企画記事
RocWorks Koreaで,横浜デジタルアーツ専門学校生が「homage」への企画をプレゼン
簡単に背景を説明しよう。間もなく2次クローズドβテストが始まる同社の新作MMORPG,「homage」に実装したいコンテンツのアイデアやモンスターのデザイン案などを,同校のゲーム科/グラフィック科の学生を中心に募集し,厳しい校内コンペで選ばれた代表3人の作品を,実際に開発に携わっているプロの前で,生徒自身にプレゼンしてもらうという企画なのだ。
ゲーム制作会社への就職を希望する学生にとっては,授業だけでは学ぶことができない実践的な内容であり,自分の作品を開発現場のプロに直接批評してもらえるまたとないチャンス。一方,ロックワークスにとっても,学生ならではの柔軟な視点で新たな発想が得られるというわけだ。
今回,4Gamerもこの三日間のツアーに同行し,homageが開発されているRocWorks Koreaとはどんな会社なのか,学生たちの作品,企画に対して一体どんなアドバイスが与えられるのかを取材してきた。
なお,12月18日の2次クローズドβテストが予定されている本作が,2008年8月に実施されたクローズドβテストから,どれだけ進歩したのかをレポートした記事を「こちら」に掲載しているので,「homage」に興味がある人は併せて確認してみよう。
全行程三日間という本ツアー,初日は到着後に韓国のPC房,つまりネットカフェの訪問が予定されていたのだが,“強い向かい風のため”というウソのようなホントの理由で,ソウル金浦国際空港到着が大幅に遅れてしまい断念。翌日のプレゼンテーションに備え,早々にホテルへ引き上げることになってしまった。もう準備万端ですか? と3人に尋ねてみると,「これから3人で部屋に集まって,発表の練習をもう一度します」「準備期間に少し余裕があったので,人前でしゃべる練習はしてきました」と,ちょっと緊張した表情ながら,明るく答えてくれた。
プロならではの手厳しい意見も飛んだ,プレゼンテーション本番
トップバッターはゲーム科の東屋さとみさん。彼女は本来ゲームプログラミングが専門なのだが,今回は3種の新モンスターとゲーム内コンテンツの企画,それにあわせたキャラクターデザインを同時に発表した。
東屋さん考案のモンスターには,行動パターンや攻撃方法にそれぞれユニークな特徴があるだけでなく,ドロップアイテムやフィールド上での配置といった,かなり細かな所までキチンと設定されていた。ハイエナをモチーフにデザインしたという「アードウルフ」などは,既存のMMORPGに登場してもまったく違和感のないクオリティだ。
もう一つはゲーム内イベントに関するプレゼンテーションで,各種神話と関係したhomageにふわさしい,さまざまな神獣が登場する二つの企画が発表された。最初の「神獣杯」は,リアルの競馬と同様に,プレイヤーが1位の神獣を予想してゲーム内通貨を賭けるギャンブルだ。続く「神獣ポイントラリー」はプレイヤー自らが神獣に騎乗して,一定のポイントを回ってゴールを目指すレースだが,神獣に乗るためには「homageポイント」が要求されるとしている。
このhomageポイントというのは,三番手にプレゼンを行う梶本さんとの連動企画で,ほかのプレイヤーから敬意の印として与えられる,あるいはイベントでしか獲得できない特殊ポイントなのだ。神獣の背中に騎乗するからにはそれなりの資格が必要,という設定をhomageのゲームに沿った形で提案しているわけだ。
そんな東屋さんのプレゼンに対する開発スタッフの反応はというと,まず「モンスターのデザインも魅力的で,想像していたよりもクオリティが高く,細かい設定まで考えてあるのは興味深い」と述べたうえで,「個々のモンスターがどんな動きをするのか,攻撃のモーションから倒したときの死に方まで,もっともっと細かく分かるようにする必要がある。この資料だけでは一つのモンスターに対して,動きのない1枚の絵しかないため,ゲーム内に実装したときのイメージが浮かびにくい。新モンスターを企画するのであれば,綺麗にカラーリングした完成形ではなく,ラフ画でよいから正面,左右,背後,攻撃モーションなど,何枚もデザインを見せることが大切」「イベント企画も面白い内容に仕上がっていると思う。ただ,四つの種族が二つの勢力に分かれて戦うというhomageの世界観と,同じ場所でレースを楽しむという相反するものは実装しにくい」という,のっけから資料の作り方にも言及した,なかなか厳しい意見が出ていた。
もちろん批評するだけではなく,キャラクター担当からは「一つのモンスターを作る時には,ゲーム内のどのエリアに住んでいて,どんな物を食べているといったバックストーリー,ゲームプレイには反映されないようなことも,常に自分の頭の中で考えると良いでしょう」というアドバイスが与えられていた。
