企画記事
一見するとまったり系箱庭シムだが,実は弱肉強食,略奪系。ブラウザベースのオンラインストラテジー「Travian」の世界へご案内
「Travian」日本語公式サイト
そもそもTravianとはどんな内容なのか,さっと概要を説明しておこう。Travianは古代ローマ帝国が存在した時代のヨーロッパを舞台にしたブラウザゲームで,アカウント登録時に「ローマン」「ガウル」「チュートン」の3種族から一つを選んでゲームを開始する。歴史好きの読者には説明不要だろうが,ローマンは古代ローマ人,ガウルはガリア地方(現在のフランスからイタリアあたり)に住むガリア人,チュートンは現在のドイツ北部から北欧にかけて住むゲルマン人を指している。と言ってもこれらはあくまでモチーフであり,プレイ自体に歴史の知識はほぼ要求されない。
実は,筆者がつられた「自分だけの村を造ろう」という言葉は,決して嘘ではない。ゲームスタート時に,プレイヤーはまず小さな村を一つ与えられる。この貧弱な村を大きく育て,いずれは二つめ,三つめと村の数を増やし,繁栄させていくことが,基本的なプレイ目標なのだ。
Travianでは,建物の建築から兵士の生産に至るまで,とにかく何をするにも木/粘土/鉄/穀物という四つの資源が必要になる。森を育て,麦を刈り,働きアリよろしく資源を溜め込んで,畑を大きくしていく農耕民族的生活。しかし,村が成長するに従い,必要となる資源も増えていき,1日の生産量だけでは到底追いつかなくなる日がやがてくる。そこでプレイヤーはふと気付かされるのだ。「資源が足りないなら,別の村から奪えばいいんじゃない?」と……。もし自分の村が略奪者に目を付けられてしまったら,ゲーム内時間はリアルタイムで進行しているため,24時間いつ略奪者に資源を奪われるか分からない。村を守るために城壁を作り,兵士を生み出し,たった一人で戦い抜くもよし。プレイヤー同士で「同盟」を組み,極悪非道な略奪者に対抗するもよし。奪うか,奪われるか。それがTravianなのである。
どの種族でプレイを開始するべきか?
Travianを始めるにあたってまず悩むのが,ローマン,ガウル,チュートンの3種族のうち,どれを選ぶべきかというところ。各種族にはその能力にハッキリとした違いがあり,選んだ種族によってプレイスタイルもかなり変わってくる。ここでは,これから初めてTravianの世界に参加するという前提で,初心者にオススメできる順に,その特徴やメリット/デメリットを説明しよう(筆者の個人的なオススメ順なので,その点はご了承を)。
●ガウル
●ローマン
●チュートン
Travian日本版公式サイトのFAQは,ドイツ語版をそのまま丁寧に翻訳してあるので,各種族のより詳しい説明はそちらを参照してほしい。ただ,初心者にはやたらとローマンを推奨する傾向が強く,新規プレイヤーの多くがローマンを選択している。友達同士でTravianを始める,あるいは早い段階からどこかの同盟に所属する予定ならば,どの種族を選んでもあまり違いはない。同盟からの保護を受けられるからだ。もし,しばらくは一人でじっくり村を育ててみようと考えているならば,個人的にはガウルを強くオススメしておく。実際,同盟に加入せず,無所属で中規模以上の村に育っているところは,やはりガウルが目立っていた。
小さなことからコツコツと,村づくりを始めよう
さて,村の運営に必要な情報は,画面上部にある五つのアイコン「村の外観」「村の中心」「地図」「統計」「レポート/メッセージ」を切り替えてチェックしていく。村の外観には4種の資源フィールド,毎時間ごとの生産量,村にいる兵士の種類と人数,移動中の兵士と到着時間,建物の完成時間など,重要な情報のほとんどが表示される。Travianでは建築から兵士の生産,研究まで,とにかく何をするにも資源を消費するため,まず最初は資源フィールドのレベルを少しずつあげ,生産量を増やす必要がある。当座の目標はオールレベル5あたりだろう。序盤はすぐ資源不足になり,なかなか次のステップに進めないので,PCの前に張り付く必要はない。ほかのことをしながら,たまに様子を見る程度でちょうどよい。
村の外観に次いで重要なのが「村の中心」で,各種機能が備わった建物はこの画面で建設していく。建築可能な土地は20か所あり(1か所は「集兵所」専用),何をどこに建てるかはプレイヤーの自由だ。ガウル専用の「わな師」以外,どの種族も建物の種類とその機能は共通している(名前が違うことはある)。
開拓したての村に必要な建物は「倉庫」「穀物庫」「隠し倉庫」の3点。資源フィールドの開発の合間をぬって,この三つはなるべく早く建設&レベルアップさせるべし。倉庫&穀物庫は備蓄できる資源の上限に関わり,上限を超えて生産された分はロストしてしまうからだ。
