レビュー
スーパーリアル戦場シミュレータがPCに登場
ARMA2 日本語マニュアル付 英語版
» ハードでシビアなFPS「ArmA: Armed Assault」の続編,「ARMA2 日本語マニュアル付 英語版」が本日(7月31日)ズーからリリースされた。ハードでシビアなFPS「Operation Flashpoint」シリーズを制作したBohemia Interactiveが開発を担当した本作だけに,当然ながら,カジュアルでマイルド,うしろに撃っても敵にあたる……というゲーム性であるわけがないのだ。ライターの梅本氏がそんな本作に挑戦した。
一見さんお断りのスーパーリアルコンバットシミュレータ,「ArmA II」
いわゆる「FPS」というジャンルに属するタイトルには,ゲーム性を前面に出したものが多い。リアルさからは遠のいてしまうものの,人間離れした動きや物理法則を無視した特殊能力などがゲームを盛り上げる要素となっており,FPSといえばこの手の作品を想像する人が多いかもしれない。
しかし同じFPSといえど,まったく正反対のベクトルを持った一連のタイトルも存在する。ゲームとしての爽快感より,リアルな世界,リアルな人間の動き,そしてリアルな武器や兵器にこだわり抜いたそれらの作品群は,もはや“コンバットシミュレータ”と呼ぶべきかもしれない。ズーから本日(7月31日)発売された「ARMA2 日本語マニュアル付 英語版」(以下,ArmA II)も,そうしたリアル系FPSの1本である。しかも,とびっきりのリアル系だ。
パッと見,実写と見紛うほどのクオリティ。この状態で快適にプレイするには,やはりそれなりのパワーを持ったPCが必要だ |
キー一つで一人称画面と三人称画面を切り換えられる。通常は一人称,車両に乗ったら三人称など,状況に応じてに使い分けよう |
リアルさゆえのもどかしさ。だがそこが楽しい
静止画像を眺めるぶんには一般的なミリタリーFPSに思えるArmA IIだが,実際にプレイしてみると,いつものFPSとの操作感覚の違いは大きい。本作のデベロッパであるBohemia Interactive Studioのほかの作品,「Operation Flashpoint」や「ArmA: Armed Assault」をプレイした経験のある人は問題ないだろうが,そうでない場合はプレイ感覚の微妙な違いに戸惑うかもしれない。
例えば,視界の操作一つとっても,マウスの動きに対して画面が瞬時に追随せず,ワンテンポ遅れるようなタイミングで振り向くのだ。非常に人間臭い反応速度ではあるのだが,とくにスポーツ系FPSの挙動が染みついている人にとっては,もどかしくて仕方がないかもしれない。
とはいえ,リアルさという観点からすればこちらのほうが忠実なわけで,こういうものだと思ってプレイしているとだんだん違和感がなくなり,プレイスタイルも自然とそれになじんでくるから不思議である。敵を発見したら発砲するよりまず身を隠す場所を探し,遮蔽物が見あたらなければとにかく草むらに伏せることが最優先。棒立ちで発砲したり,リロードしたりなんてことも,恐ろしくて絶対にできなくなる。
最初はちょっといらだたしく思えるが,一つ一つの行動がやけにリアルさを帯びているぶん,説得力があって,ミリタリー好きならば必ずシビれること間違いなしだ。
また,オンラインのマルチプレイFPSでおなじみの,ピョンピョン跳ね回って敵弾をかわす動作だが,もちろん本作でそんなことができるはずがない。現実に不可能な動作は,ほぼゲーム中でも不可能だと思ったほうがいいのだ。
とはいえ,リアルさにこだわるあまり,そこまで足かせをはめてしまって,ゲームとしてのデキに問題はないのかと不安を抱く人も多いはず。要は,どこに楽しさを求めるかであり,FPSに爽快感を求める人には,正直なところ本作はオススメしにくい。
しかしながら,戦場の緊迫感を味わったり,生き残るため遮蔽物から遮蔽物へ必死に走り回ったり,敵のキャンプを探して森をさまよったりすることにただならぬ高揚感を覚えてしまうような人には確実にオススメだ。万人向けでないことは間違いないので,購入を悩んでいる人は自分の趣味嗜好をよく考えよう。
