業界動向
[GC 2007#002]ステップアップを狙う欧州の独立系ゲーム企業3社
Radon Labs
ベルリンを本拠とするRadon Labsは,開発者80人を抱える,「小規模」と呼ぶには失礼な規模のゲームメーカーだ。Microsoftの要請で,1994年に「Urban Assault」を開発して業界デビュー。このほかにも,1998年には「Project Nomads」を制作してCDVからリリースしており,日本でもコアなゲーマーならRadon Labsの作品を遊んでみたことのある人もいるだろう。
2003年に一度経営危機に陥るが,この年に同社が長らく利用してきたNebulaエンジンをアップグレードした「Nebula 2」を完成させている。このエンジンを利用して,数か月で作れる規模の2Dスクロールアクションなどを制作し,2006年にはPCのほかニンテンドーDS用ゲームも開発するなど,7本ものプロジェクトを手掛けて復活した。
Radon LabsのAndre Weissflog(アンドレ・ワイズフログ)氏は,「Nebula Engine」と題されたセミナーの中で,同社の方針を語っていた。2005年からは「Nebula 3」エンジンの開発にも着手しており,より簡潔でストリーム化されたDirectX 9およびDirectX 10対応の高水準なソフト制作が可能なものになる。実用化されれば,ライセンスビジネスにも着手したい構えだという。
Nebula 2エンジンでもかなりのものが制作できるということは,同社が開発中の「Drakensang」というRPGのデモでも理解できる。本作は,ドイツ産テーブルトークゲーム「The Dark Eye」のライセンスを受けたもので,同じくドイツを基盤としたAnacondaというパブリッシャからリリースされる予定だ。今のところドイツ以外での販売予定はないとのことだが,パーティシステムなど,最近のシングルプレイ用RPGには少なくなった要素が気になる作品である。
DECK 13 Interactive
フランクフルトで29名ほどの開発者を擁するDECK 13 Interactive。聞き慣れないメーカーだが,同社のアドベンチャーゲーム「Ankh」シリーズは,アメリカでもそれなりの評価を受けている。アドベンチャーゲームばかりでなく,最近では「Carnival Cruise Line Tycoon」というシミュレーションゲームがActivisionブランドでリリースされて15万本ほど売り上げ,バリューソフトのヒット作となっている。
そのDECK 13 InteractiveのThorsten Lange(トーステン・ラング)氏が,「Made in Germany Panel」(ドイツ産ゲームのパネル)というパネルディスカッションで新たに紹介したのが,「Jack Keane」と名付けられた新作アドベンチャーゲームである。この作品は,海賊のキャプテン ジャック・キーンが主人公で,肉食植物を開発したドクターTという科学者の追跡のため,女王が送り込んだスパイの水先案内をするうちに,彼自身もミステリアスな孤島に漂着してしまうというものである。お色気もあるコメディで,キャラクター達が引き立っているのが特徴だ。パブリッシャの10Tacleによれば発売が2007年第4四半期まで延びてしまっているものの,アドベンチャーゲームファンには魅力的な作品であろう。
nDreams
最後に紹介するのは,イギリスのハンプシャーで2006年末に旗揚げしたばかりのnDreamsだ。創設者は,Eidos InteractiveやSci Gamesでディレクターを務め,「Tomb Raider」シリーズのプログラミングにも関わったという実績を持つPatrick O'Luanaigh(パトリック・オルアネイ)氏である。「Game Design Complete」という著書もある,ちょっとしたベテラン開発者だ。
nDreamsのプロジェクトは,女性をターゲットに絞り込んだ2Dビューのアドベンチャーゲーム「Venus Redemption」である。O'Luanaigh氏は,「Goodbye Lara, Hello Venus」(さよならララ,こんにちはヴィーナス)と名付けられた講義で,「女性ゲーマーにもウケた(Tomb Raiderの)ララ・クロフトは,百歩譲っても男性向けのキャラクター。どうしたら女性のための女性キャラクターを作れるのだろうか」と考え,nDreamsを設立するやいなや,30代から60代までの女性達200人に詳しくインタビューを行ったと語る。さらにアートワークやゲームのテスト時に得た意見を参考にし,ヴィーナスという女性が主人公のアドベンチャーゲーム「Venus Redemption」を制作するに至ったのだという。
本作では,プレイ中にゲームオーバーになることはない。パズルが難しくて詰まるとゲーム側が解答を教えてくれるなどの難度の低さもさることながら,3Dグラフィックスカードの必要がない低スペックな作りだったり,操作も徹底的に簡略化していたりなど,ハードルを低くして女性ゲーマーの取り込みを狙うとのことだ。
現時点ではグラフィックスもFlashゲームっぽいが,ストーリーの制作に2人の女性を起用し,アメリカ人の声優によるアメリカ風の発音での会話シーンを設けることで,北米市場での販売も見込んでいるようだ。ゲーム中にはいくつかのミニゲームもあり,ニンテンドーDSでのリリースも予定しているという。
発売は2008年の初期。主人公のヴィーナスは,O'Luanaigh氏の計画通りララを押しのけるほどのキャラクターに成長することになるだろうか。(ライター:奥谷海人)
- 関連タイトル:
Drakensang: The Dark Eye
- 関連タイトル:
Jack Keane
- 関連タイトル:
Venus Redemption
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(C)DECK13 Interactive GmbH 2005.
(c)2007 Storygamer,a division of nDreams Ltd