連載
極私的コンシューマゲームセレクション:第17回「戦国BASARA2」
» 今回の「極私的コンシューマゲームセレクション」では,新世代機が出揃ってしばらく経つというのに食指を伸ばす気配が全然ない大路政志が,プレイステーション 2の「戦国BASARA2」を紹介する。
アニメファン/女性層にもアピールする
カプコンの一騎当千アクション
「ならば,コーエーの戦国無双シリーズと同じではないか」という向きもありそうだが,そこは,スタイリッシュ英雄(HERO)アクション。無双シリーズとはひと味違った魅力が,ふんだんに盛り込まれている。本稿では,そういった戦国BASARA2ならではの見どころ,楽しみ方などを紹介したい。
まずは本作の概要を紹介しておこう。一騎当千の爽快感が味わえる3人称視点アクションゲームは,コーエーの三國無双/戦国無双シリーズによって,その地位が確立されたジャンルといえるだろう。
基本的に,プレイヤーは戦国武将を操って,無数の敵をバッサバッサと斬り捨てつつ,史実に基づきながらもダイナミックにアレンジされた物語を進めていくという内容となっている。アクションゲームとしては,一人の武将が数百人の敵兵と戦うというダイナミズム/爽快感,歴史ゲームとしては,大胆にアレンジされた人物/歴史考証が注目されている。
現在では,三國無双/戦国無双シリーズをはじめ,三国志+戦国時代(+若干「封神演義」)がテーマの「無双OROCHI」や,一「機」当千アクションともいえる「ガンダム無双」などがコーエーから発売されているほか,キューエンタテインメント/ファンタグラムが共同開発し,ファンタジーをテーマにした「NINETY-NINE NIGHTS」など,さまざまなタイトルが存在している。一つのジャンルとして市民権を得て,今なおプレイヤーの裾野を広げているといって差し支えないだろう。
間口は広いが,奥の深い基本システム
誰でもそれなりに遊べる難度設定が心地良い
本作は,同社のデビル メイ クライシリーズやバイオハザードシリーズの開発に携わったスタッフが参加していることで話題になった。史実にとらわれない自由奔放な人物/世界設定や,ゲームとしての楽しさ/爽快感に特化したゲームデザインなどが,戦国ファンだけでなく,日本史に特別な思い入れのないゲーマーの多くをも魅了している。
基本的な操作方法は,方向キーもしくは左アナログスティックでキャラクターの移動を行い,□ボタンで通常技,△ボタンで固有技,○ボタンで「バサラ技」,×ボタンでジャンプ/受け身/馬の乗り降りを行うというもの。そのほか,R1ボタンでガード(方向キーを組み合わせることで回避)をし,L2ボタンで「戦極(せんごく)ドライブ」という状態へ移行できる。プレイヤーはこれらのアクションを駆使して,数百,数千の敵兵と戦っていくのだ。
スタイリッシュ英雄(HERO)アクションに登場する敵は,人ばかりではない。魔物やカラクリ仕掛けの兵器も登場し,プレイヤー武将を苦しめる |
マップによっては,軍馬に騎乗して戦うことも可能。騎乗すると移動速度がアップするほか強力な攻撃も繰り出せるが,コンボは稼ぎにくい |
バサラ技を使うには,ダメージを与えたり/受けたり,神水や恵比寿樽といったアイテムを取ったりすることで上昇するバサラゲージを,MAXまで溜める必要がある。どこでバサラゲージを溜め,どのタイミングで発動するかという判断は,多勢に無勢の戦いを進めていくうえで,大きなポイントとなる。
一方戦極ドライブは,敵を100人斬るごとに溜まっていく,「戦極ドライブゲージ」が光っている状態で使用できる。戦極ドライブを発動すると,キャラクターの移動力/攻撃力/防御力などが一定時間上昇し,被ダメージ時にも怯まない,俗にいう“スーパーアーマー”状態となる。また,戦極ドライブ中にバサラ技を使うと,通常のバサラ技より威力が高く,発動時間も長い「究極バサラ技」が繰り出せる。
これらを踏まえて実際にプレイしてみると,戦国BASARA2の戦闘は非常にテンポがよく,エフェクトが派手で,遊んでいて気持ちがいい。「戦国無双2 猛将伝」などと比べると,同時に襲いかかってくる敵兵の数が若干少ないかな,という印象も受けたが,それが適度な難度と“工夫してコンボをつなげていく”楽しさを生んでいる。
なお,コンボをつなげていく楽しさに関しては,「バサラフィーバー」というシステムも用意されている。これは,連続して敵を攻撃した回数が100回を超えると,コンボボーナスとして敵から小判がもらえるというシステム。コンボが200回で2倍,300回で3倍,400回で5倍レートの小判がもらえ,500回を超えるとバサラフィーバー状態となり,攻撃力とヒット数が一定時間上昇するうえ,攻撃を当てるだけで小判がザクザクもらえるようになる。
小判は,バサラ屋と呼ばれるアイテムショップで武器や防具,アイテム類を購入するのに必要なお金。本作には購入可能なアイテム類が豊富に用意されているので,少しでも多くの小判を稼ぐために,コンボをつなげる動きを模索したいところだ。
スタイリッシュにもほどがある(?)
