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[GDC 2010]ヒット作を確実にリリースする方法,教えます。「アサシンクリード2」はいったいどのように作られたのか?
全世界で800万本以上を売り上げた作品である前作「アサシンクリード」の続編を作るに当たって,Plourde氏に課せられたミッションは非常に厳しいものだったそうだ。売り上げは前作を上回る必要があるし,レビューでは今一つだった前作よりも高い点数をとらなければならない。ゲーム内に数々の新要素を追加する必要がある。まとめ上げなければならない開発チームの総人数は300名以上で,さらに彼らはフランス,カナダ,シンガポールの三か所に散らばっている。開発期間は延長が許されない……。
そのような難題に応えるためにPlourde氏は,開発期間中,以下の三つを守ることを心がけたそうだ。
1. ゲームの“コア”を明確にして,それに集中すること
2. しっかりと“文章化”をすること
3. プレイテストとデータトラッキングを有効活用して,ゲームのデザインを検証すること
1. ゲームの“コア”を明確にして,それに集中すること
Plourde氏は,大きな目標を限られた期間内に成し遂げるためには,ゲームの“コア”となる要素をしっかりと見定めて,そこにフォーカスすることが重要だと語る。
なんだか当たり前の話のようにも感じるが,より徹底してそれを行うことが大切であり,Plourde氏はヒエラルキーの上部に位置しないものは,捨ててもいいものと考えるそうだ。
プロジェクトの進行中は「どの要素がコアでないか」という視点を常に持つ。ここで「自分が好きだから」とか,「コダワリが」とか言いだしてはいけないそうだ。そういった感情にとらわれない,クールな視点が大切だということだろう。
「アサシンクリード2」の場合は,“コア”となる要素は以下の三つであったという。
- Fight(戦闘)
- Navigation(移動)
- Social Stealth(群衆に紛れるステルス)
例えば「Missions(ミッション)」。ミッションは前作「アサシンクリード」にも存在したが,あまり面白いものではなかったという。その理由は,AC1のミッションが,ゲームのコア要素と関わりを持っていなかったからだと氏は分析する。
AC2ではコア要素の一つであるNavigation,つまり本作の持つ,広いマップを動き回ったり,屋根から屋根へと飛び回ったりする楽しさと,ミッションをしっかり結びつけることで,プレイヤーに面白いと思ってもらえるものになったとのことだ。
またゲーム内の「Economy System」(経済システム)についても同様のことが行われている。AC1の経済システムは,いま一つ深みの感じられないものだった。その部分を2で磨き込むかどうかだが,ここはゲームのコアではないので,それは行わない。これをコアにしたりすれば,ゲームはつまらないものになるだろう。そこでどうしたかというと,AC2では取引をリワード(報酬/褒美)として扱うことで,プレイヤーがこれをポジティブなものとして捉えられるようにしたそうだ。
このようなサイドフィーチャーは,コア要素を引き立てるものであるべきで,邪魔するものであってはいけないと,氏は続ける。
例えば「Assassination(暗殺)」。暗殺者の話なのだから,ここは大事なのではないかと思えるが,実際にはAC1では暗殺が難しく,この部分でフラストレーションを感じていたプレイヤーも少なくないらしい。そこでAC2では,暗殺それ自体は簡単に行えるようにした。そうすることで,AC2では暗殺の実行は一種のリワードとしてプレイヤーに認識されるようになっているということだ。
2. しっかりと“文章化”をすること
自分の考えたゲームデザインは,しっかりと文章の形でまとめておく。こうすることで,自分のアイデアはしっかりと練り込まれていき,またこれまでの思考の道筋もあとから振り返ることができるようになる。さらにドキュメント化することで,意思の伝達も効率よく行えるようになる。ただし,ここではパワーポイント資料のような,手間のかかるものを作る必要はないという。AC2の開発で,Plourde氏は6か月で200以上のドキュメント作ったそうだ。
3. プレイテストでデザインを検証すること
例えばAC2では,データを元に以下のようなことが行われてきたそうだ。
開発中のある時期,テスターから提出されたミッションに関するレポートを見てみると,移動が単純なミッションよりも,あちらこちらへと移動するミッションが面白いと答えるテスターが多かった。他方,プレイヤーの移動経路のデータを分析してみると,ミッションには屋根の上を通る必要があるものが多いことが分かった。
これらのデータからは,ミッションは「屋根の上を通るから楽しい」と認識している人が多いのではないかという予想を導き出せる。
さらにデータを見ると,どうやらコアプレイヤーは屋根の上の移動を使いこなしている人が多いのだが,カジュアルなプレイヤーには,そういう人が少ないようだった。つまりカジュアルなプレイヤーには,建物に上るクライミングと,屋根の上を駆けるフリーランニングという本作の魅力が,うまく伝わっていなかったのだ。そのために,それを強制的に体験させられるミッションが面白いと感じたのではないだろうか。
そのような分析結果を得たので,開発チームは,主人公が屋根の上に登る速度を二倍に速めた。すると,それまでよりも多くの人が,自然と屋根の上のフリーランニングを利用するようになったという。
これら三つの目標を達成したことにより,最終的にアサシンクリード2は,Metacriticスコアで91点を獲得し,いくつものゲーム賞にノミネートされる作品となった。商業的には第一週の売り上げが前作よりも33%上昇。全世界で800万本を売ることができたそうだ。
予算をかけた大型タイトルを作る際には,一つのミスが大きな損害につながる可能性がある。だがゲームデザイナーは,そのリスクをコントロールすることが可能である。そのために大切なことが,この三つだそうだ。
かなりシステマチックな手法であり,人によっては機械的で冷たい方法に見えるかもしれない。だが他方で,いまや巨大な産業となったゲームビジネスの世界では,このような考え方が主流になっていくのかもしれない。
- 関連タイトル:
Assassin's Creed II 日本語マニュアル付英語版
- 関連タイトル:
アサシン クリードII
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(C)2007-2009 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Assassin's Creed, Ubisoft, Ubi.com and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries.
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