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  • 発表日:2008/06/04
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日本市場再上陸を狙うFoxconnに聞く,ハイエンドブランド「Quantum Force」
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印刷2008/03/12 13:51

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日本市場再上陸を狙うFoxconnに聞く,ハイエンドブランド「Quantum Force」

AJ Chuang氏(Vice President, Personal Computer & Enterprise product Business Group, Foxconn)
画像集#002のサムネイル/日本市場再上陸を狙うFoxconnに聞く,ハイエンドブランド「Quantum Force」
 DellやApple,NVIDIAなどのOEM/ODMメーカー(電子部品および相手先ブランドでの製造請負メーカー)として知られ,PCの生産量では世界一を誇るHon Hai Precision Industryが,PC自作市場をターゲットとして攻勢に出る。
 同社の子会社であり,Foxconn(フォクスコン)のブランド名で知られるFoxconn Electronics(以下,Foxconn)は,過去にもPC自作市場にマザーボード製品の投入を試みたが,中国など一部市場でシェアを伸ばしたのみで,欧米や日本市場では成功を収められずに来た。だがFoxconnは2007年末,GIGABYTE UNITEDを率いていたDavid Chang(デビッド・チャン)氏を迎えてチャネル(=一般小売り市場)部門を再整備。優秀な人材を揃え,本格的にPC自作市場向けのラインナップを整えつつある。
 今回4Gamerは,そんな同社でチャネル向けマザーボード開発を指揮するAJ Chuang(AJ チュアン)氏に話を聞いた。


ゲーマー&パワーユーザー向けの「Quantum Force」

“Ultra ATX”のハイエンドマザー「F1」とは?


 CeBIT 2008でFoxconnは,ゲーマー並びにパワーユーザー向けとなるサブブランド「Quantum Force」に属するハイエンドマザーボード群を展示した。「最高のパフォーマンスを引き出す」として開発された新製品のうち,とくに特徴的なのはフラグシップモデルとなる「F1」のプロトタイプだ。

その巨大さが目を引くIntel P45搭載マザーボード「F1」
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 F1は,「Intel P45 Express」(以下,P45)チップセットを搭載し,Foxconnが「Ultra ATXフォームファクタ」と呼ぶ独自仕様を採用している。Ultra ATXは横幅9.6×14.4インチ(約244×366mm)のサイズを持ち,10本の拡張スロット用スペースを確保したものだ。Chuang氏は「このUltra ATXにより,2スロットを占有するハイエンドグラフィックスカードを4枚搭載可能な余裕を持てる」と,フォームファクター拡張の理由を説明する。

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拡張スロットを10本搭載するF1マザーボードをサポートするため,Foxconnが開発した超巨大ケースを採用した“F1システム”
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Ultra ATXと呼ばれる新規格。ちなみに,F1では各スロットにLEDが備え付けられ,データ転送の状況を見て取れる

 F1のノースブリッジとサウスブリッジ,そしてVRM部には,液冷にも対応できる銅製のヒートパイプが走っており,さらにノースブリッジには「TEC」(Thermo-Electric Cooler:サーモ・エレクトリック・クーラー)を装備する。

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ヒートパイプだけでなく,チップの冷却にTECを採用したノースブリッジクーラー
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ノースブリッジに搭載されたTECでは,ヒートシンク周辺の温度より10℃低い温度まで冷却できると謳われる
 TECは,ペルチェ素子などに代表される多結晶半導体を利用し,電気を加えることで熱エネルギーを移動させられるクーラーだ。例えば2枚のヒートシンクにTECを挟むと,熱源に触れているヒートシンクにある熱を,熱源にふれていないヒートシンクに移動させる役割を果たす仕組みを持つ。Chuang氏によると,F1に採用するTECでは「ノースブリッジの温度を,その周りの温度よりも10℃下げられる」とのことだ。
 さらにF1ではFoxconnが「DTSCS」(Dynamic Tracking Silicon Cooling System)と呼ぶ,TECを利用したCPUクーリングも可能になっているという。DTSCSは「CPU負荷による温度変化をリアルタイムに監視し,CPU温度を常に一定レベルに保つもの」(Chuang氏)だ。これにより,F1では圧倒的なオーバークロック性能を実現すると氏は胸を張る。

 ただTECにも弱点はある。冷却性能を高めようとすると,多結晶半導体をドライブすることになるため,より多くの電力が必要になる(熱源を移動するときに蒸気が発生してしまうという問題もある)。Foxconnでは最新の多結晶半導体を採用することで消費電力を抑えたとしているが,マザーボード上には4スロット分のPCI Expressスロットへの電力供給も含め,補助電源として電源ユニットをもう一つ搭載できるよう,24ピンコネクタを二つ用意しており,ある程度のペナルティは存在するようだ。

