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国内政治のトピックを目ざとく反映「現代大戦略2008〜自衛隊参戦・激震のアジア崩壊!〜」のレビューを掲載
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印刷2007/12/28 23:42

レビュー

こなれたシステムで,シナリオの展開を深化させた

現代大戦略2008〜自衛隊参戦・激震のアジア崩壊!〜

Text by 虹川 瞬

»  システムソフト・アルファーの年末定番商品の最新作「現代大戦略2008〜自衛隊参戦・激震のアジア崩壊!〜」のレビューをお届けする。前作と比べて,とくに目立ったシステム的進化は見られないものの,大戦略シリーズ全般に詳しい虹川 瞬氏が着目したのは,分岐型シナリオの可能性についてである。


センセーショナルな状況設定で今年も登場


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 システムソフト・アルファーの年末恒例タイトルとなった「現代大戦略200X」シリーズ最新作が,今年も登場した。「大戦略」は国産現代戦・ターン制ストラテジーゲームの代名詞ともいうべき存在だが,ここで紹介する「現代大戦略200X」シリーズは少々毛色が異なる。あらためて紹介しておくと,年号付きの「現代〜200X」シリーズは,現在の世界の紛争・衝突を,よりエキセントリックに拡大解釈したり,あるいはかなり強烈なif設定を盛り込んだりした内容がウリになっている。最新作たる「現代大戦略2008〜自衛隊参戦・激震のアジア崩壊!〜」でも,日本近海からアフリカにいたる諸地域での紛争を基にした,新作シナリオ22本が収録されている。

 これら新作シナリオは,自部隊を引き継いで連戦するキャンペーン形式は取っていない。時間的な前後関係/因果関係を持つ2〜3本の連作シナリオも多く含まれるものの,いずれも単独でプレイできる。また,連作シナリオでもプレイヤーが担当する陣営(国家であり,生産型でもある)は切り替わることがある。例えばシナリオ「タリバーン駆逐戦」では,1本目はドイツ軍,2本目は自衛隊として参加することになる。
 こうした特徴を持つシナリオに加え,シリーズ従来作品のシナリオをリメイクした10本のシナリオ,さらにキャンペーンや単発マップも150点以上が含まれる。また,製品登録すれば会員制のダウンロードサービスにより,メーカーや他プレイヤーの作った追加マップも入手できるため,ボリュームはたっぷりだ。

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シチュエーション設定でなくシステム自体は「大戦略パーフェクト2.0DX」のものをベースにした平易・簡明なもの。いまとなっては心地よさを感じるかも?
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起動後に最初に表示される画面でもある,新作シナリオの選択画面。これ以外のマップやシナリオ等の読み込みや各種設定は,Windows標準のメニューバーから行う
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リメイクシナリオは「2001」〜「2003」からの10本。新作と同様に沖縄戦が含まれるが,陸上戦も含めて米軍が登場するなど,アレンジはかなり異なる
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単独マップとしては,毎度おなじみ「アイランド・キャンペーン」をはじめとした80枚近いマップが収録されている。長い歴史を感じさせる1枚だ


システム的な変更点は少なめだが,期待の新機軸も


戦闘解決の際には簡単な2Dアニメーションが表示される。クラシックな表現といってしまえばそれまでだが,やはりこの画面が「大戦略」らしさを思わせる
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 ゲームシステム的に見ると,前作「2007」からの変更点はごくわずかだ。実際,どちらも基本システムは2005年春発売の「大戦略パーフェクト2.0DX」のものである。シナリオやキャンペーンを進行させるうえでの演出面の進化も一段落した状況であり,そもそもこの枠内での劇的な変化は望みにくいように思われる。大きな変化を望むには,ゲームシステムや基本AIそのものの変更を待つほかないといえそうだ。

 ただし,変更点の第一である「分岐型勝利条件」は,シナリオ制のゲームとして新たな可能性につながるように思える。これは,前作から導入されたシナリオ進行中のイベント発生機能を,発展させたものだ。進行中に一定の条件が満たされると(例えば日中間の海戦シナリオの場合,規定された大型艦を撃沈する/されるといったことがトリガーになる),状況の変化を表すポップアップが出た後,勝利条件が追加されたり変更されたりするのである。
 今回プレイできた範囲では,劇的な演出を見せてくれるというまでには至らなかったが,臨場感を盛り上げる効果はあったと思う。半面,規定された勝利条件を満たしてシナリオ終了,と思ったら,新たな目標を設定されて,「延長戦を強いられる」ような気分になることもあった。ゲームを面白くする潜在的な可能性は高い手法だと思うので,次作や追加シナリオでの使いこなしに期待すべきところだろう。

