行しているフローティングデザインのキーボードと比べるとかなりゴツい印象で,また,

  • 最外周のキーキャップから,実測で手前は約38mm,奥は約32mm,左右も13mmある,机上スペースに配慮しているとは言えないサイズ感
  • 底面からキートップまでの高さは最も高くなるところで実測約40mmある,下手なフローティングデザイン採用キーボードより高い全高

に代表されるオールドスクールなデザインはBlackWidow Ultimate 2016そのままである。防塵防滴仕様を獲得したのを除くと,内部的にはBlackWidow Ultimate 2016そのものという可能性もあるのではなかろうか。

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USBおよびサウンドのパススルーポートがなくなって,ケーブルはシンプルなUSB Type-A×1となったが,筐体のゴツさは従来どおりだ
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本体手前のリストレストはかなり出っ張っている。着脱不可なので,人によっては邪魔に感じるのではないかと思う
BlackWidow Ultimate 2016と同じく,Blackwidow Ultimate 2018もキートップの高さが行によって異なる。底面から外装パネルの最も高くなる位置までの高さは実測で約33mmとかなり高めなのだが,驚くことにRazerの公称値は20mm。Razerはいったいどこの高さを測定したのだろう? 右はチルトスタンドを立てた状態だが,こうなると最も高いキーは机上から実測約48mmのところにくる
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Razerの広報画像より,防滴のイメージ
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 では,「Razer Synapse 2.0が2016年モデルとして認識するほどにBlackWidow Ultimate 2016」なBlackWidow Ultimate 2018は,いかにして最大のウリである防塵防滴仕様を実現できているだろうか。

 そもそもの話として,冒頭でも述べたようにBlackWidow Ultimate 2018は防塵防滴保護規格であるIP54準拠だが,「IP」というのはIEC(International Electrotechnical Commission,国際電気標準会議)が規格化している保護等級の1つだ。IP(Ingress Protection,侵入からの保護)に続く2桁の数字は,十の位が防塵,一の位が防水の程度を示しており,簡単に言えば,それぞれ数字は大きいほど性能に優れている。
 IP54の場合,「粉塵の侵入を完全に妨げることまではできないが,動作を損なうような量は侵入できない」防塵性があり,「どの方向から飛沫がかかっても動作を損なわない」防滴性があるという意味である。

キーキャップを外すと,黄緑色をしたシートが板面を覆っているのを確認できる
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 それを踏まえてキーキャップを外してみると,緑色の蛍光色をしたシートがキーボード板面を覆っているのと,緑軸スイッチの形状が従来のものから変わっているのを確認できる。ただ,前者はBlackWidow Ultimate 2016でもそうだった。もちろん素材が変わって防塵防滴に貢献しているのかもしれないが,正直,そこまでは断言できない。
 一方,後者,緑色スイッチの形状が変わっているのは,ほぼ間違いなく防塵防滴仕様を実現するためのものだろう。

左はBlackWidow Ultimate 2018が搭載する緑軸スイッチ,右は従来型の緑軸スイッチだ(関連記事)。BlackWidow Ultimate 2018では軸の左右に壁が立って「[+]」的な見た目になった。また,スイッチ上の隙間が減った印象もある
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本体底面には水抜き用と思しき穴が4個ある
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製品ボックスには「耐水性能」に関する注意書きがある
 ただ,ここで注意しなければならないのは,IP54は完全な防塵性や防水性を有するものではなく,また汚れを防ぐというものでもないため,あくまで故障を避ける「保険」程度のものだということだ。

 防塵周りの信頼度はかなり高そうだが,防水性はそもそも持っておらず,水飛沫(しぶき)が多少かかっても大丈夫という程度だ。蛇口からキーボードへ直接水を流して洗ったりすると故障してもまったくおかしくない。また,ジュースなど,糖分を含む液体をこぼしたりすると,糖分のほうが原因で故障する恐れは普通にある。「BlackWidow Ultimate 2018があれば,キーボードの近くに飲食物を置いて,それで不測の事態が生じても全然心配なし!」ということにはまったくならないのだ。
 キーボードを長く使い続けるためには,そもそもそうした不測の事態からキーボードをなるべく遠ざける必要がある。

