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視聴者延べ3万人超のゲームサウンドクリエイター座談会,「『おとや』第2回 〜きみのためならなまいきだ。〜」の現場に行ってきた
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印刷2010/04/30 19:54

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視聴者延べ3万人超のゲームサウンドクリエイター座談会,「『おとや』第2回 〜きみのためならなまいきだ。〜」の現場に行ってきた

 4月24日,ニコニコ動画(9)の「ニコニコ生放送」において,番組「『おとや』第2回 〜きみのためならなまいきだ。〜」が放映された。
 「おとや」は,ゲーム音楽制作会社・ノイジークロークの代表取締役である坂本英城氏が提案した,ゲームサウンドクリエイターによる座談会企画。2回目となる今回は,総勢20名を超えるゲストを迎え,放映時間も3時間半におよぶという盛りだくさんの内容となった。なお,4Gamerでは「こちら」に,第1回の取材レポート記事を掲載しているので,興味のある人は目をとおしてみてほしい。

画像集#001のサムネイル/視聴者延べ3万人超のゲームサウンドクリエイター座談会,「『おとや』第2回 〜きみのためならなまいきだ。〜」の現場に行ってきた

 今回,司会を担当したのは,第1回同様,坂本氏とセガ所属の光吉猛修氏。またコメンテーターとして,AQインタラクティブの佐野電磁氏,プロキオン・スタジオの光田康典氏,なるけみちこ氏,下村陽子氏(音声のみ)の4名が出演した。
 また第2回ということで,完成した「おとや」のロゴをあしらったTシャツを全員が着用。番組の冒頭では,ロゴデザインを手がけた,ツェナワークスの後藤 滋氏が紹介された。

左から,なるけみちこ氏,光吉猛修氏(セガ),佐野電磁氏(AQインタラクティブ),光田康典氏(プロキオン・スタジオ),坂本英城氏(ノイジークローク)
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番組の冒頭で,ロゴにサインする司会/コメンテーターの面々。今後は,毎回ゲストにサインしてもらう予定とのこと
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 今回のメインゲストは,PSP用ソフト「戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校」の音楽を手がけた,ベイシスケイプの崎元 仁氏だ。
 崎元氏は,「戦場のヴァルキュリア2」の音楽について,戦争中の士官学校を舞台としたゲームだが,そうであるがゆえに学生の楽しい生活を描き出すべく,明るく悲壮感の少ない曲調を心がけたと述べた。
 ちなみに崎元氏は,「戦場のヴァルキュリア2」をプレイする際,自分の部隊(で選べるキャラ)をすべて女性キャラで固めているそうだ。その中で,最も使っているのはリコリスとのこと。
 崎元氏は,複雑な構成の曲をどのように作曲しているのかという質問について,最初にとにかくピアノで1曲作ってしまい,そこからジックリと曲の構成を考えていくと回答した。


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メインゲストのベイシスケイプ代表取締役 崎元 仁氏(写真中央)
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「戦場のヴァルキュリア2」をモチーフにした料理も登場。このあとの各コーナーにおいても,ゲストにちなんだ料理が提供された

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 次のコーナーには,セガの“Hiro師匠”と,アイドルユニット「チームDEKARIS」から小倉 唯さん,石原夏織さん,能登有沙さんの3人が登場。
 Hiro師匠は,アーケードゲーム「テトリス・デカリス」のサウンドプロデューサーで,チームDEKARISが同タイトルの楽曲でボーカルを務めた,という関係だ。
 トークでは,Hiro師匠がレコーディング中にチームDEKARISに温かい飲み物を買ってあげたり,食事に連れて行ったりしたエピソードを紹介。司会の光吉氏は,Hiro師匠とは同じ部署,フロアで働いているが,「(自分とは違って)優しいなあ」と羨ましがっていた。
 また,ミニライブでは,小倉さんと石原さんによる「運命は“I” Love You」,石原さんと能登さんによる「友情 Try again!」,そしてチームDEKARISによる「恋の無敵コマンド」が披露された。


アイドルユニット「チームDEKARIS」と,Hiro師匠(写真右)
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 続いてのコーナーは「OMY同窓会」。
 佐野氏の「(前のコーナーと比較して)平均年齢が3倍近く」「加齢臭には負けないぞ〜!」という自虐的な紹介とともに登場したのは,細江慎治氏,相原隆行氏,佐々木宏人氏,佐宗綾子氏と,そうそうたる面々だ。
 あらためて説明しておくと,佐野氏を含めた5人は,1990年代に活躍した旧ナムコサウンドチームの面々である。各自の近況報告などのあと,話題は当時インディーズで活動していたユニットOMYに移っていった。
 いうまでもなく,このユニット名は世界的に有名なアルファベット3文字の某グループのパロディである。
 トークでは,本業が忙しい中バカバカしいまでにディテールにこだわったり,徹夜でCDの梱包をしたりといった,当時のエピソードが披露された。
 なお,OMYは2010年初頭から活動再開の話が持ち上がっており,ひょっとすると次回の「おとや」でライブ演奏をするかもしれないとのこと。往年のファンは,実現を期待して待とう。

