レビュー
3ピース構成のLogitech製高級ステアリングをPS3とPCで試す
G27 Racing Wheel
今回取り上げる「G27 Racing Wheel」(以下,G27)は,そんなG25の後継機として,Logitechの日本法人であるロジクールから,2010年11月25日に発売となったものだ。最大900度(2.5回転)のロック・トゥ・ロック角度,フォースフィードバック用のデュアルモーター,ステンレス製フレームを採用したアクセル/ブレーキ/クラッチの3ペダルユニット,H型パターン6速シフトレバーなど,G25の基本スペックを踏襲しつつ,一部の構造変更と機能性向上が図られたとされている。
4Gamerでは2006年1月に,並行輸入版のG25を,PC用のステアリングコントローラとして評価しているので,G27とG25で共通する部分については,G25のレビュー記事を参照してほしい。本稿では,G27で新しくなった部分や,肝心要の使い勝手を中心にチェックしてみようと思う。
なお,G25と同様,G27も国内ではPS3用とされているが,ロジクールのサポートページからはPC用ドライバソフトウェアも入手できるので,今回はPS3とPCの両方でテストする。PCでの動作は,国内だとサポート対象外となるので,この点はご注意を。
ぱっと見ではG25とほとんど変わらずも
使い勝手は地味ながら確実に改善
まずは,ハードウェアとソフトウェアを順に見てみることにしよう。
■ステアリングホイールユニット
ステアリングホイールユニットの基本仕様――本体サイズや取り付けクランプ,ステアリングの太さや直径,パドルシフトのデザインと,フォースフィードバックを発生させるデュアルモーターを内蔵する点――は,G27とG25で変わっていない。
ステアリングホイールユニットをハブとした接続形態を採用するのもG25から変わらず。残る2ユニットを接続するための端子が本体底面の作業しにくい位置にある点も変わっていない。これはなんとかしてほしかったのだが…… | |
ステアリングホイールユニットは2つのL字クランプで固定する方式。2つのクランプ間は約230mm離れているので,机側にそれだけのスペースが必要だ。また,固定できる厚さは約50mm以下となる |
誤操作を防止するためか,ボタン類はすべて背の低いデザインになっており,材質を含めて若干の安っぽさはあるものの,左右の親指を少し動かすだけでアクセスできる位置にあるため,押しやすさは良好。押した感触もカチッとししっかりしたものになっており,指を添えてステアリングを操作しているときに“誤爆”してしまうような心配はほぼ無用だ。
rpmインジケータを光らせたところ |
外観はG25からほとんど変わっていない |
外観上の変更点はこの程度だが,内部構造にはけっこう手が入っているようだ。おそらく最大のものは,ステアリングを回転させたときに発生する音が解消されていること。ステアリング部は,振動やテンションを再現するためにギアを介してモーターと接続されているのだが,G25ではギアが噛み合うことでゴリゴリという音が発生しており,そこが不満点として挙げられることが多かった。
しかしG27では,モーターとステアリングとを接続するギアを,平歯車から「はすば歯車」(※歯を傾斜させて噛み合い率を高め,振動や騒音を軽減させるもの)に変更。これにより,ステアリングはスムーズに回転するようになり,回転音も無音に近いレベルまで軽減されているのである。
もう1つ,パドルシフトの内部構造も変更されたようで,G25と比べると多少重くなった印象も受けるが,特別に使い勝手が良化/悪化したという感じはない。
■ペダルユニット
ブレーキペダル(写真手前から2つめ)とクラッチペダル(同一番奥)が,アクセルペダルよりも若干手前側にレイアウトされている |
ペダルの踏みしろは3本とも同じ |
実際には,ブレーキ&クラッチペダルのペダルカバー裏にある,スペーサーの高さが変更されただけなのだが,マニュアル車でブレーキを踏みながらシフトダウンするときに必要になる「ヒール・アンド・トゥ」が,G25と比べて格段にやりやすくなっている。
もちろん,スペーサーで高さを変えただけなので,ペダル自体の踏みしろ(=ストローク)はG25から変わらず。ペダルの認識範囲が狭まったりはしていない。
ペダルユニットの改善は決して大がかりでないが,ちょっとした改善で,使い勝手や操作性を大きく向上させているのが素晴らしい。欲をいえば,ペダルの角度調整機能があればなお良かったが,これは次世代品に期待といったところか。
■マニュアルシフトユニット
H型パターン6速シフトとシーケンシャルシフトとの機械的切り替え機構が排除されたためだろうが,G25でH型パターン6速シフト操作時にあったグニャグニャ感がなくなり,スムーズに「スコッ!」と決まるシフトフィールが得られるようになった印象。実際には「改善」というより「機能削減」なので,シーケンシャルシフトがなくなったのは相当なマイナスだが,H型パターン6速シフトのフィーリングが相当によくなっているので,これはこれでアリではなかろうか。
