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ATI Radeon HD 5700
  • AMD
  • 発表日:2009/10/13
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XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ
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印刷2010/09/04 10:00

レビュー

1スロット仕様のHD 5770は冷却能力と動作音に注目

XFX HD-577X-ZMF3

Text by 宮崎真一


HD-577X-ZMF3
メーカー:Pine Technology(XFX)
問い合わせ先:NEWX TEL:03-6268-9461
実勢価格:1万8500〜2万1000円(※2010年9月4日現在)
画像集#002のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ
 グラフィックスカード市場で,2スロット仕様のGPUクーラーを搭載するモデルはもはや当たり前の存在だが,拡張性に制約のあるPCケースを利用しているとか,マルチGPU構成時にほかの拡張カードも利用したいなどといったユーザーの間で,1スロット仕様へのニーズは依然として高いのも事実だ。
 とはいえ,1スロット仕様のクーラーには,冷却能力の限界というものも付いて回る。過去にも,ミドル〜ハイクラスGPUを搭載しつつ1スロット仕様にまとめてきた製品はあるが,クーラーの冷却能力が足りないか,冷却能力を追求しすぎて動作音が極端に大きくなってしまうというケースが少なくなかった。

 今回,XFXブランドで知られるPine Technology(以下,XFX)から日本市場に登場した「ATI Radeon HD 5770」(以下,HD 5770)搭載カード「HD-577X-ZMF3」は,そんな“ミドルクラスGPUを搭載しつつ1スロット仕様”な製品のニューカマーだ。本製品は1スロット仕様のカードが陥りがちなワナを無事回避できているのかどうか。その実態に迫ってみることとしよう。


3本のヒートパイプが走るクーラーを採用

動作クロックは定格そのまま


 HD-577X-ZMF3のカード長は実測208mm(※突起部含まず)。HD 5770のリファレンスカードと変わらないが,リファレンスカードだと,採用するGPUクーラーがカード後方に若干はみ出たデザインになっていたので,それとそのはみ出し分だけ短いということもできるだろう。

テストスケジュールの都合でHD 5770リファレンスカード(左)と横並びでの撮影ができなかったため,今回はSapphire Technology製のHD 5770カード「SAPPHIRE HD 5770 1G GDDR5 PCI-E DUAL DVI-I/HDMI/DP」とカードの高さを比べてみた(右)。スペースの都合で,HD-577X-ZMF3の外部出力インタフェースは2スロットモデルから変更され,DVI-I×2,Mini DisplayPort×1となっている
画像集#003のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ 画像集#004のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ

 肝心のGPUクーラーは,カードの後方,PCケース内に排気するタイプで,GPUとメモリチップを覆うタイプだ。総容量1GBを実現するメモリチップはカードの表面に4枚,裏面に4枚搭載されているため,クーラーで冷却されるのは4枚のみということになる。

カード後方,6ピンの外部給電コネクタ側に排気する仕様となっているGPUクーラー。メモリチップは8枚中4枚がクーラーによって冷却される
画像集#005のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ 画像集#006のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ

 クーラーを外してみると分かるのは,GPUダイと接触する部分が銅製になっており,それを貫くように3本の薄型ヒートパイプが走っていること。ヒートパイプによって放熱フィン部へ効率的に熱移動することにより,この規模のクーラーでもHD 5770の冷却をまかなえるようにしているものと思われる。

GPUクーラーを取り外したところ。ちょっと分かりにくいが,平板な形をしたヒートパイプ3本がフィンの下を走っているのは見て取れる
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 なお,動作クロックなどの仕様はリファレンスどおり。搭載しているメモリチップはSamsung Electronics製のGDDR5「K4G10325FE-HC04」(0.4ns品)なので,これを4.8GHz相当(実クロック1.2GHz)させているHD-577X-ZMF3においては200MHz相当のマージンが残されている計算だ。

搭載するHD 5770 GPU(左)とGDDR5メモリ(中央)。右は「GPU-Z」(Version 0.4.5)実行結果だ。動作クロックはコア850MHz,メモリ4.8GHz相当で,いずれもリファレンスどおり
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GPUクーラーの冷却性能,動作音は申し分なし

ただ,電圧設定は若干高め


Rampage III Extreme
R.O.G.ブランドのフラグシップX58マザー
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:4万2000〜4万6000円程度(※2010年9月4日現在)
画像集#022のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ
 というわけで,さっそくGPUクーラーの性能をチェックしてみよう。テスト環境はのとおり。HD-577X-ZMF3とHD 5770リファレンスカードを直接比較するわけだ。
 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション10.0準拠だが,スケジュールの都合により,今回は「3DMark06」(Build 1.2.0)「Battlefield: Bad Company 2」(以下,BFBC2)「Just Cause 2」に絞り,さらに「高負荷設定」は省略する。
 グラフ中,HD-577X-ZMF3は「XFX HD 5770」,HD 5770リファレンスカードは「HD 5770」とそれぞれ表記すること,そして「Core i7-975 Extreme Edition/3.33GHz」は,「Intel Hyper-Threading Technology」を有効化する一方,2枚のカードで“効き具合”が変わる可能性を踏まえ,「Intel Turbo Boost Technology」は無効化することも,あらかじめお断りしておきたい。

