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[CJ 2006#57]「サクラ大戦MMO」総合プロデューサー広井王子氏インタビュー:新作スタートの地に中国を選んだワケとは
4Gamerではそんな疑問を埋めるべく,サクラ大戦シリーズ総合プロデューサー 広井王子氏に,発表会終了直後の忙しい中インタビューを行った。
■中国のエネルギーを「サクラ大戦」に
新たなスタートを切るためには新しい刺激が必要だった
4Gamer:
発表会はお疲れ様でした。ステージの前に集まったファン達はもの凄い熱狂振りでしたね。
広井王子氏(以下,広井氏)
あのエネルギーを目の当たりにすると,こっちもテンションが上がりましたね。中国でも「サクラ大戦」が多くの方に愛されているのが実感できました。
4Gamer:
それでは時間もないでしょうし,早速質問させていただきます。サクラ大戦のMMO版を,なぜ最初に中国で出そうと思ったのですか?
広井氏:
そうですね,まずとにかくサクラ大戦をオンライン化したいというアイデアがありました。そこで“オンライン”ということを考えると,日本ではなくアジアかなと。
4Gamer:
アジア,オンラインとくれば,真っ先に韓国がきてもおかしくないと思いますが,なぜ中国なのでしょうか?
もちろん韓国のオンライン熱はかなり高く,マーケットなども完成されていると思っています。制作過程にもオートマシズムみたいなものがあって,計算通りに進んでいくようなイメージですね。
逆に中国は,まだまだこれから成長していくパワーがあると思っていました。現に,まだ成長過程でいろいろなものが混沌としていて,なんだか得体の知れないパワーを感じるんですよ。サクラ大戦を10年間作り続けていて新たな展開を考えるうえで,新しい流れというかパワーをサクラ大戦に取り入れていければと考えていたところで,オンラインゲームのアイデアが出てきたんですよ。
それで中国の市場について調べたらオンラインゲームが大人気で,サクラ大戦の人気が日本に負けないぐらい高いということが分かったんです。これは今後のサクラ大戦にプラスになると思い,面白いものが作れそうだと感じて中国を選んだのです。
4Gamer:
確かに,会場もそうですが上海の街を歩いていても,ある種のパワーを感じますものね。
広井氏:
そうそう,私も昨日(7月27日)上海に来たんですが,なんだかパワーをもらって元気になっているんですよ。もうどんどんアイデアが浮かんできていて,やっぱり中国にして正解だったなと思っていますね。
今の中国は,日本で「天外魔境」を作っていた頃に似たファンの熱さを感じています。あの頃は堀井雄二さんとか鈴木裕さんといったスタークリエイターが大勢いたのも,日本のゲームファンが今よりずっと熱かったからじゃないかと思っているんです。
これからの中国は,以前の日本のようにスタークリエイターがどんどん出てくるんじゃないですかね。そして私はそのきっかけみたいなものを,作りたいって思っているんです。
なるほど。中国にはクリエイターを育てるパワーがあって,それが中国を選択した理由になっているというわけですね。とはいえ,パワー以外にも,中国を選んだ理由はあるのではないでしょうか?
広井氏:
当然考えなければならない要素はたくさんあったのですが,やっぱりパワーをもらえるという点が大きいですね。クリエイターは決して無から有を生み出すわけではないので,直接関連していないことでも,なんらかの形で刺激を受けて,それを制作物に生かしているんです。ですから私にアイデアの源を与えてくれる中国という国は,新しいことを始めるのにピッタリな場所なんですよ。
4Gamer:
もう完全に中国の魅力とパワーに圧倒されたといった感じですね。ところで,サクラ大戦MMOの開発はどこで行われるのですか?
