プレイレポート
Co-opプレイでゾンビ殲滅。ズーからパッケージ版が発売された「Left 4 Dead」のファーストインプレッション
Valveが制作したCo-opファン期待の
マルチプレイFPS,「Left 4 Dead」
11月21日,ズーから発売された「Left 4 Dead」は,アメリカのデベロッパ,Valveが制作した最新FPSの日本語版。謎のウイルスの感染よってゾンビのようになってしまった住人が徘徊する街で,からくも生き残った4人が必死の脱出を図るというホラーテイスト満載のFPSだ。オンラインマルチプレイをメインとし,とくにCo-op(協力プレイ)に強くフォーカスしたゲームデザインが特徴だ。
「Valive制作のFPS」と聞くと,アレのエピソード3のほうはどうなっているのかね,チミ? という(もっぱら私の)声も聞こえてきそうだが,安心していただきたい。もともとL4Dは,Turtle Rock Studiosという独立系デベロッパが開発していたタイトル。ここはCounter-StrikeシリーズのMOD制作などでValveとのつながりが深いメーカーだったが,L4Dのデキのよさに目をつけたValveによって2008年1月に買収され,その傘下におさまっている。
ゲーム専門学校の生徒をスカウトし,彼らが作っていたパズルゲームをリニューアルした「Portal」で高い評価を得たり,「Team Fortress」や「Day of Defeat」の制作に関わったアマチュアMOD作者を社内に取り込んだりと,Valveはそのへんの人材獲得が実に巧みな印象が強いが,今回もそんな感じがする。
2007年6月,Xbox 360版L4DのパブリッシャであるElectronic Artsがロサンゼルスのスタジオでメディア向けの内覧会を行い,そこにL4Dがプレイアブルで展示されているのだが,集まった関係者の評判は必ずしも芳しくなかったと記憶している。内覧会の趣旨は,「翌月(7月)に行われるE3 Media and Business Summit 2007に展示される予定のタイトルをあらかじめ見せる」というものだったのだが,そのせいなのかどうか,結局E3への出展は見送られ,発売予定日もその後何度か繰り延べされるなど,2008年の半ばを過ぎるまで新しい情報がほとんど出てこないという状況だった。
対応機種はPCのほかXbox 360。欧米では11月18日にすでに発売されており,日本ではエレクトロニック・アーツが2009年1月にXbox 360版をリリースする予定だ。ここ数か月で期待が一気に盛り上がったという印象があり,あちらでの発売後の評価も高い。
Valveのデジタル配信システムである「Steam」からの購入も可能で,こちらもSteamの言語設定を日本語にしておけば,日本語字幕が表示されるという,いつもどおりの仕様だ。
理由はいろいろあるが,本編とは別にCo-opに適したマップや,戦ってそれなりに面白い敵AIを用意する面倒さがあるためだろう。いくつかのゲームを見ると,たとえCo-opモードを搭載したタイトルでも,Co-op用サーバーがあまり立てられていないという雰囲気もある。そんなCo-opにぐっと焦点を当てたタイトルがL4Dというわけで,「Co-opの復権」を謳うFPSファン期待のタイトルだ。なんというか,ニッチ市場のリーダーを狙ったとも言えるかもしれないけど。
「Left 4 Dead」4Gamer内記事一覧
「Left 4 Dead」日本語版公式サイト
津波のようなゾンビの大軍
異常な能力を発揮するボスゾンビも手強い
前置きが長くなった。L4Dの舞台となるのはアメリカのどこにでもありそうな小さな町だ。上記のように,ゾンビのようになってしまった住民達が見境なく襲ってくる状況下,4人の男女に扮したプレイヤーが必死の脱出を図るという設定だ。グラフィックスや演出は間違いなくB級ゾンビ映画の雰囲気を狙っており,夜の街をよろめき歩くゾンビの群れが非常にいい感じ。
出てくるゾンビの数はやたらに多く,しかも憎らしいことに動きが速い。1978年に公開されたジョージ・A・ロメロ監督の映画「ゾンビ」(原題,Dawn of the Dead)のノロノロ歩く連中とはわけが違う。壁をはい登って天井から降ってきたり,全力ダッシュしてきたりと,感染している割には元気いっぱいで,こりゃまた,どういうウイルスなんだろうか?
