連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第427回「ゲイム作りは城作り」
ゲイムもぬるめの甘がいい男色ディーノですこんにちは。
ゲイムの良いところの一つは,発売されているタイトルがいっぱいあるから,自分の気分でプレイし分けられるって部分。ストイックな気分で効率プレイしたい気持ちのときもあれば,RPGでひたすらレベル上げしたいときもあるし,オープンワールドでダラダラと意味のないことをしていたいときもある。気分転換にパズルゲイムをプレイしていたら,いつの間にかえらく時間が経っている……なんてこともあるわね。
当然のことながら,世の中にいろんなゲイムがあるから使い分けられるわけで,数多くの仮想現実の中から身を投じる世界を選べるってのが,ゲイムというジャンルの優位性だと思うの。そして映画や小説などとは違って,受け取る一方ではなく自分がその世界の中でも選ぶことができる。自分次第でケツ末が変わる。選択肢がある。これが私がざっくりと思うゲイムの良いところ。そんないろんな選択肢のあるゲイムだけど,逆にその選択肢を用意する側は何を意識しているのかしらね。
今回はね,ほんのちょっとだけ趣向を変えて,ゲイムおよびエンターテイメントを提供する側の視点で語ってみましょう。とはいえ,私はプロレスラーであってゲイムを作る職業ではないから,以下の考察はただの想像よ。ただ,顧客に対して提供するモノ,という視点は共通しているだろうから,そこから私が勝手に想像して述べてみるってことね。
それを踏まえたうえで,まず,一歩目から。
ゲイム作りを志す人って,根本的にゲイムが好きで自分もゲイムを作ってみたい人だと思うのよね。ここまではいいかしら。
次。じゃあ,いざゲイムを作るのに必要な能力は何か。ケツ論から言うと,“自分が何なのか”が分かること。情熱だとか,夢だとか,発想力だとかなんてね,ただの罠。トラップ。いわゆるきれいごと。
まずね,世の中には本音と建前があって,世の中ってやつは本音をあまり表に出さないものだということを把握しないといけないわ。ただ,別に私も悪ぶるためにこれを言っているわけじゃないからイメージ工作をしておくけど,情熱だとか夢だとか発想力だとかが必要ないって言いたいわけじゃないの。それらは綺麗なワードで表に出やすいから使われがちなんだけど,実際に必要なものではあるのよ。
で,私が考えるゲイムおよびエンターテイメントで提供する側に必要な能力,“自分が何なのか”について解説するとですね。簡単に言えば,“自分で何もかもできると思うな”ってことなの。
そうね。城作りだと思えばいいわ。なんで城なのかと聞かれたら答えられないけど。強いて言うなら,私が勝手に漠然と“エンターテイメントは城だ”と思っているからなんでしょうね。
まあいいや。一人で城なんか作れないでしょ。大阪城は誰が作ったか? という問いには「豊臣秀吉」が正解とされているけれど,豊臣秀吉は絶対に石を運んでいないし,希望ぐらいは出したかもしれないけど設計はしていない。でも,作ったのは秀吉とされている。
それと同じで,エンターテイメントは規模が大きくなればなるほど,一人では作れなくなっていくのよ。となると,みんなで分業しないといけないわよね。堀を作る人。それを指揮する人。さらに,指揮する人を束ねる人。そうやって城はできるわけね。まず自分はどのポジションで城作りに携わるのか? これを把握できるかどうか。
作っている人達がそれぞれ勝手に良かれと思ってオリジナリティを発揮してしまったら,バラバラなモノが出来上がってしまうでしょ? ちゃんとコンセプトを定めて,それに見合った用途に応じて作らないといけないの。
城だって,用途というか目的があるのよ。例えば,敵の侵攻を撃退するためのものなのか,敵を通さないためのものなのか,籠城に使って時間稼ぎをするためのものなのか,拠点として兵や兵器をたくさん収容するためのものなのか,日本全国に威光を見せつけるためのものなのか。そういった用途や目的によって,予算だったりかけられる時間だったり,そもそも建てる場所すら変わってくるわけで。
