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BenQ ZOWIE「XL2540」レビュー。ネイティブ240Hz表示対応のゲーマー向けディスプレイは,ヌルヌルなうえにシャープだった
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印刷2017/03/25 00:00

レビュー

ネイティブ240Hz表示対応のゲーマー向けディスプレイは,ヌルヌルなうえにシャープだった

BenQ ZOWIE XL2540

Text by 米田 聡


XL2540
メーカー:BenQ
問い合わせ先:テクニカルサポートセンター TEL 0570-015-533(平日9:30〜18:00)
実勢価格:6万4000〜6万5000円程度(※2017年3月25日現在)
画像集 No.002のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「XL2540」レビュー。ネイティブ240Hz表示対応のゲーマー向けディスプレイは,ヌルヌルなうえにシャープだった
 垂直リフレッシュレート240Hzにネイティブ対応した,24.5インチワイド,解像度1920×1080ドットのノングレア(非光沢)パネルを搭載するゲーマー向け液晶ディスプレイ「XL2540」が,BenQのゲーマー向け製品ブランド「BenQ ZOWIE」(以下,ZOWIE)から国内発売となった。
 「パネル自体は144Hz対応で,メーカーレベルのクロックアップによってそれよりも高い垂直リフレッシュレートを実現する」という製品はこれまでも多くあったが,標準で240Hz対応の製品が登場したのは,少なくとも国内においては今回が初めてだ。

 実勢価格で6万4000〜6万5000円程度(※2017年3月25日現在)と,「24インチクラスのフルHD液晶ディスプレイ」としては決して安くないXL2540だが,販売価格に見合うだけの実力はあるのか。BenQの日本法人であるベンキュージャパンから入手した実機で検証してみたい。


新要素「Shield」を除けば最近のXLシリーズらしい構成のXL2540


本体を構成するパーツ一式は3ピース。写真では本体の手前に2枚の羽が見えるが,これらがShieldだ
画像集 No.047のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「XL2540」レビュー。ネイティブ240Hz表示対応のゲーマー向けディスプレイは,ヌルヌルなうえにシャープだった
 まずはハードウェアから確認していこう。XL2540のディスプレイ本体は,パネル部とスタンドの脚部,そしてスタンドの台座からなる3ピース構造だが,それとは別に,パネル部の両側面に取り付ける2枚の「Shield」も製品ボックスには入っている。
 Shieldとは何かという話は後ほど触れるが,Shieldを使うかどうかはユーザーに一任されているので,「使わない」という選択肢もアリだ。そういう意味では,基本的によくあるパーツ構成と言っていいだろう。

 さて,3ピースのXL2540は,VESA規格の100×100mm互換となるパネル部のマウンタにスタンド脚部を取り付け,さらに蝶ビスで台座を固定するだけで,簡単に組み立てられる。パネル部を下向きでひとまず置くための平らなスペースさえ用意できるなら,難しいところは何もない。

スタンド台座にスタンド脚部の爪を合わせて嵌め込み,蝶ビスで固定する仕組みだ。台座や脚は重く,総重量も7.5kgあるが組み立てはシンプル。1人でも無理なく行える
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組み上げてもろもろのケーブル配線を行った例(左)。脚部にある円の部分はケーブルマネジメント用だ。右は付属のカバーを取り付けたところ。見た目は安っぽいが,どこかへ持っていくときパネルを傷つけない目的ではとても効果がある
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Shieldは,パネル両サイド上下にある「ビス穴を隠しているラバー」をツメなどで引っかけて外し,ヒンジ部にある2つのビスでパネル部へ固定する仕組み。取り付けるかどうかは設置場所と相談して決めるといいだろう。なお,ビス穴を隠すラバーは小さいので,取り外したときは紛失しないようご注意を
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 ビデオ入力はDisplayPort 1.2a,HDMI 2.0(Type A),HDMI 1.4(Type A),Dual-link DVI-Dが各1。これら充実したディスプレイ入力を切り換えたり,画面設定を行ったりするため,外付けOSD操作用インタフェース「S.Switch」を接続するためのUSB Mini-B端子を備えるのは,XLシリーズ伝統の仕様と言っていいだろう。
 XL2540の場合は別途,2系統のUSB 3.0ハブ機能と,DisplayPortあるいはHDMI経由で受けたサウンドをヘッドフォン出力するための3.5mmミニピン端子,マイク入力を受けて,さらにそれをPCへアナログ伝送するための3.5mmミニピン端子も用意している。

