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[CEDEC 2008#06]経産省も拡張現実を夢見る!? 10年で5兆円の成長を目指すコンテンツ産業戦略とは
2006年時点で,これらコンテンツ産業の規模は11.4兆円であり,前年比1.4%増しで拡大傾向が続いているというから,自然増だけで13.1兆円くらいにはなる計算だが,1.7兆円伸びるところを5兆円伸ばさなければいけないのだから,けっこうたいへんそうだ。
この,小泉内閣のときの政策決定をめぐって,今回のCEDECでは総務省と経済産業省が,それを形にするための施策を説明した。かたやゲーム産業の規模をマクロに捉えるよすがとして,かたやバーチャルワールドもどきの土地を作ってしまおうという驚きの発想が語られたセッションについて,ちょっとずつ紹介してみよう。
まずは総務省 情報流通行政局 コンテンツ振興課の飯村由香理氏の講演から,ゲームに関連しそうな話題を拾ってみたい。講演は「デジタル・コンテンツの流通促進について」と題され,映像/放送コンテンツを主たる対象とした振興策,とくに,例えばいったん放映された番組を映像ソフト化して国内外に販売するといった「マルチユース(二次利用)市場」を重視していくべきというのが主題である。
一時利用市場の約5割がテキスト系コンテンツ,マルチユース市場の約6割が映像系ソフトというのは,ライトノベルに始まって,うまくいけば劇場版アニメに終わる,最近のオタク市場を思い浮かべるとすごく納得しやすいかもしれない。最も活発で多様な市場へのトライアルは,最もコストの低い(リスクの小さい)分野から起こるのである。
それはさておき,よく,ゲーム業界が映画業界を追い抜くという話題があって,実際映画は6〜7%であるから,この実感自体は(日本においても)大枠で間違いではないわけだ。ただし,映画を抜いたからどうなんだというのがこのグラフ全体の意味するところで,地上波テレビが25%以上,新聞記事ですら17〜18%である。雑誌を除いた書籍の市場でも6〜7%と,ここでいうゲームよりは大きい。
その意味で,ゲーム業界がここまでに成し遂げた成果を性急に評価することにはやや疑問があって,むしろ今後どんなステップで伸びていくのか,楽しみな分野と見るべきなのだろう。
将来のニーズを踏まえて,あらかじめ産/官/学が効率よく連携できるよう,来たるべき社会のありようにコンセンサスを持っておくことが策定目的である。2005年にスタートし,毎年改訂されているのだという。
こうしてさまざまな需要を作り出し,産業を育てていけば,いつしかコンテンツ市場も5兆円くらい伸びようというもの……のようだ。いやまあもちろん,もう少し手堅い未来志向技術/製品のPRと情報共有も,経産省は手がけているわけだが。
もちろん,新製品が入荷した店に記号を表示するとか,いま自分が買いたい商品を扱っているお店を強調するとかいった,もう少しおとなしい用途にも使える。
「電脳メガネ」ほどスマートなサポート機器の開発は,さすがにもうしばらく無理だと思うが,アニメ「電脳コイル」における大黒市のような情報技術による「オーバーラップ」は,案外早く現実のものとなりそうである。Web上の仮想現実だけを見て,いつまでも第二社会だと思っていてはいけない。そうした意味で興味深い講演だった。
この点について経産省の加藤氏に聞いてみたところ,被害の規模や実態がつかめない点が大きいのだという。コンテンツ市場の拡大を考えているこのタイミングで,まずは省庁と意見交換を行うというのも,あるいは解決に向けた一ステップとなるのかもしれない。
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