東洋神話がベースの,凛々しいタオ族の男女には露出控えめの鎧を,ギリシャ神話モチーフのグラキア族には,軽装備で魔力を高めるアクセサリを身につけさせるデザインなど,homageの基本設定を踏まえたうえでのオリジナル衣装を提案。布の素材にまで触れるなど,こちらも東屋さんに劣らず細かな設定が盛り込まれていた。
モンスターについても,ダークなhomageの世界観に合わせたものから,「見た目が恐ろしかったり,サイズの大きいモンスターがゲームに多いため,違いを出そうと小さくて可愛いものをデザインした」というコンセプトで,おたまじゃくしのような形をした愛らしいオリジナルモンスター,「おたま」まで幅広いバリエーションが用意されていた。
そんな久保田さんの自信作と思われるプレゼンテーションは,RocWorks KOREAのメンバーからも,「非常に高いレベルだ」と評価されていた。ただし,デザイン担当者からは,モンスターデザインを考えるときは,同じ種類だけれどもレベルや出現地域が違うなど,さまざまなバリエーションを一緒にデザインすること。4種族それぞれの衣装デザインも素晴らしいのだが,この装備を実装するとなったときに,どこでパーツが分かれるのか,といったことまで意識しておけば,より良いものとなるだろうとのこと。
さらに,服装の素材について触れたのは良い点なので,同じようにアクセサリであれば素材が金なのか銀なのかまで伝えなければ,自分がイメージしたとおりに3D化してもらうことは難しいという意見が出た。
また,同じ種族では男女の差はあっても,だいたいの体型の特徴などは決まっているので,それに沿った一貫性のあるデザインが必要であるといった感じで,アドバイスはかなり細かく丁寧なものだった。
東屋さんの企画と連動していた「homageポイント」は,プレイヤー同士の敬意とコミュニケーションをコンセプトに,基本的にはほかのプレイヤーからしか貰えないものだ。ポイントを貯めると特殊装備を使用できたり,最高神になる際に要求されたりなどの使われ方が想定されていた。
また,各種族が異なる神話をベースにしていることに着目して,地域によっては移動速度や行動力に違いがでる「GGAシステム」,種族専用の「神殿」を協力して作り上げ,そのグレードがRvRや販売アイテムにまで影響する神殿システム,通常はPK可能な地域を一定時間だけコミュニケーションの場として全種族に解放する「戦士たちの休息」など,MMORPGがの持つ難しい点を理解したうえでのプレゼンテーションであった。
開発担当者からは,「非常に面白い企画だと思う。ただ,これは我々開発者にとっても悩みだが,一般的なプレイヤーにとってゲームシステムというのは目で見て理解するものなのです。ある地域に入るとなぜ突然キャラクターの移動速度が遅くなってしまうのかを,インタフェースなどを利用して一目で分かるということまで考えてあれば素晴らしい企画になります。同時に20代のプレイヤーならば理解できても,30代以上のプレイヤーは,システムが複雑すぎると理解する前に諦めてしまうかもしれない。そのバランス取りを考える必要があります」との意見が出た。
またhomageポイントについても上級プレイヤーと初心者をつなげるコミュニケーションとして,「もっと練りこんだ企画を梶本さんと二人でぜひ考えてみたい」という,嬉しいコメントがもらえた。
さて,このプレゼンテーション。プロの目から見れば「まだまだ」と思われるものかもしれないが,準備期間は実質2週間程度と短く,しかもhomageは正式サービス前なので,いつでも自由にプレイする時間もとれないといった制限のある中で学生さん達は,ここまでの内容に仕上げてきてくれたのだ。
当初の予定では持ち時間は一人15分となっていたのだが,何しろその場に集まったのは基本的にゲーム好き,ゲーム開発に熱い人々である。3人への個別アドバイスは翌日改めて行うはずだったのだが,そんな事前の予定などはそっちのけで,評価すべきところは評価しつつも,足りない部分については熱心にアドバイス。東屋さん,久保田さん,梶尾さんの3人も自分のプレゼンに対する意見を,一言も聞き漏らすまいとメモしていた姿が印象的であった。
ツアー三日目となる翌日は,反対にオンラインゲームというのは実際どのような工程で開発されていくのか,そのためにどのような情報をそろえているのか,といったより実践的な話がRocWorks Koreaの開発スタッフから,聞けることになっている。そちらは,後日掲載の後編を楽しみにしていただきたい。
homageはこんな所で開発されている。RocWorks Korea社内潜入記録
後編はこちら
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