奇想天外なキャラクター設定が光る
前作戦国BASARAでも楽しめた「天下統一」「自由合戦」に加えて,武将ごとに5〜6章のシナリオからなる「ストーリーモード」と,全100ステージの勝ち抜き戦が楽しめる「大武闘会」が追加された。そのほか,キャラクターのCGイラストやムービー,戦国豆知識などが閲覧できる「ギャラリーモード」も搭載。ゲームモードのボリュームは大きすぎず小さすぎずといったところで,コーエーの三國/戦国無双シリーズが好きな人にとっては,若干物足りなさを感じるかもしれないが,筆者としてはちょうどいい感じだった。
登場武将一覧
・プレイヤー武将前田慶次/伊達政宗/真田幸村/長曾我部元親/毛利元就/豊臣秀吉/竹中半兵衛/織田信長/濃姫/上杉謙信/かすが/武田信玄/猿飛佐助/前田利家/まつ/ザビー/いつき/明智光秀/森蘭丸/島津義弘/本多忠勝/宮本武蔵
・敵武将
片倉小十郎/風魔小太郎/北条氏政/浅井長政/お市/本願寺顕如/徳川家康/今川義元
戦国BASARA2には22人のプレイヤー武将,8人の敵武将が登場する(武将とは呼べない人物や,オリジナルキャラクターも一部含まれているが)。だが,この登場武将数が多いか少ないかは,本作の魅力を語るうえでさほど重要なことではない(と思う)。個人的に注目すべきは,史実をベースとしながら大胆なアレンジが加えられた,登場武将達のキャラクター設定なのである。
一般的な戦国時代モチーフのゲームを考えた場合,上記のラインナップで考えるならば,最もインパクトのあるキャラクターは,傾奇者(かぶきもの)としてのイメージが強い前田慶次,あるいは第六天魔王としての織田信長,もしくは俗説の女性説をベースとした上杉謙信あたりになるのではないだろうか。
ところが本作では,上記3人がインパクトという意味において特別目立つということはない。いや,織田信長は声優 若本規夫氏の熱演によって命を吹き込まれてかなりの魔王度が表現されているし,上杉謙信にしても,宝塚歌劇団の「男役」を彷彿させるキャラクター設定がほどこされている。歴史ファンにとっては想定の範囲内のアレンジかもしれないが,本来ならばかなり目立ったキャラクターになるはずだ。
しかし,本作の根底にあるのは,“婆娑羅”的であることだ。婆娑(沙)羅とは,サンスクリット語で金剛石(ダイヤモンド)を意味する語が元になっていると言われている。ダイヤモンドが石を砕くことから,音楽や舞楽においては本式から逸れ,派手に目立つように演じることを指したとされている。また,権威や伝統,常識などを度外視し,自由奔放な言動やド派手好みなどをアピールする大名は,南北朝期には婆娑羅大名と呼ばれていた。
戦国BASARAシリーズは,ある意味傾奇者よりも突き抜けている婆娑羅者が揃っているわけだから,あの前田慶次の印象がかすんでしまうのも,無理からぬこと。さらに,そんな婆娑羅的なキャラクター設定に加えて,「スタイリッシュ」であることも意識されているのだから,本作の登場武将達はそれはもう大変なことになっているわけである。
登場人物が多いため,各武将の説明は割愛するが,暴走族のメンバーのような兵を率いる,英語に堪能な一刀流/六爪流の使い手「伊達政宗」(もはや独眼竜という特徴さえかすんで見える)や,両手に鎌を持ち,快楽のために戦場を駆ける「明智光秀」(蘭丸などからは変態扱いされている),どう見てもロボットにしか見えない「本多忠勝」(理由は各自で考えてほしいが,ファンからはホン●ムと呼ばれている),二丁拳銃の「濃姫」(技によっては股間から取り出したガトリング砲で攻撃する)などなど,それはもう婆娑羅というかスタイリッシュというか,文末に「(笑)」と書きたくなるような武将ばかりである。もちろんいい意味で(笑)。