広井氏:
日本と中国の両方で,協力して開発をしていきます。
4Gamer:
両方のいいところをうまく融合させるということですね。ところで,ゲーム自体についてお尋ねしますが,MMOというからには,いままでのシリーズとはまったく違ったゲームデザインになると考えていいのでしょうか。
広井氏:
そうですね。MMOなので,ゲームとしてはいままでのシリーズとはまったく別のものになります。ただ世界観はサクラ大戦を踏襲したものとなる予定です。
4Gamer:
なるほど。世界観を踏襲するということは,歴代の花組メンバーなども登場するのかといったことや,舞台がどこになるのかという点がファンとしては気になるのですが……。もう少し具体的に教えていただけないでしょうか?
広井氏:
まだ完全に決まっていない部分が多いので,いまはお話しできないんですよ。ただ,オンラインゲームなので,β版みたいなものを作って公開して,ファンの意見を聞きながら修正していく,ということをやってみたいと考えています。
4Gamer:
確かにプレイヤーの意見を聞いて修正できるというのもオンラインゲームの特徴ですからね。
広井氏:
いろいろと意見をくれてゲームをよりいいものに育ててくれるのではないかと期待しています。日本でやっているサクラ大戦の歌謡ショウに,わざわざ中国から来るほどのファンもいますからね。
4Gamer:
ところで,今日の発表会はサクラ大戦のオンライン展開についてのものでしたが,今後オンライン一本でいくつもりなのでしょうか? 従来のパッケージ版のサクラ大戦の続編を望むファンも非常に多いと思うのですが。
もちろん,今後もパッケージ版のサクラ大戦を出していくつもりです。これからはオンラインとオフラインの両方をバランス良くやっていく予定です。上海でもらったエネルギーをそのままに,どんどん勢いに乗って展開したいですね。
4Gamer:
なんと,それは非常に心強いですね。従来のファンも一安心といったところです。では,現時点でゲームの内容について詳しくお話していただくのは難しそうですので,質問を変えますね。サクラ大戦MMOに,広井さんはどのような立ち位置で関わるのでしょうか?
広井氏:
いままでのシリーズ通り総合プロデューサーです。ですから「キャラクター設定はこう」「世界観はこう」って決めたら,あとは実際に作ってもらって報告を受けるといった感じです。まあ今回はオンラインゲームなので,先ほど言ったようにファンの意見を途中で取り入れていくと,実際に作るスタッフは大変ですけどね(笑)。
4Gamer:
それは開発現場の方が大変そうですね(笑)。
さて,まず中国でサービスするわけですが,その後は日本やそのほかの国での展開も考えていらっしゃいますか?
広井氏:
まだ何も決まっていませんが,個人的には中国で順調にいけば,日本でのサービスもできればと思っています。中国からもらったパワーで作ったゲームを,日本やそれ以外の国の人にもぜひ楽しんでもらう機会が作れるといいですよね。
4Gamer:
そうですね,我々日本人も期待しています。では,中国ではいつぐらいにサービスを始めたいと考えていますか?
広井氏:
う〜ん,開発が始まったばかりなのでなかなか難しいんですが,2007年中には……。とにかく早いうちに皆様にお見せできればと思っています。
4Gamer:
想像していたより早いですね。てっきりまだ構想しかなくて,3年後とか5年後なんていう数字が出てくるのかと思っていました。
広井氏:
まあ,順調にいけばですけどね。ぼくのことだから途中で急にすべてを変えることもありますしね(笑)。
4Gamer:
早く出ることを祈りつつ,待たせていただきますね。本日はお忙しい中ありがとうございました。
広井氏は,10年間作り続きてきたものに新しい息吹きを入れるために,異国の地でサクラ大戦を展開すると決断しようだ。
確かに普段と生活環境の異なる場所にいると,日常的な些細なことも刺激となる。いままで通りに,日本人スタッフのみで制作を進めていったほうが便利な部分が多いはずだが,あえて新しいものを生み出すパワーを求めたのだろう。
広井氏がインタビュー中に何度も口にしていた,中国人ファンの熱さとパワーを受け,サクラ大戦MMOがどんなゲームになり,中国でどのように育てられるのかに注目していきたい。(Text by noguchi Photo by kiki)
※2006年7月28日収録
- 関連タイトル:
サクラ大戦MMO(仮称)
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