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今,ゲームを売るために必要なことを考える――「パタポン3」がどうすればメジャーなれるのかを開発陣と話し合ってきた
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印刷2011/04/28 00:00

インタビュー

今,ゲームを売るために必要なことを考える――「パタポン3」がどうすればメジャーなれるのかを開発陣と話し合ってきた

 黒を基調とした独特のグラフィックス&世界観に,リズムアクションとRTSを融合させたようなゲームシステムが特徴的な「パタポン」は,ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)が制作/販売を手がける人気シリーズだ。
 2011年4月28日に発売されたシリーズ最新作「パタポン 3」は,基本的なゲームシステムを継承しつつも,ジャンルをアクションRPGとして,新たな一歩を踏み出そうとしている。同作の体験版も,第一弾,第二弾の合計が80万ダウンロードを突破しており,RPGライクなパタポンをもうプレイしたという人も多くいることだろう。

画像集#033のサムネイル/今,ゲームを売るために必要なことを考える――「パタポン3」がどうすればメジャーなれるのかを開発陣と話し合ってきた

「パタポン 3」公式サイト


 過去作「パタポン」「パタポン2 ドンチャカ♪」(以下,パタポン2)は,日本国内でそれぞれ10万本以上を販売し,海外での評価もMetascoreで1が86点,2が81点を獲得するなど,世界的にも評価が高いパタポンシリーズだが,一方で,「どんなゲームか分かりにくい」と,食わず嫌いをしてしまうケースをよく見かけるような気がする。かく言う筆者も,知人に熱心に勧められるまで,購入に二の足を踏んでいた記憶がある。

 面白いのに。良くできたゲームなのに……。パタポンがもっと多くの人に遊ばれるようになるには,一体どうすればいいのだろう?

 今回4Gamerでは,そんな疑問をパタポンの開発スタッフと直に語り合う特別企画「パタポンをメジャーにするにはどうすればいいんだ座談会」を実施。その内容盛りだくさんの模様をさっそくお届けしたいと思う。
 座談会に参加したのは,パタポン3のプロデューサーである吉澤純一氏(SCE),株式会社BBQ代表の飯 淳氏,ゲームデザイナーの小谷浩之氏(SCE),そして筆者こと4Gamer編集部のTAITAIの計4名だ。
 昨今,ゲームが売りにくくなっていると言われる中で,何を考えながらパタポン3が作られ,そしてどんな挑戦をしているのか。パタポン3についてあれこれ議論するうちに,今のゲームの売り方,ゲームの遊ばれ方など,いろんなものが見えてくるはずだ。

画像集#003のサムネイル/今,ゲームを売るために必要なことを考える――「パタポン3」がどうすればメジャーなれるのかを開発陣と話し合ってきた
吉澤純一(よしざわじゅんいち):ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオ 制作部プロデューサー
代表作「パタポン」シリーズ
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飯 淳(いいあつし):株式会社BBQ代表
代表作「エメラルドドラゴン」,「パタポン」シリーズ
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小谷浩之(こたにひろゆき):ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオ 制作部 ゲームデザイナー
代表作「パタポン」シリーズ

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。なんだか妙な企画を持ちかけてしまって申し訳ありません。

飯氏:
 いやあ,おもしろい企画だと思います。とてもパタポンらしいというか(笑)。

吉澤氏:
 こちらこそよろしくお願いします。

4Gamer:
 パタポンは凄く面白いゲームだなとずっと思っていたんですけど,一方で,取っつきにくさというか,分かりにくいさというか,「もったいないな」って気持ちがあったんです。

飯氏:
 はい。よく言われます!

4Gamer:
 今回は,パタポン3の取り組みについてお話をうかがいながら,「ゲームの取っつきやすさ」や「面白さを伝えるということ」,ひいては「ゲームを売るためにどうすればいいのか」みたいな話をできればと思います。

吉澤氏:
 了解しました。

4Gamer:
 ではまず,パタポン3を制作するにあたって,先で挙げた「分かりにくさ」みたいな部分については,どういった議論があったんですか? 「RPGに進化」というキーワードも,そうした問題に対する答えの一つだとは思うのですが。

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飯氏:
 うーん,そうですね。まずゲームプレイが分からないっていうのは,パタポンがずっと言われてきたことなんですよ。それこそ本制作どころか試作段階から,ずっと同じことを言われ続けてきました。パタポン3を最初に作るときなんて,「伝わらないゲーム性」ってお題目があったくらいで。