マニュアルシフトユニットを取り付けると手前にシフトレバーがくる配置になるため,シフトレバーが邪魔でボタン類の操作が非常にやりにくいのだ。このボタン配置はおそらく,コクピットを模したチェアに取り付けることを想定しているのだと思われる。実車と同様,マニュアルシフトユニットをプレイヤーの身体の脇に配置できるなら悪くないだろうが,一般的な机で,ステアリングホイールユニットの隣に置いたときは,いろいろと覚悟が必要だ。
■PC用ドライバソフトウェア
しかし,Logitech/ロジクール製のゲームパッドなどに対応した,日本語対応のPC用統合型ドライバソフトウェア「Logicoolゲーミングソフトウェア」は,ロジクールの日本語公式サイトに用意されたG27のサポートページから普通にダウンロードできるようになっており,当たり前のように対応している。「PCでの使用は公式にサポートはしないけれど,ドライバは用意しておくので,使いたい人は自己責任で使ってください」ということなのだろう。
詳細設定は[設定]ボタンから可能で,ペダルを別軸/同軸で利用するかや,ステアリング回転角度の認識角度の調整(最大900度:2.5回転),フォースフィードバックの調整,ステアリングを回して手を離したときにセンタリングさせるかなどが指定できる。
設定内容そのものはG25時代と変わっていないので,各項目の詳細はG25のレビュー記事を参照してほしい。ただ,ドライバソフトウェアとは別に用意される操作設定カスタマイズ用ソフト「Logicoolゲーミングソフトウェア」の最新版(Version 5.10.127)では,「ゲームによる設定の調整を許可する」という項目が追加されており,すべてのゲームアプリケーションで同じステアリング動作設定を共通して利用するのか,ゲームアプリケーションごとに異なる設定を適用するのかを選択できるようになっていた点は述べておきたいと思う。
詳細設定画面では,ペダルの同軸/別軸や,ステアリングの回転角度,フォースフィードバックの強さを設定でき,また,ゲーム側の設定に従うかどうかも選択できる |
Logicoolゲーミングソフトウェアをセットアップし,「ロジクール プロファイラ」を常駐させておけば,ゲームごとのボタン設定を,プロファイルとして自動で読み込み,切り替えてくれる |
グランツーリスモ5では「制限ありも快適」
PCタイトルはシムに近いほど相性がいい
本体を概観したところで,PS3とPCの両方で,アプリケーションごとに使い勝手を検証していこう。
■グランツーリスモ5(PS3)
「Logicool Driving Force GT」と異なり,G27は「グランツーリスモ5」の公式ライセンス品ではない。しかし,3ピース構成を採用したG27とグランツーリスモ5の相性は抜群。慣れてくれば「ステアリングとアクセル&ブレーキでコーナーのクリッピングポイントを舐めるようにトレースし,微妙なアクセルワークで立ち上がっていく」なんてドライブができるようになる。
また,クラッチを併用したH型パターン6速シフトも使えるので,実車のマニュアル車を運転するかのように半クラでスタートを切ったり,ブレーキング時にヒール・アンド・トゥを使ってシフトダウンしたりといったテクニックも思う存分に発揮できる。オートマやパドルシフトでプレイするよりも,H型パターン6速シフトでプレイしたほうがブレーキングを遅らせられるし,エンジンの“おいしいところ”を使った走りも楽しめるはずだ。
レースなどはゲームパッドのアナログスティックでも十分プレイできると思うが,G27の恩恵を最も受けられるのは,100分の1秒を刻むような走りが求められる「ライセンスモード」だろう。実際に筆者も挑戦してみたが,ゲームパッドで何度試してもゴールドを獲得できなかった項目で,G27を使ったらあっさりゴールドが取れたほどだ。
また,ステアリング操作を微調整しながら一定の切り角を長時間保たなければならないNASCARでは,G27とゲームパッドの違いを痛いほど味わえる。他のクルマに数cmというレベルで接近し,ドラフティング(空気抵抗を減らして速度を上げる)で隊列を作って走るNASCARにおいて,不安定な動きは即クラッシュにつながってしまうが,正直,ゲームパッドで微妙な制御は不可能。ここはぜひG27で遊びたい。
ただ,そんなG27だが,一点だけ要注意事項がある。それは,グランツーリスモ5の設定メニューから,動作設定を変更できない点だ。
おそらくこれは,G27が公式ライセンス品でないためだと思われるが,ともあれ,「設定できる」と言えそうなのは,スライダーに応じて効きが変わるフォースフィードバック程度であり,2011年1月中旬時点で,G27の利用時に,ステアリング切り角などの詳細設定は不可能。市販車だろうが競技車だろうがすべて同じステアリング切り角で走らなければならない。また,各ボタンへ自由に機能を割り当てることもできない。ボタンのなかには機能が割り当てられているものもあるようなのだが,どのボタンにどの機能が割り当てられているのかは分からないので,利用できないのと一緒だ。