 IP54が機能するのは,プレイヤーが危険をマネジメントできない状況だ。たとえば必要に迫られてキーボードを携帯したときの悪天候とか,ネットカフェなど,他人に用意された環境へキーボードを持ち出したときに第三者が口の開いたペットボトルを倒したとかである。外出先でキーボードが故障してしまうと,代替機を用意するのは極めて難しい。そのタイミングが重要な試合だったりすれば目も当てられないだろう。

 その意味で,確かに防塵防滴性は重要だが,必要となるシーンを考えると,そもそも携帯性が考慮されていないBlackWidow Ultimate 2018にこの機能が必要なのかという疑問は残る。それこそ“Razer BlackWidow Tournament Edition 2018”的な10キーレスモデルにこそ――言うまでもないが,現時点でそんな製品はない――備わっているべきではなかろうか。正直,持ち運ぶ前提になっていないBlackWidow Ultimate 2018における防塵防滴の費用対効果については首を傾げざるを得ないというのが正直なところである。


ハードウェアの基本仕様も簡単にチェック


 以上,BlackWidow Ultimate 2018における最大の特徴を見てきたが,それ以外の部分も確認しておこう。
 前段でも触れたように,BlackWidow Ultimate 2016はかなり無骨な見た目をしているのだが,PCに接続してLEDイルミネーションが光ると,その印象はぐっと「Razerのキーボードっぽい」ものになる。キーに埋め込まれた緑色LEDの光は底面にある黄緑色のシートに反射し,落ち着いた雰囲気を醸し出す。

決してケバケバしくない,上品で美しいLEDイルミネーションをBlackWidow Ultimate 2018は実現できている。発光は外に漏れず,淡い発光のまま内部に佇んでいるといった印象。ライトが自己主張するのではなく,あくまでキースイッチを主役にして,その輪郭を慎ましく強調しているかのようだ。これはぜひ直に見てほしいと思う
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 筆者はこのライティングの秘密を探ろうと,キートップを外して確認してみたのだが,Blackwidow Ultimate 2018はキースイッチの底から外装パネル表面までの距離をあえて深く取ってあるようだ。一般的なキーボードだと4〜5mm程度のところ,BlackWidow Ultimate 2018は8mmもあるが,おそらくこの深さが,キースイッチを浮かび上がらせるようなLEDイルミネーションの存在感をもたらしているのだと思われる。

各所のキーキャップを外したところ。キースイッチは全体としてかなり深い場所にある印象を受ける。前段で触れた「高い筐体高」はこの仕様を実現するためのものなのだろう。また,キーキャップを外すと,[Space]キーなど,全長の長いキーには打鍵感を安定させるための金属製フックが付いているのが分かる
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本体底面全景。滑り止めのゴムは小さいが,そもそも本体重量が1.3kg超級なので,そうそう動いてしまうことはない
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 ただ,2018年モデルとして再設計せず,2016年モデルを流用した結果としての「雑さ」のようなものもBlackWidow Ultimate 2018には見える。具体的には底面だ。
 本体底面は,5か所に滑り留めのゴムが貼ってあり,さらに前段でも触れたチルトスタンドもあって,一見,問題はないように感じられる。

 しかし,底面にあるチルトスタンドを立ててキーボードに傾斜をつけると,問題が明らかになる。チルトスタンドの高さは実測で15mm程度とキーボードの中では平均的だが,先端部に防滑性がほとんどないため,チルトスタンドを立てると,非常に軽い力でも机上を滑ってしまうようになるのだ。

チルトスタンドは立てると先端部にはややマットな質感があり,防滑性に配慮している気配なのは分かるのだが,効果はほぼない。しかも接地面積が狭いので,机とひどく擦れてしまう
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 使ってみると分かるが,チルトスタンドを立てた状態では,とくに左手前部および右手前部からの力に弱く。不意の接触で大きくズレて,机上と強く擦れる音がする。机の材質にもよるが,表面に傷がつく可能性もあり,とても安心できるレベルの防滑性ではない。

