インタビュー
「仙魔道」最新情報も,ガマニアCOO浅井氏に聞く2009年同社の指針,そしてオンラインゲーム業界の行方
そんな同社代表取締役COO浅井清氏に,2008年を振り返った同社の状況と2009年以降の展望などを聞いてみた。
なお,ガマニアの2009年の新作第1弾として登場するのは「仙魔道」だ。4Gamerでも何度か軽く紹介したことはあるのだが,ついに日本上陸となる。インタビューと同時に日本語版の動作画面をも見せてもらったので,仙魔道のレポートも軽く加えておきたい。
よろしくお願いします。さっそくですが,昨年(2008年)はガマニアにとってどういう年でしたでしょうか。
浅井氏:
おかげさまで2008年はガマニアジャパンにとっては非常にいい年となりました。夏に発表したルーセントハートがユーザーのご支持をいただいて,いいスタートを切ることができました。
ガマニアでは,ブライトシャドウ以降,自社開発のコンテンツを中心に展開していく方針に切り換えました。ブライトシャドウは,一昨年のスタート時にはちょっとつまずいたものの,2008年春のアップデートから盛り返して,とくに昨年11月に導入したカードシステムがかなり好評をいただいています。
そのアップデート以前は,モンスターを倒してカードが出てきても,一部の装備と交換するとか,コレクションして楽しむとかくらいで若干実用性に薄い部分がありました。それが,現在ではカードになったモンスターをペットとして召喚したり,カードで強化魔法をかけたりと,ほかのゲームとは違った楽しみ方が出せるようになりました。これでかなりゲームとしていい形になってきたかなと。ビジネス的にもよい形で推移しています。今後もこういった特徴的な部分は広げていきたいですね。
4Gamer:
そのほかの既存のタイトルについてはどうですか?
浅井氏:
「エターナルカオス NEO」では,過去最大規模となるアップデートが行われました。ただ,あまりに大規模だっただけに不具合も発生してしまいプレイヤーの皆さんにご迷惑をかけてしまいました。
とはいえ,アップデート内容そのものは好評で,一度やめていたのに戻ってくれた人も結構いたようです。
巨商伝,飛天オンライン,ホーリービーストに関しては安定した状態といったところでしょうか。
4Gamer:
おおむね好調ということですね。
浅井氏:
そうですね。3,4年くらい前から準備していた,グループ内で開発したものを日本向けにカスタマイズしてサービスするという体制がようやく軌道に乗ってきました。
問題が起きつつも高い評価を得たルーセントハート
ルーセントハートについては,当初チャンネルに入れないとか,いろいろ問題が発生していましたが,あれは台湾でも起きていたものなのでしょうか。
浅井氏:
ルーセントハートに関しては,予想以上に人が集まってしまったことによるトラブルがありました。サービス当初にあった,チャンネルに入れないという問題はサーバーの強化などで少しずつ収まっていったのですが,今度はサーバーが不安定ないしラグがひどいといった状況が発生していました。これには台湾でも確認されているものとされていないものがあって,ユーザーの皆さんからいただく情報をもとに段階を追って調査と対応を続けているところです。
4Gamer:
もう一つ,Botの問題もかなり出ていたようですが。
浅井氏:
Botについてもユーザーさんからお叱りをいただいていた部分なんですが,昨年末に,取り締まり機能をつけたことでかなり沈静化してきました。これは,ほかのプレイヤーからの通報が一定数以上になりますと,対象のプレイヤーのところにクイズのダイアログが開くんです。解答を3回間違えるとJailに入れられるようになっています。これの導入以降はBotの数がすごく減りましたね。
実際には,それ以前でもGMの巡回などでBotの取り締まりは強化していたのですが,なかなか追いつかなかったというのが実情です。現状ではかなり落ち着いてきていますので,ゲームの進行に支障が出ることはほとんどなくなったかと思います。
4Gamer:
ルーセントハートがこれだけ人気になったポイントはなんだったのでしょうか。
浅井氏:
キャラクターの可愛らしさやエモーション,システムでは「ほしとも」ができるキューピッドシステムが好評をいただいていますね。ただ,こういってはなんですが,ほかのゲームでも結構似た機能を持ったものはありますので,単純にシステムの有無といった部分では説明がつかないんですよね。
ルーセントハートの場合,キューピッドシステムは,ただプレイヤー同士をつなぐだけの機能以外に,心理テストなどでプレイヤー同士がより理解しあえるような仕組みが用意されています。こういった,全体にかなり丁寧に作ってある部分が評価されているのかと思います。こういった部分をさらに伸ばし,遊びやすく,使いやすくしていくためのバージョンアップは現在準備しているところです。
4Gamer:
今後の予定などはどうでしょうか?
