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印刷2009/01/08 11:52

連載

Fallout 3 連載 荒野に咲いた一輪の花 / 第3回:可憐な花のような少女

荒野に咲いた一輪の花
第3回:可憐な花のような少女

 

メガトンの町へ

 

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 Vault101からついに表の世界に出た。プレイ開始から前回の連載で書いた部分までは,このゲームのチュートリアルに当たるパートだ。Vaultの扉をくぐるタイミングは,名前や容姿,ステータスなどを変更する最後のチャンスでもあるが,いずれにせよ,ここからがいよいよゲーム本編のスタートとなる。
 Fallout 3の舞台は,かつてはワシントンD.C.と呼ばれ,今はウェイストランドといわれる荒れた土地だ。薄暗いトンネルを抜けて外に出ると,初めて見る日の光に照らされた広大な荒野が開けており,とても印象的だ。プレイの仕方によっては脱出したら夜だったということもあるのだが,ここはプレイヤーの気分を盛り上げるためにぜひ昼間に脱出することを勧めたい。
 前回も書いたように,主人公はVault内で大変な目にあった。ショッキングな出来事の連続だ。見知った人達に殺されそうになり,それを退けるためには反撃するしかないという状況は,かなりヘビー。それを受けて,当面は「不必要な殺人は行わない」という方針でゲームを進めてみるつもりだ。
 とりあえず,現在の目的は,行方不明になった父親を探すこと。Pip-boyをいじってマップを開くとクエストマーカーがここからそう遠くない一点を示している。そちらへ行ってみよう。途中で襲ってくる犬などを蹴散らしつつ向かうと,やがてメガトンという名の町に到着した。

 

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メガトンの酒場

 

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 あたしが町の中に足を踏み入れると,すぐにこの町の保安官だという男が話しかけてきた。「Vault101から来たんだね?」みたいなことを言われて,なんでいきなりバレてるのかしらと思ったけど,考えてみたら着ているツナギの背中にばかでかく「101」って書いてあるのね。かっこいいー。

 パパの情報がないかと保安官に尋ねてみると,彼は,自分は知らないが,この町で酒場を経営しているモリアティという男が何か知っているかもしれないと教えてくれた。
 モリアティは油断のならない男だってことだけれど,きっと大丈夫。あたしアイドルだし。
 さらに保安官は町の施設のことや来歴なんかも教えてくれた。その話にも出てきたのが,町の中央に鎮座ましましている大きな不発弾のこと。この爆弾はいまでも不安定な状態にあるようで,保安官はあたしだけが使えるテクニックで解除してほしいと頼んできたけど,まあ,気が向いたらね。
 あたしは爆弾の横を通り過ぎて酒場に向かった。

 

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 メガトンはすり鉢型の窪地に造られた町で,上下に立体的な構造になっている。モリアティの酒場は比較的高くなっている一角で見つかった。

 

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 扉を開けて中に入ると客達が一斉にぶしつけな視線を向けてくる。あたしは自分が美しいことを知っている女性特有の放漫さでそれを無視した。けれど数歩進んで目に入ってきた人物の風貌に対する驚きは隠しきれなかった。

 

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 はわわわわっ! カウンターの中に腐った死体のような男が立っていた。いや,死体ではなく生きている。でも,たぶん腐っている。耳や鼻はもげ落ちており,頭髪もまばらにしか残っていない。
 醜いものを見たら積極的に美しく生まれた我が身の幸せをかみしめにいくのがあたしのスタイルだけれど,ちょっとそういうこともできないレベル。聞けば,たいていの「グール」は理性のないモンスターだけど,中には彼のように知性を保っている者もいるらしい。もちろんあたしは初めて見た。Vaultにはあんなものはいなかった。
 外の世界って,スゴイ!

 

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 店の奥へと歩を進めると,今度は奇妙な男に話しかけられた。え,ナンパ? ミスターバークと名乗ったその男は,この町で見かける多くの人達とは違ってスーツをきちんと着込んでいて,周りから妙に浮いている。話しかけてくる内容もなんだか怪しい。
 自分は,とある人物の命令で動いていて,報酬を出すから町の中心にある例の爆弾を爆発させてほしい――ってそんなことしたら普通にあぶねーつーの! 気持ち悪いので早々に会話を切り上げようとしたんだけど,起爆のために必要だっていうFusion Pulse Chargeとかいう装置を押しつけられた。うわマジキモ! ほっとくといろんなものを押し付けられかねないので,そうなる前にあたしはそいつの側から離れた。

 

 さあ目的を果たさなくっちゃ。店主のモリアティは店の奥にいた。白髪交じりの中年の男性だ。よし,フェロモン出してがんばろっ。
 とりあえず話しかけてパパのこと知らない? って聞いたら,モリアティはいきなりこんな反応を返してきた。テキトウに訳すと,

 

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 「君は……なんてこった……あのときの赤ん坊が,こんな“可憐な花のような少女”に成長したなんて! 元気だったかい? 君のお父さんはたしかにここに立ち寄って,また出ていったよ。彼のあとを追いたいんだね?」

ということなんだけれど,これって怪しい。あたしの美貌を見て心に浮かんだ正直な感想を折り込むことで話に真実味を与えようとしているのは分かるけど,生まれてから今までVault 101を一度も出たことのないあたしのことを,こいつが知ってるわけない。保安官はモリアティが油断のならないヤツだと言っていた。くそう,だまされねーぞ!
 ――けれども話を進めてみると,べつに嘘をついているわけではなくて,あたしの記憶のほうが洗脳によって書き換えられている的なことを言ってる(?)。
 そ,そうなのかなあ……。まあいいや。とにかくパパの行き先が知りたいのでそれを教えてと迫ったところ,情報料として100capsを払えと言ってきた。あたしの今の所持金は確認してみると0capsだぜフ○ック! 払えねええええ!  とりあえず断って表に出た。