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任務概要を説明するブリーフィング画面。この画面で示される「カルザイ大統領一行を保護,指定した場所に移送する」という任務を果たすと……
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さらに戦果を拡大せよ,という新しい任務が下る,という流れになるわけだ。状況の流動性を表現できるという意味で,システム面における大きな進歩だ

 もう一つの変更点は,前作から追加された「転戦モード」の機能強化だ。このモードは一言で言えば,プレイヤー率いる独自勢力が,シナリオに乱入するもの。既存勢力のいずれかと同盟を結び,基地などを借りる形で手持ち部隊を配備することになる。
 部隊を増やす方法として,従来はシナリオで同盟を組んだ相手の生存ユニットを加える方法が用意されていた。今回これに加え,プレイヤー部隊の活躍に応じて得た報酬ポイントを消費して,自由にユニットを買うことが可能になった。また,最初に参戦するときの部隊として,フランスとイスラエルのタイプが用意されたのも,細かいが重要な変更点だ。なお,このモードではシナリオを本来の設定の敵側の立場からプレイすることも可能だ。

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転戦モードの初期部隊選択画面。マップクリア後に購入できる兵器には,国籍の制限がまったくない。こうなると最初の国籍選択の意味が薄いように思える。なお「現代大戦略2006」の転戦モードデータをコンバートすることも可能
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転戦モードで初期配備される部隊は,意図的に旧式化した兵器が入れてあるようだ。日本型の場合,最新鋭のF-2が入っている一方で戦車は61式だけ,というちょっと極端なもの
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転戦モードでは,対立する2つの勢力(複数陣営の同盟軍であることもある)のそれぞれの勝利条件が示される。本文で述べたように,シナリオで敵側と設定された勢力に加担することも可能だ
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転戦モードクリア時に表示される報酬ポイント評価。敵部隊撃破よりも,都市等の占領のほうがずっとウェイトが高い。シナリオに元から登場する部隊と,一種の功名争いをすることになる

 このほか,新兵器も47種類が追加されている。自衛隊装備でいえば,目玉となるのは海上自衛隊の新イージス艦「あたご」と,全通甲板を装備した(実質的な)ヘリ空母「ひゅうが」だろう。ちなみに自衛隊装備として,F-86やF-104Jといった旧型機もデータとして収録されている。注目すべき新要素というわけではないが,単体マップなどであれば,新旧の兵器を自由に選んで「生産型」を編集し,プレイすることも可能だ。

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大戦略シリーズは「ゲーム内で性能を試せる,最新兵器カタログ」にもなっている。兵器の性能データの一部は,性能に切り替えてコメントを表示させることも可能。写真は著名なA-10攻撃機シリーズの新型「A-10C」
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本作の自衛隊=日本生産型の目玉の一つである「ひゅうが」級。実物の評価どおり,VTOLは運用できないが,ヘリ運用能力は従来の護衛艦よりも格段に高い
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同じく自衛隊の最新イージス艦「あたご」。従来の「こんごう」級に比べ,回避力が高めで,対潜ヘリも搭載できる設定になっているのがウリか


エキセントリックさが減り,シナリオの方向性は微妙に変化


中東などのシナリオでは,敵部隊には通常車両に機関銃や対戦車ミサイルを載せた装備が多い。おそらくこれが世に言う「テクニカル」で,大戦略ではこのシリーズ独特の武装かもしれない
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 こうした事情で,本作の独自要素は主に新作シナリオということになる。「現代大戦略200X」シリーズでは,最初に触れたようにセンセーショナルな設定がウリで,本作でも基本的にはその傾向を踏襲している。
 ただし本作では,シリーズ従来作品から微妙に方向性が変化したような印象を受けた。従来作品で主要な“敵役”を割り振られていた北朝鮮にしても,本作の新作シナリオで登場するのは朝鮮半島動乱モノの2本だけで,自衛隊とは交戦しない。
 もう一つの“敵役”千両役者である中国は,本作でも野心を露に大活躍しており,新作シナリオ22本中9本に登場するが,日本の領土でその脅威が及ぶのは沖縄周辺だけである。「こんなに凶悪な国家に囲まれて日本は危ないぞ」という煽りのトーンが,だいぶ落ちた感じがするのだ。また,本作独自のシナリオには,あまりに極端なif性を持つもの,例えば日本の首都圏が独立し,国内で「内戦」が起きるといったものは含まれない。

 これに代わって,増加したシチュエーションが,海外派兵された自衛隊が,南アジアや中東で戦闘するシナリオだ。これには,2007年の国内政治シーンで,日本の軍事的海外貢献が取りざたされたことが影響しているのだろう。ISAFへの参加や,イラク戦争時の積極的な派兵といった,ある意味で北朝鮮の派手なテロ以上に「現実味を帯びてきた状況」に合わせてシフトしているようにも思える。まさにサブタイトルに掲げられている「自衛隊参戦」に焦点が移っているわけだ。

