レビュー
古典に忠実な3Dダンジョン探索型RPG「エルミナージュII DS REMIX 〜双生の女神と運命の大地〜」のレビュー
八つの神具を取り戻し女神フィオナを復権させよ
本作は,6人編成のパーティを組んで,一人称視点で描かれる3Dダンジョンを探索する,いわゆる「ウィザードリィ」(以下,Wiz)系のRPGである。ご存じのとおり日本では今も根強い人気を誇るジャンルで,同系統のタイトルが多数登場しているが,本シリーズは比較的Wizに忠実な作りとなっている。グラフィックスやメインシナリオには重厚感があり,熱心なWizファンにも受けが良さそうだ。
「エルミナージュII DS REMIX 〜双生の女神と運命の大地〜」公式サイト
ダンジョンに潜って,マイキャラのレベルアップやトレジャーハントに勤しむという,ハック&スラッシュの真髄はもちろん健在。本作はそれらの基本システムに加え,テンポの良い戦闘や自由度の高いゲーム展開,そしてさまざまなアイテム強化/合成システムなどの魅力が多数加えられている。その結果,往年のWizファンのみならず,現世代も含め,3Dダンジョン好きに広くアプローチできるタイトルへと仕上がっている。
まずはメインストーリーを簡単に説明。本作の舞台となる大陸フィーナス・ラーデは,女神フィオナの庇護により,永らく繁栄してきた地である。この大陸にはいくつかの都市があるが,その中でも最も繁栄している城塞都市ビステールは,女神フィオナと深いつながりのあるビステール王家により代々治められてきた。
ところが事態は急変。太古の邪霊が目覚め,闇の眷属と手を組み,世界を乗っ取ろうとし始めた。邪霊は,この世界で最も重要とされる“聖礎コントラキオ”へと侵攻し,さらには大地の主権を象徴する“八つの神具”に,今まさに手をかけようとしているのだ。
この緊急事態に対し,ビステール王家はおふれを発し,世界各地より冒険者を招集。集った冒険者達(含プレイヤーキャラ)は,これより八つの神具を探し出して,太古の邪霊を追い払い,この世界に再び平和を取り戻すための戦いに身を投じるのだ。
6人パーティで20×20マスのダンジョンを探索
16種類の職業と複数の拠点やダンジョンが君を待つ
本作の基本システムについて,念のため解説していこう。1パーティは前衛3人/後衛3人の6人編成で,1フロアが20×20マスのダンジョンを冒険していく。戦闘は最初に6人分の命令を与えて,ターン形式で進行するスタイルだ。まあWiz経験者にとっては言わずもがなの定番スタイルといえよう。
ベースシステムは定番中の定番ながら,細部ではオリジナルのシステムが多数採用されている。その数は膨大なのだが,目立った要素をピックアップしていこう。まず作成可能な種族は12種類,職業は16種類もあり,職業の中には「使用人」「遊楽者」「巫(かんなぎ)」といったユニークなものもあるが,それぞれ固有のアクティブ/パッシブ系のスキルが習得でき,6人の編成によって幅広い戦術が選べる。
冒険者が拠点とする城塞都市ビステールには,王城のほかにも酒場,宿屋,商店,訓練場といったお馴染みの施設があるのだが,ビステール以外にも複数の拠点があり,10以上も用意されているダンジョンやフィールドを含め,パーティは自由に行き来可能だ。
それぞれ景観が大きく違っており,ダンジョンへ潜る前の準備段階では,どちらかというとアドベンチャーゲームに似た雰囲気でゲームが展開していく。
拠点やダンジョンが多数あるおかげで,どのレベル帯のパーティにとっても,適切な難度の複数のダンジョンが選べることになる。さらに,八つの神具を集めるメインクエスト以外にも,拠点では数多くのサブクエストが受けられる。自然とさまざまなダンジョンを渡り歩くことになり,このタイプのゲームにしては,自由度がすこぶる高い印象だ。
NPCとのやりとりを重視している,というのも本作の特徴の一つ。メインシナリオ系や,主要NPCとの会話は正統派ファンタジーそのものといってよく,大人のファンでも安心して楽しめるだろう。
ところがイベントで接するモンスター達や,横道に逸れたクエストになると,同じタイトルなのかと疑ってしまうほど雰囲気が変わる。フランクなぶっちゃけトーク満載で,思わず噴き出してしまうことも多々あった。
ダンジョン内で遭遇した敵パーティがいきなり内輪揉めを始めたり,ゴブリンに遭遇したと思いきや,身構えもせず一心不乱にゴミ漁りを続けていたりなど(冒険者がゴミを横取りしに来たと勘違いされる),ダンジョン内では数多くのイベントに遭遇する。個人的にはTRPGのセッションを想起させられたが,古くからのRPGファンや洋物ファンジーが好きな人なら,本作のイベントは大いに楽しめるだろう。
キャラクターのロストはもちろんアリ
ただし“いつでもセーブ”が可能……つまり?