左は本体底面側インタフェース。写真左から順に“マイク出力”とS.Switch接続用ポート,DVI-D,HDMI×2,DisplayPort,USBハブのアップストリームポートとなっている。右は本体正面向かって左側面で,写真左からマイク入力およびヘッドフォン出力とUSB 3.0×2という構成だ
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 以上,XL2540の基本構成は,Shieldを除けば,従来のXLシリーズが持つそれを踏襲したものとなっている。


機能面でもXLシリーズ伝統のものをまんべんなく盛り込んだXL2540


Shieldを液晶パネルに対して平行方向へ広げた状態
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 組み上げた状態の机上専有面積はShieldを取り付けない“素”の状態で実測約570(W)×200(D)mm。Shieldを取り付けるとその時点で左右にそれぞれ10mm膨らみ,Shieldを液晶パネルに対して平行方向に広げた場合,横幅は最大800mmとなる。
 つまり,展開する角度にもよるが,Shieldを取り付けると,かなりの幅を占めることになるわけだ。

Shieldは180度弱の範囲でかなり自由に動かせる。写真のような感じにしておくと,横からの光が入ってこないため見やすくなり,結果,画面に集中しやすくなる効果もあるように思う
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 なお,ZOWIEが謳うところによれば,Shieldを取り付けることでディスプレイの周囲に目が行かなくなり,大会において,ゲームに集中できる効果があるという。大会の会場とはほど遠い環境である筆者の事務所で試した印象だと,「確かにZOWIEが主張するような効果も感じられなくはないが,どちらかというと,画面両サイドからの光の回り込みを抑える遮光板としての恩恵のほうが大きい」ように思われた。

 XL2540のパネル表面は前述のとおりノングレア加工済みだが,ノングレアだかといって光の映り込みから100%逃れられるわけではない。そういうこともあり,画面両サイドからの光を遮る角度に調節すると,画面の端がはっきりして見やすくなった。「大会はともかく,家庭用としては場合によっては有用」というのが,Shieldに対する正しい評価となるのではなかろうか。

XLシリーズの伝統に則って縦回転にも対応。ちょっと鬱陶しいが,Shieldを取り付けたままでも縦回転できる
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 高さは無段階調節が可能で,最も低い状態で実測約385mm,最も高い状態で同525mmとなる。140mmの範囲で調整できるわけだ。

 XL2540ではまた,上方向20度,下方向5度の上下回転(チルト),左右それぞれ45度の左右回転(スイーベル)にも対応。縦回転(ピボット)も行えるようになっている。

高さの調節は上下140mm(左),上下回転は奥に5度,手前に20度の調節が可能だ(中央)。また,スタンドに組み込まれた左右回転機構により左右45度の角度調節も行える(右)
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 高さと上下回転,左右回転時にはいずれも,その配置を憶えておくための機構を利用できる。使ってみると,高さおよび左右回転時に利用できるマーカーはけっこう容易に動いてしまうのだが,「いったん調整を終えたら,スマートフォンなどで写真に撮っておく」といった一手間を加えるようにすれば,十分機能的だと思う。

高さ調節と上下回転,左右回転部には目盛りが刻んである。左右回転部は,画面が正面を向くセンターに軽いノッチがあり,カチッという手応えと音で正面を把握できるギミック付きだ
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 ならShieldはどうかと言うと,Shieldも,4つの点があるだけながら,それを目安にすることで,お気に入りの角度を再現できるようになっている。Shieldは画面両側に張り出しているため,とくに手などと当たって動いてしまいやすいので,すぐに元の角度へ戻せる工夫があるのはありがたいところだ。

