男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ：第678回「『海藤正治の事件簿』はコンパクトな『LOST JUDGMENT』」

著者近影

　私，この連載を長くヤらせていただいてますけども，連載の何がいいって連続性なんですよね。私はプロレスラーが基本的な職業で，副業としてライターとしても活動させていただいておりまして。
　とはいえ現在はこの連載くらいでしか文章を書く仕事はないんだけどね。過去に，ごくたまにいただく単発コラムの依頼があったり，何度か数か月の雑誌連載をヤらせていただいたりしたこともありました。それらのお仕事のそれぞれの違いって，まさに連続性があるかないかなのですね。この連載はいわゆる長寿なんで，長い目で見て書くことができる。
　例えば極端な話，「PlayStation 6が楽しみだな，たぶんその頃にはスマホゲイムも据え置き機で遊べるようになっているぞ！」なんて，勝手な未来予想図を描けたりするわけです。で，実際に発売されたときには答え合わせができる。もちろん，その頃まで連載が続いている保証はないんだけどね。
　ただ，長寿連載であるがゆえに「まだ発売されていないあれ，面白そう」だけでも成立するし，その後の「実際ヤってみて面白かった」も成立するわけです。これが単発コラムだとそうはいかない。まず私がどういう奴なのかそれとなく説明しなきゃいけないし，「面白そう」までは言えても，それ以上の無責任な情報は流せない。ネタやギャグとしてなら別だけど。
　短期連載も似たもんで，まだなじみがないから常に初めましての読者を想定しなきゃいけないわけですよ。雑誌の場合なんて，前号はもう店頭にはないことがほとんどだしね。だから連続性はあまり組み込めない。
　何が言いたいかと言うと，前回の答え合わせってことですよ。前回は，このところゲイム迷子で何遊ぼうかなあって話をして，候補としていくつかのタイトルを挙げました。そして今回，結局のところ今週は何を遊んだのかをご報告しよう。と，そういうわけでございます。

　もうね，ケツ論から言います。「LOST JUDGMENT：裁かれざる記憶」（PlayStation 5 / Xbox Series X / PlayStation 4 / Xbox One）の追加ダウンロードコンテンツ，「海藤正治の事件簿」を遊びました。
　連載の何がいいって，謝れることだよね。先週記事で挙げた候補から選ばなくても，謝る機会があるっていうのは連載だからこそ。自分でも思うのよ。先週の記事は何だったんだ，と。ただ，追加コンテンツが2022年3月28日配信だったということを知らなかったのだから仕方がない。先週紹介したタイトルも全部買えるわけじゃないんだから仕方ないじゃん！　時間もお金も有限なんだってば！　このDLCの存在を知っていたらきっと迷わなかったし，知らないものは候補に挙げようがない！　……あれ？　私，結局のところ全方位に失礼な感じになってない？

　というわけで，「海藤正治の事件簿」のお話です。これ，ハッキリ言いましょう。コンパクトなLOST JUDGMENTです。LOST JUDGMENTって，木村拓哉さんが主演を務め，ほかにも多くの有名俳優さんが出演したことで有名になったタイトルじゃない。でも，今作にはいわゆる有名な俳優さんは出てきません。じゃあ面白くないのかと言われると，私はこう答えましょう。「そんなことはない」と。
　LOST JUDGMENTの主役は，木村拓哉さん演じる八神隆之。一方，今回のDLCの主役はタイトルどおり声優の藤 真秀さん演じる海藤正治。八神の相棒，海藤さんにフォーカスした内容なのです。


　ゲイム内容を羅列していきましょう。サブストーリー的なものがない。ミニゲイムもだいぶ絞られている（個人的には麻雀がなかったのは物足りない）。シナリオは全4章。こんなところ。DLCに出てこないキャラクターが多いのは，いわゆる大人の事情でしょう。それによるスケールダウン感は否めない。ただ！　ストーリーはやっぱり面白い。ここがオススメできるかどうかのラインになってくるでしょうな。
　ストーリーが全4章ってことで，大きく風呂敷を広げることはないものの，それでいてしっかりと展開がひっくり返るところもあるし，「悪とは？　正義とは？」という，本編と共通したテーマも描かれている。
　個人的に印象に残ったのは，「法的にも倫理的にも問われるところはあるでしょう。それでも思いは止められないしそれ自体は尊重されるべきだ（意訳）」ってシーン。どういうシーンかはプレイして確かめてほしいんだけど，要するに「人間には感情があって，それは『正義』では割り切れないものだよ」っていう，ゲイムからのメッセージだと私はとらえたよ。
　感情や想いを抱くまではそれぞれが尊重されるべき（人間は一人一人違うのだから内面までそろえる必要はない），そこからの言動には責任が伴う（言葉や行動は誰もが共有することになる）。その基準となるのが法じゃないのか。
　このDLCでは探偵業務に裁判シーンは出てこないけど，このシリーズが伝えようとしているメッセージは，しっかりと描かれているとプレイしてみて思った。最終的には都合良くまとまりすぎじゃないの？　というようなことは，シリーズファンとして思わなくもなかったけど，それもまあプレイしてそれぞれが考えることなのかな。ともかく，ミニマムな形でのシリーズ最新作としてはとても満足できる内容でした。新規で，というよりはLOST JUDGMENTを遊んだ方は，これもヤってみていいんじゃないでしょうか。


　それにしても，DLCっていいシステムよね。コストを抑えつつ，好きなゲイムの世界の続きを体験できるから。これも，新しい形の連続性。新作を買うのではなく，本編が気に入ったのであれば追加して買う。ライター業にとって連載には連載，単発には単発の表現方法があるように，ゲイムにも新作には新作の，DLCにはDLCの表現方法がある。
　ゲイムのあり方にも多様性が生まれてきたなあ……と，実感した今週でした。なので，来週もこの連載はありますよ。それでは，また。

今週のハマりゲイム
PC：「METAL DOG」
PlayStation 5：「LOST JUDGMENT：裁かれざる記憶」追加DLC「海藤正治の事件簿」
Nintendo Switch：「トライアングルストラテジー」
iOS：「ロードモバイル」
iOS：「ウイニングイレブン カードコレクション」

■■男色ディーノ（プロレスラー）■■ 男色“ダンディ”ディーノ選手が所属するDDTプロレスは，今週末の4月10日に東京・後楽園ホール大会「April Fool 2022」を，開催します。ディーノ選手は飯野“セクシー”雄貴選手，今成"ファンタスティック"夢人選手とのKO-D6人タッグ王者として，佐々木大輔選手＆藤田ミノル選手＆MJポー選手と3度目の防衛戦に挑む予定です。ディーノ選手は「防衛したうえでぶっつぶす」と語っていました。