2月2日に結婚システムなどが導入されます。好評いただいているペット関係でも,戦闘に参加できるものが新たに登場します。もちろん,キャラクターの魅力で支持されているところも大きいですので,そちらにも力を入れていきます。日本向けのアバターアイテムなどは随時準備しているところです。
それと,プレイヤーによって好き嫌いがありそうですが,PvP系のシステムが加わってきます。ゲームの楽しみ方を広げるものとして考えていただければと思っています。
ルーセントハートは,去年展開したオンラインゲームの中では,最もユーザーの支持を得られた作品の一つではないかと思いますので,今後ともメジャーなタイトルとして育てていきたいと思います。
善悪をテーマとした東洋風MMORPG「仙魔道」
ガマニアで今年以降にサービスする新作情報はありますか。台湾のほうではかなりたくさんのタイトルを制作していると聞いているのですが。
浅井氏:
詳しいことはまだ申し上げられないのですが,2009年,2010年くらいまではすでに予定が固まっている状況ですね。
2009年のサービスタイトル第1弾となる「仙魔道」ですが,春くらいの立ち上げを目指しています。
4Gamer:
台湾ではすでにサービスしていますよね。
浅井氏:
そうですね。台湾ではもうサービスして1年になります。
4Gamer:
かなり前から出る出るといわれていたタイトルなのですが,遅らせた理由はなんでしょうか。
浅井氏:
ブライトシャドウやルーセントハートもそうなのですが,日本でサービスするためには,安定していることと,ある程度コンテンツのボリュームが必要です。アジアのほかの地域に比べると,日本の場合はユーザーさんの目が厳しいかなと。
当初は一昨年の秋くらいにサービスする予定で動いていたのですが……。
4Gamer:
そういう話もありましたね。
浅井氏:
その時点の内容では,日本でサービスするには十分ではないと判断し,全体のブラッシュアップとある程度のバランス調整を行っていました。
4Gamer:
どういった部分を変更してきたのでしょうか。
具体的には,グラフィックス部分のクオリティを上げたり,システム的な部分でカスタマイズ性を強化したりですね。日本人ってキャラクターのカスタマイズに凝る人が多いので,スキル選択によるキャラクター能力の調整範囲はかなり広くしてあります。
また,いま日本の市場では,いくらゲームのボリュームがあっても,それをポンと出して遊んでくださいというのはなかなか難しいと思うんですよ。そこで,初めて遊んだプレイヤーが戸惑わないように,チュートリアル的な部分やゲームのバランスなどもブラッシュアップしました。そういうことをいろいろやって,今回ようやく日本でサービスしても大丈夫になったかなと。
4Gamer:
仙魔道は,ガマニアが最近出していたタイトルとはかなり毛色が違いますよね。
浅井氏:
飛天オンライン以降,可愛い系のゲームが続いていましたが,とくにそういう路線で固めようとしたわけでもないんです。うちはもともとエターナルカオスやエバークエストなどもやっていましたし。ゲームとして面白いもの,日本のプレイヤーに受け入れられるものであれば,可愛い系もリアル系もどちらもアリだと思っています。今回は,たまたま八頭身のキャラクターで世界観も違ったものになったというところです。
4Gamer:
オリエンタル系ですね。
そうですね。武侠系のゲームも増えてきているのですが,この作品については「武侠」という言い方はしていないんですよ。アジアンファンタジーということで,中国だけでなくアジア各地から持ってきたり,アジアに共通するような世界観を入れています。ローカライズするうえでも,できるだけ武侠的な色は消していっています。
