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海外ゲーム四天王 / 第23回:「Brutal Legend」
Electronic Artsから発売されたヘヴィ・メタルアクション「Brutal Legend」。「PsychoNauts」など,個性的なタイトルを生み出すことで知られたプロデューサーのTim Schafer氏が,メタル・ミュージックに対する熱すぎる思いを注ぎ込んだという,一歩間違えると公私混同になってしまいそうな異色のゲームだ。
海外のメディアやプレイヤーの評価も高めで,新たなIPの誕生ではないかと言われている。そんなBrutal Legendを,編集部で最も純粋なロック魂を持った男だと自称する割には,フィギュアを机に並べているあたりはどーなの? という編集者が紹介しよう。毎回そうだという気もしないでもないが,今週はとくに分かる人にしか分からないのであります。
4Gamerを読んでいる日本全国のメタルヘッドの同志諸君,ブルータル・ビクトリー! ついに我ら気高き魂を持ったヘッドバンガーが立ち上がり,フェイク・メタルの支配に正義の鉄槌を下すべきときが来た! いまこそメロイックサインを高く掲げ,命ある限り勇ましく進軍せよ! そして真の音楽と自由をこの手に取り戻すのだ!
……って,何の話かといえばElectronic Artsより発売されたPlayStation 3/Xbox 360用ソフト,「Brutal Legend」の話なんですがね。そう,自らをもって忠実なるメタル・ソルジャーを任ずる者ならば,本作のプレイは必須であり,もしPlayStation 3/Xbox 360を持っていないならば本体ごと購入すべき一本だ。
編集部イチのメタル・キッズである筆者もとっくに購入&クリア済みで,いまこの原稿もACCEPTの“Metal Heart”を聴いて激しくヘッドバンギングしながら,頭突きでキーボードを叩いて書いているほどだ。本作の発売をめぐる,ActivisionとElectronic Artsとのゴタゴタには筆者もさんざんヤキモキさせられたが,とにかく無事発売されたことをメタルの神に感謝したい。
本作は,メタル・ビースト,オルマゴーデン(Ormagoden)の力でヘヴィ・メタル世界に飛ばされた腕利きのローディー,エディ・リッグズ(Eddie Riggs)が,斧とギターを武器に大暴れする三人称視点のアクションゲームだ。エディは悪魔に支配されたこの世界で,人々を解放し,真の音楽(もちろんヘヴィ・メタルだ)を取り戻すため,レジスタンスのリーダー,ラーズ・ハルフォード(Lars Halford)らと共に,悪魔の親玉ドヴィキュラス(Doviculus)と,その手下でヘア・メタルの権化のごときフワフワヘアの持ち主,ライオンホワイト(Lionwhyte)に戦いを挑むことになる。
エディを操作してのアクションゲーム要素に,無駄に大迫力のカーチェイスや,味方のヘッドバンガー軍団を指揮して戦うRTS風味の集団戦闘などを詰め込んだ,なんでもアリのゲーム性が本作の特徴の一つだが,本作を語るうえで絶対に外せないのが,ゲームを彩る100曲以上のHM/HR曲と,ファンが聞いたら卒倒すること間違いなしの,豪華すぎるボイスキャストの存在だ。
ゲーム中に楽曲が使われている主なバンドのごく一部を挙げるだけでも,BLACK SABBATH,MOTORHEAD,JUDAS PRIEST,MOTLEY CRUE,RATT,DOKKEN,SKID ROW,SLAYER,ANTHRAX,TESTAMENT,MEGADETH,そして筆者が先ほどから聴いているACCEPTなどなど,誰もが知る有名バンドばかり。中には一部マニアックなバンドも含まれているが,メタル・ジャンキーならば失禁してもおかしくない,実にゴージャスなラインナップであり,事実,筆者もすでに半狂乱だ。
だが,本作のすごいところはこれだけではない。なんと本作に登場するキャラクターのボイスアクトとして,あの“帝王”オジー・オズボーン,“鋼鉄神”ロブ・ハルフォード,“暴走ロックンローラー”レミー・キルミスターが本人そっくりのキャラクター役として,自ら声をあてているのだ! 主人公エディの声をハリウッド俳優のジャック・ブラックがあてているというのも確かに豪華だが,オジー,ロブ,レミーの三人が揃い踏みというインパクトには遠く及ばない。まさか,これほどの大物が三人も揃って本人役としてゲームに登場する日が来ようとは,メタルの神でも思いもよらなかったはずだ。
さらに,ヘヴィ・メタルを下敷きにした,さまざまな小ネタが挟み込まれているのも,マニア心をくすぐる本作ならではの要素だ。そもそも,主人公エディ・リッグズの名前からして,IRON MAIDENのマスコット・ゾンビ(?)エディ・ザ・ヘッド(Eddie the Head)と,そのデザイナー,デレク・リッグズ(Derek Riggs)から採られているではないか! しかしながら,本作ではIRON MAIDENの楽曲は一つも用いられていない。ナンテコッタ!
とまあ,こんな具合に,本作はメタルに熱い思いを抱いている人であればあるほど,黙って見過ごすわけにはいかないゲームなのだ。筆者が冒頭で,本作を全メタル・ソルジャー必携の一本だと断言した意味は,すでに十分伝わったことと思う。だが肝心のゲーム内容を紹介しないうちに早くも字数が足りなくなってきたので,次回の「海外ゲーム四天王」では,本作についてさらに掘り下げて紹介する。ヘッドバンガー共は脳ミソがこぼれ落ちんばかりに全力で頭を振りながら待っていてほしい。
LAメタルブームの牽引役となったのが,本作にも楽曲が収録されているMOTLEY CRUE。“Kickstart My Heart”を聴きながらホットロッドをぶっ飛ばせるのはBrutal Legendだけ!(ジャケットは同曲が収録された5thアルバム「DR. FEELGOOD」)
本作の序盤は,エディ率いるヘッドバンガー軍団と,ライオンホワイトのヘア・メタル軍団との戦いがストーリーのメインとなる。ヘア・メタルとは,MTVの隆盛と共に1980年代に登場した,髪を大きく膨らませ,女性的なメイクを施した派手なルックスで,適度にヘヴィでキャッチーなメロディを持つ曲をプレイするという共通の音楽スタイルを持つバンドのことで,アメリカ・ロサンゼルスを中心に多数登場したことからLAメタルとも呼ばれる。
MOTLEY CRUE,RATT,DOKKENらを筆頭に一大ブームメントを巻き起こすが,このときブームに乗り遅れまいと次々とデビューしたバンドの中には,十分な実力が伴わずにスタイルから入ったバンドも多かったことから飽きられるのも早く,1990年代に入ってからのグランジ/オルタナブームの中で衰退。さらに今回,ゲーム中では敵役として登場するという憂き目を見ることになってしまった……が,これはむしろ愛情の裏返しであり,一種のジョークであるととらえるべきだろう。そのことは,ゲームに収録された多数のヘア・メタル(LAメタル)バンドから見て取ることができるし,事実,近年は'80年代ヘア・メタルに対する再評価が進んでいるのだ(コラムも次回に続く!)。
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