インタビュー
社会人eスポーツリーグ「AFTER 6 LEAGUE」実行委員会メンバーにインタビュー。凸版印刷がeスポーツに参入するその理由は?
今回,凸版印刷でeスポーツプロジェクトに携わる「AFTER 6 LEAGUE」推進リーダーの小髙悠詩氏と,eスポーツプロジェクト事務局長の原田香織氏に,オンラインインタビューを実施しました。凸版印刷がeスポーツに参入する理由や,「AFTER 6 LEAGUE」の構想について,お話をうかがいました。
小髙悠詩氏
凸版印刷 eスポーツプロジェクト AFTER 6 LEAGUE推進リーダー
情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部
エクスペリエンスデザイン本部 ブランド統括部 SDGs推進チーム
2011年凸版印刷入社。約10年間CSRを中心にクライアントの各種コーポレート・コミュニケーションの支援に携わる。SDGsの知見を活かし,eスポーツプロジェクトにも2018年から参画。現在は社会人eスポーツリーグ「AFTER 6 LEAGUE」の推進リーダーを務める。
原田香織氏
凸版印刷 eスポーツプロジェクト 事務局長
情報コミュニケーション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部
営業本部 第一部 渉外チーム 課長
1999年凸版印刷入社。事業戦略部門を経て2010年からは公共団体の実証事業や広報事業,大学研究機関との産学連携事業に従事。2018年より社内の有志を集めてeスポーツビジネス参画プロジェクトを立ち上げ,eスポーツ関連事業の企画開発,社内eスポーツ部創設など凸版印刷のeスポーツ事業全般に携わる。
凸版印刷がeスポーツに取り組む背景とは?
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。はじめに,社会人eスポーツリーグ「AFTER 6 LEAGUE」をどうして設立されたのかについて教えていただけますか?
昨年から,凸版印刷は電通とサイバー・コミュニケーションズとの共催で,企業向けeスポーツイベント「eSPORTS TRINITY」を開催してきました。このイベントは2部構成になっており,第1部ではビジネスセミナー,第2部では企業交流戦を実施していました。
その中で私たちは企業交流としての可能性に着目し,第2部で行っていた大会をスピンアウトして,リーグ化することにしました。それが今回動き出した,社会人eスポーツリーグ「AFTER 6 LEAGUE」です。
「AFTER 6 LEAGUE」が掲げるコンセプトは,「たたかう,つながる」。単に企業チーム同士が戦うだけでなく,eスポーツを通じて社会人同士がコミュニケーションする文化を醸成していければと考えています。
4Gamer:
なかなかeスポーツと直接的に結びつくイメージがないのですが,参入には,どのような理由があったのでしょうか?
小髙氏:
凸版印刷は,印刷を通した情報・文化の担い手であると自負しています。その一環で車いす陸上や車いすテニスなどのスポーツ専従社員を雇用したり,パラスポーツ体験会を開催したりと,スポーツの面で以前から社会的な支援を行っています。また,企業が果たす社会的責任として,SDGs(※)にも積極的に取り組んでいて,昨年にはSDGsステートメントを発表しました。
※「SDGs(エスディージーズ)」とは,「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標のこと。「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」などの17の目標と169のターゲットで構成される。
eスポーツは年齢や性別,ハンディキャップといった壁を飛び越えて,すべての人が等しくヒーローになれる場所だと思います。実は,私自身も心臓に障害を抱えていて,リアルなスポーツでは思い切り走ることができません。でも,eスポーツであれば,健常者と同じ土俵で戦うことができる。SDGsが掲げる理念である「誰一人取り残さない」を具現化する側面を,eスポーツは持っていると感じます。
「AFTER 6 LEAGUE」を通じて,社会人同士のコミュニケーションの選択肢の1つとして「eスポーツ」を確立する,という文化情勢の一端を担いつつ,SDGsの活動として社会に貢献していく,というのが企業としての理由ですね。
4Gamer:
企業として目指す方向性と,eスポーツが結びついたということですね。
eスポーツへの取り組みには,もちろんビジネスとしての意図もあるんです。もともと凸版印刷は,ゲームを始めとした,アニメやマンガなどといったコンテンツ産業の企業さんとの関わりが深く,そういったビジネス的なつながりも参入する理由の1つになっています。
