レビュー
「RACE 07」に「ニュルブルクリンクサーキット」と「WTCC Extreme」マシンを追加
GTR: Evolution 日本語マニュアル付 英語版
人気レースシム「RACE 07: Official WTCC Game」の
拡張パックが登場
「GTR」「RACE」シリーズといった良質のレースシミュレータをリリースし続けている,スウェーデンのゲームデベロッパSimBin Studiosが放つレースシム「GTR: Evolution 日本語マニュアル付 英語版」(以下,Evolution)が,ズーから発売されている。
といっても完全な新作という位置づけではなく,ズーが2007年に発売したFIA公認のWTCC世界ツーリングカー選手権を題材としたレースシム「RACE 07: Official WTCC Game 日本語マニュアル付 英語版」(以下,RACE 07)に,レースモード,サーキット,レースカーを追加する拡張パック「GTR Evolution Expansion」をセットにしたスペシャルパックである。
では早速,Evolutionを導入するとRACE 07に追加される要素を中心に見ていこう。基本的な部分はRACE 07となんら変わっていないため,RACE 07の詳しいことについては当サイトに掲載してあるレビュー記事をご覧になってから読み進めていただきたい。また,Evolutionのムービー2本を掲載したので,まずはその目でゲーム内容を確認してもらいたい。
「RACE 07: Official WTCC Game」レビュー記事
リアルに再現された
ニュルブルクリンクサーキットを走り回れ!
Evolutionで追加されるサーキットは,レースファンならばご存じのドイツのニュルブルクリンクサーキットだ。世界一過酷なコースとして知られる全長20.8kmの北コース,F1などで使用される5.1kmの南コース,さらに北コースと南コースをつないだ24.4kmのエンデュランスレイアウトが収録されており,レイアウトの異なる3コースが楽しめるのは嬉しいところだ。
ニュルブルクリンクの面白さは,やはり北コースにある。コースの高低差は約300m,コース幅が狭い上に勾配があって,172のコーナーは先が見えにくいブラインドコーナーが多く,それでいて平均スピードが速い。車にとって過酷な条件が揃っており,車の持つ総合的なポテンシャルを測るために世界中の自動車メーカーがスポーツカーのテストを行っていることで有名だ。もちろん車の性能だけでなく,一周6〜8分もかかるコースだけに,ドライバーの集中力,力量,そして度胸が試されるので,気合いを入れて走らなくてはならない。
ニュルブルクリンクサーキットがついに登場。腕に自信のある人は登場するすべてのレースカーでニュルブルクリンクを極めてみよう |
F3000のマシンでニュルブルクリンクを走る。傾斜のついたコーナーが多く,サーキットセッティングとは異なるノウハウが必要だ |
北コースはすべてのコーナーが覚えられず,何度もミスしてしまうなんてこともあるだろう。筆者も最初はそんな感じだったが,繰り返し走っているうちに自然とどこを走っているのかは分かるようになってくるはず。それでも覚えられない! という人は,コースレイアウトが分かるトラックマップを表示しておけば(デフォルト設定で,テンキーではない5キー),コースの先が見えるようになるのでオーバースピードでのコースアウトなどは極端に減らせるだろう。きちんとコースをトレースできるようになると面白さが倍増すること間違いなしだ。
ニュルブルクリンクはアップダウンやうねりが激しい割にスピードが出るせいか,リプレイをテレビ中継視点で眺めていると格好が良い |
ニュルブルクリンクの名物コーナー「Karussell(カルッセル)」。バンクがついているがセメント舗装で滑りやすいので注意 |
実際のコースを限りなくリアルに再現と謳われているが,筆者は実車でニュルブルクリンクを走った経験がないので,本当に完璧に再現されているとは断言できない。しかし,YoutubeにあったEvolutionと実車の走行比較ムービーなどを見ると,そっくりに再現されていて,思わず口を開けたまま見入ってしまったほど。限りなくリアルに再現という謳い文句は言いすぎではなさそうな印象だ。
コースの先が分かるトラックマップは強い味方だ。チラチラ見てたらブレーキングが遅れた! なんてことがないようにしよう |