4Gamer:
 やっぱり,制作側の問題意識としてもあったわけですね。

飯氏:
 もちろんそうです。だけど,個人的には,ここはもうしょうがないと思うんですよ。だってパタポンって「そういう作りのゲーム」なんですもん。
 例えば,普通のアクションゲームって,そのときの状況ですぐに反応が返ってきますけど,実際は,目で見て頭で考えてボタン押すまでのタイムラグがあって,そこを計算しながらゲームを作るんですけど,パタポンの場合は,その尺をすごい伸ばした感じなんです。

4Gamer:
 普通のアクションゲームだと,例えば「これから攻撃するぞ」みたいな予備モーションがあって,プレイヤーはそれを見てすぐ回避行動取りますけど,パタポンの場合は,そういうもののタイミングや間の取り方が独特だから分かりにくいんですかね?

飯氏:
 パタポンは,4拍のリズムでコマンドを入力して,その2秒後にやっと反応が返ってきて,そこからまた2秒間考えて〜というゲームですよね。普通のアクションゲームやリズムゲームに慣れていると,逆に戸惑ったりもするわけです。だって,そんな体験(ゲーム)は多分今までにないものだから,やっぱり理解されにくいんですね。

4Gamer:
 はい。でも,そここそが“パタポン独自の面白さ”でもあるわけですよね。

飯氏:
 そうなんです。パタポンは,半リアルタイムみたいな独特なシステムがゲームの軸になっていて,しかもそれがおもしろいもんだから,その仕様は絶対に外せない。

4Gamer:
 これもう,いきなり核心に近い話になってしまいますが,パタポンに限らず,ゲームってお作法やルールがあって,それを覚える過程っていうのがありますよね。そして,お作法を覚えれば途端におもしろくなる。
 一方で,最近はそのお作法が非常に簡単だったりとか,下手すればお作法なんて存在しないようなゲームがいっぱい出てきていて,もはやゲームである必要があるのかっていうものも増えていると思うんですよね。
 そんな中で,パタポンは核になるゲーム性があるのに,お作法を覚えるってところがネックになっているというのが……。

飯氏:
 まあ,損してますよね。

4Gamer:
 ええ,僕なんかから見ると,それが残念でならないんです。そこを理解しないでやめちゃう人がいるのは,非常に惜しい。「ゲーム性がしっかり根っこにあるよ」と友達とかに薦めても,なかなか遊んでもらえなかったりします。

吉澤氏:
 でも,1から10まで説明すればいいってわけでもないんですよね。初代パタポンを作ってたときの話なんですけど,飯さんや小谷は,とにかく「説明する」のをすごく嫌がるんですよ。私はプロデューサーなので,チュートリアルを充実させたいとか,ゲームの中でのインフォメーションを増やして誰でも遊べるようにしたいってことなどを要求するんですが。

4Gamer:
 商品として販売することを考えたら,そういうオーダーが出てくるが自然ですよね。

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吉澤氏:
 しかし彼らは「安易な説明はいらない」っていうんです。パタポンは「発見の遊びなんだ」「プレイヤーが試してみて反応が返ってきて,こういうのができるんだ!って見つけるのが楽しいんだ」って譲らない。それを全部言っちゃったら,答えを知ってるテストみたいなものなんだと熱く語られました(笑)。

4Gamer:
 あまり親切すぎても,攻略する楽しみを奪いかねないですからね。パタポンって,僕は敵をよく観察して,攻め時や退却のタイミングなんかを見つけながら,適切なコマンドを入力して攻略していくゲームだと思うので,そこの発見が楽しいです。
 ただ,パっと見ではそこまでカッチリしたゲームには見えないのもあって,発見していく部分でくじけてしまうライトな層はいるかもしれません。

吉澤氏:
 アンケートを見ると,パタポンって名前がパズルゲームっぽくて,内容が分からなかったって書かれてる方もいますからね。僕らとしても,内容や遊び方が伝えられるよう,シリーズ通していろいろとチャレンジしてはいるのですが……。

4Gamer:
 パタポン3の制作でも,そういった「伝わらなさ」に四苦八苦していたりするんですか?