画像集#016のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ

 さて,OS起動後30分間放置した状態を「アイドル時」,「3DMark06」(Build 1.2.0)を30分間連続実行した時点を「高負荷時」として,各時点のGPU温度を比較した結果がグラフ1となる。
 テストは,室温23℃の環境で,バラック状態にして行っているが,HD-577X-ZMF3のGPU温度はアイドル時こそHD 5770リファレンスカードより高いものの,高負荷時は逆に低く収まった。つまり,HD-577X-ZMF3が搭載するGPUクーラーの冷却能力に問題はないわけだ。

画像集#017のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ

Radeon BIOS EditorからHD-577X-ZMF3のファン回転数設定をチェックしたところ
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 そうなると,今度は動作音の懸念が出てくるが,結論からいうと,その心配は無用である。
 まず事実関係から確認しておこう。TechPowerUp製のBIOSチューニングツール「Radeon BIOS Editor」(Version 1.25)で冷却ファンの回転数設定をチェックすると,HD-577X-ZMF3の搭載するクーラーはGPU温度が60℃に達するまで回転数は30%で固定され,それ以降は段階的にファン回転数が上がっていく設定になっている。
 グラフ1で示したとおり,実際のゲームプレイ中でも,GPU温度は80℃以下に収まるので,外気温がよほど高いとか,何か別の熱源があるとかいった状況下にない限り,回転数は定格の50%以内で収まることになる。実際に聞いてみた印象でも,HD-577X-ZMF3の動作音は静かだ。

 ちなみに下に示したのは,GPUクーラーのファンから約15cmと,かなり近い距離にマイクを置き,実際に2枚の動作音を比較してみた結果。あくまでも相対比較だと理解してほしいが,テスト後半,負荷が高い状態になると,HD-577X-ZMF3は高周波が若干目立つようになってくるものの,開始10秒間のアイドル状態だとむしろリファレンスより静かなくらい。冷却性能と静音性のバランスは高いレベルで保たれていると述べていいだろう。

HD-577X-ZMF3

HD 5770リファレンスカード



 次に,消費電力を比較してみる。
 今回も,4Gamerのハードウェアレビューでお馴染み,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定することにした。各アプリケーションを実行したとき,最も高い消費電力値を示した時点を各アプリケーションの実行時とし,その結果をまとめたものがグラフ2だ。

Radeon BIOS Editorから電圧設定を確認したところ。上がリファレンスカード,下がHD-577X-ZMF3だ
画像集#023のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ
画像集#024のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ
 ここで注目したいのはアイドル時の消費電力で,HD-577X-ZMF3のほうがHD 5770リファレンスカードより16W高かった。さすがに測定誤差と言い切るには大きな違いなので,前出のRadeon BIOS Editorからアイドル状態における電圧設定を確認してみると,その結果はHD 5770リファレンスカードが0.95Vなのに対し,HD-577X-ZMF3は1.20V。結構な違い差があるので,これがそのまま数字になったと考えてよさそうである。
 それでも大した違いではないと言ってしまえばそれまでだが,ゲームをプレイしていないときの消費電力を重視する人は,憶えておく必要があるかもしれない。

画像集#018のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ

 最後に,念のためベンチマークスコアを取得した3DMark06,BFBC2,Just Cause 2だが,搭載するGPUと動作クロックが同じなので,当然のことながらテスト結果も同じである(グラフ3〜5)。

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気持ち高めの実勢価格だが,悪くない

1スロット仕様の高性能カードとしてオススメ


製品ボックス
画像集#015のサムネイル/XFXから登場した1スロット仕様のHD 5770カードを試す。その冷却能力と静かさは要注目だ
 HD-577X-ZMF3の実勢価格は1万8500〜2万1000円程度(※2010年9月4日現在)。一般的な2スロット仕様のグラフィックスメモリ1GB版HD 5770カードが1万4500〜1万8000円程で販売されているので,1スロット仕様プレミアム(≒Premium,価格の上乗せ)的な割高感は拭えないため,どうしても,1スロット仕様に価値を見いだせるユーザーのみに向けた製品ということになるだろう。

 ただ,テストで明らかになったとおり,熱の問題も動作音の問題もクリアになっており,1スロット仕様であることにこだわる人にとって,完成度の高い製品に仕上がっているのも確かだ。スリムタイプやキューブタイプの筐体で3D性能の向上を狙う場合,注目に値するグラフィックスカードであることは間違いない。
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