プレイレポート
新たなサム・フィッシャーはどのように戦うのか? 「スプリンターセル コンヴィクション」シングルプレイレポート
2月25日に掲載した「スプリンターセル コンヴィクション」のマルチプレイレポート記事の最後で一方的にお約束したとおり,本日(3月16日)はシングルプレイレポートを掲載しよう。今回も,ユービーアイソフトにおいて実際のシングルプレイを体験してきたというわけだが,うらやましいですか? だが安心してほしい。3月9日のニュースでもお伝えしたように,いずれXbox 360版の日本語体験版が配信される予定になっているので,主人公サム・フィッシャーの活躍を目の当たりにするチャンスはすぐ訪れるだろう。今のところ,どのミッションが体験版として公開されるのかハッキリしていないが,今回はとりあえずその予習としても読める,実に活用範囲の広い記事になっている。偶然ですが。
さて,ゲームの冒頭はマルタ島の市場で,カフェの椅子に座っているのはサム・フィッシャーその人だ。新作が出るたびに外見がかなり変わるサムだが,おそらく,今回はシリーズで最もシブく,カッコいい。とても子持ちの53歳とは思えないが,制作者側の話では,「ジェームズ・ボンドだって歳を取らないんだから,いいでしょ」だそうだ。なるほど。ちなみに,個人的に最も面白い顔のサムは,「Splinter Splinter Cell: Chaos Theory」ではないかと。ただ,ゲームそのものはシリーズ最高傑作といわれるくらいなので,未プレイの人はこちらもぜひやろう。
愛娘の死の謎を追う,孤独な中年男が
国際諜報戦の最前線に再び
いきなり話がそれたが,ウェイターがお盆に載せてサムのもとに運んできたのは,超小型の無線機だ。それを耳にはめると,かつての同僚,アンナ・グリスムドッティア(グリム)の声が聞こえてくる。「サム,気をつけて。コビンの殺し屋があなたを狙っているわ……」。
オープニングはこんな調子で,余計な前置きなしでアクション開始だ。
初めての人向けに簡単に説明すると,彼,サム・フィッシャーとはアメリカ国家安全保障局(NSA)に秘密裏に作られた部隊“サードエシュロン”のエージェントとして数々の極秘ミッションをこなしてきた男だ。だが,愛娘サラの事故を境に組織を辞め,今は娘の死の真相を探るため,孤独な調査を続けている。
グリムはサードエシュロンでハッカーチームを率いる才媛で,シリーズでずっとサムをサポートしてきた。従来作ではたまにチラっとしか出てこなかったが,ランバート大佐なきあと,今回は準主役といった風情だ。ちなみに,彼女もまた外見が結構変わっており,以前に比べてスポーティな感じになった。ぜひお見せしたいのだが,残念ながら今回も撮影はできず,このページに掲載した写真はユービーアイソフトから提供されたもの。
個人的には第一作のメガネ&タイトスカート姿のグリムも好きだ。現場で作戦を遂行するサムと,ワシントンD.C.から彼に指示を送るグリムとの,もっぱらジェネレーションギャップに関わるユーモラスな掛け合いもスプリンターセルシリーズのお楽しみの一つだった。
サムが追っているのは武器商人のアンドリー・コビン。コビンの放った刺客を片付け,奴らのリーダーをトイレで“尋問”するシーンは,2009年6月に掲載したE3レポートにもあるとおりだ。とはいえ,あのときは見るだけだったが今回は自分でやれるのが嬉しい。便器に叩きつけ,鏡に叩きつけ,そしてまた便器に叩きつけ,コビンの居場所を聞き出すサム。いつもの冷静さをかなぐり捨て,娘の仇を討とうとする彼は,かつてないほどシビアで,このあたりも格好いい。中年だって,やるときはやるのだ。
もはや国家の支援を受けられないサムは,一丁の銃と車のバックミラーを壊した小さな鏡を持っているだけだ。とはいえ――話が先走っちゃうが――グリムをはじめとする味方(といい切れるのかどうか自信はないが)が増えるにつれ,さまざまなアイテムが彼に渡され,いずれトレードマークの三つ目ゴーグルなども手に入るらしい。もっとも,ゴーグルの機能はナイトビジョンだけでなく,マルチプレイの「ソナーモード」のような画面で見ることも可能なりと,パワーアップしている。
ゲーム進行の自由度の高さは相変わらず
コビンのアジトは美術館だ。彼はここを要塞のようにしており,たくさんの荒くれ者が警備に当たっているが,グルジアでは警戒厳重な大統領官邸に忍び込み,日本ではハイテク警備が施された防衛省に忍び込み,えーとそれから,インドネシアのコモド島では軍の潜水艦基地に忍び込んだサムに不可能はない。
限られた時間のプレイだったため,すべて試せたわけではないが,自由度は非常に高いという印象だ。建物に入るには,入り口に立っている二人の男の頭にパンパン! と銃弾を撃ち込んで,窓に飛びついてもいいし,裏の木戸からそっと入ってもいい。裏木戸もまた,向こうに立っている敵に壁の上からアタックしてもいいし,木戸をそっと開けて背後から近づいてもいい。スプリンターセルらしく,「華麗にスルー」も決められるとのことで,基本はリニアな一本道だが,個々の問題にはきわめて多数の解決手段が用意されているという寸法だ。