ゲームバランスに関しては激しくシビアで,古くからのRPGファンにとっても手応えは十分すぎるほどある。序盤は3Dダンジョンの初心者でも問題なく進められるが,レベルを4〜6まで上げて最初のメインクエスト“冒険者登録試験”をクリアしてからは,難度が一気に跳ね上がる。一方通行の扉やピット/シュート,そして戦闘中にモンスターの姿が「見えない」ダークゾーンなど,いやらしいトラップが序盤から数多く登場する。ときには攻略を中断し,別のダンジョンで修行してから再挑戦,といったことが必要になるかもしれない。
難度の高さに対しての救済措置(という理由で実装されたわけではないと思うが)として,本作のセーブは自動でなく,プレイヤーが好きなときに自主的に行えるという点が挙げられる。これを聞いてピンと来る人もいるだろうが,本作ではその気になれば“リセット技”がたやすく行えるわけだ。使うかどうかはプレイヤー次第だが,これは本作の特筆事項の一つだろう。
特定の職業が習得可能な「錬金」「鍛冶」「分解」といった,アイテム生成システムにも注目したい。これによりモンスターからのランダムドロップに頼らずとも,比較的簡単に入手できる素材アイテムを用いて,マイキャラの装備品を任意の方向へパワーアップできるのだ。例えば錬金の場合だと,アイテムに「ターンごとにHPを回復」の能力を付加する,ニンテンドーDSの下画面にミニマップを常駐させる,などといったことが行えたりする。
今回のプレイを振り返ると,ビステールの商店に一振りだけ陳列されている剣“フランベルジュ”を手に入れ,錬金で与ダメージ量を上げて敵を攻撃した瞬間,本作のキャラ育成にのめり込んでいった気がする。突出した装備品を一つ誰かに持たせると,そのキャラが使っていたお古が玉突き形式で押し出され,パーティ全体が底上げされるわけだが,こういった作業が実に心地よく結果に返ってくるのが嬉しい。
戦闘に関しては全体的にテンポが良いが,これは多くの職業で序盤から複数回攻撃が可能で,その場合のターゲットが別々に指定できるというのが大きいと思えた。そのためオーバーキルが起こりにくく,短いターンで戦闘が終了することが多いのである。そのほか細かい所になるが,ニンテンドーDSの上画面の下部に,パーティメンバーの残りHP量が色付きのゲージで示されており,オートバトルに頼ってもピンチの際はすぐに分かりやすいことも○。シリーズ作ということでUIもこなれており,メッセージスピードなどの環境設定もカスタマイズすることで,ストレスフリーでダンジョン攻略を楽しめるだろう。
育成ボリュームは奥深いが,育ったキャラが冒険する舞台も相当なボリュームがある。隠しダンジョンを含めると,どうやら数百〜千以上を越えるレベルを対象としたダンジョンも用意されているようだ。その頃には,冒険者達は神々の領域へと足を踏み入れることになるわけで,本作の重厚感のあるストーリーにおいて,どのような局面を迎えるのか興味深い。
本作は移植タイトルだが,PSP版にはなかった新ダンジョン「クース・マシトラ」や,新たなエピソードなどが追加されている(※詳細はこちら)。PSP版をとことんやり込んだ人も,この機会にあらためてプレイしてみるのも悪くないだろう。
ニンテンドーDSの2画面ウィンドウは,ミニマップなどの補足情報が別画面で表示できることから,3Dダンジョンを探索するタイトルとの相性がすこぶる良い。このハードではすでにいくつもの傑作タイトルが登場しているが,本作「エルミナージュII DS REMIX 〜双生の女神と運命の大地〜」も,それらに引けを取らない良作である。Wiz系のバリアントという括りだけでなく,ハック&スラッシュ好きに幅広くお勧めできるタイトルだ。
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エルミナージュII DS REMIX 〜双生の女神と運命の大地〜
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