レビュー
特筆ものの爽快感とゲームバランスを持つハンティングアクションの秀作
GOD EATER BURST
「GOD EATER BURST」(以下,GEB)は,前作にあたる「GOD EATER」(以下,GE)の各種システムをブラッシュアップし,さまざまな新要素を収録した“チーム連係型ハイスピードハンティングアクション”だ。ナンバリング最新作ではなく,あくまでGEの進化版という内容なのだが,GEの,そして(誤解を恐れずに言うならば)“ハンティングアクション”というジャンルの不満点が,見事に解消されたゲームに仕上がっており,セールス的にも大きな成功を収めたタイトルだ。
本稿ではあえて,同ジャンルの超大型シリーズ最新作が話題を集めているこのタイミングでGEBの魅力を掘り下げ,同作の特徴と実力について紹介していきたい。
「GOD EATER BURST」公式サイト
ストーリー重視のRPGにひけをとらないドラマ性と
スピード感溢れる戦闘の確かな面白さ
GEには特筆すべき特徴がいくつもあるが,その最たるものは,一般的なファンタジーとも,SFとも異なる世界観だろう。
――2071年,地球は,あらゆるものを捕喰する“オラクル細胞”から分化した生命体“アラガミ”により,滅亡の危機に瀕していた。そんな中,オラクル細胞を埋め込んだ生体兵器“神機”を,自らの肉体に連結させ,操る特殊部隊“ゴッドイーター”が編成された。プレイヤーは“神を喰らうもの”の一人となり,他のメンバーと協力しつつ,無尽蔵に増殖するアラガミとの終わりなき戦いに身を投じることになる――
この世界観を含めた見た目/雰囲気の違いは,ハンティングアクションファンからすれば思いのほか大きく,趣味が合う人にはとことん気に入られ,逆に苦手な人からは敬遠されてしまいがちなタイトルといえるだろう。
戦闘面では,やはりボスモンスター的な存在である大型アラガミとのバトルが面白い。説明するまでもなく,大型アラガミは相当強く,難度の高いミッションに登場するものになると,場合によってはとんでもないコンボを食らって瞬殺されることもある。本作ではシングルプレイ時にも,最大3人のNPCと共に戦えるし,リンクエイドというシステムで仲間に助けてもらったり,仲間を助けたりもできるのだが,それでも総じて刺激的なバトルが楽しめるバランスに仕上がっている。
アラガミの攻撃には特定の予備動作があったりするので,それを見極めることで攻撃に備えることも可能だ。予備動作が分かりにくい場合もあるが,そうしたアクションを見極め,適切な行動を取れるようになると,ゲームは俄然面白くなってくる。
アラガミの攻撃に対しては,移動による回避,防御,ステップによる緊急回避などで対応することになる。一見,短距離を一瞬で移動できるステップが万能に思えるが,ステップはスタミナを消費し,移動後にもわずかな硬直が生じる。また,防御を固めすぎても,反撃の機会がなかなかつかめず,戦闘が長期化しがちだ。
GEBではそのほかにも,貫通属性主体のショートブレード,切断属性主体のロングブレード,破砕属性主体のバスターソードなど,刀身パーツによる物理攻撃にも属性が設定されている。こうした攻撃属性は銃身パーツにも存在する要素だ。
そして大型アラガミの中には,部位ごとにどの攻撃属性が有効であるかが変化するものもいる。さらにはダメージを与え続けたあとに活性化すると,防御力が変化することがある。数々のバトルを経てそういった特徴を探り出し,勝利のためにうまく利用できるようになれば,アラガミとの戦闘は非常に楽しいものになってくるはずだ。
ミッション内容やデータベースで,対象となるアラガミの弱点や注意すべきポイントが確認できる。しかし,ここで表示される情報は一部に過ぎない |
アラガミの特定部位を破壊(結合崩壊)すると,レアな素材が手に入ったり,その部分の防御力が低下したりする。ただしまれに,逆に堅くなったり,特殊な攻撃をしかけてくるようになったりするものもいる |
ちなみに,上位のミッションになればなるほど,複数の大型アラガミと同時に戦うケースが増えてくる。実際には大型アラガミ一体でも手間はかかるのだが,なんせこちらは(シングルプレイ時でも)4人チームが基本。一対多数ではどうしてもすぐに優位に立ててしまい,攻略が容易になる。それだけに,こうした複数の大型アラガミとの乱戦は一方的にならず,常に別のアラガミからの攻撃に備えてその動向をうかがいながらも,目の前の敵に渾身の攻撃を叩き込んでいくというゲームプレイを生むことになり,白熱したバトルが楽しめるのだ。GEBでは仲間NPCへの指示出しが可能なので,敵を分断したり,一時撤退したりといった戦術もとれる。
仲間NPCの存在と強大なアラガミが,スリリングなゲーム展開を生んでいるGEB。ストーリー展開を楽しませるために,基本的な難度はやや控えめに調整されているものの,難関ミッションの歯応えは十分で,アクションゲーマーでも腰を据えて楽しめることは間違いない。ゲームに行き詰まったときには,仲間NPCではなく,友人などの仲間プレイヤーとの共闘で乗り切ることができるだろう。
アラガミとのバトルはまさに喰うか喰われるか
神機でアラガミを捕喰し,特殊な弾丸“アラガミバレット”を得たり,一時的に身体能力を高めたりできる点も,GEBの大きな特徴であり,魅力だ。いざバトルが始まったら,プレイヤーは「いかにして捕喰するか」を常に考え,立ち回ることになるのだ。