 一方で,チルトスタンドを立ててキーボードに傾斜をかけることの需要は決して無視できない。傾斜があることで,行ごとにあるキーの高さの違いをハッキリと区別できるようになり,指先の感触でキーを識別しやすくなるというメリットがあるからだ。
 普段からチルトスタンドを用いずゲームをプレイする人にとっては不要な配慮だろうが,ゲーマー向けキーボードの最新モデルとして,防塵防滴と合わせ,こういう部分のアップデートはしてほしかったところである。


ソフトウェア周りの機能はSynapse 2.0準拠


[Fn]キーと組み合わせて追加機能を利用できるキーは,キーキャップの手前側にアイコンがある。[F4][F8]キーには割り当てがない
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 本稿の序盤でも触れたように,BlackWidow Ultimate 2018は,Razer BlackWidow Chroma V2のような追加キーは持たない。その代わり,キーボードショートカットは[Fn]キーと([F4][F8]キーを除く)[F1]〜[F12]キーおよび[Pause]キーの組み合わせで利用できるようになっている。具体的には以下のとおりだ。

  • [Fn]+[F1〜F3]キー:サウンド出力制御(※ミュート有効/無効の順繰り変更,音量下げ,音量上げ)
  • [Fn]+[F5〜F7]キー:メディア制御(※再生/一時停止,前戻し,先送り)
  • [Fn]+[F9]キー:オンザフライ(on-the-fly)マクロ記録
    (※Razer製伝統の機能。[Fn]+[F9]キーを押して,キーボード右奥のマクロ登録インジケータが点灯したら登録したいキーの組み合わせを入力し,再び[Fn]+[F9]キーを押し,さらに登録先のキーを押下するという流れでキーマクロを登録できる。登録ミスした場合は2回めの[Fn]+[F9]キーを押す前に[Esc]キーを押せばキャンセル可能)
  • [Fn]+[F10]キー:Gaming Mode制御(※有効/無効の順繰り変更)
  • [Fn]+[F11/F12]キー:LEDイルミネーションの輝度制御(※消灯を含む輝度の変更)
  • [Fn]+[Pause]キー:スリープモードに移行(※復帰には任意のキーを押下)

[Fn]+[F11/F12]キーで制御できる輝度は消灯を含む4段階だ。光が漏れない設計のため,輝度を抑えると,発光しているというよりは地の色が変化しているような色感となる
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 キーボードショートカットで最も重要なのはGaming Modeの有効/無効切り替えだろう。[Fn]+[F10]キーを押してGaming Modeを有効化すると,本体正面向かって右奥部の「G」インジケータが点灯し,[Windows]キーと,[Alt]+[Tab]キー,[Alt]+[F4]キーの組み合わせを無効化できる。
 ただ,日本語キーボードでそれらと並んで重要な[半角/全角]キーなども無効化したい場合は,本稿の序盤で触れたとおりSynapse 2.0が必要になる。繰り返すがSynapse 3.0に対応していないので,この点は注意してほしい。

Synapse 2.0の利用にあたってはアカウントを作成し,ログインする必要があり,初回のセットアップ時には相応の手間がかかる(左)。一応,オフラインモードでも利用できるが(右),今後,別のRazer製品も購入したりする可能性があるなら,アカウントにログインして使うほうがいいだろう
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 Blackwidow Ultimate 2018の場合,Synpase 2.0から設定できるのはキーごとの機能割り当てと,LEDイルミネーションの輝度および点灯パターン設定,Gaming Modeの詳細設定だ。