ヒンジの上部にシンプルな角度の目盛りがついている。目安を覚えておけばいつでも好みの角度に再調整できるわけだ
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フックにヘッドセットと引っかけたイメージ
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 付け加えると,本体正面向かって左側面,USBハブ部分には引き出し式のヘッドセット&ヘッドフォンフックがあるが,いま説明したハードウェア的な機能群はいずれも最近のXLシリーズにおいて標準となっているものだ。なので表現としては,「XLシリーズとして,ここまで培ってきた機能面をすべて押さえつつ,追加でShieldを用意してきた」とするのが正しい。
 細かいことを言えば,いま紹介したヘッドセット&ヘッドフォン用フックが,Shieldの角度によっては干渉してしまうが,ZOWIEとしては,角度を憶えておけばいいということなのだろう。

収容式のヘッドホンフックを装備。ボタン風の突起を押すとロックが外れて引き出せる仕組みで,使わないときに収容するのも簡単だ
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S.Switchの接続端子は従来と同じくUSB Mini-Bだが,あくまでもS.Switch専用という扱いである
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 XLシリーズの機能を語るうえで欠かせないS.Switchは,2015年モデルの「XL2730Z」から採用が始まった,丸い「S.Switch Arc」(もしくはS Switch Arc)と呼ばれるタイプだ。最近のXLシリーズではこのS.Switch Arc型で統一されているためか,呼称もシンプルなS.Switchとなっている。
 操作法は従来のS.Switchと変わらず,OSD操作用のホイールと[戻る]ボタンのほか,入力を切り替える[Input]ボタン,ユーザープリセットを呼び出せる3つのボタンを装備する仕様である。

スタンド台座にS.Switchを置くための凹みがある。これも従来のXLシリーズから変わらずだ
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 XL2540は,正面向かって下段右寄り,電源ボタンの近くに合計5個のOSD操作用ボタンを備えている。手が届きやすい位置にあり,また,OSDメニューとボタンが対応しているため,これはこれで相当に使いやすい印象だ。ただ,S.Switchを使った直感的な操作と比べると古くさい印象は否めない。
 なお,XLシリーズだと,「XL2730Z」でWindowsからディスプレイの各種設定PCからディスプレの各種設定を行えるソフトウェア「Display Pilot Software」を利用できるようになったが,XL2540はサポートしていないので,その点はご注意を。

前面パネルに並ぶ5個のボタンでOSDを操作できる。このボタンも手が届きやすい位置にあり操作しやすいが,より使いやすいS.Switchを利用するほうが便利ではある
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 S.Switchを含め,悪く言えば代わり映えがしないのだが,XLシリーズのゲーマー向けディスプレイにおける機能面はかなりこなれてきているので,改善すべき部分も減っているというのが本当のところではなかろうか。
 機能面をトータルでデザインと考えれば,XL2540はXLシリーズの集大成らしい仕様であり,欠点らしい欠点がないのが特徴と言えるかもしれない。


画質関連機能も既存のXLシリーズを踏襲


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 XL2540が搭載する液晶パネルが垂直リフレッシュレート240Hz対応で解像度1920×ドットだというのは冒頭でお伝えしたとおりだが,もう少し掘り下げておくと,TN型で中間調(Gray-to-gray)応答速度が1msというスペックになっている。1msという応答速度が十分かどうかは後段で検証するが,垂直リフレッシュレート240Hzの場合,1秒間に240枚のフレームを表示するので,フレームあたりの表示に要する時間は1÷240≒約4.17msとなる。

デスクトップの背景を黒にしたうえで,輝度を最大にして撮影した例
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 日本では,TN型と聞いた瞬間に拒否反応が出る人も少なくないのだが,XLシリーズの高速TNパネルはプロゲーマー,とくに欧州のプロゲーマーから極めて高い支持を集めており,画面の見栄えも,ゲーム用途としては何ら問題のないレベルだ。かつては輝度ムラもけっこうあったが,XL2540では相当な改善を見ている。

壁紙を表示させたうえで,角度を変えて撮影したカット。TN型で,かつ表面がノングレア(非光沢)加工済みとなるため,角度が付くと黄ばんで見えるが,正面から見る分には,色合いに不自然さはない。もちろん,ノングレアなので派手な映り込みもなかった
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 画質調整周りの機能は最近のXLシリーズそのものと言っていいが,BenQはゲーマー向け液晶ディスプレイで独特な機能用語を用いているので,それを踏まえつつ,「できること」を以下のとおり紹介しておきたい。
 XL2540は基本的に,XLシリーズの従来製品が備えている機能を踏襲するが,画質のプリセットなどが微妙に変わっていたりするので,そのあたりを押さえてもらえればと思う。