4Gamer:
仙魔道のアピールポイントはどこでしょうか。
浅井氏:
仙と魔という二極化した世界観をキャラクターの設定やストーリーにも反映しています。このあたりは日本側でかなり練り込んでみました。それとキャラクターの育成に伴ったカスタマイズですね。とくにスキル周りについてはかなりやり込み要素のあるものとなっています。また,仙と魔という二極化した世界観をキャラクターの設定やストーリーに反映しており,このあたりは日本側でかなり練り込んでみました。
4Gamer:
基本的な部分から確認したいのですが,仙と魔はパラメータ次第でいったりきたりできるものだと以前聞いていたのですが,そのあたりは変わっていませんか。
浅井氏:
仙族と魔族のどちらにするかという選択自体がパラメータに影響されるわけではありませんが,両陣営を行き来できるのは変わっていません。
4Gamer:
となると,仙と魔で人数比が偏っちゃいませんか?
浅井氏:
偏ることもあるでしょうね。ただ,仙と魔というのは,キャラクターや世界観の根底に流れるもので,偏りが出ても大きな問題にはなりません。
4Gamer:
仙と魔でドッカンとぶつかる大規模戦闘があるんではないんですか?
浅井氏:
現状では6対6で戦う戦場システムがあります。これに各陣営のモンスターも参戦するので10対10くらいの規模感のものになっています。導入時期は未定ですが,さらに大規模な戦闘についても現在協議しつつ開発を進めているところです。
4Gamer:
なるほど。最初は仙と魔の対立による対人戦中心のゲームになると聞いていたのですが,最初に聞いていた話からかなり方向転換が行われているようですね。割と普通のMMORPG路線になっていると考えていいでしょうか。
浅井氏:
そうですね。仙と魔,善と悪といった思想はゲームのバックグラウンドのほうに生かされていますが,現状ではそれほど対人戦中心というわけでもありません。当初は,PvPやGvGに特化しようと考えたこともありました。しかし,それよりは基本部分をしっかりブラッシュアップしていこうということで,時間をかけて調整してきました。
実は,かなり以前からローカライズも順次進めていて,日本でリリースしようと思えばいつでもできる状態だったのですが,じっくり作業を進めていました。
ちょっとだけ見てきた「仙魔道」
仙魔道はすでに日本のサーバーで動いていますので,実際に動いているところを少しお見せしましょう。
4Gamer:
(画面を見て)浮かんでいる人が多いようですが?
浅井氏:
こちらは仙族の集落で,仙族は基本的に浮いています。
4Gamer:
飾りが多くて雰囲気の違う人も混じってますね。
浅井氏:
「仙魔化」したキャラクターですね。仙魔化するとグラフィックが大きく変わって,能力も大幅に向上します。
4Gamer:
これは一定時間持続ですか?
右にゲージがあって,これが切れるまで持続します。こちらのスキルウィンドウには,個人天賦以外に仙天賦と魔天賦,つまり一般スキルと仙族のスキル,魔族のスキルの3種類のタブがあります。この仙天賦,魔天賦というのが先ほどの仙魔化に大きく影響してきます。例えば,仙魔化の時間を延長できる天賦であるとか,いろいろ関連しています。
全体のスキル数を見てもらうと,キャラクターの能力のカスタマイズの余地が非常に大きいことが分かると思います。
4Gamer:
仙族のスキルと魔族のスキルは同時に取れるんですか? 仙族なのに,魔族のスキルを使えるとか?
