レビュー
Core Ultra搭載で持ち歩けるゲームノートPCは,ゲーマーの選択肢となるのか
ASUS ROG Zephyrus G16
(GU605MV-U7R4060GS)
開発コードネーム「Meteor Lake」こと,IntelのノートPC向けCPU「Core Ultra」シリーズは,今までのPC向けCPUにはない新しい要素を多数盛り込んできた。ゲーマー向けのCPUとは言いにくい面もあるが,第13〜14世代Coreプロセッサ搭載PCをスキップして,Core Ultra搭載のゲームPCを待ちわびていた人も少なくないのではないだろうか。
ASUSTeK Computer(以下,ASUS)の「ROG Zephyrus G16」2024年モデル(型番:GU605MV-U7R4060GS,以下 Zephyrus G16)は,Core Ultraシリーズの中でも上位に位置付けられる「Core Ultra 7 155H」を採用しつつ,GPUに「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」(以下,ノートPC向けRTX 4060)を搭載した16型ノートPCである。
Zephyrus G16で,どの程度快適にゲームがプレイできるのだろうか。実際にゲームでテストを行い,Zephyrus G16のポテンシャルを確かめてみたい。
GPU性能的にはミドルハイクラスのスペック
Core Ultra 7 155Hは,高性能側のP-coreが6基,高効率側のE-coreが8基,さらに低消費電力なLP E-coreを2基有する計16基22スレッドタイプのCPUだ。LP E-coreは,動画再生など低負荷のワークロードであれば,P-coreやE-coreを使用せずに処理できるため,CPUの消費電力を減らせる理屈だ。
Intelは,この構造を「3D Performance Hybrid Architecture」と呼び,Core Ultraシリーズにおける特徴のひとつになっている。
また,Core Ultraシリーズは,「Intel AI Boost」に対応しており,Zephyrus G16では「Adobe Premiere Pro」における動画編集や,「Adobe Lightroom」での写真編集などにおいて,AIを用いた処理ができるというわけだ。
なお,Core Ultra 7 155Hは,統合型グラフィックス機能として「Intel Arc GPU」を備えている。つまり,Intel Arc GPUとRTX 4060という2つのGPUが使用できるわけだが,Windows 11のGPU切り替え機能である「Windows Hybrid Graphics」やNVIDIAの「Optimus Technology」により,どちらのGPUを利用するかを,アプリのGPU負荷に合わせて自動で適宜選択できるようになっている。
なお,Zephyrus G16では,統合設定ソフトの「Armoury Crate」にも,「GPUモード」が用意されている。GPUモードは「Ultimate」「スタンダード」「エコモード」「最適化」の4種類があり,工場出荷時状態は,Windows Hybrid Graphicsを使用するスタンダードとなっている。UltimateはRTX 4060のみを使用するモードで,最高性能が得られるものの,消費電力が増大する。一方,エコモードはIntel Arc GPUだけを使用し,最適化ではスタンダードとエコモードを状況に応じて切り替えるようになっている。
そして,Armoury Crateでは「Windows」「サイレント」「パフォーマンス」「Turbo」「手動」という5つの動作モードを利用可能だ。各モードの概要は,以下のとおり。
- Windows:OSの電源管理設定に順ずるモード
- サイレント:処理性能が低下するものの,静音性が向上するモード
- パフォーマンス:処理性能と消費電力のバランスをとるモード
- Turbo:CPUのTDP枠とGPUの動作クロックを引き上げて,処理性能を向上させるモード
- 手動:CPUやGPUについて細かく動作を設定できるモード
なお,工場出荷時設定は,ACアダプター経由の電源接続時はパフォーマンス,バッテリー駆動時はサイレントだ。Turboでは,RTX 4060のベースクロックが1545MHzから1595MHzへ,ブーストクロックも1890MHzから1940MHzに引き上げられる。同時に,メモリクロックも75MHzほど引き上げられていた。また,サイレントモードは,パフォーマンスと動作クロックは変わらないものの,TDPの枠が大幅に引き下げられている。