 持ち物を売れば100capsくらいにはなるんじゃないかと試してみるものの,アイテム自体をあまり持っていないうえに,買い取り価格もイマイチで目標額には到達しない。
 どうしたものかと思いながら町をうろうろするものの,良い考えは浮かんでこない。ためしにもう一度モリアティのところに行くと,情報量は300capsだとか言うので,ちょっと上がってるよ! さっきは100capsっていってたのにぃぃ。

 

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「さっきは100capsだった。それを君は断った。そして今は300capsなんだよ」

ずるぅいぃぃ! やっぱこいつ食わせもんだ! なんてこった。どうしよう。困っているとファッ○なモリー野郎は「施しをするつもりはないが仕事ならある」とか持ちかけてきやがった。近くに住んでいるシルバーという名前のジャンキーから借金の取り立てをしてこいという内容。すごくやりたいと思える仕事ではないけれど,しょうがない。

 

 

シルバーの家

 

 シルバーの家はメガトンから遠くないところに建っていて,すぐに見つかった。中に入ると奥から当の本人が現れて,「モリアティに言われてきたのね!」的なことを興奮しながら大騒ぎ。なんだか,いつか誰かが来ることは予期していたようだ。

 

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 シルバーは「この金は自分のものだ」と主張してる。でもあたしとしても,お金がここでどうしても必要なので,ゆずれない。だからちょっと強めの態度で当たった。いろいろ主張するのは勝手だけど,あたしはあたしでお金を持たずに帰ることはできないのよって。――そしたら……そしたらいきなりキレて銃で撃ってきた。

 

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 ――ああ,なんでこうなっちゃうのかな。できるだけ殺し合いはしたくなかったのに。あたしは問題をこんな風に乗り切っていきたいんじゃない。「ほら,あたし,天然系だからっ,キャハッ」って感じの可愛い可愛い系キャラでいたいのに!
 ――けれど銃撃は止まない。飛んでくる弾がかすったり,肉がえぐられたりしたところからは血が噴き出して,視界の端が赤く染まっちゃう。あたしは銃を構えた。敵を倒すには物陰に隠れてじゅうぶん引きつけてから頭部に向かって弾を連続で打ち込むと効率がいい――って何,こんな経験則? 笑っちゃう。
 シルバーの頭部は数発で身体からはずれ後方の壁に血しぶきと共に激突し,身体のほうは,壁に背中をすりつけるようにくずれおちた。銃の扱いにも慣れてきたのかもしれない。笑っちゃう。

 

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 ――死体からはいくつかのアイテムと400capsが見つかった。これであの酒場の主人は情報を売ってくれるはず。

 小屋から出ると地面に反射した強い日差しが目に刺さってくる。ほぼ真上から降る陽光があたりを白々しく照らしている。遠近感が希薄な景色。現実とは思えないような平坦な光景。気持ち悪い。ゲロが出そう。ああもう出る……。

 ――壊れた自動販売機にもたれてえずきながら,あたしはここが元いた場所とはまったく違う世界なのだと,理解した。

 

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 戦闘時に物陰をうまく利用することは,こちらに大きなメリットをもたらしてくれる。
 Fallout 3において弾薬は貴重品だ。だから戦闘ではできるだけ弾を消費しないように戦いたい。そのためには,命中率の低い状態で遠距離からの射撃を何度も繰り返すより,至近距離から弱点を確実に攻撃できたほうが良い。しかし,近くから攻撃したいと思っても,銃を持っている敵の場合,一定の間合いを保ちつつ攻撃してくるばかりで,こちらに近づいてはくれない。かといってこちらから接近しようとすれば,こちらが敵のいい目標になってしまう。そういう場合は障害物や曲がり角などを利用して,相手の目から自分の姿が見えない状態を作り出すと良い。

 多くの場合,こちらが見えなくなった敵は,再び見えるようになる位置まで前進してくる。これを利用して敵をうまく引きつければ,至近距離からの効率良い戦闘が可能になる。また,同じ方向から複数の敵がやってくる場合などにも,うまくいけば1対1の状況を作り出すこともできるため有効だ。
 この手を使っても敵が近づいてこない,あるいはこちらに長距離用の武器があるなどの理由から遠距離攻撃で戦う場合でも,カバー(遮蔽物)の利用はとても有効だ。身体を隠しながら射撃を行う,リロードは物陰に隠れて行う,など慎重に行動すれば,被ダメージをかなり抑えることができるだろう。
 最後に注意を一つ。屋外にはよく壊れた車が放置されているが,これを遮蔽物として利用するのはNGだ。一度体験すれば分かるが,これらの廃車は銃撃を受けると爆発を起こす。この爆発に巻き込まれると結構なダメージを受けてしまうので気を付けよう。

 

■■星原ミッシェル昭典(ライター)■■
 うっかりしているうちに2009年になってしまったが,ウェイストランドでの血を吐くような冒険はまだまだ続く予定の本連載。ライターの星原氏は,主人公の運命についてしっかりした目算を持っているようだが,今はまだ秘密とのことで,ぜひお楽しみに。ちなみに星原氏も我々も,つい主人公のことを“ミッシェル”と書いちゃうんだけど,今のところとくに名前はないのである。
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