速報でお伝えしたとおり,台湾時間2014年6月3日,ASUS Computer(以下,ASUS)は,ゲーマー向けブランド「
R.O.G.」(Republic of Gamers)の最新製品多数を一挙に発表した。興味深い製品が多数あったので,前編となる本稿と後編の2回に分けて,新製品の詳細をレポートしていこう。
ゲーマー向けのスリムデスクトップPC「G20」&「GR8」
国内発売は2014年内か
スリムデスクトップPCでは珍しい,ゲーマー向けを謳う製品として発表されたのが,「
G20」と「
GR8」だ。
イベント会場で展示されていたG20(左)とGR8(右)の実機
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まずG20だが,容積12.5リットルというスリムな筐体に,型番非公開のCore i7シリーズのCPUと「
GeForce GTX 780」を搭載するというデスクトップPCである。
小型の筐体ながらアイドル時の騒音は25dBに抑えているという。アイドル時の消費電力も20Wと少ない
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小型のPCに強力なCPUやGPUを搭載する製品は今までもあったが,それらと異なるG20ならではの特徴としてASUSがアピールしているのは静音性だ。
放熱が難しい小型のPCに強力なCPUやGPUを搭載すると,冷却のためにどうしても動作音が大きくなりがちだが,G20では下方から給気して上方から排気する煙突状の構造を採用し,
アイドル時の動作音を25dBまで低減しているのだという。
とはいえ,アイドル時だけでなく,高負荷時にどれくらいの騒音レベルとなるかも重要であり,その数字が公表されていない現状では,静音性の善し悪しは評価できない。
容積12.5リットルの筐体はさすがにコンパクトだ
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G20(写真中央)は,ライザーカードを使って2スロット厚のGeForce GTX 780を薄型の筐体に収めているようだ
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LEDによるイルミネーションの色はカスタマイズが可能で,選択できる色は800万色にもなる
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「マヤ文明」をイメージしたという筐体のデザインは好みが分かれそうだが,LEDによるイルミネーションの色はカスタマイズが可能で,選択できる色は800万色に及ぶという。
また,「AEGIS GAMING STYLE UI」と称する,性能の監視や調節を行う独自のユーティリティを搭載している点も特徴とのことだ。
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ハードウェア状態を表示したり,オーバークロックしたりできるソフト,AEGIS GAMING STYLE UIをプリインストール(左)。右写真は実機でのデモで,Windows上でCPU負荷率やメモリ消費量などのステータスを表示している |
Vcoreの設定や発熱に対するアラートの設定を行えるほか(左),プリセットされた動作クロックに切り替えるオーバークロック動作も可能だ(右)
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もう1製品の「GR8」は,わずか2.5リットルという小型筐体に,型番未公表のCore i7と「
GeForce GTX 750 Ti」を搭載するコンパクトなゲーマー向けPCである。
「リビングやベッドルームなど,どこででもゲームが楽しめる」ゲームPCを目標に開発されたGR8は,アイドル時の騒音を23dBに抑えているという。ただ,こちらも高負荷時の騒音レベルには言及されていない。
ゲーム機並みのコンパクトさを実現したGR8。G20もゲームPCとしてはかなり小さいのだが,GR8の小ささは際立っている
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GR8の背面。ビデオ出力はHDMIとDisplayPortを装備。背面のUSB 3.0ポートも4つあるなど,サイズの割にインタフェース類は充実している
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G20,GR8ともに,SteamOSとの互換性が保証されている。といっても,現時点でそれがユーザーにとって魅力となるのかは,なんとも言い難いのだが
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なお,発表イベントでは,PCベースのゲーム用OS「SteamOS」の開発を進めているValveとの協力によって,GR8がSteamOSとの互換性を備えていることが発表された。これは,「ASUSがGR8をSteam Machineとして販売する」というわけではないそうだが,ユーザーがGR8にSteamOSをインストールして,Steam Machine化することは可能というわけである。
さて,気になる両製品の発売時期だが,北米では2014年第3四半期を予定しているという。担当者によると,日本市場でも年末商戦に向けて投入する計画があるとのこと。手軽に買えるコンパクトなゲーマー向けPCとなることを期待したい。
Intel Z97搭載製品やR.O.G.初のSocket FM2+製品も登場したゲーマー向けマザーボード
R.O.G.の製品といえば,最も注目を集めるのはやはりゲーマー向けマザーボードだろう。COMPUTEX開幕以前にも,Intel Z97 Expressチップセットを搭載する製品がいくつか発表されてはいたが(
関連記事),今回は3種類の製品が発表された。
まず,R.O.G.ブランドのフラグシップマザーボードとして披露されたのが,「
Maximus VII Formula」だ。基板のほぼ全体を覆うシールド「ROG Armor」により,かなりイカツい見た目に仕上がっている。採用チップセットは,ゲーマー向けのIntel 9シリーズ搭載マザーボードでは早くも定番となった感のあるIntel Z97 Express(以下,Z97)だ。
装甲板のような見た目のROG ArmorをまとったMaximus VII Formula
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ROG Armorの裏面側バックプレート。表面側は樹脂製だが,裏面のプレートは金属製で,巨大なヒートシンクとして電源部の熱を拡散させる
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電源部には液冷・空冷両対応ヒートシンクCrossChill Copperを採用。その内部には銅製の液冷チャンネルを搭載している
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Maximus VII Formulaは,電源レギュレータ部分に「CrossChill Copper」と呼ばれる新開発の液冷・空冷両対応ヒートシンクを採用している。ヒートシンク内部の液冷チャンネルに銅を使用したとのことで,これによってレギュレータの温度を液冷時には20℃台に抑えることができるのだという。
CrossChill Copperの実物。CPUの周囲にあるVRMを覆っていて,冷却液用パイプを取り付ける穴が2つある