さて,これらのCPUやGPUを十分に冷却するため,Zephyrus G16は,内部に3つのファンで構成される冷却機構「Tri Fanテクノロジー」を搭載している。これらのファンの間は4本のヒートパイプで結ばれており,それぞれが84枚のファンブレードで構成されているという。ブレードのエッジが曲げられたユニークな形状のファンによって,エアフローが約11%向上し,消費電力が約16%低減しているという。
また,ストレージはPCI Express 4.0に対応したM.2 SSDを1TB内蔵している。
筐体をなるべく薄くするためか,16インチ級ながら,Zephyrus G16は有線LANポートを備えていない。しかし,Wi-Fi 6Eに対応した無線LANを備えているため,ゲーム用途で困ることはないだろう。Bluetooth 5.1もサポートしているので,Bluetooth対応ヘッドセットやゲームパッドを簡単に利用できる。
バッテリーについては,4セルで90Whのリチウムポリマーバッテリーを内蔵する。公称のバッテリー駆動時間は,JEITA測定法2.0で約13.6時間,JEITA測定法3.0で約6.9時間(動画再生時)と,測定方法により差があるものの,おおむね後者並みかそれ以下のバッテリー駆動時間とみてよさそうだ。
17mm前後の薄さを実現
それでは,Zephyrus G16の外観を見ていこう。
今回評価したZephyrus G16のGU605MVモデルは,「エクリプスグレー」と呼ばれる暗めの色合いを基調にした本体カラーを採用しており,落ち着いた雰囲気がある。ゲーマー向けモデルではあるものの,オフィス用途でも十分使用できるデザインだ。
天板には,斜めに横切る線状のLED「SLASH LIGHTING」があり,なかなか個性的だ。このSLASH LIGHTINGの発光パターンは,Armoury Crateから変更できるはずだが,試用機ではうまく動作しなかった。
公称本体サイズは,約354.95(W)×246.95(D)
重量は公称1.85kgだが,実測では約1900gだった。軽いとまでは言えないものの,十分持ち運びできる重さだろう。
ただし,GPUを自動で切り替えるOptimus Technologyを利用している場合は,G-SYNCを使えない。G-SYNCを利用できるのはRTX 4060のみを使用している場合のみに限られる点は注意したい。
パネルの表面は,光沢のないノングレア加工が施されている。駆動方式は公開されていないものの,コントラストは高めで,その画質はかなりクッキリした印象だ。視野角は,水平垂直ともに170度とごく一般的なスペックである。左右に角度を変えて横から画面をのぞき込んでも,輝度のバラつきや色ムラは見当たらなかった。
キーボードは日本語配列の82キータイプだ。キーピッチは実測約18.3mmで,キーストロークは公称約1.7mm。キーキャップのサイズが,既存製品と比べて12.24%拡大しているそうで,その効果もあってか,打鍵感はかなり良好だ。
ただ,[Back Space]キーが小さくなっていたり,スクリーンショットで使う[Print Screen]キーがなかったりと,配列は少し特殊な面がある。Zephyrus G16では,[FN]+[F6]キーでWindows 11の「Snipping Tool」が起動するようになっており,それを[Print Screen]キー代わりに使用するというわけだ。とはいえ,使い慣れた[Print Screen]キーがないのは,正直なところ不満が残る。
各キーには白色のバックライトLEDが組み込まれ,暗がりの視認性は良好だ。Armoury Crateの「Aura Sync」で,常時点灯の「スタティック」,ゆっくり点滅する「ブレス」,早い点滅の「フラッシュ」と,発光パターンを3種類から選べる。
メインキーの左上には,[M1]〜[M4]のホットキーも用意されており,Armoury Crateから,ボタンへの機能割り当てを変更可能だ。
インタフェースも見ておこう。Zephyrus G16は,Thunderbolt 4とUSB 3.2 Gen 2 Type-Cを1ポートずつと,USB 3.2 Gen 2 Type-Aを2ポート装備する。Thunderbolt 4とUSB 3.2 Gen 2 Type-Cは,データ転送だけでなく映像出力も可能なほか,本体の充電機能も備えている(※供給可能な電力は未公開)。
そのほかにも側面には,HDMI出力端子(※バージョン未公開)やSDXCまで対応のSDカードリーダーも備える。また,Windows Helloに対応した約207万画素の赤外線カメラが,ディスプレイのベゼル上側に組み込まれている。
サウンド機能は,メインスピーカーとなる1Wが4基,ウーファースピーカーの2Wが2基の計6基構成。ASUSによると,従来よりも音量が47%向上しているとことで,筆者の主観ではあるのだが,実際に聞いてみてもノートPCとしてはかなり大きな音量で鳴っているように感じた。