浅井氏:
はい。ただし,仙と魔でそれぞれスキルポイントがあり,善のレベルが上がると仙天賦のポイントを獲得していき,悪のレベルが上がると魔天賦のポイントが増えるようになっています。
スキルはここで見えるもの以外に,転職などをしていくと,スキルもツリー状に広がっていきます。
このあたりのキャラクターのカスタマイズ範囲が広い点は日本のプレイヤーに受け入れられやすい部分かなと思っています。
4Gamer:
「カスタマイズ重視」というのはスキルを中心にしたもののことですか?
浅井氏:
アイテムなどの強化などもそうですね。精錬などのほかに,刻名システムというものがあって,通常のアイテム名の前後に一定の文字をつけることで,特殊な能力をつけることが可能になります。
では,ちょっとダンジョンで戦闘を見てもらいましょう。
(ダンジョン着)
現在は仙族側ですので,魔族側の塔に攻め込んでいるところですね。このダンジョンで出てくるのはNPCだけですが。
Mobがうじゃうじゃといますね。
浅井氏:
戦闘は,スキルがどんどん出せて,感覚的にはコンボを出してるっぽい操作感になっています。戦闘スキルのエフェクトなどはリリースを遅らせたことでかなりブラッシュアップできた部分ですね。戦闘のテンポなどを含めて,かなり調整できているほうかなと思っています。
4Gamer:
なんか足元にニワトリがいますが。
浅井氏:
それはペットです。騎乗もできますよ。
4Gamer:
こんな小さいのに乗れるんですか?
乗るとデカくなるんですよ。普段は小さくて可愛いのがうろうろしているのですが,騎乗すると大きくなって結構リアルな感じのグラフィックスに変わります。
ちなみに,こっちでコロコロしている大根は,召喚ペットですね。騎乗はできませんが,プレイヤーと一緒に戦ってくれます。
4Gamer:
ゲーム自体の難易度はどんなものでしょうか。あるいはターゲットユーザー層はどのへんでしょうか。
浅井氏:
カスタマイズややり込み要素がウリになっているため,いろんなゲームをやってきた結構コアな人にもやってみてもらいたいところですね。
今後出てくる新作は?
4Gamer:
仙魔道が春だとすると,その次はどうでしょうか。
浅井氏:
夏くらいに「MMOではないもの」を1本予定しています。
4Gamer:
MMOではないとすると,タイプとかジャンルはなんでしょうか。
MOタイプのRPGですね。MMO以外というのは,業界を見るとMMO一辺倒というか,一時「これからはカジュアルゲームだ」みたいな風潮で流行ったこともあったのですが,カジュアルゲームについては,成功しているものはかなり限定されていますよね。
市場がMMORPGタイプに傾倒している,それを打開したいなと。MMORPGは,ユーザー側にとっても遊びやすいという面はあると思いますし,パブリッシャーにもビジネスしやすいという側面もあるのですが,もっと違う遊び方ができるものを提案していかないとオンラインゲーム市場も広がっていきませんので。
4Gamer:
ちなみに「MMOじゃないもの」は自社開発のものですか?
