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[CES 2015]次世代SoC「Tegra X1」のグラフィックス性能は現行Tegra K1の1.5〜2倍に。1TFLOPSの処理性能で狙うのは自動車業界
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印刷2015/01/05 15:00

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[CES 2015]次世代SoC「Tegra X1」のグラフィックス性能は現行Tegra K1の1.5〜2倍に。1TFLOPSの処理性能で狙うのは自動車業界

 既報のとおり,北米時間2015年1月4日,NVIDIAは報道関係者向けイベントを開催して,開発コードネーム「Erista」こと次世代SoC(System-on-a-Chip)「Tegra X1」を発表した。概要はすでにお伝えしたとおりだが,開発機材によるデモの様子が公開されたので,イベントの追加情報やベンチマークテストの結果と合わせてレポートしたい。

Tegra X1のサンプルチップ。左写真が天面側で右写真は裏面側となる。チップ右側に置かれた100円玉と比べると,パッケージサイズはおおむね174×165mmほどだ
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GPU部分はシェーダプロセッサ256基のMaxwell

CPUコアはCortex-A57×4とCortex-A53×4


 速報でもお伝えしたが,あらためてTegra X1のスペックをおさらいしておきたい。
 20nmプロセスで製造されるTegra X1は,GPU Technology Conference 2014で予告されたとおり,Tegraシリーズとしては初めてMaxwell世代のGPUアーキテクチャを採用するSoCだ。搭載するCUDA Core数は256基とされている。現行世代の「Tegra K1」は,192基のKepler世代GPUコアを搭載しているので,シェーダプロセッサ数だけなら1.3倍以上の増加となるわけだ。

Tegra X1とGeForce GTX 980では同じAPIを利用できるというスライド
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 また,Maxwell世代となったことで,PC用GPUである「GeForce GTX 980」と同じAPI,具体的にはDirectX 12やOpenGL 4.5,OpenGL ES 3.1,CUDA 6.0といったものの利用も可能となっている。これにより,PCや据え置き型ゲーム機向けのゲームをタブレット端末向けに移植する場合でも,OS側がサポートしていれば同じフィーチャーやエフェクトを利用できるというのが,NVIDIAの主張である。

 一方のCPUコア部分には,ARMが開発した64bit対応のCPUコア「Cortex-A57」を4基,同じく「Cortex-A53」を4基という計8基を搭載。これらはbig.LITTLE構成となっており,処理負荷に応じてどちらのCPUコアをどれだけ使うかを動的に変更できる仕組みが取られている。

 ところで,NVIDIAは64bit版Tegra K1で,同社独自の64bit ARMベースCPUコア「Denver」を採用していた(関連記事)。今回のTegra X1でARM製のCPUコアを採用されたと聞けば,独自開発CPUコアの路線を諦めたのだろうかと思うだろう。だが,「そうではない」とNVIDIA側担当者は述べる。
 Denverの後継となるARMベースCPUコアの独自開発は継続されているそうだが,Tegra X1ではグラフィックス性能の向上に重点を置いたため,ARM製コアを採用したということだ。GPUコア部分の変更が大きいため,CPUコアは安全策を取って,実績のあるARM製を採用したということなのだろう。

Tegra X1のイメージ写真。下側に特徴が列挙されている
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 なお,Tegra K1と同様に,Tegra X1はSoCとはいいつつも,無線LAN機能やモデム機能を持たないアプリケーションプロセッサだ。そのため,これを使ってタブレット端末やスマートフォンを作るには,それら周辺チップを別途用意する必要がある。


Androidタブレット最速のTegra K1を圧倒する性能


 GPUコアの強化によるグラフィックス性能の向上は目覚ましいものがあるようだ。NVIDIAが公開した性能比較グラフによれば,「3DMark」のIce Storm Unlimitedにおいては,Tegra K1比で約1.5倍,Appleの「iPad Air 2」が搭載するSoC「A8X」と比較した場合は約2倍という,圧倒的なスコアを叩き出すという。

Tegra X1とTegra K1,並びにApple A8Xのグラフィックス性能比較グラフ。スコアの差は圧倒的といっていいレベルだ。
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Android向けのゲームやグラフィックスベンチマークアプリによる性能比較。ここでもTegra K1に対して大きな性能差を見せている
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 別途行われた説明会で披露された開発機材によるデモでは,実際に4320043300程度のスコアを記録していた。Androidタブレットでは現状最速といわれる「SHIELD Tablet」(Tegra K1搭載)を4Gamerでテストしたときに,約30900というスコアを記録していたので,これを軽く1.4倍は上回っているわけだ。
 また,モバイル端末向けベンチマークアプリケーション「GFXBench 3.0」によるスコアも,SHIELD Tabletの約1.85〜2.43倍となっていた。