また,内蔵スピーカーによる「Dolby Atmos」再生にも対応しており,臨場感あふれるサウンドを実現するという。ほかにも,3Dアレイマイクも内蔵しており,Armoury CrateからAIノイズキャンセリングなどの機能が利用可能だ。
本体紹介の最後に,Zephyrus G16のスペックをまとめておこう。
CPU | Core Ultra 7 155H (P-core定格クロック1.4GHz,P-core最大クロック4.8GHz,16C(P-core:6,E-core:8,LP E-core:2),22T,共有キャッシュ容量24MB) |
---|---|
メインメモリ | LPDDR5X-7467 |
グラフィックス | GeForce RTX 4060 Laptop GPU(グラフィックスメモリ容量 8GB) |
ストレージ | Micron Technology MTFDKBA1T0QFM 容量1TB |
液晶パネル | 16型液晶,解像度2560×1600ドット, |
無線LAN | Wi-Fi 6E |
Bluetooth | 5.1対応 |
有線LAN | 非搭載 |
外部 |
Thunderbolt 4×1 |
キーボード | 日本語配列82キー |
スピーカー | スピーカー:1W×4,ウーファースピーカー:2W×2 |
インカメラ | 搭載(Windows Hello対応IRカメラ,約207万画素) |
バッテリー容量 | 90Wh |
ACアダプター | 最大出力200W |
公称本体サイズ | 約354.95(W)×246.95(D) |
公称本体重量 | 約1.85kg |
OS | Windows 11 Home |
3つの動作モードでZephyrus G16をテスト
Zephyrus G16のテストへと進む前に,テスト環境について説明しておこう。
先述したとおり,Zephyrus G16には5種類の動作モードがある。今回はその中から,ゲームの実行性能に影響が大きいであろうパフォーマンスと,最大性能が得られるTurbo,省電力なサイレントの3モードでテストを行った。なお,NVIDIAコントロールパネルから,描画にはRTX 4060を使用するように設定してテストを行い,GPUモードは工場出荷時設定であるスタンダードのままだ。
なお,グラフィックスドライバには,テスト時に最新バージョンとなる「GeForce 552.12 Driver」を使用している。
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション28に準拠。ただし,作業時間の都合により,「Starfield」と「Cities: Skylines II」の2つは割愛した。一方,「3DMark」(Version 2.28.8217)において,リアルタイムレイトレーシング性能を知る「Port Royal」を実施している。
さらに「Call of Duty: Modern Warfare III」(以下,CoD:MW3)では,DLSS使用時の性能を見るために,オプションのグラフィックにある品質タブで,「アップスケーリング/シャープニング」から「NVIDIA DLSS」を選択。「NVIDIA DLSS」プリセットでは「クオリティ」を指定したうえで,「NVIDIA DLSSフレーム生成」をオンにして計測した。
同様に「F1 23」では,「ゲームオプション」の「設定」にある「グラフィック設定」から,「ビデオモード」にある「アンチエイリアス」を「NVIDIA DLSS」に変更。さらに,「アンチエイリアシングモード」を「クオリティ」に設定している。
テスト解像度は,Zephyrus G16のディスプレイ解像度である2560×1600ドットに加えて,1920×1080ドットを選択した。ただ,ゲームの仕様上,2560×1600ドットではなく2560×1440ドットを使用しているものがある。また「Fortnite」については,アスペクト比が「16:10」で統一されるため,1920×1080ドットではなく,1920×1200ドットとなっている点をお断りしておく。
今回のテスト内容は,「ROG Zephyrus G14」2024年モデルのレビューとまったく同じだ。グラフィックスドライバのバージョンが異なるため,まったく同じ環境とは言えないが,今回は参考値として,Zephyrus G14の「Turbo」で計測した結果も併記しておく。どちらも同じGPUを搭載しているが,CPUがZephyrus G16のCore Ultra 7 155Hに対して,Zephyrus G14は「Ryzen 7 8845HS」という点が大きな違いだ。CPUの違いが,ゲーム性能にどう影響するだろうか。
