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「11nmプロセスまでは自社だけで実現できる」。インテル,製造開発部門のロードマップを披露。筑波本社のラボも一部公開に
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印刷2009/08/21 10:30

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「11nmプロセスまでは自社だけで実現できる」。インテル,製造開発部門のロードマップを披露。筑波本社のラボも一部公開に

 Intelの日本法人であるインテルは2009年8月20日,報道関係者を対象とした技術説明会「インテル テクノロジープレス・セミナー」を,茨城県つくば市の同社筑波本社で開催した。
 今回のメインテーマは,インテルの製造開発部門。直接的なPCゲームとの関連はまったくないが,技術的にはかなり興味深いものだったので,特別にレポートしてみたいと思う。


Intelの屋台骨を支える製造開発部門,

その現状まとめ


画像集#002のサムネイル/「11nmプロセスまでは自社だけで実現できる」。インテル,製造開発部門のロードマップを披露。筑波本社のラボも一部公開に
阿部剛士氏(インテル 取締役 技術開発・製造技術本部 本部長)
画像集#003のサムネイル/「11nmプロセスまでは自社だけで実現できる」。インテル,製造開発部門のロードマップを披露。筑波本社のラボも一部公開に
阿部氏が示した,(半導体受託製造企業を除く)半導体企業の売り上げランキング,2008年版。TMGは,ダントツの首位を走るIntelの屋台骨を支えるグループというわけだ
 説明会は,インテルの阿部剛士取締役が,Intel/インテルの製造技術部門が持つ将来の展望や現状の課題をまとめる形で行われた。
 阿部氏の所属する技術開発・製造技術部(Technology and Manufacturing Group,以下TMG)は,全体で8万4000人ほどいるIntel社員のうち,半数以上を占める4万8000人という大所帯。その名称どおり,「Fab」(ファブ)と呼ばれる製造工場や,製造に関連した技術開発に携わる部門だ。

 「Fabのない日本に,なぜTMGが存在しているのか?」という疑問はもっともだが,これについて氏は,「日本には,有数のサプライヤーが多くあるから」と説明する。氏のいう「サプライヤー」とは,半導体製造装置やテスト装置,素材など,IntelがCPUやチップセットなどを作るために必要な機械/素材メーカーのこと。「ムーアの法則を下から支える日本のサプライヤーは大切なパートナー」(阿部氏)で,そういった国内メーカーとの連絡を取るために,TMGのスタッフが日本に常駐しているとのこと。国内には,およそ100名のスタッフがいるようだ。

45nmプロセス技術に対応するFabは4か所。中国に建設中のFab 68は,2世代前のプロセスを使うそうだ。「その理由は詳しくは言えませんが,中国ですから(笑)」
画像集#004のサムネイル/「11nmプロセスまでは自社だけで実現できる」。インテル,製造開発部門のロードマップを披露。筑波本社のラボも一部公開に
 TMGの位置づけを説明した氏は続けて,最新の45nmプロセス技術に対応する,世界4か所のFabを紹介し,同技術の立ち上げを振り返った。
 Intelは新しい製造技術を,米オレゴン州にある「D1D」というFabで開発する。そして,それが安定した段階で,それをそっくりそのまま,別の場所にコピーするという,「Copy exactly」ポリシーを採用している。「新しいプロセス技術が“固まる”には,1年から1年半が必要」(阿部氏)で,それが済み次第,D1Dで確立した技術を,工程の機材レイアウトや,それこそ装置のリビジョンまで,完全にコピーしていくのだ。それにより,現在は,米国内3か所,イスラエルに1か所の計4か所で,45nmプロセス技術に基づいた半導体の製造が行われている。
 ちなみにIntelは現在,Fabをアジアで展開する計画の途上にあり,中国の大連市にFab 68を建設中であるほか,ベトナムのホーチミン市にも「相当大きい規模の」(阿部氏)をFabを計画しているとした。


