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海外ゲーム四天王 / 第26回:「Tropico 3」
輝く青い海。晴れ渡った青空。木々は緑に萌えサンバのリズムが鳴り響く。そんな南国ムード満点な島の大統領となり,住民の家を建てたり,仕事場を作ったり,特産品を輸出したりして島を発展させてゆかねばならないというのが,今回紹介する「Tropico 3」だ。
デベロッパもパブリッシャも異なるが,2001年に発売された「Tropico」(邦題,「トロピコ」)の8年ぶりの新作である。ちなみに2003年に「Tropico 2: Pirate Cove」がリリースされているが,こちらはゲーム性がかなり異なるので,TropicoのDNAを色濃く受け継いでいるのは本作のほうなのだ。
本作は,シムシティシリーズなどとは違い,具体的な大統領(El Presidente)の存在をとおして統治を行うところが特徴の一つ。まず自分の分身となる大統領を創り出すところからゲームはスタートする。
最初から用意されている大統領は18人で,革命戦士チェ・ゲバラ氏を思わせる人物から,マフィアのドンといった風貌の男性,頭の切れる秘書といった雰囲気の美人女性など,それぞれに個性的。後述するように,それぞれの人物には「政治的思想」とか「性格」といったパラメータが用意されているので,外見だけでなく中身も個性豊かだ。
オリジナル大統領を作成する場合は性別,服装,肌の色,髭の有無といった外見から,その大統領が共産主義寄りか自由主義的かといった政治的思想,裕福な家に生まれ育ったのかそうでなかったのかといった出身,外交的であるとか情け深いといった性格に加え,女好きや酒癖が悪いといった欠点まで設定できてしまうのだ。
こうした大統領の個性は,プレイにも反映される。たとえばミュージシャン出身の大統領だと住民の人気が高くなったり,アルコール依存症だと,なぜかソ連との友好関係が良好となったりといった具合だ。わざとマイナス面の多い,とんでもないダメ大統領を作ってプレイするのも面白そうだが,苦労するだろう。
ソ連,ということからも分かるように,時代は東西冷戦真っ直中の頃。アメリカの喉元に位置するカリブ海の小国として,東側に味方して援助をもらったり,東側に味方しない代わりに西側に援助してもらったりと,知恵を尽くして生きのびていかなければならないわけだ。
ゲームモードは「チュートリアル」のほか,“特産品を決められた数量輸出せよ”といったテーマを与えられる「キャンペーン」,18種類の島から好きなマップを選んで国づくりをする「サンドボックス」,そしてほかのプレイヤーが作成したオリジナルマップをインターネットから読み込んでプレイする「チャレンジ」の4種類が用意されている。
基本的に住民の家を建て,働く場所を用意し,特産品を輸出して,さらなる開発のための資金を得ていくという建設(建国)シムらしいゲーム展開になるが,住民にも主義や思想が設定されているところが,本作の個性的な部分だ。
共産主義者や資本主義者がいるかと思えば,政治的に中立な人もいる。宗教に強く惹かれている人や,自然を大切に思っている人もいる。そのため,教会を建てないと信仰心の強い人々の不興を買ったり,工場や飛行場ばかり建設していると,自然保護主義者の反感を買ったりする。こうした多種多様な欲求を持った人々を満足させつつ,政権を維持していくことこそ,Tropicoシリーズのミソなのである。うう,どいつもこいつも,勝手なことばかり言いやがって。
大統領たるプレイヤーは命令を下すだけでなく,ときには大統領官邸のバルコニーに立ち,「皆のために教会を建設しよう!」などと民衆に向かって演説して評判を得たりしなくてはならないのだ。
ゲーム全体の雰囲気が底抜けに明るいのも特徴の一つで,BGMはすべてノリの良いサンバ系ミュージック。たとえ強圧的な軍事独裁政権が圧政を敷いていても,このサンバのリズムが深刻さを吹き飛ばしてしまうので,プレイしていて気持ちが沈むことはない。
青い海や緑豊かなジャングルといった自然の美しさもまた,本作の大きな魅力だ。とくに美しいのが夕方。太陽が水平線の向こうに隠れる頃には建物の影が長く伸び,画面全体がオレンジ色に染まり,それはそれは美しい。仕事柄,多くの建設シムをプレイしているが,本作の夕景はダントツの美しさだと断言できる。
複数のプレイヤーで国づくりをするといったマルチプレイモードこそないものの,チャレンジモードでは,ほかのプレイヤーが作ったオリジナルマップや,心血を注いで作り上げたであろう“マイ国家”をダウンロードしてプレイできる。整然と区画割りされた国があるかと思えば,雑然としていながらも発展している国があるなど,さまざまな国づくりの様子はプレイの参考にもなるだろうし,観光をしているようで純粋に楽しい。
陽気なリズムに乗り,美しい風景を楽しみながら国づくりが楽しめる良作といえるだろう。ちなみに,本作のデモ版が,「こちら」でダウンロードできるので,ぜひお試しを。ビバ,エル・プレシデンテ!
「Tropico 3」は日本では正式発売されていないため,購入するには海外通販を利用することになる。ボックス入りのリテール版も発売されているが,Steamでは「Steam Special Edition」という特別版が発売されており,これなら日本からでも簡単に購入できるのでお得だ(ただし,クレジットカードは必須になるが)。
この特別版の内容は,製品版に加えて新マップが2種類,また大統領キャラ作成用に2種類の新コスチュームと2種類の帽子が追加されている。詳細は,Steam公式サイトの「こちら」をチェックしてみよう。
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- 関連タイトル:
トロピコ3 日本語版
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