インタビュー
[CES 2014]「Steam Machine」をお披露目したばかりのValveにインタビュー。日本で販売される可能性アリ!
今回4Gamerは,そんなValveの商談ブースにおいて,同社のMark Richardson(マーク・リチャードソン)氏にインタビューする機会を得た。
Valveは,全員が「自分の才能を最大限に発揮する」ために好きな仕事を自分で見つけていくという,「フラット組織」と呼ばれる独特の社風を持っている(関連記事)。そのため,Richardson氏の名刺には,役職どころか所属する部門なども記載されておらず,何をしている人なのか正確には分からなかったのだが,どうやらここ数年はSteamの運用に関わり,利用者向けにさまざまなペイメントサービスを用意するなど,eコマース(=電子商取引)分野で活躍しているようだ。そんな彼の話すところによれば,ValveはSteam Machineで日本への進出を図るようである。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは,RichardsonさんがValveで行っている主な仕事をお教えいただけますか?
はい。Valveに決まった役職がないのはご存じかと思いますが,私が専門の分野としているのはローカライズです。これは単に,我々がサポートしているすべての言語に合わせてSteamのページを翻訳するというだけではなく,その国に合わせた課金システムの現地化なども含まれます。
4Gamer:
そう言えば,ここ最近は東欧や南アメリカなどで,さまざまな貨幣や,その地域で人気のあるオンラインマネーなどをSteamがサポートし始めているという印象がありますね。
Richardson氏:
はい。その経過から,私はさまざまな国でeコマースビジネスの関係を構築してきたのですが,その流れでSteam Machineのライセンスや流通,そしてローカライズやサポートなどにも深く関わることになりました。ちなみに,私が担当している地域には日本も含まれています。今は,日本でのOEMパートナーとして「Steam Machine」を開発してくれるメーカーを探していますよ。
4Gamer:
日本産のSteam Machineを検討しているということですか? 今回のCESでは,すでに13社から出展がありましたが。
ええ。あれらのSteam Machineも,各メーカーが自社やサードパーティの販路を使って日本で販売を行うかもしれませんが,私が現在話を進めているのは,日本市場をターゲットにできる日本のメーカーです。我々は現時点で発表しているパートナーに限らず,より多くのメーカーがSteamOSに賛同してくれることを願っており,日本での展開も可能だと考えています。
4Gamer:
現在発表されているSteam Machineは,形状も色もスペックも千差万別で,SteamOSが動作するということ以外は統一性がないように見えますが,Steam Machineと呼べるものになるには,どういった決まりがあるのでしょう?
Richardson氏:
Steam Machineと呼べる機器を販売するためには,我々と正式ライセンスを結んでいただくことが必要です。それによって,我々が開発しているSteam Controllerの供給を受けることができるようになります。このSteam Controllerは,Steam Machineの販売時に,最低でも1個は同梱しなければなりません。
本体の形状やスペックは,販売する地域によって嗜好が大きく違うでしょうから,そこにValveが口を挟むべきだとは考えていません。ハードウェアベンダーの皆さんに,自由にデザインしていただきたいです。
4Gamer:
それであんなにスペックが大きく異なるんですね。日本のベンダーとは,すでに具体的な話は進められているのでしょうか。
Richardson氏:
いえ,日本ではまだ動き始めたばかりなので,これからになります。
ただ,Steamに関して言えば,日本は我々が重視するトップ20の市場の1つです。ここ数年ほどの間に,急激にセールスが伸びており,我々も大きく期待しています。何があって,Steamの知名度が上がり始めたのかは我々も分かっていないのですが。
4Gamer:
ええと,我々4Gamerで盛んにSteamを取り上げた成果が……(笑)。というのは冗談ですが,おそらく海外ゲームを手軽に入手できるということや,年末などに行われる激安セールで安価に購入できるといった部分が,話題になっているのではないかと思います。
Richardson氏:
どういった理由でも,我々にはありがたいですが(笑)。しかし,日本のユーザーの皆さんが,クレジットカードで,しかもドルで決済しなければSteamを利用できないというのは,問題として受け止めています。近いうちに,できれば数か月以内には,このあたりを改善する発表ができるかと思います。
※Valveのサービスではないが,現在もValve公認サイト「PRO スチーマー」を利用すれば,「コンビニ決済」「銀行振込」などを利用して「Steam ウォレットコード」を購入可能(関連記事)。
4Gamer:
期待しています。ところで,Steamのページ内には日本語化されているページが多くありますが,あれはサードパーティが独自で翻訳しているんですか? それとも,Valveの中にいる日本語ができる方が行っているのでしょうか。
Richardson氏:
基本的に,Steamでサポートしている言語については,少なくともValveで1人は翻訳者を用意し,カスタマーサービスも行っています。ただ,Steamのコンテンツ量は非常に多いので,すべてのゲームのすべてのページを翻訳できてはいません。このあたりは,どうしてもクラウドソース(=ユーザーの努力)に頼ることになってしまいます。
4Gamer:
Valveのタイトルは,ほとんどが日本語ローカライズされていますが,これらはSteamOS版に移植されるのでしょうか。
Richardson氏:
ええ,もちろんSteamOSでプレイできます。そもそも,「Left 4 Dead 2」などすでにLinux版があるものも含めて,自社タイトルは全てWindows,Mac,そしてLinux向けに開発,もしくは移植することを前提としていますから。
ただ,これからSteamOS専用ゲームを開発するというということは考えていません。
4Gamer:
そうなんですか? 家庭用ゲーム機では,「エクスクルーシブタイトルの多さ」が評価のバロメーターの1つになっていると思うのですが。
それは考え方の違いでしょうね。Steamというコンテンツ配信サービスは,すでに10年を超えてサービスを提供しており,3000タイトルを超えるライブラリーと,それらをPCで遊んでくれる6500万人もの巨大なコミュニティを持っています。Steam Machineのコンセプトは,このコミュニティを1から作ることなく,そのままリビングルームに持ち込むということなんですよ。
4Gamer:
なるほど。確かにSteamOS専用ゲームが出てくると,PCで遊んでいる人とSteam Machineで遊んでいる人とで,コミュニティが分断されてしまいますね。
Richardson氏:
ええ。ですから,エクスクルーシブタイトルが大きな意味を持つことにはならないでしょう。
4Gamer:
最後に,4Gamer読者やSteam Machineを楽しみにしている人に向けて,コメントをいただけますか。
Richardson氏:
はい,現在,eコマースやOEM元とのライセンシングに関する活動などにあたって,日本で強力なパートナーであるデジカと協力しています。近いうちに,より詳しいお話を発表できるかと思いますので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
分かりました。本日はありがとうございました。
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