Turboで10%ほど性能が向上。Zephyrus G14とは勝ったり負けたり
それでは3DMarkの結果から順に見ていこう。グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだ。
Zephyrus G16は,パフォーマンスのFire Strike“無印”で2万台と良好な結果を残している。さすがに,Fire Strike Ultraになるとスコアを大きく落とすものの,これはテスト解像度が3840×2160ドットであるので致し方ないところだろう。なお,Turboでは7〜10%程度スコアが伸び,逆にサイレントでは23〜27%程度低下するなど,動作モードでかなりメリハリのついた結果となっている。
なお,Zephyrus G14との差は,Turbo同士での比較で−3〜+3%となり,負荷が高まるほどZephyrus G16のほうが高いスコアとなった。
続いてグラフ2は,Fire Strikeの総合スコアから「Graphics score」を抜き出したものとなる。
ここではCPU性能の足かせがなくなるためか,総合スコアより上昇しており,各動作モードの差も広がる傾向が見てとれる。Turboはパフォーマンスから9〜11%程度向上しており,サイレントはパフォーマンスから25〜29%程度落ち込んでいる。
Zephyrus G14とは,Turboで2〜5%程度の差を付けており,Zephyrus G16の結果はおおむね良好だ。
グラフ3は,ソフトウェアベースの物理演算テスト結果を「CPU score」として抜き出したものだ。ここでは,動作モードの違いによって,CPU性能も変化するかを確かめておきたい。
Turboとパフォーマンスの差は最大でも4%弱で,Graphics scoreほどの差は開いていない。また,パフォーマンスとサイレントの差も7〜13%程度しかなく,動作モードの変更はCPU性能よりGPU性能への影響が大きいことが分かる。
Zephyrus G14比で見ると,Zephyrus G16は13〜17%程度も下回った。CPU性能では,Zephyrus G14の「Ryzen 7 8845HS」に軍配が挙がる。
GPUとCPU両方の性能が効いてくる「Combined test」の結果をまとめたものが,グラフ4だ。
CPU性能に加えてGPU性能の影響も大きく表れるため,Graphics scoreほどではないものの,各動作モードの差もしっかり見て取れる。Turboはパフォーマンスに4〜11%程度の差を付け,逆にサイレントは23〜32%程度スコアが低下している。
Zephyrus G14との比較では,負荷の低いFire Strike“無印”でこそ約10%の差を付けられているものの,Fire Strike Extreme以上では,2〜5%程度上回っている点は見どころと言えよう。
DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見てみよう。グラフ5は総合スコアをまとめたものだ。
さすがにFire Strikeより描画負荷が大きくなるため,Zephyrus G16はTime Spy“無印”でも1万に届いていない。とはいえ,Turboで約13%もスコアを伸ばし,Time Spy“無印”でしっかり1万を超えて見せた。一方,サイレントはパフォーマンスから25〜27%程度スコアを落とすなど,傾向はFire Strikeと同様だ。
Zephyrus G14比では,Turboで約3%の差を付けて上回った。
続くグラフ6はTime SpyのGPUテスト結果となる。
Turboとパフォーマンスの差は約12%ほどと,総合スコアを踏襲している。その一方で,サイレントではパフォーマンスとの差が29〜30%程度まで広がっている。ここでは,CPU性能の影響がなくなるわけだが,サイレントのほうが総合スコアでCPU性能の影響を色濃く受けていたということなのだろう。
Zephyrus G14との差は3〜4%程度で,Zephyrus G16のほうが優秀だ。
さらにグラフ7では,Time SpyのCPUテスト結果をまとめている。
Fire Strikeでは,動作モードがCPU性能に与える影響はさほど大きくなかったが,ここでは若干傾向が異なる。Turboはパフォーマンスから15〜17%程度もスコアを伸ばした。一方で,サイレントのスコア低下率は,パフォーマンスから最大でも約4%に過ぎない。
Zephyrus G14との比較では,Fire Strikeと同様にZephyrus G16のほうが下回っており,その差は4〜7%程度だ。