吉澤氏:
 それはしていますよ。だからパタポン3は,回数を覚えてないぐらい繰り返しモニター会実施しました。プレイヤーにとにかく触ってもらって,その度にちょっとずつ画面内の情報量を増やすんです。すると,チュートリアル終了後にマニュアルなしでもプレイできるという人が,会を重ねるごとに増えていくんですね。パタポン3は,今まで以上にとっつきやすくしたつもりです。

飯氏:
 30分,1時間って触れば,「すすめ」と「せめろ」ぐらいは理解できて,さらに序盤のステージでコマンド表に書いてあるやつを適当に試してみれば,自然といろいろ覚えていけるはずです。

4Gamer:
 とっつきやすさというと,今回RPG的な側面を押し出してますけど,これもパタポンを広めるにはいい切り口ですよね。なんというか,RPGって“面白み”をイメージしやすいじゃないですか。食べ物で言うと,「ラーメン食べたいな!」みたいな感覚というか,買う前に「こんな風な味(楽しみ)だろう」というのをイメージできる。パタポンは,多分「これは一体どんな味なんだ?」というのがちょっとあると思うんですよね。だから,買う前に躊躇してしまったりするというか。

飯氏:
 RPGってしつこく言い始めたのは僕ですね。マルチプレイで遊べるゲームを作ろうとすると,人と一緒に遊ぶ理由が必要になるんですよ。
 ほかのゲームを見ても,その理由っていろいろ考えられてると思うんですけど,その最たるものって役割分担ですよね。役割ないゲームを人と一緒に遊ぼうとは思わないじゃないですか。ただ単にいいアイテムが手に入るとか,強いボスを倒すだけじゃ理由として弱い。その入り口を作るために,RPGでの分担ってことにこだわったんです。

4Gamer:
 パタポン3って,役割分担がかなりカッチリしたゲームになってますよね。個人的には,なんとなく「EverQuest」っぽさを感じているんですが。

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飯氏:
 今回21種類のクラス作りましたからね。これだけ役割に特化したクラスが揃ってるコンシューマゲームなんて,そうそうないですよ。だってソロプレイを考えたときに,攻撃能力まったくなくて防御一辺倒みたいなキャラ,作れないですから。
 でもパタポンは,ソロプレイでも「トン」「チン」「カン」とパーティを編成できるので,役割に特化したキャラで遊べるわけです。

※「トン」「チン」「カン」とは,プレイヤーに付き従うお供キャラ

4Gamer:
 例えば「モンスターハンター」シリーズは武器自体はいろいろ分かれていても,分担という意味では緩いというか,それぞれ好き勝手戦ってもマルチプレイが成り立つチューニングをしているじゃないですか。そこをあえて特化させたのは,どういった狙いがあるんですか?

飯氏:
 プレイヤーは画一的ではなく,いろんな人がいるわけですよ。タンク役が好きな人,回復役が好きな人,ダメージディーラーが好きな人……そのニーズを叶えたいんです。21種類もクラスを用意してるのは,ただバリエーションを持たせたいわけじゃなくて,プレイヤーの多様性に合わせた結果なんですね。

4Gamer:
 でも一方で,EverQuestなんかのオンラインゲームについていえば,そういったカッチリと役割分担を決めてしまう方向性って,ある時点を境に廃れてしまったという事実があると思うんですよ。きっちりとした役割分担をしながら遊ぶのって,確かにめちゃくちゃ楽しいんですが,逆にそれが足かせにもなってしまった。気心の知れた仲間を集めるのは,それだけで手間ですからね。
 モンスターハンターや韓国産のMMORPGなどが出した答えは,より多くの人に楽しんでもらうための方便として,ある種の“緩さ”をあえて持たせているという感覚があります。

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小谷氏:
 オンラインゲームだと,一つのクラスに特化したらもうおいそれと変更できなくなってしまうじゃないですか。でもパタポン3は気軽にクラスを変更できるので,あまり肩をはらずにマルチプレイが遊べるようになってますよ。
 誰もタンク役がいないなら,「俺か,俺なのか!?」ってとりあえず頑張ってみて,それをヒーラーが支えてくれたりとか。遊び方に自由さみたいなものがあるんですね。

4Gamer:
 なるほど。確かに。
 パタポン3のクラスは,RPGのそれというよりは,FPSのそれに近い感覚があるかもしれませんね。「おれ,今回はスナイパーやるわ」みたいな(笑)。

飯氏:
 だからさっきの話でいえば,パタポン3では,ゲーム的にカッチリした部分と緩さみたいなものの,どちらも内包した作りになっているんですよ。

吉澤氏:
 体験版での反応を見る限り,プレイする度に普段やらないクラスにチャレンジして,うまく役割を分担するような遊び方をしている人も多いみたいですよ。こういうのを見ると,RPGって分かりやすいイメージを採用してよかったと実感します。