3DMarkのIce Storm Unlimitedで計測したTegra X1開発機材のスコア(左)。右写真は同じくベンチマークアプリケーション「GFXBench 3.0」で計測したスコアで,いずれもSHIELD Tabletを大きく上回っている
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披露された開発機材。中央やや上にTegra X1がある。そのすぐ下にある2つはメモリチップだろうか
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Tegra X1開発機材上で,ベンチマークモードのあるAndroid用アクションゲーム「Tainted Keep」を画面解像度1920×1080ドットのUltra設定で動作させている様子(左)。テクスチャや各種エフェクトはリッチなものだが,この状態でも平均フレームレートは53.61fpsを記録している
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Tegra X1の浮動小数点演算性能は,ついに1TFLOPSの大台に到達したとアピールするスライド。「Core i7-4790K」と比較して2倍程度の性能があるという
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 イベントでは,Tegra X1上で動作させた「Unreal Engine 4」ベースのリアルタイムデモ「Elemental」も披露された。溶岩が流れる荒涼とした土地を舞台に,甲冑をまとった魔神のようなキャラクターが動くというデモだが,ハイダイナミックレンジ(High Dynamic Range,以下HDR)表現やパーティクル,物理シミュレーションなどをTegra X1上で実現しており,ハイエンドPCと同じエンジンを動作させられるとアピールされていた。

Unreal Engine 4によるデモ「Elemental」をTegra X1上で動作させている様子
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 また,電力あたりの性能(電力効率)も優秀で,GFXBench 3.0で比較した場合は,A8Xの約1.7倍の電力効率を実現するとのこと。同じ消費電力ならより高性能であり,同じ性能なら消費電力がより少ないというわけだ。

Tegra X1とTegra K1およびA8Xの電力効率を比較したグラフ。A8Xの1.7倍も電力効率で優れるという
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こちらはTegra X1開発機材とiPad Air 2の実機を使い,消費電力を比較したグラフだ。赤い折れ線がiPad Air 2,青い折れ線がTegra X1のもので,消費電力に大きな差があることが読み取れる
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 そのほかにも,4K解像度のビデオ映像で利用が進むとされているビデオコーデック「H.265」に対応するハードウェアデコーダも搭載しており,4K解像度で60fpsの映像をデコードする能力を備えるとのことだ。
 4K解像度のテレビにTegra X1搭載タブレットを接続して,ストリーミング配信される4K動画を楽しむという使い方も可能となるだろう。

60fpsで4K解像度や,10bitカラーで4K解像度のH.265映像をデコードできる能力があるモバイル向けSoCはTegra X1だけである,というスライド
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Tegra X1のターゲットプラットフォームは自動車?


Jen-Hsun Huang氏(President and CEO, NVIDIA)が掲げるのが,Tegra X1を搭載するインストルメントパネル用の制御モジュール「DRIVE CX」だ
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 さて,それだけ優れた性能を備えたSoCであるなら,高性能なタブレット端末や据え置き型ゲーム機タイプのAndroid端末が登場することを期待したくなる。だが,NVIDIAの総帥であるJen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)社長兼CEOがTegra X1の用途として強くアピールしたのは,タブレットやゲーム機ではなく,車載用電子機器であった。

 イベントでは,Tegra X1を搭載した自動車のインストルメントパネル用コンピュータ「DRIVE CX」や,Tegra X1を2基搭載する自動運転車用のコンピュータ「DRIVE PX」が発表され,それらを使うさまざまなデモも披露された。自動運転車では,車体に搭載する多数のカメラで撮影した映像から周囲の自動車や歩行者,標識などを画像認識で識別する必要がある。そうした処理をTegra X1×2のパワーを使って行おうというものである。

Tegra X1を搭載するインストルメントパネルの表示用コンピュータ「DRIVE CX」(左)と,それを使ったデモ機(右)。スピードメーターのテクスチャやエフェクトを自由に変更できるほか,右写真の右側にある縦型のディスプレイには,ナビゲーション用の地図や車載オーディオ機器の操作パネルを表示できる
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Tegra X1を2基搭載した自動運転車用コンピュータ「DRIVE PX」(左)。右写真は実際に自動車にDRIVE PXとカメラを搭載して,ラスベガスの街中を走る自動車を認識させるテストをしている様子。まだ認識精度は十分とは言い難く,認識できていない車があったり,車種を誤認識していたりする
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 NVIDIAは以前から,Tegraシリーズを車載電子機器へ応用する取り組みに熱心であったが,Tegra X1ではさらにその方向性を強く打ち出していくことがアピールされていた格好だ。1時間半のイベントで,3分の2が自動車関係の話題というあたりにも,同社の強い意気込みが表れていたと思う。

デモを動作させているTegra X1開発機材。大きなヒートシンクが取り付けられているように見えるが,これは実際のタブレットを想定したものとのこと
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 現時点では,Tegra X1の出荷時期や搭載製品がいつ頃登場するのかといった情報は一切公表されていない。Tegra K1のときも,2014年1月に発表されてから搭載製品が登場するまで半年,SHIELD Tabletが国内で発売されるまでに10か月ほどかかった。Tegra X1搭載製品が世に出るのも,やはりそれくらいの時間はかかるかもしれない。
 搭載製品の登場が今から待ち遠しい限りである。

Tegra X1 製品情報ページ(英語)

NVIDIAのCES 2015特設ページ(英語)


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