「2桁台の製造プロセスは,Intelだけで行ける」

これからは後工程にスポットライトが当たると予告


 ゲートの絶縁にはHigh-k素材が,また電極にはメタルが使用されている。
 ゲートというのは,トランジスタのスイッチ機能を実現する部分で,LSIに使用されるMOSFETが誕生した当時からずっと,電極には多結晶シリコン(Poly-silicone)が,また絶縁素材には酸化シリコン(SiO2)がそれぞれ使用されてきた。このゲートはまさにトランジスタがトランジスタとして機能するキモの部分だけに,阿部氏は「ゲートを変えると何が起こるか分からない」と述べ,素材の変更は大きなチャレンジだったとした。
 実際,High-kメタルゲートは,「10年以上前から仕込みが始まっていた」(阿部氏)というほど,長く研究開発が進められてきたそうで,ようやく,45nmプロセスで実用化されたわけである。

表中で丸く囲まれている部分が,45nmプロセスで変更になったゲートの素材だ。FET誕生当時から長らく利用されてきた多結晶シリコンと酸化シリコンに代わって,45nmプロセスではメタルとHigh-k素材が使用されている。この変更はトランジスタの特性を大きく変えかねないだけに,「大きなチャレンジだった」わけである
画像集#005のサムネイル/「11nmプロセスまでは自社だけで実現できる」。インテル,製造開発部門のロードマップを披露。筑波本社のラボも一部公開に

 次の世代はどうなるだろうか?
 阿部氏は下のスライドを示したうえで,「TMGでは,2桁(ナノメートル)のうちは,Intelだけで,技術的にも財務的にも行けるのではないかと考えている」と,かなり強気な見通しを語る。
 Intelは最近「Tick-Tock」戦略に基づき,2年ごとに半導体の製造プロセスを大きくシュリンクさせているが,2016年に量産が始まる予定の16nmプロセス技術までは,“自前”でなんとかできると,ある程度の予測ができているのだろう。

Intelが計画しているプロセス技術の革新ロードマップ。2014年の16nmでFinFET(※ゲートが縦型の構造を持つ新しいトランジスタ)に切り替わるようにも取れるが,阿部氏いわく「これは決定事項ではなく,『そうなるかもしれない』程度の予測」とのことなのでご注意を
画像集#006のサムネイル/「11nmプロセスまでは自社だけで実現できる」。インテル,製造開発部門のロードマップを披露。筑波本社のラボも一部公開に

 では,1桁台プロセス時代はどうなってしまうのか。ゲートが“原子数個”といった大きさになると,諸般の事情からゲートとして機能しなくなってしまう。いわゆる物理的な限界を迎えるのだが,それに向けたIntelのスタンスは「限界が来るまでは(このまま)がんばろう」というものだそうだ。
 半導体企業の多くは,先端プロセス技術に対応したFabを自社だけで抱えられなくなってきている。それだけに,「限界が来るまでは,自社でなんとかする」という姿勢は,実に対照的なものといえる。

今後10年間に予想されるさまざまなチャレンジ。微細化に加えて,製造工程(アセンブリ)やテスト工程にも大きなチャレンジが待ち受けているという。また,シリコンや銅,メタルなどに加え,新たな素材の利用も必要になってくるだろうと阿部氏は語っていた
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 また,次の10年には,「前工程」だけでなく,「後工程」も難しくなると,阿部氏は指摘する。
 ここでいう前工程とは,シリコンにLSIを作り込んでダイを製造する工程のことで,平たく言えばプロセス技術そのもの。対する後工程というのは,出来上がったダイが正常に機能するかテスト行い,ダイを,CPUソケットなどに装着できる「パッケージ」に収める工程のことだ。

 「ピン数が増える一方,小さなパッケージが求められるようになっているため,後工程は二重苦三重苦」(同氏)。どうしても,プロセス技術がスポットライトを浴びがちだが,今後は,これまであまり注目されていなかった後工程でも,大きな革新が必要になるという。
 実際,TMGでは現在,さまざまなパッケージを検討しており,なかには「(従来の常識からあまりにも外れているため)ウソ!? というようなものもある」と阿部氏。なかなか期待が高まるが,それが姿を見せるのは,おそらく早くても5〜6年先の話になるはずだ。


32nmは「何の問題もなく立ち上がる」

新興市場が今後のカギに


32nmプロセス世代では,45nmプロセス世代と比べてスイッチング速度が22%向上するほか,アイドル時の消費電力は最大で10分の1に抑えられると謳われる
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 直近の話だと,Intelは32nmプロセス技術を2009年中に立ち上げるが,阿部氏は大変順調であるとアピールする。「何の問題もなく立ち上がってくれるだろう」。
 ただし、半導体業界が順風満帆かというとそうではない。昨年からの未曾有の経済危機からの影響は脱しつつあるが,MPUの単価は下がり続けているという。