Black eQualizer

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 ガンマ値や明度,コントラストを変化させることで,暗いシーンの暗い部分を浮かび上がらせる機能。BenQがBlack eQualizerを実装した当時は珍しい機能だったが,今やゲーマー向けディスプレイ定番機能になった。XL2540では0〜20までの21段階で強度を設定できる。

「DOOM」のとあるシーンで,左から順にBlack eQualizerを0(無効),10,20の順で切り替えてみた。強度を上げるに連れて床などの暗部が浮かび上がるが,一方で明るい部分は飛んでしまうので,その点は要注意
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インスタントモード

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 内部映像処理の一部をバイパスして遅延を低減する動作モードで,他社のゲーマー向けディスプレイ製品で言うところの「スルーモード」に相当するもの。後段で効果をテストしたい。

AMA(Advanced Motion Accelerator)

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 液晶パネルのドライブ信号を最適化し,パネルの応答速度を引き上げる技術。BenQは伝統的にAMAと呼んでいるが,「オーバードライブ機能」と紹介したほうが分かりやすいのではなかろうか。「プレミアム」「高」「オフ」と3段階から選択できる点は最近のXLシリーズのディスプレイと同じである。

画面モード

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 画面の縮尺を変え,他のディスプレイサイズをシミュレートする機能。ディスプレイが決められている大会に向けてトレーニングするために設けてあるもので,これも従来のXLシリーズから継承している。
 選択肢は17インチ(4:3),19インチ(4:3),19インチ(5:4),19インチワイド(19:10),21.5インチ(16:9),22インチ(16:10),23インチ(16:9),23.6インチ(16:9),24インチ(16:9)だ。

ブルーライト軽減

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 バックライトから青系の要素を抑えることで目の疲れを抑制しようという機能で,他社のディスプレイにもよく見かけるが,XL2540ではゲーマー向けの機能という位置づけになっている。おそらく,長時間のゲームプレイでも目の疲れを抑える効果があるということなのだろう。
 XL2540ではブルーライト軽減の強度を0〜10の11段階から設定可能。ブルーライトを抑える機能を有効にすると露骨に色が変わるディスプレイ製品も多いが,XL2540は色味の変化が比較的少なく,そこが特徴と言えそうだ。

左から順にブルーライト軽減の強度を0(無効),5,10に変えてみたが,色味の変化は非常に少なかった。これなら安心してブルーライト軽減が使えそうと考える人がいるかもしれない
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画像モード

 用途に応じた画質のプリセットをZOWIEは「画像モード」と呼んでいる。XL2540の場合,画像モードとして「FPS1」「FPS2」「RTS」「動画」「標準」に加え,ユーザーが任意の設定を保存できる「ゲーマー1」「ゲーマー2」「ゲーマー3」を選択可能で,とくにこれらユーザー設定はS.Switchの[1]〜[3]ボタンに対応し,ここから一発で呼び出しが可能だ。
 BenQの製品情報ページだと「格闘」モードもあることになっているが,実機には見当たらなかった。

 なお,「FPS1」「FPS2」「RTS」の違いはBlack eQualizerとブルーライト軽減設定で,具体的には以下のとおり。インスタントモード「オン」,AMA「高」は共通だ。従来のXLシリーズだと,基本的にBlack eQualizerの違いだけだったものが,本機ではブルーライト軽減を画像モードごとに微妙に変えているのが特徴と言える。

  • FPS1:Black eQualizer 10,ブルーライト軽減 10
  • FPS2:Black eQualizer 12,ブルーライト軽減 0
  • RTS:Black eQualizer 15,ブルーライト軽減 0