もうひとつのDirectX 12のテストである「Speed Way」の結果が,グラフ8となる。
描画処理が大きいテストであるため,全体的にスコアは低めだ。とはいえ,Turboはパフォーマンスから約12%スコアを伸ばし,2500台まで上昇している点は称賛できよう。また,サイレントではパフォーマンスから約32%もスコアが落ち込み,かんばしくない結果に終わっている。
なお,Zephyrus G14には約4%の差を付けて上回った。
リアルタイムレイトレーシング性能も見てみよう。Port Royalの結果がグラフ9だ。
Turboとパフォーマンスとの差は約12%で,6000弱までスコアを伸ばしている点は優秀だ。また,サイレントではパフォーマンスから約29%ほどスコアが下がっていて,動作モードがリアルタイムレイトレーシング性能にも色濃く影響しているのが分かる。
Zephyrus G14に対しては8%ほどの差があり,リアルタイムレイトレーシング性能ではZephyrus G16が上回った。GPU性能ではZephyrus G16のほうが高いという傾向を,ここでも踏襲していると言えよう。
では,実際のゲームではどうなるか。グラフ10〜11はCoD:MW3の結果となる。
Zephyrus G16の平均フレームレートは,パフォーマンスでも1920×1080ドットで約130fpsと優秀で,2560×1440ドットでも100fps弱を維持している。レギュレーションでは平均80fps以上を及第点としているので,Zephyrus G16は2560×1440ドットでもそれを満たしているわけだ。
Turboにいたっては,そこから12〜15%程度もフレームレートを伸ばし,1920×1080ドットで150fpsに達している点は評価していい。またサイレントは,パフォーマンスと比べて66〜74%程度のフレームレートしか発揮できていないが,それでも1920×1080ドットであれば,100fpsに迫る勢いを見せているのは立派だ。
Zephyrus G14に対しても,Zephyrus G16は5〜10%もの差を付けており,CoD:MW3でも顕著に上回った。
次に,「バイオハザード RE:4」の結果がグラフ12〜13だ。
Zephyrus G16の平均フレームレートは,パフォーマンスでも1920×1080ドットで60fpsに迫っている点は優秀だが,2560×1600ドットでは約42fpsにまで落ち込んでいる。Turboでは,そこから19〜23%程度も記録を伸ばし,1920×1080ドットで70fpsに迫っている点は評価できよう。一方,サイレントはパフォーマンスから約21%も低くなっており,ゲームを快適にプレイするのは少々難しい。
Zephyrus G14との比較を見ると,平均,1パーセンタイルフレームレートともに4〜6%程度上回っており,ゲームの快適さにおいて優れる点は称賛できるポイントだ。
「Fortnite」の結果をグラフ14〜15に示す。
Zephyrus G16は,パフォーマンスの1920×1080ドットで最小フレームレートが90fps近くに達した。Turboでは,さらに約7%上昇したうえ,最小フレームレートでも80fps近くに達している点は見どころだろう。サイレントはパフォーマンスから平均フレームレートが22〜25%程度,最小フレームレートが13〜42%程度も低下しており,性能低下の幅はやはり大きい。
Zephyrus G14との比較だが,1920×1080ドットの平均フレームレートではほぼ同等であるものの,最小フレームレートでは約13%も低い。一方で,2560×1600ドットでは,平均フレームレートこそ約3%上回るものの,やはり最小フレームレートでは約8%も低く,全体的にはやや負けていると言っていいだろう。Fortniteでは,CPU性能が影響する割合が,CoD:MW3やバイオハザード RE:4よりも高いのだろう。
グラフ16は,「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
スクウェア・エニックスが示す指標では,スコア1万5000以上で最高評価となる。Zephyrus G16は,パフォーマンスでも1920×1080ドットでそれを満たしている。さすがにサイレントでは,1920×1080ドットでも1万5000を下回ってしまうが,Turboではしっかりとパフォーマンスから11〜12%程度も伸ばしている点は好印象だ。
Zephyrus G14との比較では,2〜3%程度上回った。
そんなFFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ17〜18だ。