というわけで,ここでは新フィーチャーの「マーク&アクション」を使おう。最初「マーク&キル」と呼ばれていたこの機能,まずは手近な敵に近づいてアレする。すると,マーク&アクションの権利が得られ,ほかの敵をマーキングし,それからしかるべきボタンを押すだけで,プレイヤーが何もしなくてもサムが自動的にマーキングした相手を撃ち倒してくれるというものだ。開発当初は無条件で発動できたらしいが,さすがにそれは簡単すぎるということで,「あらかじめ何人かCQC(Close Quarters Combat=近接戦闘)で倒すと,マーク&アクションの権利が得られる」となったとのこと。
ともかくコレが面白い。マークできる人数は,「何人CQCで倒したか」と「所持している武器」によって一人から複数まであるが,歳のせいで慌ただしいアクションにちょっとついて行けなくなりつつある筆者には,マークするだけで相手を倒してくれるこのフィーチャーはもってこいといえるだろう。多数の敵がいるような場合には,かなり有効だと思う。
窓にぶら下がって,廊下をのほほんと歩く敵の頭をつかんで窓から引きずり落としたり,パイプにぶら下がって銃撃したりと,おなじみのアクションも健在だ。倒した敵の体を隠せなくなったぶん,展開はスピーディ。もっとも,ほかの敵が倒れた仲間の体を発見すると警戒レベルが上がってしまうので,基本的に「完全スニーク」か「銃撃主体」の二者択一になった印象がある。
面白いのは,流れるようなアクションがビシッと決まると,サムがときどき「今のはなかなか良かった」みたいなことを言うところ。誰に言ってんだろ? まあ,シニカルな男であるゆえ,「まあまあだな」とか「どうかな」と,あまり誉めてくれないサムが憎い。
どうしても先が知りたくなる巧みなストーリー展開
E3レポートのムービーにもあるように,荒くれ者達を片っ端から始末し,なんとかコビンのこめかみに銃口を当てて尋問。コビンが「あんたは分かってない! 連中の規模のでかさが! バカデカい相手なんだぞ!」と叫んだそのとき,天井のガラスを破ってサードエシュロン所属の特殊部隊員がラベリングしてくる。果たしてどうなるのか? ジャーン,でムービーは終わっていたが,ここに書いちゃおう。うふふ。
グリムの指示に従って銃を捨てたサムは,麻酔弾を撃ち込まれて,とある施設飛行場に運び込まれる。いまさらいうのものナンだという気がするが,回想シーンなどを除いて,本作の舞台となるのはアメリカ合衆国だ。海外での特殊任務を行うサードエシュロン隊員だけに,海外出張の多いサムだったが,今回は地元でこっそり活躍するのである。
待っていたのはグリムで,彼女の話によると,サードエシュロンの新長官にして本作の悪役を務めるトーマス・ジェフリー・リードは民間軍事会社のブラックアローと結託し,ロシアのEMP爆弾をマルタ島を通じてアメリカ国内に運び込んでいるという。彼が何を企んでいるのかは不明だが,大統領の命を受けてそれを探るのがグリムの仕事であり,それを手伝ってほしいというのだ。
サードエシュロンの内部にいるグリムには制約が多すぎるが,フリーのサムならそれができるというわけ。しかも彼女はサムに――筆者もサードエシュロンに口止めされているので書けないけど――とんでもないことを告げたりするのだ。
グリムの話を聞いて深く納得したサムの脱出を偽装するため,グリムを殴り(彼女がそうしろというからそうしたのだが,本当に容赦なくガッツンガッツン殴るという,このシーンは軽くマイフェイバリットである),外に出るサム。かくして彼はリードの悪事を暴くために活動を開始する。頼れるものは己の肉体と,正義を貫こうとする固い信念(コンヴィクション)だけなのだ。
スプリンターセルの血を確実に受け継ぎつつ
新たな試みにチャレンジした意欲作
その後,ワシントンD.C.のリンカーン記念堂でリードが仕掛けた暗殺事件を阻止したりなど,いろいろあるのだが,それはまたいずれ。ただし,個人的な観測としてグリムの話を真に受けていいのかどうかも本当は分からない。彼女は彼女で,何か秘密を隠しているようだし,リードの背後にはさらに巨大な組織の影が見え隠れするのだ。誰が敵で誰が味方なのか? ストーリーラインは,思いのほか複雑だ。
新たなプレイヤー層を獲得するため,よりカジュアルな方向に流れ,スニークよりアクション主体になったといわれるスプリンターセル コンヴィクション。簡単に繰り出せるようになったアクションや,マーク&アクションといった新フィーチャーを見ると,確かにそんな気もしてくる。では簡単なゲームになったのかといえば,そんなことはない。ぬるめのゲーマーとして,いつものようにイージーモードでプレイした筆者だったが,それでも敵に囲まれると割とあっさりやられてしまう。ワンミス,ワンダイ。したがって基本はあくまで,照明器具を撃って消し,敵の背後をそっと移動しつつ目標に向かうという,きわめてスプリンターセルチックなもの。
よりワイルドになったサムだが,相変わらずのキャラ立ちの良さで,どんな危機に陥っても軽口は忘れず,グリムとの掛け合いも健在だ。
そんなわけで,予想以上の長い期間をかけて開発されたスプリンターセル最新作は,いろいろな変更はあるものの,従来作のファンでも十分に楽しめそうな作品に仕上がっているのは間違いない。最前線にようこそ,サム。
- 関連タイトル:
スプリンターセル コンヴィクション
- 関連タイトル:
Tom Clancy's Splinter Cell: Conviction
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