騙してでもいいから,とにかくお客さんを連れてくる


4Gamer:
 昨今,ゲームを売ることを考えた時,それが良いか悪いかは別として,ゲームの面白みそのものからちょっと外れたところで話題作りをするケースが増えましたよね。例えば可愛いキャラクターを用意して「パンツ見えます」みたいな売り方もあるわけで。もちろんそれだけで完結しちゃダメですけど,そこをフックとして,商品を知って貰うなりプレイしてもらえるなら,それはそれでOKとも言えます。そういうことを考えたとき,パタポンに合うフックってなんなんでしょうか。

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飯氏:
 人を引っ張ってくるって意味では,今回ジャンルがアクションRPGになってるっていうのも施策の一つですよね。パタポンのゲーム性が伝わりにくいのは分かってるんだから,とりあえずアクションRPGっていっておいて,あとは世界観やゲームの中身で勝負をかければいいみたいなところはあります。

4Gamer:
 リズムゲームと言われるよりは,パタポンに興味を持ってくれる人は多いかもしれないですね。

飯氏:
 ユーザーを騙して遊ばせるゲームってありますけど,僕はそれをいい意味でやりたいんですよ。「なんだかよく分からないパタポンをやってみたら,おもしろいじゃん!」という感じで。体験版を遊ぶところまで連れてくれば,気に入ってもらえると思うんですよね。誰でも楽しめるように頑張って作りましたから。

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4Gamer:
 パタポン3って,体験版でも非常にユニークな施策とってますよね。体験版を早めに出すタイトルはありますけど,本作の場合,体験版の第1弾が発売1年近く前のE3 2010に併せて出ましたし。普通,そんなのありえないと思うんですよ。しかも発売3か月前に,100時間遊べるって売り込みの体験版第2弾なんてものまで出てきた。いったい,どういった意図で体験版を展開してきたんですか?

飯氏:
 取れる戦略がそれしかなかったんですよね。お金をかけて大々的にプロモーションってわけにはいかないですし,かといってイメージ戦略でキャラクターをバっと広めて,それに飛びついてきた人を囲い込むとかも無理でしょ。パンツとかないしさ(苦笑)。
 だったら,もう時間をかけて浸透させる「持久戦」しかないんですよ。欲しいって思う人,周りに買おうって広めてくれる人をジワジワ増やしていくしかない。

吉澤氏:
 パタポン3は,お金もリソースもないから,後はもう時間を掛けるしかなかったんです。

4Gamer:
 「持久戦」という表現は,非常に腑に落ちます。なるほど。

飯氏:
 そのために必要だったのが体験版だったんです。ファーストインプレッションでは5点満点中5点は付かないと思いますけど,体験版をプレイしてくれれば5点か4点は付く出来なんです。4点の人は自分から買いたいと思うほどではないものの,周りに5点つけた人がいて,一緒に遊ぼうって言われたら,きっと買ってくれる。

4Gamer:
 体験版さえプレイしてもらえれば,パタポンのゲーム性も伝わりますからね。

飯氏:
 そうなんです。どれだけ多くの人が遊んでくれるかが勝負で,遊んでもらったぶんだけ,間違いなく購入してくれる人も増える。初速で付いてくる人がパタポンには何万人かいますが,その人達が布教者になってまわりに伝えてくれるまでは,とにかく時間が必要なんですね。

吉澤氏:
 普通であれば,ゲームのリリースと関係なしに製品とほとんど変わらないクオリティのものを作ったりしません。でも広める戦略として,ほかのタイトルに勝てるところが時間しかないなら,早めに体験版を作るしかないですよ。

4Gamer:
 理解はできますけど,かなり反対もされそうな手段ですよね。時期にせよボリュームにせよ,あれだけの体験版を出すんですから。

飯氏:
 相当いろんな圧力はありましたよ。それでも,僕は体験版第2弾を11月に出せとかいってました。1月でも,吉澤さんが無理やりねじこんだんですよ。

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吉澤氏:
 私は,パタポン3を売ることは,ある意味「子育てに近い」と思っていて,パタポンの目新しさとか,分かりづらさとかを否定しちゃいけない,と考えたんですよね。
 もう分かりづらいのは認めたうえで,そのうえで「パタポンの面白さ」をみんなに知ってもらうしかないんだと。だったら無料体験版を作るしかないから,そこだけに特化していこうと決めて,ある意味ピーキーなやり方を選びました。

4Gamer:
 博打ですよね。手間も相当かかっているでしょうし。

吉澤氏:
 本当は飯さんに,「開発きついよ,やばいって! もっとリソースを制作に投下したい!」って言われてましたよ。でも,僕はとにかく体験版やろうって言い張ったんです。制作を中断する勢いで,まずは体験版をE3のタイミングで出そうって。

飯氏:
 いや,実際中断したんですよ! E3も相当酷いけど,今回の第2弾はもっと酷い!

