レビュー
WTCCのほか数多くのレースが楽しめるリアルレースシム
RACE 07: Official WTCC Game
日本語マニュアル付 英語版
» 「WTCC」(世界ツーリングカー選手権)を題材とした,リアルレースシミュレータ「RACE」シリーズに最新作が登場した。市販車をベースにしたツーリングカーのほかにも,さまざまなマシンでレースが楽しめる本作の2007年最新データ版を,4Gamerの専属ドライバーことUHAUHA氏がハンドリングする。
世界ツーリングカー選手権を再現したコテコテのレースシム最新作が登場
本作はタイトルから分かる通り,ヨーロッパで人気のモータースポーツ,世界ツーリングカー選手権「WTCC」(World Touring Car Championship)を題材にした,同社の「RACE - The Official WTCC Game」に続くシリーズ第二弾である。
決勝レースは2レース制。2007年 WTCCのレギュレーションに沿っているため,第1レースはローリングスタート,第2レースはスタンディングスタートとなる |
プレイ視点はフード視点,コクピット視点,ノーズ視点のほかにアクション視点が追加された。コクピット視点のセンター視点版といった感じでプレイしやすい |
基本的なシステム周りは前作から変更がなく,主な変更点は以下の二つ。
・WTCC 2007年のデータの追加
・ほかのレースカテゴリマシンとサーキットデータの追加
というわけで,今回は新たにフィーチャーされた部分を中心に見ていくことにする。ゲームシステムの評価については「こちら」にある前作のレビューを参照してほしい。
そんなときは,70ページにおよぶ気合いの入った日本語マニュアルに素直に頼ろう。WTCCの大会ルールやキャンバー,ダンパー,アンダーステアなどレースシム用語のほか,各種設定項目などが細かく解説されているので,レースシム初心者でも安心だ。
なお,本作はインストール時にオフライン版(起動時にDVD-ROMが必要)とオンライン版(起動時にSteamの認証が必要)のどちらかをインストールするか選択する仕様だ。シングルプレイのみを楽しむのならばオフライン版を,シングルプレイのほかに世界中のプレイヤーとのマルチプレイも楽しみたいならばオンライン版を……といった具合に,目的に合わせてインストールできる。
ただ,オートアップデートチェックでゲームを常に最新状態にしておけたり,拡張データパックなどを期間限定で無料配布したりなんてこともあるため,Steamがよっぽど苦手だという人以外は,オンライン版を選択するのがベターだろう。
なお念のため書いておくと,本作はWindows XP以外のOSでは動作保証されておらず,Windows Vistaについても“動作保証は致しません”とのことなので,Windows Vistaのみを利用している人は注意してほしい。
世界中のプレイヤーを相手にラップタイムを競うWORLD RANKINGが熱い
RACE EVENTでは,トラクションコントロールやアンチロックブレーキなどが使用できるドライバーズ・エイドの設定,ライバル車の速さ,ダメージレベルなどを「NOVICE」(初心者),「SEMI-PRO」(中級者),「PROFESSIONAL」(上級者)で設定して楽しめるほか,「CUSTOM」(カスタム)で好みの設定でのレースを楽しむことも可能だ。
CHAMPIONSHIPでは“2007年チャンピオンシップ”を楽しめるほか,独自にチャンピオンシップを作成することも可能だ。ちなみに今年からWTCCでは第1レースがローリングスタート,第2レースがスタンディングスタートに変更されており,これもしっかり再現されている。また,ウエイトハンデも,若干の変更を受けた2007年レギュレーションに準じたものになっているので,WTCCファンも安心だ。
前作では拡張データパックとして販売されたCaterham(スーパー7)も本作では標準で収録されている。比較的扱いやすい車なので腕を上げるのに最適かもしれない |
マカオのリバースコースを疾走するMINIクーパー達。コンパクトな車でも狭い市街地コースでは追い抜くのも大変だ。コツンと当てて抜いていくのはアリかなぁ |
ほかには「MULTIPLAY」にてLANとインターネットを利用したマルチプレイがサポートされており,日々多くのホストが立ち上がっている。対戦者捜しに困ることはないので,一覧リストから好みのホストに飛び込んで世界中のプレイヤーに挑戦してみるのがいいだろう。ちなみにIPアドレス指定のダイレクト接続はできないのも前作同様だが,友人と対戦するならパスワード付きホストを立てればよく,それほど困らないだろう。
またマルチプレイ用として新たに「WORLD RANKING」というレースモードが追加された。これはタイムアタックの行われているサーバーに接続して,30分という制限時間内で世界中のプレイヤーを相手にラップタイムを競うモードだ。もちろん,このモードで記録したタイムはランキングに記録され,トップタイムをマークするとRACE07公式サイトのトップページに表示される。
純粋なレースという形ではないものの,見えない世界のライバル相手にセッティングを詰めてタイムを刻み,その結果が多くの人の目に止まるデータとして残るせいか,強烈に燃えるモードだ。腕に自信のある人は,ぜひ挑戦してほしい。
2007年11月30日時点,マルチプレイでは多くのホストが立てられており,対戦者にはまず困らない。とはいえ,時間帯によっては参加者が少ないこともあるようだ |
収録されているすべてのコースにおいて,周辺にある建物や看板などの再現度(実地をじかに見たわけではないけど)も非常に高い。路面の傾斜やうねりも再現されている |
本作では新たなレースカテゴリの車種と走行サーキットがフィーチャーされている。まずメインのWTCCについては,前作の「WTCC 2006年」「WTCC 1987年」に加え,「WTCC 2007年」のシーズンデータが追加された。もちろん,参戦しているチーム,レースカー,ドライバー,コースがFIA(国際自動車連盟)の公認のもと,すべて実名で登場する。
