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[CES 2015]次世代SoC「Tegra X1」のグラフィックス性能は現行Tegra K1の1.5〜2倍に。1TFLOPSの処理性能で狙うのは自動車業界
GPU部分はシェーダプロセッサ256基のMaxwell
CPUコアはCortex-A57×4とCortex-A53×4
速報でもお伝えしたが,あらためてTegra X1のスペックをおさらいしておきたい。
20nmプロセスで製造されるTegra X1は,GPU Technology Conference 2014で予告されたとおり,Tegraシリーズとしては初めてMaxwell世代のGPUアーキテクチャを採用するSoCだ。搭載するCUDA Core数は256基とされている。現行世代の「Tegra K1」は,192基のKepler世代GPUコアを搭載しているので,シェーダプロセッサ数だけなら1.3倍以上の増加となるわけだ。
一方のCPUコア部分には,ARMが開発した64bit対応のCPUコア「Cortex-A57」を4基,同じく「Cortex-A53」を4基という計8基を搭載。これらはbig.LITTLE構成となっており,処理負荷に応じてどちらのCPUコアをどれだけ使うかを動的に変更できる仕組みが取られている。
ところで,NVIDIAは64bit版Tegra K1で,同社独自の64bit ARMベースCPUコア「Denver」を採用していた(関連記事)。今回のTegra X1でARM製のCPUコアを採用されたと聞けば,独自開発CPUコアの路線を諦めたのだろうかと思うだろう。だが,「そうではない」とNVIDIA側担当者は述べる。
Denverの後継となるARMベースCPUコアの独自開発は継続されているそうだが,Tegra X1ではグラフィックス性能の向上に重点を置いたため,ARM製コアを採用したということだ。GPUコア部分の変更が大きいため,CPUコアは安全策を取って,実績のあるARM製を採用したということなのだろう。
なお,Tegra K1と同様に,Tegra X1はSoCとはいいつつも,無線LAN機能やモデム機能を持たないアプリケーションプロセッサだ。そのため,これを使ってタブレット端末やスマートフォンを作るには,それら周辺チップを別途用意する必要がある。
Androidタブレット最速のTegra K1を圧倒する性能
GPUコアの強化によるグラフィックス性能の向上は目覚ましいものがあるようだ。NVIDIAが公開した性能比較グラフによれば,「3DMark」のIce Storm Unlimitedにおいては,Tegra K1比で約1.5倍,Appleの「iPad Air 2」が搭載するSoC「A8X」と比較した場合は約2倍という,圧倒的なスコアを叩き出すという。
別途行われた説明会で披露された開発機材によるデモでは,実際に43200
また,モバイル端末向けベンチマークアプリケーション「GFXBench 3.0」によるスコアも,SHIELD Tabletの約1.85〜2.43倍となっていた。
イベントでは,Tegra X1上で動作させた「Unreal Engine 4」ベースのリアルタイムデモ「Elemental」も披露された。溶岩が流れる荒涼とした土地を舞台に,甲冑をまとった魔神のようなキャラクターが動くというデモだが,ハイダイナミックレンジ(High Dynamic Range,以下HDR)表現やパーティクル,物理シミュレーションなどをTegra X1上で実現しており,ハイエンドPCと同じエンジンを動作させられるとアピールされていた。
また,電力あたりの性能(電力効率)も優秀で,GFXBench 3.0で比較した場合は,A8Xの約1.7倍の電力効率を実現するとのこと。同じ消費電力ならより高性能であり,同じ性能なら消費電力がより少ないというわけだ。
そのほかにも,4K解像度のビデオ映像で利用が進むとされているビデオコーデック「H.265」に対応するハードウェアデコーダも搭載しており,4K解像度で60fpsの映像をデコードする能力を備えるとのことだ。
4K解像度のテレビにTegra X1搭載タブレットを接続して,ストリーミング配信される4K動画を楽しむという使い方も可能となるだろう。
Tegra X1のターゲットプラットフォームは自動車?
イベントでは,Tegra X1を搭載した自動車のインストルメントパネル用コンピュータ「DRIVE CX」や,Tegra X1を2基搭載する自動運転車用のコンピュータ「DRIVE PX」が発表され,それらを使うさまざまなデモも披露された。自動運転車では,車体に搭載する多数のカメラで撮影した映像から周囲の自動車や歩行者,標識などを画像認識で識別する必要がある。そうした処理をTegra X1×2のパワーを使って行おうというものである。
NVIDIAは以前から,Tegraシリーズを車載電子機器へ応用する取り組みに熱心であったが,Tegra X1ではさらにその方向性を強く打ち出していくことがアピールされていた格好だ。1時間半のイベントで,3分の2が自動車関係の話題というあたりにも,同社の強い意気込みが表れていたと思う。
搭載製品の登場が今から待ち遠しい限りである。
Tegra X1 製品情報ページ(英語)
NVIDIAのCES 2015特設ページ(英語)
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Tegra X1
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