ただ,今回設立した「AFTER 6 LEAGUE」に関しては,どちらかというとビジネスに直結するものというより,先ほど小髙が申し上げたような側面が強いと言えますね。
2年前から有志のプロジェクトとして始動
4Gamer:
eスポーツへの取り組みに対する,社内・社外の反応はいかがですか。
小髙氏:
凸版印刷は中期的な経営課題の1つに,新事業の創出を掲げています。eスポーツは今後,日本においても大きな成長が予測されている新市場でもありますし,先ほどお話した企業が果たす責任の方向性とも相まって,社内からは高い注目を浴びております。
社外では,やはり「なぜ凸版印刷がeスポーツを?」と意外に受け取られることが多かったのですが,2年間さまざまな活動を行ってきた結果,今では多くの方が我々の取り組みを応援してくださるようになりました。
4Gamer:
2年も前から活動されていたんですね。
原田氏:
社内でゲーム好きのメンバーが集まって,自主的にプロジェクトを立ち上げたのが始まりです。それぞれ所属する部署も異なるメンバーで,最初に集まったのは10人ほど。空き時間を使って定期的にミーティングするところから始まり,情報収集をしながら凸版印刷として何ができるかといった案を検討していきました。
小髙氏:
私自身も昔からPCゲームが好きで,「WarRock」というFPSゲームなどを長年やってきたんです。そんな背景もあり,eスポーツプロジェクトの話を聞いて参加しました。
4Gamer:
当初は有志の方々が集まったものだったと。それがどのような経緯で会社の正式なプロジェクトとして認められるようになったのでしょうか。
原田氏:
2019年2月に,RIZeSTの古澤社長をお招きし,「eスポーツビジネスの可能性」をテーマにした社内セミナーを自主企画したことが大きな転機になりました。「eSPORTS TRINITY」と同様に,第1部のセミナーと第2部のeスポーツ大会という形で実施したのですが,社内で非常に大きな反響があり,実施後のアンケートをもとにレポートを作成して注目度の高いビジネス領域であることを会社に提示できたんです。
eスポーツ部として動き出した活動も,ありがたいことにメディアに取り上げていただく機会が増えていきました。それを会社に報告していくと,だんだん上の人たちの理解も進んでいき,2019年度にはやっと名刺の肩書きに「eスポーツプロジェクト」と入れられるようになりました。
4Gamer:
かなりの段階を踏んで,現在の取り組みに至っているのですね。
原田氏:
2018年頃は,水面下で動く秘密組織のような存在でしたので(笑)。2020年の今では会社の正式なプロジェクトとして動かせるようになりました。社外の皆さまの有形無形の温かいご支援もありまして,現在に至ります。
4Gamer:
社内ではeスポーツ部の取り組みもされているとのことですが,「社会人×eスポーツ」ならではのエピソードがあれば教えていただけますか。
小髙氏:
凸版印刷では,約1年半前にeスポーツ部を立ち上げ,現在は80名以上の部員が所属しております。
我々の会社では,全国津々浦々いろいろな地域に社員がいまして,普段の仕事で直接関わりを持つメンバーというのは,ごく一部なんですね。ところが,eスポーツ部の活動を通じて,これまで関わりの少なかった地域や部署のメンバーともつながりを持つことができたんです。
そのおかげで,部署を超えて気軽に相談し合えるコミュニティができ,業務上でもスムーズなやり取りが生まれたというのが,社内的にはとても大きな影響でした。
また,eスポーツ部で参加した企業交流戦を通じて,普段のビジネスではなかなかご一緒できない企業の方々とも関係を築くことができました。実際に,今回の「AFTER 6 LEAGUE」を一緒に盛り上げてくださる企業の皆さんは,まさにそういった活動を通じて知り合った仲間です。
参加企業数約60社,年間約180試合の実施を目指す
4Gamer:
これから実施される「AFTER 6 LEAGUE」の採用タイトルや,スケジュールについても教えてください。
小髙氏:
「AFTER 6 LEAGUE」では,社内外での交流を促すため,個人戦ではなくチーム戦のタイトルを採用しております。
8月24日までに発表したタイトルは,「リーグ・オブ・レジェンド」「ブロスタ」(iOS / Android)「Apex Legends」(PC)「ウイニングイレブン」(PS4)「PUBG MOBILE」(iOS / Android)の5つ。PC,スマホ,コンシューマなど,プラットフォームは問わず採用していきたいと考えております。
4Gamer:
「AFTER 6 LEAGUE」は,リーグとしてどれくらいの規模を目指していますか?