そこらへんをちゃんと共有して,そのために必要な技術は何なのか? 自分がやるべきこと,できることは何か? といったことを正しく把握する。ゲイム作りもたぶん,同じじゃないかなあと思っているわけですよ。
“どういう面白さを提供するか”というコンセプトを共有して,材料を集め,プログラムして積み上げる。まずその“自分がこのゲイムを築くのに必要な立ち位置や作業は何なのか”が第一。そしてそれを支えるのが情熱であり,夢であり,さらにその作業中に成果をより良くするために必要なのが発想力なのですよ。この順番を間違えちゃいけないわ。
もっと言うと,今,プロジェクトがどういう状況なのか,今の状況に合わせて自分がどうするべきなのかを知って調整する能力も,“自分が何なのか”には含まれるんだけどね。つまるところ,夢を作るには現実を積み重ねる必要があるってことなんだけど。自分の立ち位置を正しく知ろう! 城だけに。現実を直視しろ! 城だけにって話です。
PlayStation Vita用のダウンロード専用タイトルだし。ここを狙ってゲイムを作っているのであれば,これはかなり凄いことだと私は思う。ちゃんと押さえるところは押さえて面白い。でも,めちゃくちゃ中毒性があるってわけじゃない。けっこう思いどおりにストレス少なくゲイムが進行していく,いわゆるヌルゲー。
ふと思いついてプレイする分には不満はないわ。でも,ちょっと本気で向き合うとなると少々不満も出てくる,そういう感じのゲイム。それでいて,コストパフォーマンス的な意味ではお買い得感がきっちりある。その塩梅がちょうどいいのよね。
ゲイムの内容を説明しておくと,基本はロボットカスタマイズゲイム。で,ダンジョンに潜って敵を倒してロボットのパーツを手に入れて強化していく,いわゆるハック&スラッシュね。この“ハクスラ要素を気軽に楽しませる”というのが,まさにこのゲイムのコンセプトで,それに忠実な作りになってるわけ。そこから客層を開拓するためのグラフィックスだったりボイスだったりが盛り込まれていて。つまるところ,“気軽なハクスラ”から始まって,そこから外側に広げている印象なのよね。
城で例えるならば,小城ですよ。でも,小城なりの役割をきちんと果たした,コストパフォーマンスが非常にいい名城なんじゃないか。私はそう思うの。もちろん,プレイする側からすると,そのゲイムにかけられている予算だったり,人員だったりは関係ないわ。でも,そういう意味でも一定以上は楽しめる作品ではあるの。
生臭いことを言うと,税込み価格の2000円分はばっちり楽しめる。一生遊び続けられるようなゲイムではないかもしれない。でも,ある程度のところまでは楽しい。そんな具合に落としどころが絶妙なゲイムなのよ。もし興味があれば一度プレイしてみてはどうかしら。及第点をちょっと超える。そんな感じのゲイムです。いわゆるヌルゲー。難しくはない。比較的思いどおりに行くようなゲイムをしたい気分ならばぜひ。
……って意味で,冒頭に“ぬるめ”なんて言葉を使ってみたわけですが,よくよく考えたら私,お酒は飲めないから燗の温度が高いのと低いのとどちらがいいか分かんなかったわ。ただ,プレイしやすい,飲みやすい,見やすい,分かりやすいものが好きな傾向にあるのは確か。この連載も含めてなんだけど,自分が提供するものはなるべく,ぬるく飲みやすい温度にできればいいな。……と,比較的きれいにまとまった風で今週はお別れしたいと思います。ではまた来週!
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「三國志13 with パワーアップキット」
PlayStation Vita:「ダマスカスギヤ 西京EXODUS」
Nintendo Switch:「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」
ニンテンドー3DS:「マリオスポーツ スーパースターズ」
iOS:「実況パワフルサッカー」
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- 関連タイトル:
ダマスカスギヤ 西京EXODUS
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