吉澤氏:
 う,けっこう恨まれてるかもしれないです……。

飯氏:
 ほんと第2弾は酷いんですよ。もともと,東京ゲームショウ2010で配るっていうからすごい頑張って作ったのに。

吉澤氏:
 内容的に,開発期間を長くしてもっと作りこんだほうがいいと思ったんですよ。とにかく触ってもらって,とにかく意見をもらって,それを吸収する。吸収するために時間をかける。かけたものでもう一回体験版を出してみる。そういうことをやりたくて。

4Gamer:
 それにしたって,さすがに第2弾は盛り込みすぎだろうって議論はなかったんですか? 遊べすぎな気はするのですが。

飯氏:
 うーん,製品版に比べると,あれでもゴミみたいなもんですからね。

4Gamer:
 ええっ!?

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吉澤氏:
 ゴミじゃない! ゴミじゃないから!
 製品版で1か月か2か月かけて経験することのスケールをキュっと縮めて,その中でも完結して回るようになっているのが今の体験版ですよ。それを遊んで,もっと拡張されたものが遊びたいと思ってもらえれば,100時間遊んだとしても買ってもらえるはずなので,好きなだけプレイしてほしいです。

4Gamer:
 そこまで言い切れるのもすごい自信ですね。

飯氏:
 体験版でゲームの底が見えちゃって怖いなんてタイトルだと,絶対できないことですよ。そもそも,体験版で遊び尽くした挙句に,飽きちゃってこれでいいやって思うんだったら,買わなくていいと思うんですよね。それで買っても満足しないじゃないですか。パタポン3は飽きさせない自信がありますけど。

4Gamer:
 たしかに,その状態で買ってもらったとしても,「パタポンおもしろい!」という話にはならないかも。

飯氏:
 ですから,体験版は満足するまで遊んでもらいたいです。でも,遊びすぎて飽きるんじゃなくて,疲れちゃうのはちょっと心配かな。

4Gamer:
 疲れる,というのはどういうニュアンスでですか?

飯氏:
 好きなゲームって,徹夜してでも遊んだ記憶あるじゃないですか。だけど,こんなにやってたら他のこと何もできなくなってしまうし,なによりもう眠いみたいな,本当に疲れるまで遊んだときの反作用ってありますよね。

4Gamer:
 ああ,時間を置いたらまたやりたくなるけど,燃え尽きてクールダウンがほしくなることってありますね。

飯氏:
 でしょ? だからそこまではやってほしくないかもとは思います。

吉澤氏:
 中には,「明日センター試験,今パタポン」なんて人を見かけて,ヒヤヒヤしちゃいましたよ。いやもう,そこは切り上げてください!みたいな。

4Gamer:
 うわあ,気持ちは分かるけど心配だ。体験版とはいえ,中毒性ありますからね……。そういえば,体験版第1弾と第2弾がダウンロードされる勢いって,初速は違っていたりするんですか?

吉澤氏:
 勢いはほぼ同じぐらいですね。ただ,パタポン2の体験版と比べると,3倍以上の速度が出てますよ。

4Gamer:
 体験版のダウンロード数とか評価と,売り上げとの相関関係みたいなのってやっぱりあるんですか?

吉澤氏:
 パタポン2のときは,体験版のダウンロード数に対して,2人に1人ぐらいの比率で購入してもらえました。アンケート見ても,体験版があったから買ったって人は多かったですし。そういう背景があったからこそ,パタポン3で体験版に賭けるみたいな戦略が取れた側面はあったんです。

飯氏:
 評価でいえば,PlayStation Storeで体験版についてる評価数が1000件超えてるんですよ。1000件超えるなんて,基本的にハーフミリオン達成してるタイトルぐらいしかない。もう販売本数10万本とかで止まってる場合じゃないんです。だから,今回こそは売れてほしいなあと思うんですけど,そうはいってもマイナーなパタポンだからねえ。

吉澤氏:
 どうしてそこで自虐に走るの(笑)
 パタポンシリーズって,実はワールドワイドで合計95万本売れてるんですよ。4年って時間はかかってますけど。でも,それだけの人が遊んでるのだから,そろそろ実績のあるタイトルとして評価してもらえるんじゃないかな,なんて思いますね。

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  • 関連タイトル:

    パタポン 3

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