垂直リフレッシュレート240Hzの効果は「画面のシャープさ向上にあり」


XL2540で選択可能なリフレッシュレート一覧
画像集 No.044のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「XL2540」レビュー。ネイティブ240Hz表示対応のゲーマー向けディスプレイは,ヌルヌルなうえにシャープだった
 以上,XL2540は,定評あるXLシリーズの仕様を押さえつつ,垂直リフレッシュレート240Hz対応を果たしたモデルと紹介することができるだろう。
 240Hz表示に対応するのはDisplayPort 1.2aもしくはHDMI 2.0接続時。今回のテストにはDisplayPort接続を用いたが,PCとの接続時は,60Hzまでの一般的なリフレッシュレート設定に加え,100Hzと120Hz,144Hz,240Hzの選択が可能になった。

 高リフレッシュレートは「ヌルヌル感」が増すというのが定説だが,240Hzではどうか。試してみた印象から先に述べると,ヌルヌル感に加えてシャープさが増すようだ。
 面白いのは,Vsync有効時と無効時で見た感じが変わるところで,Vsyncを有効化すると画面がとてもシャープになるのに対して,Vsyncを無効化すると,有効時と比べてシャープさが若干犠牲になり,その分,ヌルヌル感が増すイメージである。

 実際に何が起きているのか,画面の動きが大きく,またリプレイデータの再生ができるため,カメラを使った動画撮影によるテストにも向いている「Project CARS」を使って検証してみよう。
 「GeForce GTX 1080」と「Core i7-6700K」をベースとした今回のテストマシンだと,Project CARSは,グラフィックス品質を思い切って落とすことにより,最大200fps程度のフレームレートが得られるようになる。そこで,この状態からPC側の垂直リフレッシュレートを120Hz,144Hz,240Hzと切り換え,さらにVsyncの有効と無効を切り換えながら,その模様を,ハイスピード撮影に対応したソニー製コンパクトデジタルカメラ「RX100IV」で960fpsで撮影し,違いを検証することにした。

 下に示したのは,Vsync有効時の撮影結果だ。Vsync有効なのでテアリングはまったく見られないが,リフレッシュレート240Hzの設定だと,1フレーム飛ぶようなコマが2〜3フレームおきに見られる。
 Project CARSのフレームレートは最大200fpsがせいぜいなので,120Hzと144Hzは描画が垂直リフレッシュレートに追いついているが,240Hzには描画が追いつかないため,コマ落ちが発生しているわけだ。


 一方,Vsyncを無効化した状態の撮影した結果が下のムービーだが,こちらではいずれのリフレッシュレートでもテアリングの発生を確認できる。
 240Hz設定だとスムーズさが向上する一方で画面のシャープさが低下するのは,テアリングが発生するためだろう。通常,テアリングは画像の荒れとして認識できるが,240Hzもの垂直リフレッシュレートになると,1フレームあたりの表示が早すぎ,結果としてテアリングをボケとして人間の目が認識するようになるのではないかと見ている。


 なお,動画は960fps撮影しているため,1フレームあたりの時間は約1.06msとなるわけだが,この速度でも垂直リフレッシュレート240Hz設定だと動画として認識できる――コマ送りになっていない――のだから,「240Hz設定ってすごい」ということにはなるように思う。

 では,Vsync有効と無効のどちらがお勧めかと問われるなら,筆者としてはVsync有効を推す。画面のシャープさが格段に異なるうえ,Vsyncの有効化によって生じる最大の欠点である操作遅延も高リフレッシュレート化によって低減を果たしているからだ。
 前述のとおり,垂直リフレッシュレート240Hz時の1フレームは約4.17msなので,リフレッシュ(=同期)待ちで仮に遅延が起きたとしても,60Hzの0.25フレーム分にしか相当しないのである。

 ただ,NVIDIAの「G-SYNC」やAMDの「FreeSync」といった,GPUの描画と画面のリフレッシュを同期させる技術であれば,操作遅延は最適化される。「4.17〜8.34msの操作遅延を許容せざるを得ないものの,許容すれば超高リフレッシュレートとシャープな画面を得られる」ほうがいいか,G-SYNCやFreeSyncのほうがいいかはなかなか難しい問題で,ほとんど好みの問題ではないか,というのが,使ってみての印象だ。


XL2540では内部遅延もやや低減


 垂直リフレッシュレート240Hz対応と言っても,ディスプレイ内部の遅延が大きかったり,描画の速度が遅かったりしては,その性能をフルに発揮できない。液晶パネルがもっさり反応しているようだと,1秒間に240フレームの描画する効果が薄れてしまうはずだ。XL2540の速度性能をテストしてみよう。