実際,GT FORCE Proの設定を選ぶと,ステアリングホイールユニット上に配置されている6個のボタン中4個が[□△○×]ボタンに“決め撃ち”で割り当てられるので,使い勝手はだいぶ改善するのだが,「良質なドライビング感覚は提供してくれるが,カスタマイズは一切不可」という不思議な位置づけなのも確かだ。なんとか早く正式対応してくれることを期待したい。
■GTR: Evolution(PC)
SimBin Studios製のゲームエンジンは,十分すぎるほど“枯れて”いることもあって,クラッチを併用したH型パターン6速シフトは問題なく機能。路肩の縁石に乗ったときやリアのグリップを失ったときにも,きっちりとフォースフィードバックを味わえた。
また,ステアリングホイールユニット側に6個のボタンが用意されているため,ピットインリクエストやピットスピードリミッター,ヘッドライト,ワイパー,ブレーキ前後バランスなど,レース中にステアリングを握ったまま行いたい操作をきっちりこなせる。これは非常に便利だ。
さすがは枯れたエンジンと唸らされたのが,アクセルの踏み込みや,シフトチェンジ時のエンジン回転数変動に応じてrpmインジケータがきっちり動作したこと。古すぎてダメかなとも思っていただけに,個人的には嬉しい誤算だった。
■WRC: FIA World Rally Championship(PC)
「WRC: FIA World Rally Championship」。WRCを頂点としたカテゴリのラリーカーやワークスチーム,ドライバーなどがすべて実名で登場する。
本作はアーケード寄りのプレイ感覚ということもあって,筆者はいつもゲームパッドでプレイしていたのだが,G27を接続してみると,グラベルの振動,リアが流れ出してタイヤのグリップを失ったときに生じるGの抜け方など,大小さまざまな振動や反発がおそろしくリアルに再現されており,心底驚かされた。正直,それまでゲームパッドでプレイしていたことを後悔したほどで,デュアルモーターが再現する振動や反発とラリーカーの挙動がシンクロするのは,最高に楽しい。
なお,rpmインジケータは問題なく動作。ステアリング操作の忙しいラリースプリントでrpmインジケータを見る暇はないと思うが,たまにはrpmインジケータを眺めてみるのもアリだろう。
■Need for Speed Hot Pursuit(PC)
「ニード・フォー・スピード ホット・パースート」。チューニングされた市販車や高級スポーツカーを駆ってレースをしたり,パトカーとのカーチェイスを演じたりできる。
本作は他車へ故意に“体当たり”するなどの激しい走りが必要になるが,そのとき,フォースフィードバックの振動を体感可能。ただ,かなりのスピードで迫ってくる対向車線の一般車を瞬時に交わさなければならないときなどは,ステアリングだとふらついてしまうことも多く,ゲームパッドでプレイしたほうが安定して操作できる。ここまでアクションゲーム寄りだと,リアルすぎるステアリングコントローラがむしろ操作性にマイナスの影響をもたらすうようだ。
ちなみにrpmインジケータは何も点灯しなかった。
今なお入手性は低いが
本気でドライブシムに取り組むならアリ
しかも,G25が登場したときと決定的に異なっているのは,一部のマニアではなく,一般のゲーマーがステアリングコントローラを必要とする,いわばキラータイトルが登場していることだ。やはりグランツーリスモ5の存在は大きい。シーケンシャルシフトの選択肢が用意されていないことと,現時点では細かな設定を行えないことはマイナス要因だが,それでも,本気でグランツーリスモと相対したい場合,G27は,最高のパートナーの1つだと断言できる。
実勢価格が3万円台後半(※2011年1月19日現在)で,しかも発売から2か月近くが経過して今なお品不足気味というあたり,万人向けとはとうてい言えないが,今後ドライブシムやレースシムに本気で挑戦しようと思っているならば,G27を入手しても損はしないだろう。
ただし,G25をすでに持っている人が買い換えるほどの価値があるかというと,正直,難しいかもしれない。
序盤で説明したとおり,G27は新設計というよりもG25のリファイン版といったところなので,「ステアリング回転時のギア音が許せない」「ペダル間を少しでも縮めたり高さを調節したりしたい」「もっとしっかりとした感触のH型パターン6速シフトを手に入れたい」という場合には検討材料になるだろう。しかし,買い換えると,シーケンシャルシフト対応のマニュアルシフトユニットを失うのも確かで,投資に見合った効果が得られるかというと,やや疑問も残るところだ。
G27 Racing Wheel製品情報ページ
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Logitech G/Logicool G
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