平均フレームレートは総合スコアを踏襲したものとなっているが,Zephyrus G16は,パフォーマンスの1920×1080ドットで100fpsを超えている点は評価できよう。また,最小フレームレートはCPU性能の影響が強くなるため,Turboとパフォーマンスでは差が見られない。ただ,サイレントはパフォーマンスの73〜75%にまで低下している。
Zephyrus G14との比較では,最小フレームレートについてはまったく同一だが,平均フレームレートは2〜3%程度上回り,総合スコアを踏襲した結果となった。
グラフ19〜20には,「F1 23」の結果をまとめている。
Zephyrus G16の平均フレームレートは,パフォーマンスでは1920×1080ドットでも60fpsを下回ってしまうものの,Turboになると約16%伸びて,60fpsを上回っている点は注目すべきポイントだ。サイレントは,平均フレームレートこそパフォーマンスから13〜19%程度下がった程度だが,最小フレームレートは39〜41%程度も低くなっている。つまり,サイレントの影響は,最小フレームレートこそ大きく,ゲームの快適度はかなり損なわれると言っていい。
Zephyrus G14との比較では,平均フレームレートで約2%の差を付けられている。
消費電力は150〜180W程度。Turboで消費電力は30〜44W程度上昇する
さて,Zephyrus G16の消費電力がどの程度なのかは気になるところだ。
そこで,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて最大消費電力のみを計測してみた。テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時とし,さらに,ディスプレーモードを自動選択に設定して,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
その結果がグラフ21だ。
Zephyrus G16のパフォーマンスは,各ゲーム実行時で152〜178W程度。Turboにすると,そこから11〜43W程度上昇しており,ACアダプターの上限に達するほど。性能向上の代償は小さくない。一方,サイレントはパフォーマンスから23〜48W低下しており,消費電力が大きく低減しているのはかなり魅力的だ。
Zephyrus G14と比べると,Turboで28〜44Wも増加しているのが気になるところ。Zephyrus G14と比べてGPU性能は高いものの,その分,消費電力も増加しているといったところだ。
CPUとGPUの温度も確認しておきたい。温度約24℃の室内で机上に置き,3DMarkのTime Spyを30分間連続して実行した状態を「高負荷時」として,アイドル時ともども,CPUとGPUともにArmoury Crateから温度を取得することにした。その結果はグラフ22〜23のとおり。
さすがにパフォーマンスやTurboでは,高負荷時においてGPUは80℃を超え,CPUは90℃台半ばと,どちらも温度は高めだ。なお,サイレントのアイドル時が,パフォーマンスやTurboよりも温度が高めなのは,静音重視の設定となってファンの回転数が低く抑えられているためだ。
最後に筆者の主観であることを断ったうえで,Zephyrus G16について触れると,性能のわりには静かな印象を受けた。ゲーマー向けノートPCでは,高い負荷をかけるとファンが轟音を発する製品も見られるが,Zephyrus G16はそれらに比べると,かなり静かだ。少なくとも,ヘッドセットを装着していれば,聞こえないレベルだ。
税込価格は26万9800円,仕様と性能を考えると十分お買い得
ここまで見てきたとおり,Zephyrus G16のゲーム性能は,なかなかのものだ。さすがに2560×1600ドットでは力不足が露見する場面があるものの,1920×1080ドットであれば,たいていのゲームを高画質設定で快適にプレイできそうだ。しかも,リフレッシュレート240Hzの液晶パネルを生かすこともできるので,コアなゲーマーでも満足のいくスペックと性能を備えたノートPCと言ってよさそうだ。
Zephyrus G16の価格は,直販サイトで税込26万9800円と,安価とはいえないまでも,持ち運べる重量とスペックでこの性能であれば,十分魅力的なコストパフォーマンスではないだろうか。持ち運んで使うゲーマー向けノートPCを探しているのであれば,このZephyrus G16は有力な選択肢と言っていい。
ASUSTeK ComputerのZephyrus G16 2024年モデル製品情報ページ
ASUS StoreのZephyrus G16 GU605MV販売ページ
- 関連タイトル:
Republic of Gamers
- この記事のURL:
(C)ASUSTeK Computer Inc.