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インディーズゲームの小部屋:Room#465「Detention」
はた目には不要に見えるものまで溜め込む癖のある筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第465回は,台湾のRed Candle Gamesが開発した「Detention」を紹介する。本作は,呪われた学校に閉じ込められてしまった学生となって,悪霊が徘徊する校内からの生還を目指すというホラーアドベンチャーだ。いやほら,キレイな紙袋とか,あとで使うかもしれないし……。
人里離れた山の中にある翠華高等学校。授業中に居眠りをしていた男子学生のウェイが目を覚ますと,すでに教室には誰もおらず,校内にはまったく人気が無い。どうやら台風が接近しているため,ほかの人は先に帰ったようだ。急いで帰宅しようと体育館を通り抜けたウェイは,そこで一人の女子学生,レイと出会う。2人は共に校舎を出たものの,1つしかない橋が流されていたため,やむを得ず教室で台風が通り過ぎるのを待つことにしたのだが……。
というわけで,ゲームの序盤はウェイを操作して校内を探索することになる。しかし,本作の真の主人公はレイのほうで,とある出来事のあとに操作キャラが交代し,彼女を中心としたストーリーが展開される。本作は国民党政権による戒厳令下に置かれていた1960年代の台湾を舞台としており,台湾独自の文化や東南アジアの怪談などの要素を取り込んでいるのが大きな特徴だ。
本作は横スクロールのポイント&クリック型アドベンチャーゲームで,操作はすべてマウスで行う。退色したカラー写真のような,独特の風合いで描かれた不気味な校内を探索し,謎解きの手がかりを集めながら先へ進んでいくというのが基本的な流れだ。
ただし,校内には悪霊が徘徊しているので一筋縄にはいかない。こちらには悪霊と戦う手段がないため,もし出会ってしまったら,右クリックで息を止めてやり過ごしたり,お供え物を置いて悪霊を引きつけたりして突破しよう。
画面から怨念が滲み出てきそうな,これぞ“アジアンホラー”なじっとりとした恐怖を味わえる本作だが,1960年代の台湾という時代背景を反映したストーリーにも注目したいところ。いわゆる「白色テロ」と呼ばれる,当局による不当逮捕や厳しい言論統制が行われていたこの時代,多くの市民が投獄,処刑されており,それが本作のストーリーとも深く結び付いている。
ゲームの終盤は,ホラーというよりミステリーのような趣で,レイと家族の関係や,かつて校内で起こった呪われた事件の謎が解き明かされていく。現時点では日本語に対応していないため,ストーリーを十分に楽しむにはある程度の英語力(もしくは中国語力)が必要だが,プレイ後にあらためて当時の事件を振り返ってみたくなる,深く心に残るストーリー展開は秀逸だ。興味を持った人はぜひ遊んでみてほしい。
ちなみに,公式Twitterによると日本語体験版も用意されているようで,そのスクリーンショットも合わせて公開されているが,記事執筆時点では公式サイトのどこを見てもダウンロード用のリンクが見当たらない……。ともあれ,今後のアップデートでの日本語対応に期待したいところだ。そんな本作は,Steamにて1180円にて発売中。オススメです。
■「Detention」公式サイト
http://redcandlegames.com/detention/?lang=jp- この記事のURL:
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