ニュルブルクリンク名物の路面の落書きも再現。テストを行ったメーカーやチーム,ドライバーが書き残していくんだとか |
究極のWTCCマシン「WTCC Extreme」登場
このモンスターを乗りこなせ
追加されるマシン(レースカー)は,究極のWTCCマシンである「WTCC Extreme」クラス,そして「GT Pro」「GT Sport」「GT Club」といった,ニュルブルクリンクで行われる耐久レースなどに参戦しているGTカー,さらにDODGE VIPER SRT10,GUMPERT APOLLO,KOENIGSEGG CCX,AUDI R8の「Production Class」(市販車スポーツカー)の29車種。これで収録車種は合計49車種,カラーリング違いも含めると500種類となるから凄い数だ。
最初に,レースが好きな人でさえ聞いたことがない「WTCC Extreme」クラスのマシンに触れておこう。WTCC Extremeクラスのマシンは一見するとWTCCに参戦しているBMW,CHEVROLET,SEAT,ALFA ROMEOなのだが,実はこのゲームのオリジナルマシン。異様に低い車高,巨大なブリスターフェンダー,巨大なエアロパーツやディフューザー(整流板)など,ノーマルのWTCCマシンとはまったく異なっている。
それぞれのマシンは外観こそ異なるが,マシン性能自体は横並びとなっている。しかし,ノーマルのWTCCマシンとは比べものにならない化け物マシンで,エンジンは4000cc V8 32バルブの最大600馬力で車重1000kg。しかも全車FR(後輪駆動)になっているのだから,普通ならFFでアンダーステアが消えないなんて嘆いているSEAT LEONでさえ,リアをズリズリと流してコーナーを抜けるという次元の違う走りができてしまうのだ。
ノーマルのWTCCマシンで走り慣れたコースも,WTCC Extremeマシンで走ればガラッと印象が変わる。この挙動はまさに箱のF1といえるかも? |
ライバルカーの強さ(速さ)であるOPPONENT SKILLを自分の腕に合わせて設定すれば熱いバトルが楽しめる。でもこれが難しい |
実は筆者はこのWTCC Extremeクラスのマシンを非常に気に入っていて,走らせているだけで単純に面白くて,何時間も同じコースを走り回ってしまったほどだ。マシンスペック的には怪物マシンなので扱いにくそうなイメージだが,予想以上に走らせやすく,エンジンレスポンス,ハンドリング性能も素晴らしくて,きびきびとした挙動で走りを楽しめる。
WTCC Extremeクラスのマシンでニュルブルクリンクを走るのも楽しいが,やっぱり,コーナーの多いテクニカルなサーキットがオススメだ。狭いマカオやポーなどの市街地コースのコーナーをリズミカルに抜けられたときに,このWTCC Extremeクラスの面白さが分かると思う。現実にはない架空マシンが登場するのはリアル系レースシムにおいてあまりないが,こういったアレンジならば個人的に大歓迎と思ってしまうほど良く出来ている。
筆者がお気に入りのAston Martin DBR9(GT Proクラス)。かなりのジャジャ馬なので走らせていて非常に楽しい |
市販車クラスのマシンは高性能な高級スポーツカー。でもレースカーと比べてしまうと曲がらない止まらないで扱いにくい |
新たに追加されたGTカー選手権のマシンと市販車スポーツカーについても,それぞれの車種ごとの挙動特性が再現されており,同じレースカテゴリのマシンでも乗り比べてみるとガラッと違う挙動を楽しめる。
もちろん,WTCC Extremeクラスを含めて,マシンごとの細かいセッティングも可能で,乗りにくいマシンを自分なりにセッティング調整して乗りやすくするという,レースシムならではの楽しみ方もできる。セッティング調整は苦手という人は,コースごとにそれぞれの車種に合わせたドライ&ウェットセッティングデータが用意されているから安心だ。いろいろとセッティング調整して,自分の走りに合ったレースカーで思う存分に走り回ってもらいたい。
セッティング調整して挙動の違いを楽しむのがレースシムの醍醐味だ。調整しては走行を繰り返して煮詰めていこう |
ちなみにWTCC Extremeクラスだけでレースを行う「R-CADE EXTREME」というゲームモードも追加されている |
「RACE 07」を持っていない人には文句なくオススメだが……
