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男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第482回「勇気をありがとう,『レイルウェイ エンパイア』」
ビジネスの世界の場合は,お金を多く生み出したものが強い。そして,物事を決めていくのも多くの場合が多数決で決まる。TVの世界でも視聴率というものが大きな力を持っているし,エンターテイメントの世界では多くの人を動員したほうが正義とされがちだわ。これが世の中の基本なの。
でも,人間の面白いところはね。それぞれ一人一人が違う意思を持っているってこと。世の中の基本は数なんだけど,自分が多数派ではないこともけっこうある。
例えば,味なんかがそうでしょうね。みんながおいしいって言うラーメン屋が,自分には合わないってこともある。確かにおいしいのは理解できるんだけど,一番好きな味とは違うってこともあるでしょ。そういうこと。だから,エンターテイメントにおいて「みんなが好き」っていうのはすごいことなのですよ。力があるってことだから。
でも,そうじゃないモノだって素晴らしいんだよ! っていうのが本日のテーマです。
そもそもね,エンターテイメントって面白いから売れるってもんでもないのよね。もちろん,面白さは売れるための要素の一つではあるわよ。でも,それがそのまま売り上げに反映されるわけではない。面白い……厳密に言えば,自分では面白いと感じているモノが,必ずしも売れているわけではないケースってあるでしょ。これが“人それぞれ”の最たる例でしょうね。
以前にもこの手の話をするときにカップラーメンを例に挙げたんだけど,今回も繰り返してみるわ。一番売れているラーメンが一番おいしいということになるならば,カップラーメンが世界で一番おいしいラーメンだって話になる。けど,多くの人はそうは思わないわよね。ただ一方で,カップラーメンはカップラーメンでおいしい必要はあるわけで。
結局,売れることと質ってのは絡み合ってはいるものの,基本的には別の要素なのよね。だから,売れるということはそれはそれで素晴らしいしなかなかマネできないことだけど,商品の内容とはまた別の話。そして,商品の内容に関して言うならば,自分にとって素晴らしいと思えるものは,売れている数など関係なく素晴らしい。自分がどう思うか。食べ物でもエンターテイメントでも,その商品によってどういう体験ができるか。そこに売れている数はそこまで関係ないと私は思うのです。
あえて“そこまで”って付け足したのは,売れているからこそ多くの人と共有できて面白くなるってケースもあるから。まったく関係なくはないのよね。
このゲイムでプレイヤーがヤるべきは,鉄道で都市と都市を結ぶ,もしくは牧場やら鉱山やらの産地と都市を鉄道で結ぶってこと。そうやって都市が発達していくのを楽しむゲイム。
……ね,こうやって文字から伝わってくる情報がすでに地味でしょ? ただね,この過程がたまんないくらいジワジワ楽しいのよ。ヤれることは多いの。多少お金が余計にかかるとしても直線距離で都市を結ぶのか,あるいは山や川を避けて線路をコーディネイトしていくか。そういった時間と手間とお金のやりくりが楽しいのなんの。
こちらは何となく計算してお金を貯めているのに,絶妙なタイミングで技術のオークションが始まって,ついついそこでお金を使いすぎて計画変更を強いられたり。それまでは麦の需要が多かったのに,気付いたら都市が発展していて赤字路線に変わっていたり。
もうホント,ゲイム実況に向かない絵面で面白すぎる。プレイせずに画面をただ見ているだけの人からすれば,1800年代のアメリカの地図を数字付きで延々と見せられてるようなもんだからね。逆に言うと,地図を眺めているのが好きな人,何の目的もなくGoogle マップを見ていられる人は,このゲイム向いているかもしれん。
ともかく,地味面白ゲイム部門では2018年断トツ1位。チュートリアル的なモード「キャンペーン」でも難しいとか,洋ゲイあるあるのテキストサイズが小さいとか,そこら辺の真っ当な不満なんて,確かに不満ではあるんだけど不満のうちには入らない。もうね,そういうもんだとして飲み込めちゃう。
クセのあるギトギトラーメンと同じ。食ったら次の日にお腹を壊すって分かっているけど食べちゃうでしょ。そういうもんだから。合うか合わないかの世界。で,好きな人にとってみれば至高の作品。
これまた言い方がアレだけど,絶対に天下をとれるほどは売れないと分かっているにも関わらず,この作品を日本語化して発売してくれたユービーアイソフト,ならびにこの作品を生み出してくれたクリエイターの方々,本当にありがとう。100万人の賛辞はないかもしれない。けれども,あなた方の仕事は確実に1人の41歳おっさんの心はつかみました。心から感謝します。いやマジで。
仕事である以上,売れることは目指さなきゃいけないわ。でも,あれもあってこれもあるのが人生の楽しさじゃない。いろんなゲイムがあって,いろんな食べ物がある。どの層に売るか,その志もいろいろあっていい。どれだけ自分を貫けるか,このヤり方でどうやって売るか。志に関してだけ言えば,数なんて関係ないからね。自分の人生ですから。どう生きたいか,どう表現したいかという志が大事。地味でもいいのよ。地味でも面白いゲイムがあるように,地味でも楽しめる人生だってある。派手さだけがすべてじゃない。
レイルウェイ エンパイアから,私は非常に勇気をいただきました。私も志を持って頑張ります。あとは,売れるコツを知りたい。切実に。ではまた来週。
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「レイルウェイ エンパイア」
PlayStation Vita:「GOD WARS 〜時をこえて〜」
Nintendo Switch:「OPUS-地球計画」
ニンテンドー3DS:「牧場物語 ふたごの村+」
iOS:「PUBG MOBILE」
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