テストレポート
「Xonar HDAV1.3 Deluxe」デジタル出力検証レポート。HDMI 1.3a対応サウンドカードでいったい何ができるのか?
では,本製品はいったい何モノで,PCゲーマーにとってはどういった意味があるのだろうか? 限られた時間だが,いくつかHDMI周りを中心にテストを行うことができたので,得られたデータを速報としてお届けしたいと思う。
(デジタル&アナログ7.1ch出力サウンドカード)
+(HDMI 1.3a&Splendid HD)=Xonar HDAV1.3 Deluxe
Xonar HDAV1.3 Deluxeを一言で説明するなら,「デジタル&アナログ7.1ch出力対応のPCI Express x1サウンドカードに,HDMI 1.3a準拠のHDMI入出力と,『Splendid HD』ビデオプロセッサを搭載した製品」といったところになるだろうか。サウンドカードとしての根幹部分そのものは“初代Xonar”である「Xonar D2/PM」を踏襲しつつ,PCI Express x1インタフェースを採用し,二つの機能を追加搭載したものであるというイメージが,おそらく正しい。
HDMIやSplendid HDの実装形態は,12月4日にレビュー記事を掲載した「Splendid MA3850M/HTDI/512M」とほぼ同じだが,HDMIレシーバとトランスミッタは,HDMI 1.3a準拠のものに置き換わっている。
カードレベルのアナログ出力S/N比は120dB(全チャネル)。入力は同118dBとなっている。S/PDIF出力時の対応サンプリング周波数とbit数は順に44.1/48/96/192kHz,16/24bitだ。
従来のXonarがそうであったように,主要なサウンド技術を下記のとおり幅広くサポート。3DサウンドAPIは,基本的にEAX 2.0までの対応となるが,ASUS独自の「DS3D GX 2.0」(DS3D GX:DirectSound3D Game eXtensions)により,EAX ADVANCED HD 5.0でサポートされる128音の同時再生と,一部のエフェクト処理も可能になっている。
●XonarのS/PDIF出力でサポートされる主なサウンド技術
- Dolby Digital/Dolby Digital EXビットストリーム出力※
- DTS 5.1/DTS-ESビットストリーム出力
- Dolby Headphone
- Dolby Virtual Speaker
- Dolby Pro Logic IIx
- Dolby Digital Live
- DTS Connect(DTS Interactive&DTS Neo: PC)
※ビットストリーム(Bitstream):一つの出力端子で,マルチチャネルのデジタルオーディオ信号を出力する方式。「パススルー」と呼ばれることもある
HDMI&Splendid HDが動作する仕組み
〜グラフィックスカードからの入力が必須
上で紹介したとおり,Xonar HDAV1.3 DeluxeのHDMI周りはカード上で独立したような設計になっているが,この“HDMI部”が動作する条件は,
- HDCP対応の外部デバイスから,ビデオ信号を入力していること
- HDCP対応のマルチチャネルアンプ(AVアンプ,AVレシーバともいう)と接続していること
なお,Splendid HDの概要や効果については,先に紹介したSplendid MA3850M/HTDI/512のレビュー記事が詳しい。本稿では解説を行わないので,興味のある人はぜひ併せてチェックしてもらえればと思う。
※2008年12月7日追記:
初出時,動作条件の一つめを「HDCP対応のグラフィックスカードと接続していること」となっていましたが,PC用デバイスであることに固執したことで,誤解を招きかねない表現になっていました。「HDCP対応の外部デバイスから,ビデオ信号を入力していること」に修正させていただきます。
ここで,「あれ,HDMI 1.3a対応は?」と思った人がいるかもしれない。結論からいうと,HDMI 1.3a準拠のビットストリーム出力を利用できるのは,
- Dolby TrueHDやDTS-HD Master Audioといった可逆圧縮のマルチチャネルサラウンドサウンドフォーマット
- Dolby Digital PlusやDTS-HD High Resolution Audioといった非可逆圧縮のマルチチャネルサラウンドフォーマット
をサポートするマルチメディアプレイヤーで,対応ソフトを再生したときのみだ。
対応する規格がないため,当たり前といえば当たり前なのだが,「ゲームのサラウンドサウンドを,DTS-HD High Resolution Audio形式で出力」なんてことはできない。HDMI出力時にゲームのサラウンドサウンドをデジタルビットストリーム出力する場合は,同軸や光出力時と同様,サウンドソースをDolby Digital/DTS形式にリアルタイムエンコードする,Dolby Digital LiveやDTS Interactiveを利用することになる。
■ビデオ周りの設定はコンパネに統合
[Audio]と[Video]のボタンが,まさに統合の象徴。[Audio]はXonar HDAV1.3 Deluxeの基本かつ主要な設定,[Video]は,Splendid HD関連の設定を,それぞれ設定する項目である。
まずは,デフォルトとなる[Audio]ボタン以下の設定項目から見ていこう。
[▲]ボタンを押すと,「Audio Output Mode」と呼ばれる詳細メニューがスライドして出てくるのは従来製品を踏襲しつつ,Xonar HDAV Centerでは,「Sound Card Mode」と「HDMI Mode」を切り替えるタブが新設された。