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旧ナムコサウンドチームの面々。左から佐野氏,相原隆行氏,細江慎治氏,佐々木宏人氏,佐宗綾子氏。平均年齢の高さもさることながら,ビールの消費量がすごいことに
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ここで出された料理は,「鉄拳」シリーズにちなんで“チキン”

 ここで再び崎元氏が登場し,視聴者からのメールを発端に,崎元氏が1980年代に開発したFM音源ドライバ「テルプシコラ」の話題で盛り上がった。
 このドライバは,PC-8801シリーズ用に開発されたものだが,のちにメガドライブやPCエンジンといったコンシューマ機にも移植されたとのこと。
 崎元氏は当時を振り返り,「誰も用意してくれなかったので自分で作るしかなかった」と述べていた。また下村氏も,「ストリートファイターII」の頃は,専用エディターを使ってFM音源の曲を作っていたというエピソードを披露。
 なお,現在同じことをやるかと聞かれたところ,お二人とも「絶対やらない。しんどいから」と即答していた。

番組も後半に入り,皆いい感じでアルコールが回ってきている
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 お次は,PlayStation 3用ソフト「ニーア レプリカント」およびXbox 360用ソフト「ニーア ゲシュタルト」のディレクターを務めたキャビアの横尾太郎氏から,「ディレクターにイラっとした瞬間を教えて」という質問が届く。
 その質問に対し崎元氏は,酒だけ飲んで互いに盛り上がった打ち合わせの翌日に「音楽の話が全然できなかったのはお前のせいだ」と言われて困ったというエピソードを披露。なるけ氏は,寒いギャグを何度も繰り返されてウンザリしたことがあるとコメント。
 その一方で下村氏は,「(イラッとしたことなんて)あるわけないじゃないですか」と大人の回答をしていた。

 ゲームサウンドクリエイター志望者からの機材やツールに関しての質問では,崎元氏をはじめ全員が使用している環境を発表した。その中で佐野氏が,異なるシーケンサーのユーザー同士が論争を始めると,いわば“宗教戦争”のような様相を見せ始めるのでヤバいと指摘。幸いなことに(?),番組進行の関係もあってそれぞれが深く言及する前にこのコーナーは幕を閉じた。

佐野氏は,コルグの小型アナログシンセ「monotron」とiPad用アプリ「iELECTRIBE」を持参していた
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 続いては,坂本氏が音楽を担当したPSP用ソフト「勇者のくせになまいきだ:3D」のコーナーだ。ここでは,同タイトルのプロデューサーを務めた山本正美氏,ディレクターの大橋晴行氏,デザイナーの小林陽明氏がゲストとして登場。坂本氏を司会に,どのように楽曲制作に取り組んだか,その過程が紹介された。

左から坂本氏,ソニー・コンピュータエンタテインメントの山本正美氏,アクワイアの大橋晴行氏,ソニー・コンピュータエンタテインメントの小林陽明氏。フリップには,実際にやり取りされたメールの内容がプリントされていた
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デザイナーの小林氏は,トークの間,ノートPCで“生”ドット打ちを披露。描いたのは「勇なま」シリーズの魔王だ
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 まず坂本氏は,山本氏と大橋氏からのオーダーと予算を踏まえて,8曲分のデモを制作したと話す。ちなみにオーダーは,「小学生が授業で習うような楽器で演奏」「ヘタウマ」「オモチャっぽい」「ノスタルジックでキャッチー」といった内容だった。
 坂本氏は,デモ音源送付の際に,作曲のモチーフまでメールに書き添え熱意を見せたが,大橋氏は「今一つ。根本のトイ感,オモチャっぽさの解釈が異なっているのではないか」とキッパリ否定。
 しかしその一方で大橋氏は,「エンディング曲の一つは秀逸。ゲームの楽曲全体の雰囲気を決定する重要な存在」と付け加え,坂本氏のモチベーションを下げないよう配慮を忘れなかったという。

 そこから,お互いに相手の意見を踏まえつつ,自分の思惑を忍び込ませるという大人のやり取りが続くわけだが,坂本氏自身,完成したゲームの中で楽曲を聞くと,確かに大橋氏のディレクションが正しかったと実感できたという。
 なお番組では,デモバージョンと実際に採用されたバージョンの聴き比べがなされ,また,ノイジークロークのスタッフ“魔王軍宮廷音楽部”によるライブ演奏も行われた。