浅井氏:
いえ,これは自社製ではありません。2009年中にリリースできるか分からないのですが,自社で作っているもタイトルもかなりあります。ただ,そのすべてを日本でサービスするわけでもありません。そのなかで日本市場をターゲットにしているもののみを持ってくる予定です。
4Gamer:
2009年は仙魔道と「MMOじゃないもの」以外に1,2本といったところでしょうか。
浅井氏:
そうですね。ただ,開発中のタイトルでコンテンツのクオリティが十分なものになるかというのと,既存タイトルとの兼ね合いになりますが,サービスとしてのクオリティを弊社側として確保できるかという問題もありますので,本数についてはなんともいえないところがありますね。
新規タイトルについては,本当は話したいことが山ほどあるのですが,それはまた別の機会にまとめてお話ししましょう。「ガマニアってそんなこともやるの?」って驚かれるようなものもありますよ。ちなみに,以前少しお話ししたと思いますが,日本のIPを使ったコンテンツについても開発が進んでいます。
4Gamer:
期待しています。
ガマニアさんのサービスタイトルを見る限り,FPSやスポーツ系が抜けてるなという印象があるのですが。
浅井氏:
そうですね。FPS……FPSを検討していたこともあったのですが……。
4Gamer:
FPSではありませんが「Art of War」とかありましたよね。
浅井氏:
よくご存じですね(笑)。Art of Warは,たぶん日本ではサービスしないと思います。
FPSについては,日本の場合,SPECIALFORCEやWarRockがカジュアルなFPSの市場を作り上げたわけですが,ほかのジャンルでもそういうものがもっと出てこないと,なかなかオンラインゲームの市場も広がらないかなと。
スポーツ……もないですね。ダンスゲームならやっていたんですが(笑)。音楽ゲームも日本では難しいものがありますね。パブリッシャーとしては新しいジャンルをどんどん開拓していかなくてはいけないのですが。
4Gamer:
韓国あたりでは,なんでもかんでも「とりあえずオンラインにしてみた」って感じのものも多いですけど。
浅井氏:
ただ,コンシューマゲームであったものを単にオンライン化してもあまりいいものはできないんですよね。ゲーム自体の完成度でいうと,どうしても普通のコンシューマゲームのほうが高くなります。レースなのかアクションなのか,それをオンラインゲームにしたとしても,オンラインゲームとしての面白さを提示しないと。
もちろん,仮に面白いコンテンツができたとしてもビジネス的に立ち行かないとサービスを続けられませんから,そちらも問題になります。
4Gamer:
そういう意味では,MMORPGはよくあんなにたくさん成り立っているなという気もするのですが,MMORPGのほうがビジネス的に簡単なのでしょうか。
浅井氏:
オンラインゲームの場合,重要なのはサービス,それもコミュニティ関係のサービスですよね。これには,コミュニティをいかに形成することができるかが重要になってきます。そういったときに,MMORPGってとても分かりやすいんですよね。強い敵がいて,みんなで倒しに行く。すると必然的にコミュニケーションも必要になりますし,コミュニティができていきます。
それに対してカジュアルゲームの場合は,「なんで一緒に遊ばなければならないんだ?」という理由付けが難しいわけです。MMOのほうがそういう仕組みを作りやすい分,ビジネスにもつなげやすいのはありますね。
ゲームはサービスクオリティの時代に
4Gamer:
なるほど。では,今年から来年にかけてのオンラインゲーム業界はどうなっていくと思われますか。
浅井氏:
オンラインゲームならなんでもいいからといった感じで,雨後の筍のように出ていた時期がありましたよね。それが徐々に淘汰されつつあります。コンテンツのクオリティもそうですが,サービスのクオリティが問われてきています。
4Gamer:
最近は,運営具合を見る人も多くなってきてますね。
浅井氏:
これらで一定のレベル以上のものを提供できないと,日本ではユーザーに受け入れられなくなってきています。そして,そういうことがしっかりできる会社は絞られてきている感じですね。コンテンツのレベルとサービスのクオリティを保てないコンテンツは今後も淘汰が進むんだろうなと。
ユーザーからすれば,より質の高いコンテンツをより安心に楽しめる環境が整ってくるということですので,悪いことではありません。オンラインゲームのマーケット自体はまだ広がっていくと思いますね。
4Gamer:
そうですね。淘汰の時代になっていると思います。実は,去年くらいで,もう少しサービスタイトルも減ってくるのかなと思っていたのですが,それでもタイトル数自体は結構増えてはいるんですよね。
タイトルは増えてはいますが,タイトル数の増加自体は頭打ちになっていてますね。とくに新規の参入は鈍くなってます。
ある意味,オンラインゲームというエンタテインメント自体が次のフェイズに移りつつあります。一時は目新しければなんでもいいといった感じもあって,比較的簡単にサービスでき,ユーザーが集まればそこそこ売り上げが出ていました。しかし,そのフェイズはすでに終わっていて,これからはユーザーのニーズにしっかり応えられるコンテンツをどれだけ準備できるかが勝負になります。
また,いままでと同じMMORPGだけでは皆さん飽きてきていますので,どれだけ新しい楽しみ方を提供できるかということも重要でしょう。
逆に,ユーザーにとってみれば,オンラインゲームはこれから2年3年と面白くなっていくんじゃないでしょうかね。というか,そうしていきたいですよね。
4Gamer:
世間的には「100年に一度の不況」といったものも吹き荒れているようですが,業界的には影響はありますか?
