テストレポート
Mini-ITXに対応したSkylake対応のR.O.G.マザーボード「MAXIMUS VIII IMPACT」。相変わらずの高い機能性は要チェックだ
ただ,筆者の記憶が確かであれば,そこに市場を切り開いたのは,2013年1月に世界市場でデビューした(※国内発売は同年8月)ASUSTeK Computer(以下,ASUS)製マザーボード「MAXIMUS VI IMPACT」だった。R.O.G.(Republic of Gamers)ブランド初のMini-ITXマザーボードたるMAXIMUS VI IMPACTがなければ,今日(こんにち)の「ゲーマー向けMini-ITXシステム隆盛」はなかった……というのはさすがに言い過ぎだと思われるものの,MAXIMUS VI IMPACTのデビューが市場形成に重要な役割を果たしたのは確かだと思う。
今回取り上げるのは,そんなR.O.G.版Mini-ITXマザーボードの最新モデルとなる「Intel Z170」(以下,Z170)搭載モデル「MAXIMUS VIII IMPACT」である。
Skylake世代のCoreプロセッサに対応する新しいR.O.G.版Mini-ITXマザーボードはどんな製品なのか。詳しく見ていきたい。
非常にコンパクトなサイズながら,複数のサブ基板により多機能を実現
あらためて基本的な事柄を確認しておくと,MAXIMUS VIII IMPACTは,LGA1151パッケージのCPUに対応したマザーボードだ。本体サイズは170
Impact Power IIIのヒートシンクを取り外したところ |
Skylakeでは,ベースクロック(BCLK)を生成するPLLが外付けとなったが,さすがにそれはImpact Power III上には載っていない。マザーボード本体側にIDT製のクロックジェネレータ「5V41538NLG」を搭載している |
電源フェーズはMAXIMUS VI IMPACTのImpact Power,そして第2世代モデルとなる「MAXIMUS VII IMPACT」の「Impact Power II」と同じ8+2構成。ただ,MOSFETがImpact Power IIにおけるTexas Instruments製「NexFET」からInternational RectifierのPowIRstageシリーズに属する「IR3553」へ変更となっており,ASUSによると,この仕様変更によって電力損失量が減少し,製品寿命も向上したという。
さらに,チョークコイルも従来の「60A BlackWing Chokes」から「MicroFine Alloy Chokes」へ変更し,安定性と電力効率の向上を実現したとのことである。
なお,一般的な固体コンデンサより高耐久と長寿命になっているニチコン製GTシリーズのコンデンサを採用している点はImpact Power IIから変わっていない。
もう1つのサブ基板であるSupremeFX Impact IIIは,25ピン端子で接続されているため,ビスを取り外せば着脱可能だ。
MAXIMUS VII IMPACTに差さっていた「SupremeFX Impact II」だと,EMIシールドはHD AudioCODECチップのみを覆うような格好になっていたのだが,今回のSupremeFX Impact IIIでは従来比で大きくなったカード全体がロゴ入りのシールドで覆われており,より見た目のインパクトが増している。
Impact Control IIIのほうは,「ATX電源ボタンとリセットボタン,POSTコード表示用2桁の7セグメントLED,クリアCMOS用プッシュスイッチ,USB BIOS Flashback用プッシュスイッチがまとまっているだけ」と言えばそれまでだろう。だが,Mini-ITXシステムの場合,一度PCケースに組み込むと,マザーボード基板全体にアクセスするというのは困難を窮めるケースが多い。それだけに,PCケースの背面側からさっと使えるというのは,利便性の観点から高く評価できそうである。
もう1つ,カバー付きなので一見オンボード実装といった雰囲気のWi-Fi Go!は,IEEE 802.11ac(2x2,MU-MIMOサポート)対応の無線LANおよびBluetooth 4.1接続を提供するカードだ。マザーボードのM.2スロットに差さっている。
搭載するコントローラはQualcomm Atherosの「QCA61x4A」だ。
これは,ASUS製の「Intel X99」チップセット搭載マザーボード「X99-Deluxe」に付属しているのと同じもののようで,簡単にいうと,ファン3基,温度センサー3基を増設できる,いわばファン拡張カードである。PCケース内のファンをマザーボードから制御したい場合に役立つだろう。
一方で,省略されたものもある。MAXIMUS VII IMPACTには,PCI Express(以下,PCIe) 3.0 x4接続のM.2コスロットと,無線LAN&Bluetoothモジュールが標準で差さったPCIe 2.0 Mini Cardスロットを両面に搭載する「mPCIe Combo IV」がマザーボードに対して垂直に接続されていたが,Wi-Fi Go!の採用に伴ってmPCIe Combo IVはなくなっている。
代わりにオンボードで追加となったのは,PCIe 3.0 x4接続のU.2端子だ。M.2とU.2のどちらが便利かというのは議論の余地がありそうなので,ASUSによるこの判断の評価は分かれそうだが,少なくともPCIe 3.0 x4接続のストレージ用インタフェースは維持できているともいえるだろう。
ちなみにストレージ用としてはそのほか,ほかにSerial ATA 6Gbpsポートが4つある。