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CrossChill Copperによる冷却のデモ。液冷(左)と空冷(右)で温度の違いを体感できるというものだ
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Maximus VII FormulaのI/Oパネル部分。左端にチラリと見えるのが,ドーターカードのmPCIe COMBO IIIだ
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PCI ExpressベースのSSD用インタフェース「M.2」に対応する点も,Z97採用マザーボードらしい特徴だ。付属するドーターカード「mPCIe COMBO III」は,IEEE 802.11a/g/n/ac対応の無線LAN機能とM.2インタフェースを備えており,ここにM.2対応SSDを装着できるようになっている。
といっても,この仕様はIntel Z87 Express搭載マザーボードである「
Maximus VI Formula」にも採用されていた。そのため,Formulaシリーズにとっては,まったく新しい仕様というわけではない。
新しいインタフェースとしてはほかに,SATA Expressポートも2基用意している。今後登場するSATA Express対応ストレージと組み合わせれば,既存のSerial ATA 6Gbpsよりも高速な読み書きが可能になるわけだ。
ドーターカードのmPCIe COMBO IIIによるM.2インタフェースや,オンボードのSATA Expressポート×2など,最新のインタフェースも備えている
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Mini-ITXサイズのゲーマー向けマザーボード「
Maximus VII Impact」もなかなかユニークな製品だ。
先代に当たる「
Maximus VI Impact」は,Mini-ITXマザーボードの限界を超えるべく,複数のドーターカードを組み合わせて,機能を拡張するという大胆なコンセプトの製品だった。後継機種となるMaximus VII Impactは,その路線をさらに推し進めているのが特徴といえる。
Mini-ITXサイズに豊富な機能を詰め込んだMaximus VII Impact
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Maximus VII Impactのドーターカード配置を示したスライド。このほかに,電源回路もドーターカードとなっているが,なぜか触れられていない
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追加されたドーターカードは2種類で,背面I/Oパネル側に動作状況を表示する「Impact Control II」と,ファンコントロールや過電圧・過電流保護機能「LN2 Mode」の制御を行う「Impact Coolhub」が装備されるようになった。
従来モデルが搭載していたドーターカードも,無線LAN機能+M.2インタフェースを備えた「mPCIe COMBO IV」,小型サウンドカード「SupremeFX Impact II」といった具合に,それぞれアップグレードされたものに変更されている。
Mini-ITXタイプでゲーマー向けを謳うマザーボードは他社からも登場しているが,Maximus VII Impactは機能面で一歩先を行っているのは間違いない。Haswell RefreshやDevil’s Canyonを使って,Mini-ITXサイズのゲームPCを自作したいというときには,第一候補に挙がる製品となるだろう。
写真左のHDMI出力と,中央のUSB端子に挟まれているのが,新装備のドーターカードであるImpact Control IIだ。マザーボードのステータス表示などを担う
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Impact Control IIと背中合わせに配置されているのが,ファンコントロールや電流周りの保護を担うImpact Coolhub。「Mini-ITXマザーボードでそこまで必要か」と思わなくもない
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こちらは先代にも搭載されていたドーターカードの改良版。無線LAN機能+M.2インタフェースの複合カードであるmPCIe COMBO IV(左)と,サウンドカードのSupremeFX Impact II(右)だ |
R.O.G.ブランドでは初となる,Socket FM2+に対応するゲーマー向けマザーボード「
CrossBlade Ranger」は,AMDファンのゲーマーに歓迎される製品となりそうだ。
R.O.G.ブランド初のSocket FM2+対応マザーボードとなるCrossBlade Ranger
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こちらがZ97版のMaximus VII Ranger。ヒートシンクの形状などは,CrossBlade Rangerとよく似ている
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R.O.G.のZ97搭載マザーボードにも,「
Maximus VII Ranger」という比較的安価な価格を狙った製品があるのだが,CrossBlade RangerはそれのAMDプラットフォーム版という位置付けなのだろう。Maximus VII FormulaやMaximus VII Impactのように,派手な機能や仕様は備えていない。
CrossBlade RangerのCPUソケット周り。Maximus VII Formulaのようなゴツいヒートシンクは備えていないが,見たところコンデンサやチョークコイルには,IntelプラットフォームのR.O.G.マザーボードと同じ高品質のものを採用しているようだ
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CrossBlade Rangerの説明スライドでは,有線LANやサウンド機能と並んで特徴に挙げられている「KeyBot」。独自のチップを搭載して実現されているのだが,CrossBlade Rangerだけの特徴ではない
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ASUSはCrossBlade Rangerの説明で,USBキーボードであればゲーマー用でないものであっても独自にキーボードマクロを割り当てられるという,「
KeyBot」なる機能をアピールしていた。ただし,これはCrossBlade Ranger固有の機能ではなく,同社のZ97搭載マザーボードにも備わっているものだ(
関連記事)。
発想や仕組みはなかなか面白く,ある意味ASUSらしさが炸裂した機能と言えなくもない。とはいえ,ハードウェアチート扱いされかねない機能なので,4Gamerとしては非推奨であることに変わりはないのだが。
最後に発売時期だが,Maximus VII FormulaとCrossBlade Rangerは7月中,Maximus VII Impactは8月の発売を予定しているという。日本市場への投入時期は未定だが,これまでの例からして,さほど遅れることなく日本でも購入できるようになると期待できる。
R.O.G.詳報の後編では,グラフィックスカードや液晶ディスプレイ,ゲーマー向けマウスなどをレポートしたい。