浅井氏:
ゲーム全般そうだと思うのですが,昔から不況には強い業種だといわれていましたよね。安価な娯楽ですので。お金がないときには,旅行やショッピングに行くよりは家でゲームをやっていたほうが安上がりで済むでしょう。
4Gamer:
そういった部分,あまりお金がかからないというのはもっと強調されてもいいように思うのですが。
浅井氏:
そうですね。まずは,より多くの人に楽しんでみてもらいたいというのはありますね。もちろん,課金をしたほうがより楽しめるのは確かなのですが,無料の範囲でも十分遊べるゲームがほとんどですし。
4Gamer:
まあ,ちょっと課金すると全然違ったりするんですけどね。
浅井氏:
そのほうが楽しめますね。ただ,一定以上高額に課金して遊んでいただくというのは,私はどうかと思うんです。ある程度の範囲で長く楽しんでもらえるのがいちばんですね。
4Gamer:
業界的には,レアアイテムをウリにしたガチャなども結構見受けられますが。
浅井氏:
ガチャを入れることで売り上げを立てやすいという側面もあると思うんですけど,売り上げを作るためにガチャを入れるというのは長く続かないと思うんですよ。レアなアイテムを手に入れるために何百回もガチャを回さなければならないというのではなくて,一定の範囲内で楽しめるようにしないと。
4Gamer:
ガマニアでもガチャはかなり取り入れてますよね。
浅井氏:
最初にガチャを導入したのは,うちかネクソンさんのどちらかで,たぶんうちじゃないかと思っているんですが(編注:ネクソンのほうが先のようだ),そもそもそういう意図で企画したものではないんですよ。アイテム購入でもなにか楽しめる要素を入れられないかと考えて,巨商伝の福袋とエターナルカオスのハンターチャンスを導入しました。
なにが入ってるか分からないけど,開けてみたら意外とお得なものが詰まっているというのがいいのであって,レアアイテムを入れるのはともかく,やりすぎるのはどうかなと。ユーザーさんが回数をやってくれるからではなくて,ユーザーが楽しめるようにしていかないと,続かないですよね。まあ,こういってても「ガマニアもそうじゃないか」といわれるかもしれないんですが。
不況は追い風? 今後はセキュリティなどもいっそう重要に
4Gamer:
経営的な視点では,不況の影響はどうでしょう?
浅井氏:
不況になって,資金調達とか新規に上場を考えているところなどがあったら確実に影響は出るでしょうね。短期的に大きな冒険がしにくいという点では経営的に影響は出ますが,不況についてはオンラインゲームよりはコンシューマゲームのほうに影響があるんじゃないかと思っています。
こういう時期ですので,安価に遊べる娯楽ということで,オンラインゲームをもっと知ってほしいところですね。
4Gamer:
日本のオンラインゲーム業界で,今後の課題にはどんなものがあると思われますか。
浅井氏:
私,オンラインゲーム協会の理事もやっておりまして,最近,不正アクセスであるとか情報流出の問題が深刻になっているんですよ。オンラインゲーム関係のサイトではないんですが,情報の流出,とくにクレジットカードの情報流出が多くなっています。ここ1,2年で確実に増えている感じです。
これにオンラインゲームもかなり影響を受けているんです。というのも,不正課金の対象としてオンラインゲームが狙われやすく,結果的にRMTなどにもつながっています。
また,流出したカード情報などがオンラインゲームで使われると,「オンラインゲーム=悪」といった図式ができあがってくるのが怖いですよね。不正課金に対する対策とか,SQLインジェクション対策など課題は多いです。
4Gamer:
SQLインジェクション対策などはネットビジネスの基本では。
浅井氏:
いえ,まだまだ浸透していませんね。
オンラインゲームの会社では,データベースで扱っているデータの量にしろ内容にしろクリティカルなものが多いため,ハッキングされることによってサービスができなくなる危険もあります。そのせいもあってか,オンラインゲーム業界でのハッキング対策は,まだ進んでいるほうなのかなという感じです。