ただし,スニークがまったく効かないというわけではなく,場所によっては,銃を撃ったり車の警報機を鳴らさないようにこっそり移動することですり抜けられたりもする。
基本はCo-opだが,ゲームモードとしては,そのほかにシングルプレイと「Versusモード」の三つが用意されている。
Versusモードは,最大4人対4人に分かれたプレイヤーが,人間とボスゾンビに扮して戦うというというものだ。ちょっと考えると銃を持っているほうが強そうだが,ボスゾンビであるSmokerは,長い舌を伸ばして人間を絡め捕ろうとするし,Boomerはゲロを吐きかけて人間の視界をくもらせるうえ(うう,気持ち悪い),やられるときに爆発して周りにダメージを与えるというヤケっぱちな能力を持っているので,いい勝負になる。製品版のボスゾンビは,いずれも結構手強い存在だ。
とはいえ,やはりメインはCo-opで,プレイヤー以外のキャラクターをAIが操作するシングルプレイは,マップ練習用といったところ。ゲーム中,進むべき方向などは表示されないので,シングルプレイで慣れておく必要があるのだ。
Co-opモードでプレイヤーのやるべきことはシンプルで,銃器を手にゾンビの大軍をかき分けかき分け,仲間と一緒に決められた脱出ポイントを目指すのだ。「噛まれると自分もゾンビになる」というのはゾンビ界のお約束事だが,ゲームでは敵にやられて体力がなくなると行動不能に陥り,仲間に治療してもらわければならなくなる。
同様に,仲間がやられて動けなくなっている場合は,背中にしょったヘルスパックを使って助けるわけだが,なんだったらヘルスパックで自分を治療することも可能。さらに,アイテムとしてPain Pill(鎮痛剤)が手に入るが,この効果は一過性で,時間が経つにつれて体力は減少していく。
このように,L4Dはチームプレイを強く要求したゲームデザインで,一人で状況を打開することはほとんど不可能だ。負傷した仲間を助ける以外,一人がマガジンを交換している間,もう一人がカバーをするなど,そういったチームワークが必要になる。こうして,メンバー全員が一か所に固まり,助け合いながらおっかなびっくり進んでいくというゾンビ映画そのままの雰囲気が再現されることになるのだ。
撃ち合いに関しては,相手は基本的に徒手空拳なので,ボスゾンビを除いて近づけなければいいだけだろう。アイアンサイトはなく,精密照準はできないが,「ゾンビを倒すには脳を破壊しなければならない」という,これまたゾンビ界の古来からの約束事は関係なく,ヘッドショットの必要はない。チームワークは重要だが,シューティングそのものは比較的簡単で,津波のように押し寄せるゾンビの大軍を弾丸の続く限りなぎ倒していくのは,いささか不謹慎に聞こえるが爽快だ。
プレイヤーの移動は速く,スポーツ系FPSのような雰囲気。アパートの廊下など,狭くて入り組んだ場所も多いが,プレイヤーキャラクター同士に当たり判定がないため,仲間がじゃまで移動できないという事態は発生しない。同じ「Source Engine」を使った「Half-Life 2」のレジスタンスと共に戦うシーンで,彼らがじゃまでじゃまでイライラしていた私にとっては嬉しい仕様だ。お前がそこに立って動かないからやられちゃったじゃないか! キー! というやつね。ソーリー,フリーマン。
ただし,同士討ち(チームキル)は基本的にオンなので,調子に乗って撃ちまくっているときは注意しなくてならない。もっとも,同士討ちで味方に与えるダメージはそれほど大きくないなど,いろいろなバランス調整はされているようだ。なお,チームキルを頻発するプレイヤーに対する罰則などは,今のところ不明だ。
息をつかせないゲーム展開を演出するAI Director
進行ルートは基本的に一本道だが,分岐もあるし,かなり広いマップも出てくる。もっとも,どの進行ルートを選んでも難度にそう大きな違いはないのは,「AI Director」というシステムがゲームの演出を行っているからだ。
AI Directorはマッチのたびに敵の出現位置や種類,さらにはサウンドまでダイナミックに決定していく機能で,ゲームが進むにつれてチームの強さを判断し,それにも対応していく。Co-opで起こりがちな,「何度プレイしても同じ状況で飽きる」「必勝パターンができてしまった」という問題を回避するために導入された仕掛けだ。
さまざまな情報からプレイヤーのスキルを判断してゲームを適度な難度にしておくというシステムは,同じくSource Engineを使ったFPS「シン エピソード1」(原題 SiN Episodes: Emergence)でも採用されていたが,こちらはあまり評判がよくない。シングルプレイで使われる機能だという違いがあるが,難しいシーンで倒されたのでリロードしたら,今度はやさしくなっていたというのは,まあその,ゲームに遊ばされているようでプレイヤーとしてあまり面白くないのだ。
それに対し,AI Directorはちゃんと機能していると思う。こりゃあ絶対いるな,というところに敵がいなかったり,油断していると突然大軍が現れたりと,意表を突く展開も見せてくれる。このへんは,プレイを重ねないとなんとも言えない部分ではあるが,今のところパターンは読めず,毎回緊張感のある戦いを強いられる印象。
ゲームにはEasyからExpertまで4段階の難度が用意されているが,AI Directorがあるため,それぞれの違いはちょっと分かり難い。
というわけで,発表当時から期待していたタイトルだが,ついにリリースされた。ロサンゼルスの内覧会以降,1年以上にわたってシェイプアップを重ねたL4Dは,あの頃とは比較にならないほど練り込まれ,ゲームとしてのレベルは確実に上がっている。
サーバーブラウザがなく,外部ツールを使わなければ適切な対戦サーバーが選べないとか,きついラグが発生するとかいった不満/問題もすでに出ているようだが,Valveは以前からプレイヤーの意見を確実に把握し,適切な対処をしてくる,「しつこい」メーカーとしての定評があるので,個人的にはそれほど心配していない。公開されたデモ版に比べ,製品版ではかなり難度が上がっており,ゲームとして面白くなっている。デモをプレイして「こんなもんかな」と思った人も,ぜひ製品版を遊んでほしいと思う。ボスゾンビがかなり強くなっていてビックリだ。
というわけで,今回はいささか駆け足だったが,近々,じっくりプレイしたレビューを掲載する予定なので,そちらもお楽しみに。
- 関連タイトル:
Left 4 Dead 日本語版
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