“魔王軍宮廷音楽部”こと,ノイジークロックのスタッフによるライブ演奏。「勇者のくせになまいきだ:3D」に収録された曲も,実際に彼らが演奏している
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終始寡黙な印象だった光田氏だが,アルコールが入っているせいか,番組終盤にはハジけ気味に
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「桜は綺麗に撮れているが,石柱の文字が見切れているのが惜しい」といった厳しいコメントも飛び出した
 次のコーナーは,「カメラマン光田康典が行く!」。
 これは,第1回の放映であまりしゃべらなかった光田氏のために作られたコーナーで,誰が最もいい写真を撮ったかを品評するという内容。
 なお品評する写真は,事前に「おとや」の関係者で敢行した,高尾山登山で撮影したもので,番組ではそのときの映像も公開された。
 最優秀作の決定は視聴者のアンケートに委ねられたが,選出されたのは,なるけ氏が撮影した写真。さらには,被写体となったノイジークロークの男性スタッフが,なんと漫画家・蛭子能収さんのご子息であるという,驚愕(?)の事実も明らかにされた。

 コーナー最後の総評では,光田氏が自身の音楽論を披露。
 光田氏曰く,音楽のプロとなるにはメロディーとリズムとハーモニーだけでなく,どう楽器を組み合わせて音色を作っていくかという「カラー」,曲のどこに焦点を当てるかという「フォーカス」,いらない部分を削ぎ落とす「エコノミー」の三要素を意識しなければならないとのこと。
 これは作曲のみならず,映画の制作などクリエイティブな仕事に共通する至言といえるが,残念ながら,肝心の写真撮影に言及する前に時間切れとなってしまった……。

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司会とコメンテーターによって4枚の写真が選ばれ,さらに視聴者アンケートで最優秀作が決められた
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最優秀作は,なるけ氏の作品。なるけ氏がフリップ裏に描いた蛭子能収さん風のイラストも評価が高かった

 番組のエンディングでは,視聴者のメールに答えて,崎元氏が音楽制作会社ベイシスケイプを立ち上げたときのエピソードを披露。
 崎元氏によれば,最初に岩田匡治氏や並木 学氏と起業の相談をしたときは,皆,経営に詳しくなかったため,それぞれの給料をいくらにするか,社員旅行はどこに行くかといった話で盛り上がって終わったという。
 実際に起業すると想像以上に大変で,社員旅行らしきものが実現するまでに,5年ほどかかったそうだ。
 そして番組は,司会の光吉氏が,下村氏作曲の「RYU STAGE」(「ストリートファイターII」)と,「天国と地獄」(ニンテンドーDS「赤ちゃんはどこからくるの?」)を熱唱し,幕を閉じた。

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 なお番組の視聴者数は,最終的に3万人を超えたのとのことで,この盛り上がり方から,“第3回”の放映実現に期待が高まるところ。ただ主催の坂本氏によると,具体的な内容や放映日時は“未定”だそうだ。
 実際,第2回は企画を詰め込んだことで坂本氏自身の作業的な負担が大きくなってしまい,今回と同等またはそれ以上の規模で番組を続けるとなると,本業との兼ね合いなども含めて,なかなかハードルが高いようだ。

 最後に,第2回の放映で司会およびコメンテーターとして出演者した方々に,番組の感想と視聴者へのメッセージをいただいたので掲載しておこう。


ステージ脇では,出番待ちの間にアルコールをたしなむ出演者の姿も!
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坂本英城氏:
 3時間半,ちょっと詰め込みすぎてしまいましたが,各コーナーを担当した方々が頑張ってくださったおかげで,今回の番組ができました。皆さん,ありがとうございました。

光田康典氏:
 今回,新たにコーナーを作っていただいて,ありがたかったです。……内容はどうだろう? 本当は写真と音楽の共通性について語りたかったんですけど,カンペで「(時間がないから)ダメ」っていわれちゃって(笑)。でも本当に楽しかったです。ありがとうございました。

佐野電磁氏:
(佐野氏が多弁なので,あえて光田氏がしゃべりを抑えているという本番中の話を受けて)
 次回は「みっつんの副音声」を設けて,光田さんの面白いところを出していきましょう。きっと光田さんは,もっとイケますよ。私が責任をもって光田さんにアルコールを注入します(笑)。

光吉猛修氏:
 当初から「やりたい」と考えていたことが,今回,実際に形となって現れ始めました。これからまた,何かを足したり,あるいは削ぎ落としたりしながら進化していくので期待してください。僕自身は,(激しく歌って踊っても)汗をかかないようにしたいです!

なるけみちこ氏:
 コーナーが多くて大丈夫かなとも思っていたんですが,バラエティ的な部分もあり,ちゃんと音楽の部分もありで,いい内容になりました。個人的には,イラストが大きく取り上げられてビックリしています(笑)。

本番前には,入念なリハーサルが行われた
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