しかし,オンラインゲーム業者からは,まだクレジットカード情報が漏れたことはないと思うのですが,ほかのところからクレジットカード番号が漏れて,それがオンラインゲームに使われるといったことが多発していますので,ゲーム業界だけでなく,インターネット関連業界全体で対応しなければならない問題になっています。
4Gamer:
なるほど。
浅井氏:
オンラインゲームの運営も,そういった面を含めて,よりユーザーさんに安心して遊んでいただけるような環境を構築するように,業界として取り組んでいかなければならない時期にきているのかなと感じています。セキュリティや不正課金ユーザーなどの問題は,なるべく先手を打ってユーザーのリスクを減らすようにしていきたいですね。
そういうものをクリアしてはじめてオンラインゲームが日本でメジャーな遊びとして認められることになるんじゃないでしょうか。それにはこれから2,3年が重要な時期だと思っています。
ゲームのサービスもそうなんですが,そういったものにもガマニアとして全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
中堅ゲームプロバイダとして知られるガマニアデジタルエンターテインメントは,昨年のルーセントハートで存在感をやや上げてきたといったところだろうか。
同社の母体となるGamaniaは,台湾では最大のゲーム運営会社だ。リネージュ/II,メイプルストーリー,GetAmped,マビノギ,Kart Rider,パンヤなど,サービスラインアップを見ても呆れるくらいキラータイトルがゴロゴロ並んでいる。そういった余力のある会社が自社制作タイトルに力を入れてきたのだから,今後の展開には目が離せない。
自社制作MMORPGの国内第1弾となったブライトシャドウでは,第1作としては意外なほどちゃんとできていることに驚かされたものの,コンテンツ不足が災いして出だしでつまずいていた。そういった反省を踏まえた第2弾のルーセントハートは,人が集まりすぎたことによる障害が尾を引いたものの,概ね堅実な展開を見せている。
そして,第3弾となる仙魔道は,これまでのタイトルとはガラっと雰囲気を変えたMMORPGとなる。紆余曲折を繰り返してきたタイトルでもあり,最終的に日本に導入するバージョンはどのような仕上がりになっているのか興味の尽きないところだ。
ルーセントハートで最も支持されたであろう「可愛い系」から外れたタイトルでもあり,これで外さないようであれば,ガマニアのローカライズ手腕を改めて評価してもよいだろう。台湾ではかなりの勢いで新作ゲームが開発されていると聞いており,今後それらがどのように日本市場にあわせた展開が行われるかなどを占ううえでも重要な一作といえるかもしれない。
さて,今回のインタビューでは,再三にわたって「サービスのクオリティ」という単語が出てきた。はっきりいって,それほど大差ないタイトルが乱立する昨今では,運営に目を向けるプレイヤーも増えてきている。
サービスクオリティは,今後のオンラインゲーム業界で指標となるものの一つとなることは間違いないと思うが,運営コストを下げつつ,サービスクオリティを上げることは簡単なことではない。各社とも苦戦している部分でもある。また,ユーザーの求めるサービスクオリティというのも,実際問題として際限がない。ある程度割り切る必要があるのはいたしかたないが,妥協点についての認識が運営側とユーザー側でずれている場合も少なくない。まず,その部分についてのコンセンサスを築くことが業界的な最重要課題といえるかもしれない。
とりあえず,サービスクオリティが生き残りの道であると運営側が認識しているというのは,健全な状況であろう。ガマニアに限らず,2009年以降のオンラインゲーム業界の課題も見えてきたインタビューだったが,皆さんの評価はいかがだっただろうか。
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