I/Oインタフェース部全景 |
I219-V |
1000BASE-T LANコントローラはIntelの「I219-V」で,LAN端子は「Anti-surge LANGuard」により,一般的なLAN端子の2.5倍,最大15000Vのサージ電圧に耐えるという。
Thunderbolt 3コントローラ「DSL6540」を搭載するが,MAXIMUS VIII IMPACTではこれをUSB 3.1(Gen.2)コントローラとして利用している |
基板上にはUSB 3.1(Gen.1) |
UEFIにはCPUの冷却に液体窒素を利用するための「LN2モード」がある。U.2端子のすぐ近くにある「LN2」ジャンパピンを使うと,LN2モード用UEFIに切り替え可能だ |
こちらはマザーボード背面側。Mini-ITXマザーボードだと,背面側にM.2スロットを搭載するようなものもあるが,MAXIMUS VIII IMPACTの場合,インタフェース類はない |
使いやすいUEFIには「液冷CPUクーラーを考慮した設定」あり
一方のAdvence Modeでは,より細かな設定を行えるようになっている。たとえばベースクロックなら,「Extreme Tweaker」メニューの「Ai Overclock Tuner」以下にある「BCLK Frequency」という項目から,40.00〜650.00MHzの範囲を0.01MHz刻みで指定可能だ。もちろん,「K」型番のCPUでは,「CPU Core Ratio」から,CPUの動作倍率をコアごとに40〜83倍の範囲から指定できる。
TPU(TurboV Processing Unit)は,オーバークロック設定を自動で行う機能「Turbo V」を制御する専用チップのこと。標準では「Keep Current Setteings」としてUEFIの設定内容を反映するようになっているが,これを「TPU I」や「TPU II」に変更すると,Turbo Vによる自動オーバークロックを利用できるようになる。
TPU Iは空冷クーラー用,TPU IIは液冷クーラー用。最近のMini-ITXケースでは簡易液冷クーラーを搭載できるものが増えてきているだけに,液冷クーラー搭載時のための項目があるというのはありがたい。
ちなみに,初期リリースであるバージョン0205だと,「Advenced」のサブメニューには,Thunderboltの設定項目が用意されているが,これはUEFI側のミス。2016年1月19日リリースのバージョン1402だとこの項目はなくなっている。前段でも指摘したとおり,MAXIMUS VIII IMPACTのUSB Type-CポートがサポートするのはUSB 3.1(Gen.2)である。
AI Suite 3でも細かなOC設定が可能。Game First IVでは有線LANと無線LANの有効活用を実現
4Gamerでは以前,ASUS製のIntel Z170搭載マザーボード「Z170 PRO GAMING」を紹介し,そのときAI Suite 3の紹介も行ったが,MAXIMUS VIII IMPACTにおけるAI Suite 3の機能で変わったところはほとんどない。MAXIMUS VIII IMPACTでLEDが光るのはアナログサウンド入出力端子のみなので,Z170 PRO GAMINGにあったLED制御関連項目「LED Control」がなくなっているくらいだ。
なお標準だと「Intelligent Mode」で,アプリケーションが負荷状況を見て自動的に割り振るようになっている。手動設定したいときは,「Application」タブのすぐ下に並んだ「AUTO」「MANUAL」から後者を選択すればいい。
アプリケーションの優先度は「Highest」「Higher」「Normal」「Lower」「Lowest」の5段階から設定可能だ |
アプリケーションごとに,有線LANと無線LANのどちらを利用するかを任意に変更することもできる |
サウンド関連のソフトウェアスイートとしては,R.O.G.マザーボードでお馴染みの「Sonic Studio II」が標準で用意される。
Sonic Studio IIでは,バーチャルサラウンドサウンドや低域強調,セリフの強調といった出力関連機能のほか,マイク入力時には「ボリューム安定装置」の名でいわゆるAGC(Auto Gain Control,小声でしゃべっても相手に聞こえやすくする機能)やノイズリダクションといった機能を利用可能だ。また。ゲームの動画配信時や録画時に音質の向上を図るという機能「Casting Enhancer」も利用できるようになっている。
機能性は文句なし。価格が高いのは玉に瑕だが,ゲーマー向けMini-ITXマザーボードとしての価値はかなり高い
Mini-ITXマザーボードでどこまでオーバークロックを試すかという点には議論の余地があると思う。また,3万6000〜4万円程度(※2016年2月10日現在)という実勢価格は,正直,かなりの数の潜在的なユーザーを躊躇させるとも思うが,それでも,本気でMini-ITX環境をメインのゲームPCとして運用したい場合に,MAXIMUS VIII IMPACTは,かなり有力な選択肢になるはずだ。
もちろん,これをあえてリビングに持ち込むというのも,面白いのではなかろうか。
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ASUSのMAXIMUS VIII IMPACT製品情報ページ
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