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海外ゲーム四天王 / 第65回:「DeathSpank」
Electronic Artsから発売された「DeathSpank」は,カナダの独立系デベロッパであるHothead Gamesが開発したアクションRPG。EAがインディーズゲームのパブリッシングを担当すること,また「Monkey Island」シリーズを手がけたゲームデザイナーが開発にあたっていることなどから,欧米ではちょっとした話題になっている作品だ。
大量のモンスターをガンガン倒していく,スピーディで爽快なプレイフィールと,アメコミタッチにデフォルメされたグラフィックスが特徴となる本作は,ついつい遊び続けてしまう中毒性を持った愛すべき作品だ。そんなDeathSpankを,四天王の中で最も「悪人顔」の勇者兼ライター,朝倉哲也氏が斬る。ばさ。
この世のどこかにあるとされる財宝,「アーティファクト」を探すのが勇者DeathSpankの使命だ。そもそもアーティファクトとは何で,いつ,誰が,何のために作ったのかなどは一切不明だが,そんな細かいことは勇者DeathSpankに関係ない。これまで,世界の平和を守るために悪と戦い,クリーチャーやドラゴンを退治してきた真の勇者にとっては,そこにアーティファクトがあるから探す,それだけなのだ。というわけで,DeathSpankはアーティファクトの行方を求めて,わずかな手がかりを頼りに冒険を始めるのだった。
……というのが,カナダのバンクーバーに本拠を置く独立系のデベロッパ,Hothead Gamesが開発した「DeathSpank」だ。
アドベンチャーゲームの名作,「Monkey Island」シリーズを手がけたゲームデザイナー,Ron Gilbert氏の手がけた最新作であること,そして北米の大手ゲームメーカーであるEAが初めてインディーズゲームのパブリッシングを行うことなどから,多くのプレイヤーの注目を集めている新タイトルを,ここで簡単に紹介しよう。
DeathSpankは,ハック&スラッシュタイプのアクションRPGだ。斜め上からの見下ろし視点によるゲームプレイは,「Diablo」や「Titan Quest」といった名作を思わせるが,本作で決定的に違っているのはグラフィックスだ。
掲載したスクリーンショットからも分かるように,キャラクターにはコミカルなデフォルメが施され,リアルさを追求した最近のアクションRPGとは一線を画している。独特のタッチで描かれたキャラクターはかなりアクが強く,主人公のDeathSpankからして,樽のような胴体にヒョロっとした手足,勇者というよりヒールを思わせる顔つきになっている。
このへん,日本人プレイヤーにはちょっと微妙かなと思わせる個性的なデザインだが,性格は「考えるより先に行動する」というタイプで,自分こそが世界を救うためにがんばっている勇者なのだということを主張する傍若無人な物言いが特徴。自意識過剰な,かなり個性的な主人公として作られている。
先に書いたように,そんなDeathSpankが,アーティファクトを求めて世界中を旅することが本作のメインストーリーなのだが,旅の途中で出会う人々の抱えるさまざまな問題を解決するといったサブクエストも,多数用意されている。
NPCとの会話内容はなかなかユーモラスだが,英語が分からなければピンとこないジョークも多いようだ。もっとも,若干ネタバレっぽいことを書くと,会話シーンのテキストは全般的に短めで,選択肢から選ぶ場合でも,リストの一番上の文章を選んでいけばおおむね問題なく進んでいくようだ。そのため,単純にゲームを進めるだけなら,それほどの英語力は要求されない。
さて,アクションRPGのキモとなる戦闘だが,こちらはスピーディで小気味良いものに仕上がっている。キーボードまたはマウスで移動し,敵を左クリックすればメイン武器で攻撃,右クリックすればサブ武器で攻撃,そしてスペースバーで防御,といったシンプルな操作方法なので,次々に現れるクリーチャーをバサバサと斬りまくって進んでいける。
アイテム類も豊富に用意されており,ゲームの序盤から魔法のかかった強力な剣や防具などが続々と手に入る。炎の魔法がかかった剣で斬りつけると,派手に火炎が吹き上がったりなど,演出もかなり凝っているので,飽きることなく戦闘を楽しめるはずだ。
経験値を貯めてレベルアップすると,ヒットポイントや能力値が上昇するのはおなじみの仕様だが,本作の特徴として,「ヒーローカード」なるものが一枚もらえる事が挙げられる。ヒーローカードには,移動速度をアップしたり,防御力を増したりといった効果がついており,レベルアップ時に3枚の中から1枚選べ,このヒーローカードを使って,自分なりのオリジナルDeathSpankを育てていけるわけだ。
見かけが悪人で,傲慢な物言いをする勇者DeathSpankだけに,あまり愛情こめて育成する気にはならないかもしれないが,仮にも主人公なのでそこは我慢してあげよう。
いかにもアメコミを思わせる濃いグラフィックスは好き嫌いが分かれそうだが,その点さえ気にならなければ,スピーディでシンプルなアクションRPGファンが楽しめる愛すべきゲームであり,時間を忘れてプレイし続けてしまうはずだ。 デモ版が用意されていないのが残念だが,公式サイトには,ゲームプレイシーンを収録したムービーが掲載されているので,ぜひ見てみよう。
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