フィールド,人,兵器,すべてにリアルさを追求しようとする意気込み
ArmA IIは現代戦を描いた作品だが,舞台となる旧ソ連領「Chernarus」という国は架空のものだ。とはいえ,実際の(どこかの)地形/植生データを元にして構築された225平方kmにもおよぶ広大なフィールドは,実在すると言われてもまったく違和感がないほどである。寂れた村のたたずまいや,その周囲に広がる山林の様子など,何かのドキュメント番組で目にしたような光景だ。
そんな土地で繰り広げられるのは,アメリカ海兵隊が支援するChernarusの防衛軍と,ロシアが支援する反乱軍との激しい内戦だ。現在でもあちこちで起きている状況であり,そうした生々しさが,架空の国でありながらもリアルに感じられる要因になっているのかもしれない。
特筆すべきは,アメリカ軍やロシア軍の銃器や車両などが忠実に再現されていることで,ミリタリーファンにはたまらないものとなっている。銃器は全部で70種類以上,乗り物に関しては自転車から戦闘機まで100種類以上が登場する。
また,本作の売り文句の一つに「AIの賢さ」が挙げられているのだが,これもやはりリアルな戦いには不可欠な要素だ。NPCといえど決まったルートを巡回するような単純な行動パターンはとらず,その場の状況に応じて索敵を行ったり,遮蔽物を利用して応戦したりするので,同じミッションの同じ場面でも同じ行動をとるとは限らずなかなか手強い。棒立ちで撃ち返してくるような敵も少なく,とにかく非常に人間臭さの漂う動きで,戦場の駆け引きを楽しませてくれる。
しかし,賢さゆえの難点がないわけではない。オペフラゆずりのNPCは射撃精度が一様に高く,見つかったが最後,被弾は免れないという場面が多い。かなりの距離があってもピンポイントでやられてしまうので,手も足も出なかったりすることもあるのだが,このあたりはゲーム性とリアルさのバランスをとる上で一番難しい部分だろう。仲間とうまく連携した戦いに慣れるまでは,シビアな戦いがストレスになりかねない。あらかじめ覚悟して挑んだほうがよいだろう。
新兵は,Boot Campモードを完璧にこなすべし!
本作のシングルプレイには「Campaign」や「Scenario」など多彩なモードが用意されているが,リアル系FPSが初めてかどうかに関わらず,まず「Boot Camp」からプレイすることをオススメしたい。
これはいわゆるチュートリアルなのだが,ゲームに不慣れなうちは,最初の任務さえクリアできずに終わってしまうほどの難度を持っている本作であるため,このモードが突破できなければ,本番でつまずくことは必至だ。
Boot Campは,基本的な移動方法や射撃訓練から始まり,パラシュートジャンプや,戦車,ヘリ,戦闘機の操縦,そしてチームへの指示方法などが学べるようになっている。
基礎となる操作はほぼ体験できるわけだが,やるべきことの多さに比例してコマンドの数,押すべきキーの数もかなり多い。一度プレイしただけでその操作を体に覚えさせるのは無理があるので,自信のない部分については二度,三度とチャレンジしておきたいところだ。
とくに基本操作として,「何かしらの行動をとる場合は,その対象物を画面のセンターにもってくる」という動きが必要になるのだが,これを忘れていると任務遂行に支障をきたす場面も出てくるため,しっかり癖をつけておいたほうがよいだろう。
またチームへの指示も任務遂行のための重要なファクターであり,こちらも十分に理解できるまで繰り返すことが望ましい。
パラシュート降下は細かい操作が利かないうえに,着地ポイントから少しでも外れたら失敗となる。思った以上に難しい |
対象物を画面の中心に持ってくると,それに対して使用可能なコマンドが表示される。物を拾うときなどにもこの動作が必要だ |
Campaignモードの臨場感と難度に悶絶せよ!