 ……と言っても,さすがに240Hzのディスプレイ出力を2系統に分けることができるスプリッタはおそらくこの世に存在しない。なので,本稿ではDVI対応のGefen製DVIスプリッタ「1:2 DVI DL Splitter」(型番:EXT-DVI-142DL,以下型番表記)で対応できる,解像度1920×1080ドット,リフレッシュレート120Hzの条件でテストを行うことにする。

 まずは,内部遅延の検証からだ。今回は比較対象機として,4Gamerのディスプレイレビューにおけるリファレンス機となる垂直リフレッシュレート144Hz対応のBenQ製ディスプレイ「XL2430T」を用意した。本製品はBenQ ZOWIEブランドの立ち上げに合わせて「XL2430」へリニューアルしたが,用意したのはリニューアル前のモデルということになる。
 テストに用いるツールは,垂直リフレッシュレート144Hz表示に対応できる「RefreshRateMultitool」。XL2540とXL2430Tを並べ,RX100IVから960fpsのハイスピード撮影を行い,両者の遅延の違いを調べることになる。

 XL2540では,画像モードをFPS1,AMAを高に設定したうえで,インスタントモードのオン/オフを切り換える。一方のXL2430Tでは,画像モードをFPS1,AMAを高,インスタントモードをオンでそれぞれ固定した。

 というわけで,下に示したムービーは,XL2540とXL2430Tを並べてRefreshRateMultitoolを実行した様子だ。12×10のコマが並び,白反転する位置が1フレーム単位で左上から右下へと切り替わっていく。
 インスタントモード有効時の2台を比較すると,XL2430Tに比べてXL2540のほうが「次のコマが点灯を始める速度」がやや速いことが見てとれよう。その違いは1フレーム前後なので,約1ms以下の違いということになる。XL2540では,240Hzという高い垂直リフレッシュレートに対応するため,内部の処理速度が向上しているはずで,その違いがわずかに現れているのかもしれない。
 一方,XL2540でインスタントモードを無効化すると,XL2540のほうが明らかに1フレーム遅くなる。ゲームではインスタントモードの有効化が必須ということになるだろう。


 また,画面の大きさや比率を変える「画面モード」を有効にすると,遅延がやや大きくなることを確認できた。このあたりは従来のXLシリーズと変わっていないが,基本的には,スケールの変換量が大きいほど遅延が大きくなるようだ。

 下のムービーは,XL2540で画面モードを17インチ(4:3)から24インチ(16:10)まで順に切り替え,それをXL2430Tと比較したものだ。最も画面サイズの変換率が大きい17インチ(4:3)だと,およそ0.5フレームの目立つ遅延が見られるが,変換率が小さくなるほど遅延が小さくなっていく傾向が見て取れる。スケール変換の処理が相応に大きいということなのだろう。


 最後は,液晶の応答速度チェックだ。ここでは,EIZOが公開している「Motion Blur Checker(Beta)」を利用して4Gamerのロゴ壁紙を1フレーム単位で横スクロールさせ,それをRX100IVを使って960fps撮影する。
 XL2540の画像モードはFPS1。AMAの強度のみをプレミアム,高,オフに切り替えた。

 下がそのムービーだが,XL2540は,垂直リフレッシュレート240Hz設定時にAMAの設定を最も高いプレミアムにしても,4.1msごとのリフレッシュにパネルの応答が追い付いていない。プレミアム時に「1〜2フレームおきにロゴが移動する」感じで,AMAを高もしくはオフにしてしまうと各コマで4Gamerロゴの移動を認識できてしまうという状況だ。これは残念と言うほかない。


 ただ,従来のXLシリーズだと,AMAのプレミアムを選択したとき,ゴーストのような不自然な輪郭が出ることが多かった。それに対してXL2540ではそういった不自然さがほとんど出ておらず,画質面の違和感をあまり覚えない。応答速度重視のときには積極的にプレミアムを選んでしまっていいのではなかろうか。