小髙氏:
最大5タイトルで参加企業数は最大59社となります。それぞれのタイトル別では,「リーグ・オブ・レジェンド」で8社,「ブロスタ」で8社,「Apex Legends」で20社,「ウイニングイレブン」で8社,「PUBG MOBILE」で16社の募集を8月24日より開始いたしました。リーグは10月末から開始予定で,年間約180試合の実施を予定しております。
皆さん社会人ということで,仕事の都合などに合わせて柔軟にスケジュールを調整するため,配信についてはリアルタイムではなく,後日,動画として公開する形を取りたいと考えております。
4Gamer:
根本的な部分なんですが企業のeスポーツ部って,そんなにあるものなんでしょうか。「Apex Legends」はバトルロイヤルタイトルなので,そもそも人数が必要という面もありますが,20社というのは結構な数ですよね。
原田氏:
eスポーツ部として出場される企業さんもいますが,社内で友人に声を掛けてチームを組み,企業名を使っていいかを会社に確認を取った上で出場していただくパターンも多くあります。
ですので,eスポーツ部を持っている企業さんは増えつつあるものの,数で見るとまだまだかなと思っています。このリーグがきっかけとなり社内にeスポーツ部を立ち上げる社会人プレイヤーが増えるきっかけになれば嬉しいですし,リーグにご参加いただく気企業様には練習環境の提供など活動のサポートも行います。
4Gamer:
いわゆる「プロゲーマー」を擁する企業もあると思うのですが,プロゲーマー(元も含む)の参加に制限はあるんでしょうか。
原田氏:
そのあたりのバランスは非常に難しいところです。eスポーツでの実績を持っている人が,社会人になっても活躍するというのはとても好ましいことなのですが,あまりに強すぎるチームが圧勝しても……というところはありますので,うまく工夫していきたいと考えています。
4Gamer:
逆にこのリーグをきっかけに,例えば「リーグ・オブ・レジェンド」などを始めるような初心者プレイヤーもいるのでしょうか。
小髙氏:
はい。今回,設立記念大会の募集をした際に,「これから『リーグ・オブ・レジェンド』を頑張るのですが,応募してもいいですか?」という企業さんがいらっしゃいました。プレイするきっかけになっているのであれば嬉しいですね。
4Gamer:
リーグを通して成長していく姿も見られそうですね。話に出ましたが,その設立記念大会というのはどういったものでしょう?
小髙氏:
8月8日に設立記念大会として,「リーグ・オブ・レジェンド」でワンデーのトーナメントを行いました。出場枠を大幅に上回る企業の方々にエントリーいただきましたので,厳正なる抽選の結果,以下の8社にご参加いただきました。
アウトソーシングテクノロジー
アクセンチュア
イー・ガーディアン
角川ドワンゴ学園
ストランダー
ディー・エヌ・エー
東日本電信電話
ビット・クルー
(敬称略,五十音順)
こちらの大会の模様は,8月28日にオンラインで実施するセミナー「eSPORTS TRINITY」内にてダイジェスト版を放映いたします。その後,YouTubeのAFTER 6 LEAGUE公式チャンネルでもご覧いただける予定です。
また,9月19日には開幕前記念大会(公式サイト)を開催します。採用タイトルは「Apex Legends」で,20社のエントリーを目標にしています。9月6日24:00まで募集しているので,興味のある企業の人はぜひ。
4Gamer:
最後に,eスポーツファンに向けて一言メッセージをいただければと思います。
小髙氏:
社会人スポーツの一つの選択肢として,社会人eスポーツが根付き,文化として醸成できればうれしいです。その一環である「AFTER 6 LEAGUE」への皆さんのご参加をお待ちしております。
原田氏:
eスポーツを通じた社内外の方々との交流が,良きビジネスに繋がったり,今後の人生で末永く付き合える友人と出会うきっかけになったり。「AFTER 6 LEAGUE」が,そういった良い交流や出会いの場になれば嬉しいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「AFTER 6 LEAGUE」公式サイト
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