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Gaming Modeとは別に,キーごとの機能割り当て設定を応用することで,[半角/全角]キーなど,ゲーム中の“誤爆”が問題となり得るキーをあらかじめ無効化できる
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こちらはGaming Modeの設定項目。ここに[半角/全角]キーを入れてほしいところだが,残念ながら追加選択できるのは[Alt]+[Tab]キーと[Alt]+[F4]キーのみ
「キーボード」―「照明」―「効果」から設定できる点灯パターンのプリセットは常時点灯の「静的」を含めて6つだ。「エフェクトコンフィギュレータ」をクリックすると,キーごとの輝度設定を行えるようになる
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エフェクトコンフィギュレータ(左)。見た目はRazer Chroma用の「Chroma Configurator」とほぼ同じだが,LEDイルミネーションが単色なので,点灯パターンを細かく設定してもライティングが映えるとは言えない。オマケ程度に考えておいたほうがいいだろう。初回起動時と,右上の「?」アイコンをクリックしたときにはチュートリアルが立ち上がる親切設計(右)
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統計メニューから確認できるヒートマップ。ゲームタイトルごとにデータを記録できるが,そのためには実行ファイルを登録する必要がある。またその仕様上,起動法が特殊なゲームだとうまく記録できない場合もあった
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 もう1つ,面白い機能として紹介できそうなのが,Synpase 2.0の「統計」から利用できるヒートマップだ。これは,ゲームタイトルごとに,ゲームプレイ時のマウスの動き,マウスをクリックした箇所と回数,どのキーをどの程度押下したかを確認できる。
 筆者の場合は,キースイッチの入力性能を測るタイピングテストツールを開発するためにこうしたデータを収集したが(関連記事),特別な目的がないなら,単純に好奇心を満たす機能と言ってしまって差し支えない。


キースイッチの特性は緑軸スイッチそのもの


 仕様をひととおり押さえたところで,防塵防滴仕様版緑軸スイッチの性能検証に入っていこう。

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 キーを押下していったとき,底打ちするまでの長さを示すキーストローク(Key Stroke,「Full Travel」とも言う)は4mm,キーを押下したときにスイッチがオンになる作動点であるアクチュエーションポイント(Actuation Point)は1.9±0.4mm,キー荷重が50gという設定で,押下時に「Cherry MX Blue」(以下,青軸スイッチ)のような強いクリック感がある仕様という点で,BlackWidow Ultimate 2018の搭載する緑軸スイッチは従来のRazer製緑軸スイッチと同じ仕様だ。
 ただし,今回はそこに防塵防滴仕様が加わっている。ではそれによって挙動に違いが生じるのかというのが主なテスト対象となるだろう。

 というわけで今回は,5月19日掲載の記事で紹介したのと同じテストをBlackWidow Ultimate 2018,そして先の記事で緑軸スイッチ搭載モデルの代表として取り上げた「Razer BlackWidow Tournament Edition Chroma」(以下,BlackWidow TEC)の両方で行ってみたいと思う。
 BlackWidow TECのスコアを流用しないのは,試行回数によるタイピング技術の向上やそのときどきのコンディションがスコアに影響を与える可能性を考えてのものだ。過去のテスト結果は累計として扱うので,その点は注意してほしい。

4Gamer Keyboard Checker Ver.2のスクリーンショット
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 あらためてテスト方法をお伝えするが,ここで使うツールは,筆者のキーボードレビュー用に4Gamerで独自に開発したツール「4Gamer Keyboard Delay Checker Ver.2」(β1)だ。筆者が実際に複数のFPS/TPSタイトルをプレイしたときに使うキーの割合に基づいて出現頻度を設定した,実用的なタイピングテストツールとなっている。
 機能的には非常にシンプルで,「画面上に表示されたキーを被験者が押し,表示からキーが押されるまでの時間とミスの数をCSVファイルに記録する」といったものになる。

 1回の計測時間は2分。今回はキーボードあたり15回の試行を行って,「キーの入力が入るまでの所要時間」と「ミスの数」の平均値を計測する。詳細は先の記事を参照してもらえればと思う。

 さて,結果はグラフ1,2のとおりだ。
 平均遅延は,「『押下すべきキー』が画面に表示されてからキーが押下されるまでの所要時間」の平均値を,平均ミスは,「試行1回(=2分)あたりのタイプミス数」の平均値を示している。どちらの数値も,低いほど良好という理解で構わない。

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 まず,最も重要な事項の確認として,BlackWidow Ultimate 2018とBlackWidow TECとでスコアに大差はない。よって,防塵防滴版緑軸スイッチの性能はベースとなった緑軸スイッチと基本的に同じものであると判断できる。