隠し倉庫は少し特殊な建物で,ほかのプレイヤーに村を襲われたとき,隠し倉庫の上限分だけは資源を略奪されずに守れる機能がある。ローマンとチュートンなら一つの隠し倉庫で最大1000,ガウルは固有能力で倍の2000の資源を敵から守れる。敵がチュートンだった場合,3分の1は奪われる可能性があるが,それでも根こそぎ持っていかれるよりはマシだ。村の規模が大きくないうちに襲われると,プレイ続行自体が難しくなってしまう。隠し倉庫は複数建設できるので,ゲーム序盤は4,5個の隠し倉庫を作っておくことをオススメする。
Travianで大切なのは,とにかく「あの村からは略奪できる」と目を付けられないこと。プレイヤー間の決まり文句として「米一粒たりともわたさねえ!」というのがあるぐらいで(実際はヨーロッパなので麦なわけだが),どんなにわずかな量でも一度略奪を許してしまうと,“餌場”扱いされ何度も襲われると思ったほうがよい。内政が整うまではひたすら隠し倉庫を増やし,就寝前や長時間ログインできないときは,残った資源を使いきってしまうのがコツである。
防具工場ではその村で生産された兵士に限り,防御力アップの研究が行える。すべての兵士の防御力を最大まで研究したら,建物を取り壊しても効果は残る。攻撃力を向上させるためには「鍛冶場」が必要だ。レベルが上がるにつれて,一つの研究に6〜8時間もかかるようになる |
「統計」画面で所属サーバーの上位者ランキングを確認。各項目でトップ10に入ったプレイヤーは,プロフィール欄にアイコンが表示される |
冒頭でやたらと厳しい生存競争を強調してしまったが,誰もが最初から略奪戦争に巻き込まれるわけではない。Travianの世界にも情けはちゃんとあるようで,新規アカウントには最長14日間の初心者保護期間が設定されている。この期間中は誰かに攻め込まれることなく安心して村づくりに専念できるわけだ。
また,どこかの同盟に所属する予定なら,この期間に近所のプレイヤーが加入している同盟をチェックし,加入条件や同盟の方向性などを確認しておこう。多くの同盟では,あまりに人口が少なく発展してないプレイヤーは加入を断る傾向がある。また,定期的に略奪を受けている場合も,「その程度の自衛策も取れない,ゲームのルールを理解していない」とみなされ,やはり加入を認められないことがある。初心者にはちょっと厳しい条件提示だが,これをクリアし,加入が認められれば,不足がちな資源を良いレートで交換してもらったり,もしものときに援軍を送ってもらったりなど,さまざまな形で支援が受けられる。
どこまでも一人で頑張るぞ! というプレイスタイルも可能ではあるが,そもそもTravianがモチーフとしている時代が何だったかを思い出せば,“そういうゲーム”ではないことがわかるはずだ。ここでの同盟とはすなわち国であり,より豊かな資源,より強大な武力を持つ国が,この世界での強者となるのである。
略奪されるものと,略奪するもの。力こそ正義なり
地図画面で村にカーソルを合わせると,人口が表示される。これがその村の規模や発展度合いを知るおおよその目安となっている。しかし,ここで示される人口に兵力は一切含まれていない。格下の相手だと思ってナメてかかると,実は同盟員や知り合いからの援軍が駐留していて,こちらの兵が全滅ということも十分あり得るのだ。相手の兵力を知る事前の偵察行為は必須だと思っておいてほしい。
偵察行為ができる兵士は種族ごとにエクイーツ・レガティ,スカウト,パスファインダーと名前が異なるが,ここではまとめて偵察兵と呼ばせてもらう。偵察兵が持ち帰れる情報は,敵の兵力と現在持っている資源,または敵の兵力と防御力という2パターンである。ただし,相手の村にこちらが送り込んだ人数を上回る偵察兵がいた場合は,偵察行為を察知され警戒されるうえ,自分の偵察兵は殺され何の情報も持ち帰れないので注意が必要だ。
確実に情報を得る方法はただ一つ,より多くの偵察兵を送り込み,一人でも生還させること。多少の被害は出るが,偵察兵は消耗品と割り切るぐらいの考えが必要だ。それまで何度も略奪できていた村が,ある日突然,大量の援軍を駐留させていることも珍しくない。資源を消費して作った主力部隊が壊滅するリスクを考えれば,安いものである。筆者自身,大した防衛力もない村から定期的に美味しく略奪していたところ,ある日突然援軍が現れ,なけなしの歩兵の8割を殺されてしまった。そのショックでしばし村を襲えなかったことを今は懐かしく思い出す……。
ただし,相手の種族がガウルだった場合には,兵力ゼロでも油断はできない。ガウルは罠を村に仕掛け,略奪者を捕らえることが可能である。戦闘に勝てば罠を壊して仲間を救出できるが,戦闘に負ける,あるいは罠の数を下回る兵力だった場合,そのまま捕虜になってしまう。相手が解放してくれるか,再度攻め込んで勝利するまで兵士は捕虜のままだが,なぜか自分の村の穀物を延々と消費し続ける困った存在だ。勝てる見込みがない場合,兵士を見捨てて切り捨てることも可能だが,当然死亡扱いとなり,損害は計り知れない。中途半端な兵力でガウルを襲うことはやめておくべきだ。もちろん筆者は,この恥ずかしいケースも体験済み。そのショックでしばしガウルの村を襲えなかったことを……(以下略)。