やや分かりづらいが,折れ線グラフがプロセッサ(MPU)の販売数量,棒グラフが各地域のプロセッサ販売総額を足したもの。販売数が右上がりになりつつも,販売総額は頭打ちの状況が長期に亘(わた)っている。要するに,プロセッサの単価が下がっているわけだ
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 単価の下がり方は「NANDやDRAMよりはマシ」ではあるものの「これほど長期にわたってMPUの単価が下がり続けたことは過去に例がない」と阿部氏。半導体業界に新たなチャレンジが課せられているが,この状況において,Intelは,積極的な投資により,技術的な優位性を維持することに活路を見いだしていく。これはIntelの元会長,Craig Barrett(クレイグ・バレット)氏が示した「厳しいときにこそ投資を行う(と,景気が回復したときに大きなリターンを得られる)」という指針に従ったものだと,氏は説明する。

 また,「Emerging Market」(エマージングマーケット)と呼ばれる新興市場では,成熟市場と比べて労働者一人ひとりの収入が低いため,低価格な製品が強く求められているが,こうした市場にも「進出していかざるを得ない」と氏は述べる。
 市場で求められている低価格な製品を実現するためにはコスト削減が欠かせないが,阿部氏によると,Intelはこれまで,「湯水のようにお金を使う企業」だったそうだが,これからはコスト削減にも積極的に取り組んでいくと述べていた。


筑波本社のラボがちょっとだけ公開に

〜PCメーカーの厳しい要求に対応


本意味段落の写真は,すべてインテルから提供を受けたもの。本文とは必ずしも関連していないので注意してほしいが,上は,クライアントPCラボにある,半無響仕様の音響測定室。下は,音響関連の測定機材。単なる音圧レベルの測定に留まらず,コンデンサやインバータの“鳴き”など,人間にとって不快な音の分析・研究なども行っているとのことだ
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 セッション後には,部外者は入ることがめったに許されないラボを見学する機会が得られた。
 今回,報道関係者に公開されたのは,クライアントPC,UMPC,サーバーのラボ。残念ながら,写真の撮影は許可されなかったため,本文と対応した写真はお見せできないが,今回は三つの中から,4Gamer読者と最も関連が深いデスクトップPCのラボについて,見てきたものを文字ベースでお伝えしたい。

 さて,クライアントPCのラボでは,主にPCの熱,電圧(≒消費電力),音に関して重点的に試験を行い,Intel/インテルの重要な顧客である国内PCメーカーの製品設計・開発を支援しているという。
 ラボでは実際に,Core i7プロセッサを用いて「Intel Turbo Boost Technology」(以下,Turbo Boost)のデモが行われた。ここでは,Intelの内部ツールを用いて,1コアだけに負荷をかけたとき,1コアだけきっちりと2bin(=ベースクロックで2段階分)上がることが示されたほか,4コアすべてがC6ステートに入ると,コア部の消費電力が0.15〜0.18W(※アンコア部もあるので,これがCPUの消費電力すべてではない)まで落ちることなどが示された。

画像集#012のサムネイル/「11nmプロセスまでは自社だけで実現できる」。インテル,製造開発部門のロードマップを披露。筑波本社のラボも一部公開に
画像集#013のサムネイル/「11nmプロセスまでは自社だけで実現できる」。インテル,製造開発部門のロードマップを披露。筑波本社のラボも一部公開に
 そのほか,CPUパッケージとまったく同じ形状の電熱器(というか,CPUパッケージの内部に,ダイではなく電熱器を内蔵したもの)を用意して,TDPやファンの検証を行えることや,レギュレータ部のテスト用に,電流量を自由に制御できるダミーCPUを用意していることも紹介されたのだが,これらも残念ながら写真なしである。


 実例を写真でお見せできないのが本当に申し訳ないが,インテルの筑波ラボが,PCメーカーと共同で製品開発やトラブル解決に当たっていることは,広報写真からも見て取れるのではなかろうか。海外でのシェアと比べて,国内PCメーカーのIntel製CPU採用率は高いという事実があるが,それは,広告宣伝の効果だけでなく,こうした地道なPCメーカーのサポートにも支えられているのだろう。

  • 関連タイトル:

    Core i7(LGA1366,クアッドコア)

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