ともあれ,そんな武将達が,極端な性格/思想に基づいて敵と戦うのだから,そのストーリー展開の奇想天外っぷりもかなりのものだ。真面目な戦国武将ファンの中には受け入れられないこともあるかもしれないが,ゲームの難度やキャラクターデザイン/声優陣の秀逸さも相まって,ゲームとしての娯楽性はすこぶる高いといえるだろう。
戦国時代を学ぶための入門用としては無理があるかもしれないが,今後より活発になっていきそうな「一騎当千アクション」の入門編としては,声を大にしてオススメできるタイトルだ。とにかく気持ちよく,楽しく,気軽に遊べるタイトルなので,興味のある人は併せて公式サイトもチェックしてほしい。
完結せず,どんどん広がっていく楽しみ
キャラクターを軸にすえたさまざまな展開にも期待
ここまでアレコレ書いてきたが,実は筆者,戦国BASARA2をメチャクチャやりこんでいるわけではない。ストーリーモードは一通りクリアし,すべてのプレイヤー武将を登場させてはいるのだが,まだ大武闘会モードで100人抜きを達成できるほどの武将が育っていないし,未入手の武器/防具もかなり残っている。なんとか11月29日までには,お気に入りのプレイヤー武将だけでも育てきっておきたいのだが……。
というのも,11月29日には戦国BASARAシリーズの最新作「戦国BASARA2 英雄外伝(HEROES)」(以下,英雄外伝(HEROES))が,プレイステーション 2とWiiで発売されるからだ。
英雄外伝(HEROES)では,片倉小十郎/浅井長政/お市/風魔小太郎/北条氏政/今川義元/本願寺顕如/徳川家康らがプレイヤー武将として登場するほか,敵武将として松永久秀の参戦もアナウンスされた。また,全8種類のルールの中から好きなものを選んで相手武将と対戦する「対戦モード」の実装も発表されている。
そんな英雄外伝(HEROES)のプレイステーション 2版では,同じくプレイステーション 2版の戦国BASARA2からセーブデータをコンバートし,プレイヤー武将のレベル/武器/防具/キャラクター専用アイテムなどを継承できるというのだ。数日おきにちょっとずつ遊んだとしても,一か月もあればかなりの武将が育てられるだろうし,個人的には遅刻を増やしてでも(?),英雄外伝(HEROES)の発売までに戦国BASARA2をやり込んでおきたいところである。
またこれは余談だが,戦国BASARAの武将達が登場するアーケード用2D対戦格闘ゲーム「戦国BASARA X(クロス)」がリリースされることも発表されている。これはカプコンと,人気2D対戦格闘ゲーム ギルティギアシリーズを作ったアークシステムワークスが共同開発を進めているタイトルで,2007年冬に稼働する予定だ。戦国BASARAのスタイリッシュさ/婆娑羅感が,2D対戦格闘というジャンルでどのように表現されるのか,非常に楽しみだ。これ,面白くないわけがないでしょう。
ともあれ戦国BASARA2は,戦国時代にも一騎当千アクションにも特別な思い入れを抱いていない筆者のようなゲーマーでも,いろんな意味で楽しく遊べるタイトルであった。一度ハマッてしまえば,先述した関連タイトルやコミック,グッズ,オフラインイベント(10月28日には,戦国BASARA2 英雄外伝(HEROES)完成発表会 バサラ祭 2007〜冬の陣〜が開催される)などなど,さらなる楽しみ方も用意されているので,食指が動かされたという人は,安心して戦国BASARAワールドに浸かってみてはいかがだろうか。
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戦国BASARA2
対応機種:プレイステーション 2メーカー:カプコン
発売日:2006年7月27日
価格:7329円(税込)
CEROレーティング:B(12歳以上対象)
公式サイト:http://www.capcom.co.jp/sengoku2/
- 関連タイトル:
戦国BASARA2
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