また,前作収録されていた「MINI チャレンジカップ」のほか,前作の拡張データパックとしてSteamで期間限定で無料配布され,現在では有料で販売されている「RACE - The Official WTCC Game: Caterham」も収録されている。
さらに本作で新たにオープンホイールのF3000,Formula BMW,スーパーバイクエンジンを搭載したライトウエイトスポーツカー Radical SR3/SR4が登場し,全9カテゴリのレースカーの走りを楽しめるという太っ腹仕様だ。
収録サーキットについても,WTCC 2007年に登場したアンダーストープ(スウェーデン),ザンドフォールト(オランダ),ポー(フランス)を含め,WTCC 2007年/2006年シーズンの舞台となった全サーキットを収録。
また,フォーミュラーカーやスポーツカーを収録したためか,クリチバ オーバル,バレンシア ロングといったレイアウトの異なるコース,そしてWTCCシーズンには登場しないエストリル(ポルトガル),イモラ(イタリア)といった有名サーキットなど世界中に実在するサーキットが収録されている。さらに,モンツァ(イタリア)やマカオ(中国)などの“逆走コース”も含めると,計32種類のコースを走れることになり,上級者とて全サーキットを極めるのは相当大変なはずだ。
30分間コースを走り回り,ラップタイムを競うWORLD RANKING。11月20日に稼働したばかりで参加者が少ない今が,トップタイムをマークするチャンスかも? |
WORLD RANKINGは単独走行なので,自分のラインでコースを攻められるのが良いところ。それにしてもトップとのタイム差が大きすぎるので,セッティングの見直しだ |
挙動特性が異なるさまざまなレースカーを乗り回せるのが大きな魅力
やはり走らせていて非常にチャレンジのし甲斐があるのが,F3000,Formula BMW,Radical SR3/SR4といった,純粋なレーシングカーである。エアロダイナミクスにより路面に車体が押しつけられている感じが良く再現されており,圧倒的な加速力とスピード感が素晴らしい。
WTCCに登場するコースでも,WTCCマシンよりも深くブレーキングを我慢できるし,コーナーを抜けるときもグリップを感じながらアクセルとステアリングを操作し,テールスライドをカウンターを当ててリアをコントロールしながら立ち上がる……こんな走りができるようになると心底,熱くなれる。
本作に収録された車種の中で,乗りこなすのが難しいのがF3000マシンだろう。とくにマカオやポーの市街地コースでは有り余るパワーのお陰でさらに難度がアップする |
ほかのレースカテゴリのマシンが多く収録されたせいか,陰が薄くなってしまったWTCCマシンだが,FF車/FR車ともに扱いやすく,レースシム初心者でも乗りこなせるはずだ |
F3000,Formula BMW,Radicalで走ってもらいたいのが,マカオやポーといった市街地コースだ。ただでさえピーキーなマシン特性なのに,コース幅が狭く,路面の起伏の影響で,一瞬のコントロールミスでガードレールへと吸い込まれる。タイヤが剥き出しのオープンホイールマシンにとって,軽い接触は大きなダメージへ直結してしまう。
トラクションコントロールなどのドライバーズ・エイドを利用しても,ラフなアクセル操作は禁物で,アクセルを踏み込むたびに言いようのない緊張感に襲われるのがある意味たまらないのだ。この緊張感はキーボードやゲームパッドではなく,ぜひステアリングコントローラでピーキーなマシンをコントロールする楽しさを味わってほしいところである。
本作ではドライ,ウェット両方のセッティングデータが各車,各サーキットごとに用意されており,このセッティングを使うだけで比較的満足のいくタイムが出せるのが非常に助かる。正直,前作の苦労はなんだったの? って感じである。
さらに細かく自分の走りにあったセッティングを突き詰めていけば,OPPONENT SKLILL 100%,つまり本物のプロレーサーをも食えるタイムを出すのも夢ではない。これでもかと言わんばかりに用意されたセッティング項目を調整しては,テスト走行でタイムを詰めていく。これぞレースシムの醍醐味という部分を存分に楽しんでほしい。
レースシム初心者から上級者までプレイしておいて損はない逸品
とはいえ,WTCC 2007年データや追加要素などを総合的に見ていくと,それほどガッカリする内容ではなく,前作を持っていても本作を買う価値は大いにあると思う。もちろん,前作購入者のために割安感のあるアップデート版も用意してほしかったというのが正直なところだが……。
コーションフラッグもレギュレーションどおりなので,イエローフラッグ区間で追い越しをかけるとペナルティを受ける。前方で起きたクラッシュにも注意しよう |
WTCC 2007年に登場する市街地コース,ポー。マカオとは違いショートカットしたくなる縁石が多い。滑りやすくマシンが跳ねやすいので縁石の使い方も難しい |
まずは「こちら」にある体験版で完成度の高さを確認してもらいたい。パッケージ版の日本語マニュアルの出来映えも,体験版用日本語マニュアルからチラリと確認できるはずだ。
最後に余談だが,ほかのレースカテゴリに比べると,日本での人気は今一つなWTCCであるが,来年のWTCC 2008年チャンピオンシップ 第10戦(10月26日)は,岡山国際サーキット(旧TIサーキット英田)で開催されることが決定している。もちろん,WTCCでは日本初開催となり,これで少しは知名度も上がるかなぁなんて思いつつ,RACE 08には岡山国際サーキットも収録されるのかなぁ,されるよね? と今から勝手に心配している筆者である。
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