レビュー
2010年に登場のデュアルG92カードはありやなしや
Galaxy GF PGTS250 GEMINI/2GD3
製品名から想像が付くとおり,PGTS250 GEMINIは,「GeForce GTS 250」(以下,GTS 250)2基を1枚の基板上に搭載し,カード上で「NVIDIA SLI」(以下,SLI)接続する製品だ。
Galaxyの販売代理店であるエムヴィケーから「5月中の発売予定」として貸し出しを受け,テストを終えたところで「発売延期になってしまった」(同社)という連絡があるなど,国内発売のスケジュールは未確定だが,せっかくなので,そのポテンシャルを明らかにしてみたい。
ちなみに本製品,Galaxyのお膝元である香港では,1499香港ドル程度で販売されているという。税制やロジスティクスの違いがあるので,「為替換算した金額=日本での予価」にはならないことをお断りしてから述べると,1499香港ドルは,おおむね1万8000円程度である。
オリジナルデザインの基板にG92×2とnF200を搭載
動作クロックはリファレンスよりも抑えめに
カード全体を覆うGPUクーラーはツインファン仕様。その動作音は,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,さすがに静音とはいえないレベルだった。「うるさい」と目くじらを立てるほどではないが,静音性に関しては,あまり期待しないほうがよさそうである。
なお,PCI Express外部給電コネクタが6ピン×2という仕様であることや,SLIブリッジコネクタを搭載しないこと,補強板を兼ねるガイドレールが取り付けられていることが,外観上の特徴といえるだろう。
GPUクーラーを取り外してみると分かるのは,クーラーユニットが3ピース構造になっていること。2基のGTS用にアクティブなクーラーが二つ,電源部と,PCI Expressブリッジチップ「nForce 200」を冷却するパッシブクーラーが一つ組み合わせられており,冷却にはかなりの配慮がなされているようだ。
なお,nForce 200のリビジョンはA3で,これはGeForce GTX 295などと同じ。メモリチップは,Samsung Electronics製のGDDR3「K4J10324QD-HJ1A」(1.0ns品)を採用していた。
TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.4.2)で動作クロックを確認してみると,値は下記のとおり。
- コアクロック:675MHz
- シェーダクロック:1620MHz
- メモリクロック:2200MHz相当(実クロック1100MHz)
これに対して,エムヴィケーから4Gamerに寄せられたPGTS250 GEMINIのスペックシートだと,動作クロックは,
- コアクロック:675MHz
- シェーダクロック:1620MHz
- メモリクロック:1800MHz相当(実クロック900MHz)
となっている。さらに,NVIDIAのGTS 250リファレンス仕様だと,
- コアクロック:740MHz
- シェーダクロック:1836MHz
- メモリクロック:2200MHz相当(実クロック1100MHz)
なので,コアクロックとシェーダクロックはリファレンスより低く,エムヴィケーの資料と同じ。メモリクロックはリファレンスと同じだが,エムヴィケーの資料よりは高いということになる。
ちなみに,搭載するGDDR3メモリチップは先ほど紹介したとおり1ns品なので,スペック上の最大動作クロックは2000MHz相当(実クロック1000MHz)。その意味でPGTS250 GEMINIは,メモリのみ,メーカーレベルのクロックアップがなされているわけだ。
なお,GPUに負荷がかからないアイドル時だと,動作クロックはコア300MHz,シェーダ600MHz,メモリ200MHz相当(実クロック100MHz)まで下がることを,GPU-Zから確認できている。
そこで,ASUSTeK Computerの「Intel X48 Express」搭載マザーボードで,SLI非対応の「Rampage Formula」で試してみたところ,果たしてNVIDIAコントロールパネルにSLIの設定項目は表示されず,SLI動作は実現できなかった。GTX 295なら,マザーボード側がSLIをサポートしていなくても利用できるのと比べると,この仕様を,大きなマイナスと感じる人は少なくなさそうだ。
本製品の利用を考えているなら,マザーボードがSLIをサポートしているかどうか,今一度確認が必要だろう。
GTS 250シングルカードおよび
GTX 285,HD 5850と比較
ただし,ENGTX285 TOP/HTDP/1GD3はメーカーレベルのクロックアップが行われたモデルなので,今回は動作クロックをリファレンス相当まで下げて用いることをあらかじめお断りしておきたい。
テストシステムのCPUは「Core i7-870/2.93GHz」だが,“効き具合”の違いが生じるのを避けるため,負荷に応じた自動オーバークロック機能「Intel Turbo Boost Technology」はBIOSから無効化している。一方,「Intel Hyper-Threading Technology」は有効のままだ。
なお,テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション9.2準拠となる。
よくも悪くもGTS 250×2のカード
総じてGTX 285と同程度の3D性能を発揮
さっそく,「3DMark06」(Build 1.2.0)から見ていこう。結果はグラフ1,2に示したが,PGTS250 GEMINIの示した数字は,SLI動作の特性を色濃く反映するものとなっている。
「標準設定」の1024×768ドットといった,グラフィックス描画負荷が非常に低い条件だと,GTS 250シングルカードとのスコア差はわずか12%しかないが,4xアンチエイリアシング&16x異方性フィルタリングを適用した「高負荷設定」の1920×1200ドットだと,差は62%にまで広がっている。