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シナリオのブリーフフィングは2段階。まず,事態に至るまでの大局的な情勢が,ちょっと新聞記事を思わせる形で示される
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そのあと,戦術的な状況説明が。ここのメッセージにはかなり扇情的な表現も見られ,沖縄・台湾方面のシナリオでは「中共」「威信にかけて」「命にかえても」といった表現が頻出する
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パキスタン派遣の自衛隊が,政府軍と協力して反乱軍と戦う,という設定のシナリオ。90式戦車,F-2支援戦闘機をはじめとした新鋭装備を一通り持ち込んでいる設定だ


「2007」シナリオの真の意図はゲーム性向上にある?


前作から導入された要素だが,一部の都市などには写真付きのポップアップが出るようになった。演出面での地道な改良は続いている
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 プレイしての感想だが,まず「かなりライトな感じになった」という印象が強い。難度表示で星5個中2個や3個のシナリオでは,登場する自部隊の総数が少なめで,比較的短時間で決着がつくと感じられたものがあった。実際,15ターンかからずに終わるシナリオもある。転戦モードでも,本来のプレイヤー側陣営に助力する形で参加すれば,当然難易度は下がるし,短時間でのクリアが可能になる。
 そしてこの点も含めて「ゲームとしての楽しさ」が膨らんでいるように感じられた。本シリーズの(少なくとも表向きの)ウリは,現実世界に取材した状況設定だ。しかし肝心のマップ上では,状況や兵力を緻密に再現するより,「ゲームとしての面白さ」を優先したほうが,プレイしていて楽しい。そうであればリアリティが欠けていることは欠点にならないのだ。

 例えば中国潜水艦の日本領海侵犯事件が武力衝突に発展するという設定のシナリオがある。領海侵犯艦を撃沈したあと,プレイヤーに課される勝利条件は,この紛争に投入された中国軍艦艇の文字どおりの殲滅(1隻たりとて残してはいけない)だ。
 この目標設定には(自衛隊の戦闘だということを抜きにしても),軍事的リアリズムはまるで感じられない。だが,ゲームとして見た場合に,限られたターン数でいかに索敵を行い,捕捉した艦を沈めていくかを考える必要が出てくる。設定のリアルさに対する興味を超えて,ゲームとして課された課題の面白さが前面に出てきている例といえる。

 また,言ってしまえば転戦モードにリアリティは皆無だ。しかし,精鋭部隊を育て上げるのは,やはりゲーム的な立場から楽しめる。そもそも部隊が経験値を積んで強くなるというゲームデザインは,長きにわたる大戦略シリーズの伝統であった。それを存分に楽しむ設定が,転戦モードやマイ部隊(生産可能な設定でのキャンペーンや単独マップに,他マップで経験を積んだユニットを登場させられるシステム)とも考えられるだろう。
 こうした「興味を惹くために派手な設定のシナリオを用意する一方で,その実装には,ゲーム的なテーマを潜ませる」という方針が,制作側で明確に意図されているかどうか,聞いてみたことはないし,筆者の勝手な思い込みかもしれない。けれど,本作はそうした視点からの評価に,ある程度応えてくれるものになっていたのは確かだ。そして,その点では「楽しくプレイできるゲーム」であり,好印象を持てた。情報提示の仕方やAIの質などには注文もあるけれど,レビュー記事執筆終了後ももうちょっとプレイを続けてみたい,と思わせる仕上がりになっているのだ。

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「パレスチナ分裂・ファタハ vs. ハマス」と銘打たれたシナリオでは。32ユニット(しかも戦車は1ユニット)と限られた部隊で,ガザ地区に点在するハマス司令部を探し,撃破することが求められる。寡兵を消耗させずにどう使うかが試されるわけだ
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転戦モードの部隊や,単体マップで繰り返し起用できる「マイ部隊」の撃破機体数や練度を挙げていく,という楽しみ方もできる。ある意味RPG的なのだが,これも本作の持つ方向性の一つなのだ
画像集#023のサムネイル/国内政治のトピックを目ざとく反映「現代大戦略2008〜自衛隊参戦・激震のアジア崩壊!〜」のレビューを掲載
視界内の敵部隊は画面左に概要が示されるのだが,武装の名称や射程は分かっても,その機能(対空/対艦など)が分からない。敵味方の部隊から,兵器情報画面に飛べるボタンが欲しかったところ
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    現代大戦略2008〜自衛隊参戦・激震のアジア崩壊!〜

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