日本時間2007年5月9日10:00PM,NVIDIAはノートPC向けのDirectX 10対応GPU(グラフィックスチップ)
「GeForce 8M」ファミリーを発表した。統合型シェーダ(Unified Shader)アーキテクチャを採用するPC向けの単体GPUとしては,世界初ということになる。
■ラインナップはミドルレンジにフォーカス
■ハイエンド環境はSLIで ラインナップは下に示すとおり。「GeForce 8400M」「GeForce 8600M」といったように,
(GPU名)+Mといった表記になる。これまでのノートPC向けGeForceというと,「GeForce Go 7600」のように,「Go」が入っていたが,今世代から表記が変わるとのことだ。
5月9日時点のラインナップ。最上位モデルとなる「GeForce 8600M GT」最下位の「GeForce 8400M G」からまで,5製品がラインナップされる。なお,“G”というモデルが発表されたのは今回が初めて
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3Dパフォーマンスの高さを謳うスライド
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GeForce 8Mの3DパフォーマンスについてNVIDIAは,同じ電力設定で
「GeForce Go 7」と比較したときに最高で約2倍の性能を発揮するとしてグラフを示している。グラフを見ると,2倍に迫るスコアを見せているのは「3DMark05」「3DMark06」といった3Dベンチマークソフトだが,「GeForce 8600M GT」と「GeForce Go 7600」を「Half-Life 2」で比較して1.7倍の差が開いているので,2倍にこそ届かないまでもパフォーマンスは相応に向上するようだ。
さて,ハイエンドモデルとして“GeForce 8800M”が用意されていないことに疑問を感じた読者は少なくないと思う。なかには「ひょっとして,AMD(旧ATI Technologies)の動きを待って上位モデルのスペックを決めるのでは?」と勘ぐる人すらいるかもしれないが,どうやら(少なくともしばらくの間)NVIDIAにGeForce 8800MのようなGPUを用意するつもりはないように見える。
ハイエンドはSLIで,とするスライド。詳細が語られていないので深くは触れないが,ローエンド市場には「GeForce 7000M」シリーズのグラフィックス統合チップセットで挑もうとしていることも分かる(※クリックすると別ウインドウで全体を表示します)
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その状況証拠となりそうのが左のスライドで,ハイエンド(Enthusiast)向けには,NVIDIA SLI(以下SLI)とあり,(GeForce 8600M GTなどの)
SLI構成によって,パフォーマンスニーズには対応するとされている。たしかにGeForce 8800シリーズをモバイルGPU化するのはちょっと無理があるようなので,まあ,妥当なところかもしれない。
ちなみに現在のところ,NVIDIAはノートPC向けのSLI対応チップセットをリリースしていないが,その代わりに(?)Intel製のモバイル向けチップセットでSLIがサポートされるため,Santa Rosaベース――というより「Mobile Intel GM965 Express」ベース――のSLIノート,なんてものが,ノートPCでの絶対性能を求めるゲーマー向けに登場する可能性はある。……国内でも発売されるかは微妙だが。
“ワット性能”の高さを謳うスライド
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電力消費に関しては,GPU自体の消費電力を制御する「PowerMizer 7.0」,そして液晶ディスプレイのバックライト輝度を負荷に応じて調整して消費電力を抑える「SmartDimmer 2.0」機能などを用意。消費電力の目安となるTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)は,GeForce Go 7世代と同じレベルに留まっているという。
このほか,「GeForce 8600/8500」と同じ,第2世代のプログラマブルビデオプロセッサ(PVP)を搭載し,動画再生支援並びに高画質化を行う
「PureVideo HD」に対応するのも,GeForce 8Mの特徴だ。高解像度ビデオファイルの再生時におけるCPU負荷は,GeForce Go 7が59〜75%だったのに対し,GeForce 8Mでは21〜28%に抑えられるという。
こちらはGeForce 8Mが搭載するPVPの総合的なパフォーマンスの高さを謳うスライド。「Windows Vista」世代のいわゆるAVノートPCが,GeForce 8Mのメインターゲットとなっていることもあって,NVIDIAはこのあたりを強くプッシュする
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上位モデルではGeForce 8600M GTを搭載する東芝「Qosmio G40」。GPUと同じ5月9日発表
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GeForce 8M搭載ノートPCは即日出荷とされ,大手PCメーカーでは東芝から搭載PCがリリースされるほか,小規模の,いわゆるホワイトボックスメーカーからもいくつか製品が登場する予定。ノートPCにおけるDirectX 10時代が幕を開けたと言ってよく,GeForce 8600Mシリーズの2モデルのパフォーマンス次第では,面白いことになりそうな気配だ。(ライター・Jo_Kubota)