■(余談)グラフィックスカードのDisplayPort遅延も調べてみた

 最近はG-SYNCやFreeSyncの影響もあり,ゲーマー向けディスプレイでは入力としてDisplayPortしかサポートしないとか,スペック上の最も高速な垂直リフレッシュレートはDisplayPort入力時にのみサポートするというディスプレイが増えてきた。そもそも,XL2540のような垂直240Hzといったリフレッシュレートだと,そもそもDVIではサポートできない。

 とはいえ,DisplayPort 1.3はおろか,DisplayPort 1.2aにフル対応できるスプリッタは,今のところ(業務用でも)見当たらないため,120Hzを大きく超える垂直リフレッシュレートのディスプレイで遅延検証を行うのは,かなり難しくなっている。
 以前,GeForce GTX 1080が持つDisplayPort出力を使い,Windowsのスクリーンミラーリングの機能を使って2画面に分けて遅延がテストできないか調べたが,結論としては「できない」と確認できている(関連記事)。GeForce GTX 1080のDisplayPortを使ったスクリーンミラーリングではポートごとに表示遅延のばらつきがあるためだ。

Quadro M5000。第2世代Maxwellベースのハイエンド市場向けモデルだ
画像集 No.045のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「XL2540」レビュー。ネイティブ240Hz表示対応のゲーマー向けディスプレイは,ヌルヌルなうえにシャープだった
 ならプロ向けのグラフィックスカードならどうだろうか,ということで,今回のテストに合わせてNVIDIAから「Quadro M5000」を貸し出してもらった。XL2540はDisplayPortとDual-link DVI-Dの両方に対応するため,垂直リフレッシュレート120Hz設定で「Quadro M5000にある2つのDisplayPortを使ったスクリーンミラーリング」と「DVI対応スプリッタであるEXT-DVI-142DLによる分割」とで遅延状況に違いが生じないかどうか,さらにスプリッタでは対応できない,120Hzを超える垂直リフレッシュレートに設定のうえ,ディスプレイ接続するDisplayPortを変更し,接続ポートによって遅延の状況に違いが生じないかといったことを調べてみることにしたのである。

 で,結論を言うと,Quadro M5000であってもスクリーンミラーリングをディスプレイのテストに使うのは難しい。下の動画は垂直リフレッシュレート120Hzの設定でスクリーンミラーリングを行い,ディスプレイを接続するポートを入れ替えた様子だが,おおよそEXT-DVI-142DLによる分割と同様の結果が得られ,またポートを入れ替えても結果が変わらないという有望な結果が得られた。この時点でGeForce GTX 1080より遅延周りでは優秀ということになる。


 ところが,垂直リフレッシュレートを144Hz化すると状況がガラリと変わり,ディスプレイを接続するポートによって遅延が有意に変化するという残念な結果になってしまった。具体的には,ポート1のほうが常に有意に遅延が小さくなる。この結果を見る限り,Quadro M5000をテストに使うのは無理と結論づけざるを得ない。


 というわけで,グラフィックスカードのDisplayPort出力をディスプレイ検証に使うのは難しいようだ。4Gamerとしても他の方法を検討するしかないだろう。


240Hzに価値が見いだせる人向けのディスプレイ


製品ボックス
画像集 No.046のサムネイル画像 / BenQ ZOWIE「XL2540」レビュー。ネイティブ240Hz表示対応のゲーマー向けディスプレイは,ヌルヌルなうえにシャープだった
 以上,こまごまとXL2540をチェックしてきたが,垂直リフレッシュレート240Hzの効果は確かにある。ヌルヌルになるだけでなく,画面のシャープさも上がって,ゲームをプレイしやすくなるのだ。シャープに動くため,画面内でのちょっとした動きに目(や手)が反応しやすくなると感じる人もいると思う。

 6万4000〜6万5000円程度という実勢価格(※2017年3月25日現在)も,ネイティブ240Hzという垂直リフレッシュレートに対応するXLシリーズのディスプレイということを考えれば,納得できるものではなかろうか。
 画面の動きの圧倒的なスムーズさと,それに加えて得られるシャープさに価値を見出せるなら,XL2540は購入する価値のあるディスプレイだとまとめておきたい。

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ベンキュージャパンのXL2540製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    ZOWIE(旧称:ZOWIE GEAR)

  • 関連タイトル:

    XL,XR,RL

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