というわけで,EvolutionはRACE 07にニュルブルクリンクとレースカーを追加したという,ぶっちゃけ地味な拡張パックである。実はこのRACEシリーズはこれまで拡張を繰り返してきており,Evolutionについても最初は正直「また拡張パックか」と思ってしまった。しかし非常に再現度の高いニュルブルクリンクサーキットが収録されており,そこをWTCCを含むさまざまなレースカーで走り回れることに,個人的に大きな魅力を感じてしまった次第だ。
これからRACE 07に挑戦したいという人は,このEvolutionを買っておいて損はないだろう。とはいえ,RACE 07のレビューのときも同じことを書いているのだが,またしても拡張パックのみのパッケージが用意されておらず,RACE 07ユーザーがEvolutionを手に入れるには,RACE 07本体がダブるのを諦めてEvolutionを購入するか,デジタル配信システム「Steam」で拡張パックを購入するかしかない。何度も言わせてもらうが,せめてRACE 07所有者のために安価な拡張パックのみのパッケージを用意してくれてもよかったと思う。
ギアサーキット(マカオ)などはリバースコースも用意されている。逆走になるだけで普通とは異なる走りが要求されて面白い |
ニュルブルクリンクもいいけれど,やっぱりコース幅が狭くて緊張感のある市街地コースでのレースは熱くなれる |
それはさておき,最近はめっきり数が減ってきたリアル系レースシムだが,Evolutionのような拡張パックという形でもサーキット,レースカーの追加で新たな気持ちで楽しめるのは,ファンとしては嬉しい限りだ。今なおRACE 07のマルチプレイも盛んに行われており,Evolutionを導入することでニュルブルクリンクという新たな舞台で世界中のプレイヤーとバトルができるようになるし,まだまだRACE 07をプレイする機会は増えることだろう。興味のある人は,ぜひコテコテのレースシムに挑戦してほしい。
腕に自信のある人はWTCC Extremeマシンで雨のニュルブルクリンク北コースをどうぞ。筆者は一周でくたびれてしまった |
レースごとに2レース,ローリングスタート(WTCC)か,1レース,スタンディングスタート(GT)にするかを設定できる |
収録マシンをどさっと紹介
◆GT Pro
・ Aston Martin DBR9
・ Audi R8 GT Concept
・ Corvette C5-R
・ Corvette C6.R
・ Dodge Viper GTS/R
・ Gumpert Apollo GT
・ Koenigsegg CCGT
・ Lister Storm
・ Saleen S7-R
◆ GT Sport
・ BMW M3 GTR
・ Corvette C6.R GT2
・ Marcos Marcorelly
・ Mosler MT900R
・ Seat Toledo GT
・ Spyker C8 Spyder GT2R
・ SunRed SR21
◆ GT Club
・ Aston Martin DBRS9
・ BMW Z4 GTR
・ Dodge Viper Comp. Coupe
・ Gillet Vertigo
・ Seat Cupra GT
◆ WTCC Extreme
・ Alfa-Romeo 156 Extreme
・ BMW 320si Extreme
・ Chevrolet Lacetti Extreme
・ Seat Leon Extreme
◆ Production Class
・ Audi R8
・ Dodge Viper SRT/10
・ Gumpert Apollo
・ Koenigsegg CCX
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(C)2008 SIMBIN STUDIOS AB.
RACE 07 The WTCC Game (C) 2007 SIMBIN STUDIOS AB. Developed by SIMBIN DEVELOPMENT TEAM AB. Published by SIMBIN STUDIOS AB. All rights reserved. RACE 07 The WTCC Game is a trademark of SIMBIN STUDIOS AB. All other trademarks are the property of their respective owners and used under licence.