プレイヤーはアメリカ軍強行偵察部隊“Razor”の一員となってChernarusの地に降り立ち,ロシアの息がかかった反乱軍を制圧するため任務を遂行していくこととなる。Campaignモードはストーリー性が高いだけでなく,要所要所で行動の選択を迫られることがあり,その選択次第で戦況が変化していくなど,非常に内容の濃いものに仕上がっている印象。
ネタバレになってしまうので詳細は伏せるが,銃撃戦だけをうまくこなせばいいわけではなく,地道な任務も的確に遂行していくことが求められるのだ。
捜索任務などでは,かなり大雑把に示されたエリアを細かく調べなければならず,射撃の腕前よりも忍耐力が試される。また,村人に話しかけて情報を聞き出す必要があるなどロールプレイング的な要素も含まれており,任務達成のためには自分で考えて行動していかなくてはならない。そのうえ,目的地にたどり着いたとしても勝手に物語が進んでくれるとは限らないので,普通のFPSのように逐一解答が示されるのを期待していると,行き詰まってしまうだろう。数少ない情報を頼りに困難な任務に立ち向かっていく,といえば聞こえはよいが,その難度は想像以上であり,違った角度からも戦場のリアルさと厳しさを味わわされる瞬間だ。
最近のFPSはコンシューマ版と同時開発の作品も多く,コンシューマ層にターゲットを合わせているタイトルはかなり優しい作りになっていたりするが,そのヌルさが我慢ならないという人なら,本作のCampaignモードの突き放し具合は逆に燃える要素となるだろう。
PCスペックと英語力
その二つの壁を越えることが最初のミッション?
リアルさを追求する内容だけに見た目もリアルであることが求められ,PCのスペックもそれなりのものが要求される。
CPUに関しては最低でもデュアルコア,できることならクアッドコアが望ましいということなのだが,この時点ですでにハードルをまたぐのがやっとという人が,筆者も含めて大半なのではないだろうか。
さらにグラフィックスカードにおいては,Shader Model 3.0に完全対応した,グラフィックスメモリ256MB以上のものが最低限必要であり,512MB以上が望ましいとされている。要するにここ1〜2年の間に発売されたグラフィックスカードでなければ表示もままならず,チップセット内蔵型やメモリ共有型のものはそれこそ論外ということだ。若干気合いの入ったPCでなければリアルさを堪能できないまま撃沈しまうので,パワー不足が否めない場合は懐具合とご相談のうえ,なんとか解決していただきたい。
そしてもう一つ立ちはだかるのが,やはり英語の壁だ。次に進むべきポイントが逐一示される親切なFPSが増えているが,本作はいちいち細かなタスクが出されるわけではなく,与えられた任務を達成するまでの手順はプレイヤーに委ねられる場合がほとんど。それだけに任務開始時のブリーフィングはしっかり聞いておく必要があるし,マップ画面から確認できる情報も理解していないと,目的地に着いたところで何をすべきか分からず,路頭に迷うことになる。
さらに,仲間とのラジオチャットで敵の位置などの報告が頻繁に交わされるため,リアルタイムでの情報取得が行えないと任務遂行に支障が生じる可能性も大きい。大半のFPSは「やってみればどうにかなる」という雰囲気なのだが,このArmA IIに限ってはそれが当てはまらないため,しっかり英語と向き合う覚悟が必要だ。
このほか,筆者も何度か遭遇したバグの問題も,あちこちのフォーラムでレポートされているようだが,これについてはパッチによる修正に期待するしかない。
このように,乗り越えるべきハードルが多めだが,本当にミリタリーものが好きだという人ならば,挑戦する価値は十分にある作品だと断言できる。
戦闘中,ラジオチャットのやりとりを把握するだけでも必死な筆者だが,そこへ本部からの連絡が飛び込んできたりするともう混乱状態 |
今回のレビューでは触れられなかったが,マルチプレイモードはもちろんのこと,ミッションのエディット機能も搭載されている |
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