下に示したスクリーンショットは,左がSound Card Mode,右はHDMI Modeになる。前者では,従来製品と同様のインタフェースが用意され,後者では(S/PDIF出力が前提となるため)「SPDIF」プルダウンメニューが削られるなど,若干の違いがある。Xonar HDAV1.3カード本体の動作モードは,ここで切り替えるわけだ。
もっとも,XonarではDolby DigitalやDTSのパススルー出力でも,これといった設定項目は用意されていない。慣れれば,どうということはないはずだ。
次に[Video]ボタン以下だが,Splendid MA3850M/HTDI/512Mに用意されていた,Splendid HDの設定項目とほぼ同じもの。選択肢の文言は微妙に変わっているが,見たところ,使い方や機能に違いはない。
現時点では若干の制約もあるが
HDMI出力自体は極めて簡単
また,テストスケジュールなどの都合で,PCパーツは筆者の自宅にあった余剰品,オーディオ環境は筆者が自宅でPCゲーム用に使っているものを,それぞれ流用する。そのため,スピーカーシステムが5.1chになってしまっているが,この点はご了承を。
テスト環境にOSが2種類入っているが,これは,Xonar HDAV1.3 Deluxeに付属するArcSoft製メディアプレイヤー「TotalMedia Theatre」(以下,TMT),そして,ASUSからダウンロードできるバージョン(2.1.13.123)のTMTでは,Windows Vista環境でBlu-ray用ビットストリーム出力を行えないという制限があるためだ。いったんWindows Vistaでテストを行い,この制限を確認したうえで,あらためてWindows XPで検証をスタートしたこともあり,上のような表記になっている。
ASUSによると,現在同社は,(Windows Vistaにおける制限事項をクリアにしつつ)Xonar HDAV1.3 Deluxeのフル機能を利用できる“ASUS版TMT”を,ArcSoftと共同で開発中とのこと。これは「今年中にASUSのサポートサイトでXonarユーザー向けに公開する予定」(ASUS)という。すべてが予定どおりなら,カードの発売後,まもなくの登場となるはずだ。
TMTでDolby TrueHDやDTS-HD Master Audioのビットストリーム出力を有効にするには,「Audio」タブから「HDMI」を選択するだけでいい |
マルチチャネルアンプを介してディスプレイと接続すると,ATI Catalyst 8.11はディスプレイをデジタルTVとして認識した |
というわけで,前述のとおりゲームには使えないのだが,Xonar HDAV1.3 Deluxeのキモといえる,Dolby TrueHDとDTS-HD Master Audioのビットストリーム出力をきちんと行えるのか,Qtecの「Hi-Definition Reference Disc(Blu-ray用)」を利用して検証を試みた。
ここでは,本ディスクに収められた24bit/96kHz 7.1chのサラウンドサウンドミュージック「THE EARTH」を,Xonar HDAV1.3 Deluxeが出力できるかを確認する。
……ドライバのインストール後,いきなりHDMI出力を試みるとうまく出力されず。正直,少々焦ったが,ASUSがダウンロードサイトで公開しているFAQによると,これは半ば仕様のようだ。ドライバのインストール直後には,一度Sound Card Modeから出力(※筆者はS/PDIFで出力した)し,あらためてHDMI Modeに切り替えると,マルチチャネルアンプはXonar HDAV1.3カード本体から出力されたビットストリームを正常に認識。いずれのフォーマットでも,不具合なくサラウンドサウンドを再生できている。
せっかくなので,Splendid HDについても簡単に検証してみたい。今回は,Splendid HDの「FPSモード」を有効にして「Tomb Raider: Underworld」を実行したところと,同じく「アクションムービー」を有効にして,2008年8月20日の記事で掲載した「バイオハザード5」のトレイラ−ムービー(1280×720ドット)を再生したところで,Splendid HDの効果を見る。
比較画像の撮影には,ニコン製のデジタル一眼レフカメラ「D50」を用いることにし,ISO感度200,解像度3008×2000ドットで撮影したものを,「Adobe Photoshop CS」からトリミングのみ行っている。そのため,拡大版の画像はTomb Raider: Underworldが2800×1575ドット,バイオハザード5が1920×1080ドットと,いずれも解像度が高いので注意してほしい。
さて,Splendid HDの効果に関してはすでに12月4日の記事で細かく見ているため,今回は以下のとおり,ざっと比較するに留めるが,こちらも問題なく機能しているのが分かる。
これぞオールインワン
ピュアデジタルカードでもよかった?
もっともこれには,「PCゲーム環境や,PCベースのビデオ観賞環境を,マルチチャネルアンプと接続している人にとっては」という注釈が必要であり,どう考えても万人向けではない。この点はくれぐれも注意が必要だが,該当する人にとっては,待望のオールインワンソリューションとなるだろう。
いずれにせよ個人的には,いまゲーム&ビデオ用PCに差しているXonar D2/PMからの買い換えが確定した感じである。
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Xonar
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