連載
インディーズゲームの小部屋:Room#227「Botanicula」
4月に入社した新社会人の皆さんも,今日あたりに支給される初任給の使い道をあれこれ考えている時期ではないかと思いつつお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第227回は,Amanita Designの「Botanicula」を紹介する。本作は森の生き物(?)達を操作して,彼らが住処としている木の“最後の種”を守るために冒険する,ポイント&クリック形式のアドベンチャーゲームだ。筆者も昔は君達のようなフレッシュマンだったんだが,膝に矢を受けてしまってな……。
Amanita Designといえば,本連載の第110回で紹介した「Machinarium」を開発したチェコの独立系デベロッパ。Machinariumは,おんぼろロボットが鉄さびたスクラップのような町を探索していくというポイント&クリックアドベンチャーで,その独特のビジュアルアートと世界観にマッチした見事なサウンドで,IGF 2009のExcellence in Visual Artを始めとする数々の賞を受賞している。
そんなAmanita Designの3年ぶりの新作ゲームとなるBotaniculaは,打って変わって色鮮やかな森の木の上が舞台。しかしそこへ,真っ黒いカビのようなものが現れて,木を枯らし始めたから,さあ大変! カビの魔の手から逃れた最後の1粒の種を守るため,森の仲間達が力を合わせて冒険するというのが本作のストーリーだ。
もちろん,Amanita Designならではの繊細で緻密なアートワークは本作でも健在。主人公達は,(たぶん)ドングリやキノコや小枝といった,正体の定かでない5体のキャラクターで,ワイワイキャーキャーと賑やかな彼ら(?)一行を操作してゲームを進めていく。彼ら以外の登場キャラクターも,何かの虫や木の実やカタツムリなどで,ヘンテコなロボットしか登場しなかったMachinariumとは,まさに正反対のヘンテコな雰囲気だ。
ゲームはごくオーソドックスなポイント&クリックアドベンチャーで,行きたい場所や調べたいオブジェクトをクリックするだけの簡単操作で楽しめる。あまりにも簡単すぎるので,書くことがなくて困るほどだ。どの仕掛けやパズルも,気づいてしまえばそれほど難しいものではないが,なまじ細部までグラフィックスが描き込まれているため,どこが怪しいのかかえって分かりにくいのが,人によっては気になる部分かもしれない。
また本作の特徴と言えるのが,本筋の謎解きとは無関係な仕掛けが山ほど隠されていること。しつこくクリックすると反応が変わる生き物やギミックもあるので,あちこち調べてみるといいだろう。さらに,IGF 2012でExcellence in Audioを受賞した本作のサウンドトラックは,同郷チェコのオルタナティブバンドであるDVAが手がけており,こちらも耳に残る楽しい仕上がりになっている。
本作は一応,メニューの一部が日本語化されているが,そもそもゲーム本編には文字や言葉が一切使われていないので,絵本のように子供と一緒に楽しむのも良さそうだ。
本作は現在,Humble Bundleキャンペーンの一つとして,自分でゲームに好きな値段を付けられる“pay what you want”形式で販売中。Humble Bundleはプレイヤーの支払ったお金が,ゲームデベロッパと,チャリティー団体のWorld Land Trust,そして運営母体であるHumble Bundle自身に分配されるという企画で,自分でどこにいくらずつ分配するか指定できるうえ,支払った額に応じてさまざまな特典も付いてくる。
今回は,「Botanicula」「Machinarium」「Samorost 2」というAmanita Designの3作品と,それぞれのサウンドトラックが標準でセットになっており,5ドル以上で購入するとゲームクライアントに加えて各ゲームのSteam用のアクセスキーが,そして全購入者の平均金額である8.82ドル(2012年4月24日時点)以上で購入すると,さらにおまけが付いてくる。GOG.comでBotaniculaを単体で購入すると9.99ドルになることを考えると,かなりお得とも言えるので,この機会にぜひどうぞ。
■「Botanicula」公式サイト
http://www.botanicula.net/- 関連タイトル:
Botanicula
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