 過去の累計と比較した場合,BlackWidow Ultimate 2018の平均遅延スコアは青軸系スイッチの平均とほぼ等しく,メカニカルキースイッチ全体の平均と比べると遅い。一方,平均ミスの数はメカニカルキースイッチ全体で過去最も少ないスコアに近かった。総じて,BlackWidow Ultimate 2018は「メカニカルキースイッチとしては入力速度が低い一方,ミスの発生率が低く,安定度が高い」という,青軸系キースイッチ搭載モデルの典型的なテスト結果を示す製品とまとめることができるだろう。
 BlackWidow Ultimate 2018が採用する緑軸スイッチは,防塵防水性能が加わった以外,従来の緑軸スイッチと同じと言い切ってしまっていい。

 幸か不幸か,BlackWidow Ultimate 2018には,緑軸スイッチ以外の選択肢がない。なので,今回のテスト結果さえ押さえておけばBlackWidow Ultimate 2018のキースイッチに対する理解は十分と言える。

 なお,余談気味に続けると,累計データのうち,平均遅延に出てくる「メカニカル(過去最遅)」のスコアはBlackWidow TECのものだった。今回のテストで以前より平均遅延が短くなっているわけで,過去のデータを流用して直接比較することに意味はないと納得してもらえると思う。
 ただ,「メカニカルキースイッチとしては入力速度が低い」結果には変わらないので,キースイッチの特徴を検証するには十分なデータであると考えている。


いろいろ中途半端なBlackWidow Ultimate 2018。「手を出しやすいRazerのキーボード」と捉えるのが正解か


 まとめよう。BlackWidow Ultimate 2018というキーボードは,重量級と言える筐体に芸術的な単色LEDイルミネーションと防塵防滴仕様を搭載した製品だ。

製品ボックス
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 良くも悪くも,BlackWidow Ultimate 2018の特徴は防塵防滴仕様に依存している。その能力指標となるIP54はゲーマー向けキーボードとして優秀なグレードに違いない。
 しかし,この防塵防滴仕様はあくまでも保険程度であり,「コアゲーマーがキーボードを携帯したときに生じうる故障を避ける」のに向く要素だ。そのため,Tournament EditionでもないBlackWidow Ultimate 2018にとって真に必要な要素かというと疑問が残る。

 しかも,そんな防塵防滴仕様を獲得したのと引き換えに,従来モデルが搭載していた,キーボードを据え置きで使うとき,ワイヤードマウスを手元に引き出してケーブルの取り回しやすさを向上させることができて便利なUSBパススルー機能が省略されてしまった。結果として,BlackWidow Ultimate 2018は,コアゲーマー向けとしても一般ゲーマー向けとしてもコンセプトが中途半端になってしまった印象が拭えない。
 緑軸スイッチしか選択肢が存在しないのは,防塵防滴仕様を実現するコストと見込み販売数の兼ね合いだと思われるが,Razer Orange switchを採用した「Stealth」モデルがなくなってしまったのも痛い。「独特の打鍵感があって気持ちよくタイプできるが,いかにもメカニカルといった大きな打鍵音がボイスチャットの妨げになる」という,非常にクセの強い緑軸スイッチしか選べないというのは不便であり,やはり残念だ。

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 Razerは日本語公式Webページで,「キーボードに求められる、究極の要素は『タフさ』です」(※原文ママ)として,そのタフさを実現したキーボードがBlackWidow Ultimate 2018だと紹介しているが,そこそこのタフさと引き換えに,そのほかの要素がおろそかになってしまったと言わざるを得ない。
 完全防水ならまだ納得できたかもしれないが……。

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 ただ,青軸系キースイッチ搭載モデルが好みで,競技性の高さにはそれほどこだわりがなく,かつRazerらしいデザインのキーボードに惹かれるという人にとって,定番シリーズの最新モデルとなるBlackWidow Ultimate 2018が実勢価格的に手を出しやすいキーボードなのは確かだ。
 従来よりも対象のユーザーは狭くなったものの,しかし,どんぴしゃで当てはまる人にとっては,定番キーボードに防塵防滴というプラスαが加わった製品として,魅力的な選択肢となるはずである。

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