PGTS250 GEMINIのスコアが,GTX 285のそれを上回る傾向を示し,HD 5850とほぼ同じレベルに達している点にも注目しておきたい。
グラフ3,4は「Crysis Warhead」のスコアをまとめたものになる。
PGTS250 GEMINIは,標準設定の低解像度帯を中心に,GTX 285やHD 5850と同等レベルのスコアを示せているが,一方,標準設定でも1920×1200ドットではスコアが落ち気味で,高負荷設定になると,GTX 285との差が最大で40%にまで開いてしまう。Crysis Warheadは,メモリ周りの要求がシビアという点を踏まえるに,HD 5850が128.0GB/s,GTX 285が158.9GB/sというメモリバス帯域幅に対して,256bit接続&動作クロック2200MHz相当の同70.4GB/sしかないという事実が,高いグラフィックス負荷環境で,大きくマイナスに作用しているのだろう。
続いては「Left 4 Dead 2」の結果である(グラフ5,6)。Crysis Warheadほど,極端にメモリ食いというわけではないLeft 4 Dead 2を前に,PGTS250 GEMINIでは,SLIの恩恵が大きく出ており,標準設定の高解像度や高負荷設定時に,GTX 285のスコアを安定的に上回っている。
シェーダプロセッサ数とテクスチャユニット数によってスコアが大きな影響を受けやすく,いきおい,GPUを複数基搭載するマルチGPU構成のメリットがはっきりと出やすい「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)だと,PGTS250 GEMINIはHD 5850やGTX 285を圧倒した(グラフ7,8)。シェーダプロセッサ数で128基×2で,GTX 285の同240基を上回り,さらにコア&シェーダクロックもGTX 285より高いPGTS250 GEMINIが,それに応じたスコアを示しているわけだ。
続いて,「バイオハザード5」のテスト結果がグラフ9,10だが,ここは3DMark06と同様,SLIらしい結果となった。標準設定の1024×768ドットだとGTS 250比104%ほどと,スコアに違いはほとんどないが,標準設定で解像度が高くなっていったとき,GTS 250がどんどんとスコアを落としていくのに対し,PGTS250 GEMINIは,HD 5850やGTX 285と同じレベルを保てている。
高負荷設定だと,GTX 285から多少離されるものの,GTS 250シングルカードに対する優位性は変わらずだ。
標準設定における検証のみとなる「ラスト レムナント」も,傾向自体はバイオハザード5と同じ(グラフ11)。PGTS250 GEMINIは,1920×1200ドット設定で最大56%のスコア差を,GTS 250に対してつけている。
パフォーマンス検証の最後は,DirectX 9モードで実行した「Colin McRae: DiRT 2」(以下,DiRT 2)のスコアになる。結果はグラフ12,13にまとめたとおりだが,やはり,高解像度&高負荷設定に強いという,SLI動作らしい結果が見て取れるだろう。
なお,HD 5850は,レギュレーション9.2準拠だとスコアが低めに出るので,このスコアは参考程度に捉えてほしい。今回はグラフバーの色を変更し,区別してある。
GTS 250比で150〜170Wも消費電力が上昇
アイドル時の低消費電力も期待薄
デュアルGPU構成で気になる消費電力もチェックしてみよう。いつものように,ログを取得できるワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を計測してみた。
OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時として,スコアをまとめた結果がグラフ14だ。
正直,予想以上に消費電力が大きい印象である。アプリケーション実行時におけるシステム全体の消費電力はざっくり400W前後で,GTS 250シングルカード搭載時比150〜170W,GTX 285搭載時比でも65〜85W高い。nForce 200を搭載するなど消費電力面では不利なPGTS250 GEMINIだが,それにしてもこの数字はインパクトが大きいと言わざるを得ないだろう。
これだけ消費電力が大きいと,GPUコアの温度も気になるところだ。今回は,室温21℃の環境にバラック状態で設置したシステムにおいて,3DMark06の30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともどもスコアを取得することにした。その結果がグラフ15だが,さすがに2連ファン仕様の大型クーラーには効果ありといったところか,GPU温度は,GTX 285と同程度にまで抑え込まれている。
一にも二にも価格次第
デメリットを補えるほど魅力ある価格設定を望む
国内発売時期,価格とも未定なので,現時点で最終的な評価を下すことはなかなか難しいのだが,仮に香港市場と同程度の価格で市場に登場するのであれば,DirectX 10世代であるとか,消費電力が高いとか,マザーボードを選ぶとかいったデメリットを払拭できるだけのコストパフォーマンス的メリットを持った製品になるのは間違いない。姿を消しつつあるGTX 285カードが,依然として3万円台の値付けになっており,HD 5850も最安で3万円弱という価格設定になっている(※価格はいずれも2010年5月12日現在)という状況にあって,2万円を下回る価格で登場してくれば,なかなかに魅力的な存在となるはずだ。
しかし,これが2万5000円程度ということになると,マイナスポイントや制限が目立つようになって,とたんに魅力は失せてしまう。
その意味でPGTS250 GEMINIの浮沈を握るのは,一にも二にも価格設定だ。それ次第で,かなりおもしろい存在のカードになるだろう。
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GeForce GTS 200
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