F1では,ノースブリッジだけでなくCPUもTECによって動的に温度制御できる。FoxconnがDTSCSと呼ぶ同機能では,CPUの温度と電圧をリアルタイムに監視,制御することで,CPUの温度変化を最小限に抑えることを可能にしているという
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89HPES24N3Aを2基搭載することにより,P45マザーボードでPCI Express x8 ×4を実現する。最終製品では,ピン互換の最新チップを採用してPCI Express 2.0に対応する計画もあるようだ
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 さて,先ほど「2スロットを占有するハイエンドグラフィックスカードを4枚搭載」というChuang氏の言葉を引いたが,F1ではP45チップセットで最大4枚のグラフィックスカードによるATI CrossFireXを実現するため,IDT(Integrated Device Technology)のPCI Express拡張スイッチチップ「89HPES24N3A」を搭載し,PCI Express x8スロット×4構成を実現する。同スイッチチップは,PCI Express x16をx24に“増幅”する機能を備えており,このチップを二つ搭載することで,通常はPCI Express 2.0 x8×2のみのサポートとなるIntel P45チップセットでx8×4構成を可能にしているのだ。
 Chuang氏は「F1は,ゲーム用プラットフォームとして最高のパフォーマンスを実現することだけを考えて,Foxconnの威信をかけて開発したモデル」と,部門再整備を経た)同社のPCゲーム市場に対する意気込みを強く見せる。


Quantum Forceシリーズの拡充を図るFoxconn

グラフィックスカードでも攻勢に


Intel X48 Expressを採用した「Blackops」
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 Foxconnの持つ“カード”はF1だけに留まらない。現在同社はQuantum Forceシリーズとして,「Intel P35 Express」チップセットを採用した「MARS」を市場投入しているが,今後は「Intel X48 Express」搭載の「Blackops」,「nForce 790a SLI」を採用した「Destroyer」,「nForce 790i Ultra SLI」を搭載する「Dreadnought」を,市場へ順次投入する計画だ。
 ちなみにBlackopsは,CeBIT 2008のFoxconnブースでオーバークロック動作デモにも用いられたが,「Core 2 Extreme QX9750/3.20GHzで5.9GHzの動作クロックを実現する」(Chuang氏)など,圧倒的なオーバークロック性能がアピールされている。

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nForce 790a SLIを採用した「Destroyer」
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nForce 790i Ultra SLIを搭載した「Dreadnought」

 これらラインナップと,「ゲーマーおよびパワーユーザー」という製品コンセプトを見る限り,ライバルはASUSTeK Computerの「R.O.G」ブランドになるだろう。冒頭で述べたように,2008年3月時点で,Foxconn製品の販売網は国内で整備されていない(※販売されていないわけではない)が,CeBIT 2008の会期中に別途話を聞いたDavid Chang氏は,4Gamerに対して,日本市場再参入に向けた話し合いを進めていることを明らかにしてくれている。あくなき性能追求を求めるハイエンド指向のPCゲーマーにとって,近い将来に選択肢は増えることになりそうだ。

「GeForce 9600 GT」を採用したオリジナルデザイン採用モデル「9600GT-512F(OC) Special Edition」。日本製の固体コンデンサを採用し,コアクロック700MHz,メモリクロック2GHzで動作する。グラフィックスメモリ容量を示す512のあとに付けられた“F”が,Foxconnオリジナル基板の目印だ
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 なおFoxconnは,グラフィックスカード市場においても,高品位なコンポーネント(=部材)を採用した製品ラインナップを拡充していく。
 一般論として,新GPUの発表直後しばらくの間,ミドルクラス以上のグラフィックスカードはリファレンスデザインのものがそのまま流通するケースが多く,差別化が難しい。そこでFoxconnでは,自社設計の基板を採用できるようになった時点で,日本メーカー製の固体コンデンサを採用したり,電源周りを改良したりすることで,他社と同じスペックでも,より高いパフォーマンスやオーバークロック性能を発揮できるようにするという。Foxconnは,その圧倒的に速い開発能力にOEM/ODMメーカーの定評があるが,同社でグラフィックスカードビジネスを統括するHun Shen Yue(ハンシェン・ユー)氏は「Foxconnの技術力とスケールメリットを生かし,高性能かつ静音性にも優れた製品群を手頃な価格で提供する準備を進めている」と述べ,グラフィックスカード市場でも攻勢に出る構えだ。

Foxconnオリジナルデザインのグラフィックスカードでは,日本メーカー製の固体コンデンサのみを使用し,品質面の高さをアピール。またデュアルパワーインプットフィルタの採用により,GPUやメモリに安定した電力を供給するほか,「ThermalSafe」と呼ばれる温度センサーICを搭載する。GPUやグラフィックスメモリの温度を監視し,70℃以上ではファンスピードを上げチップ温度を一定に保つ一方,70℃未満ではファンスピードを低減し,静音化を図るとのこと
画像集#016のサムネイル/日本市場再上陸を狙うFoxconnに聞く,ハイエンドブランド「Quantum Force」 画像集#017のサムネイル/日本市場再上陸を狙うFoxconnに聞く,ハイエンドブランド「Quantum Force」

 CeBIT 2008会場でも,マザーボードベンダーやグラフィックスカードベンダー関係者は「今年,最も脅威になるのはFoxconnだ」と口を揃える。いよいよ目を覚ました巨人によって本気で繰り出される新製品が,PC自作市場を活性化させるとすれば,それは大いに歓迎すべきだろう。
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