兵士に被害が出すぎると,略奪した資源だけでは再生産しきれず赤字となってしまう。複数の村で豊かな資源を確保するまで,略奪は慎重に行いたい |
油断していたのか,相手は兵力ゼロ。おまけに資源をたっぷりとお土産に持ち帰ってきた |
なお,攻撃には「通常」と「奇襲」の2種類があり,通常はどちらかの兵が全滅するまで戦い,勝ったとしてもそれなりの被害が出る。一方の奇襲は,お互いあまり痛手になり過ぎない程度で引き上げる攻撃方法。圧倒的な戦力差があるなら通常で構わないし,資源が乏しく,死傷者があまりに多すぎると復旧に時間がかかるという場合には,奇襲が好ましいだろう。
初めての略奪に成功すると,今まで数時間待たねば貯まらなかった資源が,兵士の帰還と共にドーンと増え,村の開発速度が一気に早まる。これに味を占めて何度も略奪を繰り返し,やがてワンランク上の村へ略奪を試みたくなるはずだ。稀に,「違う地域への移民を考えているので,しばらく略奪を止めてください」あるいは「襲うなよ!」という微笑ましい(?)メッセージを相手からもらうこともある。これを聞き入れるか否かはプレイヤー次第。残念ながらTravianの世界において,略奪は悪ではない。悲しいかな,強力なバック(同盟)も持たず,いとも簡単に略奪されてしまうその弱さこそが罪なのである。
しかし,本記事を読めば読むほど,先行者が圧倒的有利なシステムゆえに,今から参加してもカモられるだけじゃないの? と,プレイをためらう読者も多いはずだ。確かにTravianでは初心者,後発組が生き残るのは難しい。ただ,チャンスは用意されている。
詳しいことは割愛するが,Travian世界の最終目的として「ワンダー・オブ・ザ・ワールド」なる建築物が存在し,サーバー開設からある程度時間/ゲームが進行すると,この建物を作るための設計図と謎の種族「ナタール兵」がゲーム内に登場する。プレイヤーのうち誰かがこの設計図をナタール兵から奪い,ワンダー・オブ・ザ・ワールドを完成させると,その時点をもってサーバーはリセットされるのだ。しかも設計図は一つではないため,敵対する同盟は相手に先を越されぬよう妨害を繰り返し,サーバー全体を巻き込む大規模戦争に発展することになる。
現在日本サービスでは,四つのノーマルサーバーと一つのスピードサーバーが稼動しているが,つい先日(ノーマルの)JP1サーバーにナタール兵が出現。さらにゲームの進行度合いが普通より早いスピードサーバーにおいても,5月の連休終盤に,ついにナタール兵が登場した。
スピードサーバーでは5月中にもリセットが発生するのでは? というのがプレイヤー間のもっぱらの噂である(あくまで噂なので保証はしかねる)。公式サイトをこまめにチェックして,サーバーリセットのタイミングでTravianを始めてみるのもいいだろう。
また,4月3日には四つめのノーマルサーバー「jp4」がオープンしている。こちらはゲームの進行がゆるやかなサーバーなので,いまからアカウントを登録しても,比較的遊びやすいはずだ。
Travianが密かに盛り上がっている理由としては,クライアント要らずの手軽なブラウザゲームであること,携帯からのアクセス手段も用意されていることに加えて,きちんとした日本語公式サイトがあることなどが挙げられる。熱心なストラテジーファンは,日本語公式サイトのオープンを待たずに英語サーバーでプレイしていたようだが,Travianは現時点で幅広い言語をサポートしている。たまにおかしな翻訳も見られるが,プレイに支障はない。
また,村をちまちま育て,増やしていく箱庭要素と,単純で分かりやすい戦闘を兼ね備えているためか,女性プレイヤーもかなり多い。その地味な見た目に反して,コアなストラテジーファンからライトゲーマーまで幅広い層に支持されている,ちょっと珍しいタイトルと言えよう。
海外サーバーで遊ぶプレイヤーのブログなどを見ると,「日本サーバーは戦わないための同盟」「同盟からの保護を目的につるむばかりでぬる過ぎる」と手厳しい意見もあるのだが,もちろん日本サーバーでも,大手同盟同士で戦いが勃発すればIRCに指令が飛び交い,なかなか熱い戦いが繰り広げられている。本記事を読んで少しでもTravianが気になったならば,ぜひ一度,この世界に飛び込んでみてほしい。意外なまでの魅力に,きっと引き込まれるはずだ。
「Travian」日本語公式サイト
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