チャージ捕喰に成功すると,一定時間バースト状態となり,攻撃力や攻撃スピードがアップ。スタミナ消費の軽減や,バーストスキルの発動,2段ジャンプが可能になるといったメリットもある。さらに,アラガミバレットと呼ばれる特殊バレットを3発獲得できるなど,いいことずくめ。エフェクトが派手になり爽快感も大幅に増すというあたりも見逃せないポイントだ。
チャージ捕喰だけでなく,コンボ捕喰の直後にも,わずかな硬直が生じるため,いつでもどこでも捕喰し放題というわけにはいかない。だが捕喰直後には,ダッシュなどで捕喰時のスキを軽減することが可能だ。またコンボ捕喰に関しては,チャージ捕喰時よりもバースト状態でいられる時間が短く,アラガミバレットも1発しか獲得できない。それでも,スキを見出せないアラガミから捕喰を行い,断続的にでもバースト状態になれるメリットは大きく,ゲームのスピード感や爽快感の向上につながっている。
神機の活用とカスタマイズの面白さ
剣攻撃はダメージを連続的に与えるのがたやすいが,アラガミとの距離が縮まるためリスクが高い。一方射撃にはオラクルゲージが必要で,ゲージがなくなれば,敵を剣形態で攻撃してオラクルゲージを充填しなければならない。アラガミも遠距離攻撃の手段を持っており,離れていれば必ずしも安心というわけでもないため,どちらの攻撃を主軸に置くにせよ,あくまで双方をうまく使い分けていくことが大切だ。
剣形態での近接攻撃は駆け引きの面白さや爽快感が高い。銃形態での遠距離攻撃は,後述するバレットエディットを利用することでグッと面白くなる |
比較的安全な場所から攻撃できる銃形態は,アラガミバレットを撃てるなど,攻略にも欠かせないスタイルだ |
剣と銃は,それぞれ3種類のカテゴリーに分かれている。剣なら,ショートブレード,ロングブレード,バスターブレードという刀身の違いによるもの。銃なら,スナイパー,アサルト,ブラストという銃身の違いによるものだ。刀身は前者ほど連続攻撃回数が多く,後者ほど一撃あたりの威力が大きい。銃身は前者ほど射程が長く,後者では威力が増す傾向にある。
さらに,防具となる装甲も,バックラー,シールド,タワーシールドと3タイプが存在する。これらの装備の組み合わせでさまざまなスタイルで戦うことが可能だ。もちろん,各カテゴリーごとにさまざまな装備がラインナップされているほか,戦闘には関係のないコスチュームも充実しており,アバターのバリエーションは豊富だ。
これら武器の特性とアラガミとの相性は,前述の通り攻略にあたってかなり重要で,ミッション内容に応じた装備を準備できなければ,戦いは厳しくなる一方だ。通常のRPGでは,お金を稼いで良い装備を買うように,本作では,アラガミを倒すことで手に入る素材をもとに,新しい装備をどんどん作り出していく必要がある。
素材を集めてアイテムを合成するというのは,最近ではRPGでも定番の要素だ。神機も,素材を合成して作り出したり,強化したりすることが可能となっている。同じロングブレードでも,火属性に優れたものや氷属性に優れたものなどがある。アラガミの弱点に応じた装備で戦いに臨みたいところだ。
可能性を秘めたバレット
このプログラムがキモで,実にさまざまな設定ができる。敵を追尾させたり,着弾時に爆発させたりするのは序の口。スキルも併用して,消費オラクルポイントを軽減したり,着弾時に多段ヒットが発生するようにしたりと,研究し出すととんでもなく奥が深いことに気付かされる。
あまり複雑な(強力な)バレットを作ってしまうと,消費するオラクルも増えるので,筆者は比較的シンプルなバレットを常用しているが,アイデア次第では特定のアラガミへの切り札となるバレットも作成可能で,非常に興味深い。
プレイしていてもっとも“気持ちの良い”ハンティングアクション
正直にいうと,筆者は当初GEシリーズの世界観がちょっと苦手で,本格的にプレイしたのはGEBからなのだが,意味深なキーワードがちりばめられた興味深いストーリー展開や,一癖も二癖もあるNPC達が織りなす人間ドラマ,複雑すぎない相性/属性システムやアイテム構成などからは,作り手達の“本気”が確かに伝わってきた。
また,他社の同ジャンル作品とは比べものにならないハイスピードなゲーム展開は,一度味わってしまうと,(キャラの挙動がさほどクイックではない)ほかのハンティングアクションゲームが遊びにくくなるほどの爽快感を生み出している。シングルプレイでも,擬似的なマルチプレイを楽しんでいるようなものなので,あえて深くは紹介しなかったが,友人との協力プレイも盛り上がること請け合いの熱さだ。
……とはいえ,あえて挙げるほどの不満点が本当に少なく,当初は苦手なタイプのゲームだったにもかかわらず,今では非常に満足度の高い秀作として認識している。配信される無料DLCのクオリティも高く,まだまだ狩りを楽しみ続けられそうだ。
「こちら」のインタビューでも触れているように,GEからGEBまで,ほぼノンストップで開発作業にとりくんできたというGOD EATER制作チーム。今後,無料DLCもぞくぞくと配信される予定だし,きっと今も,彼らはより良い作品を作るために,GOD EATERのことを考えているのだろう。個人的には,そう遠くないうちに“GOD EATER FES 2011”が行われ,そこで次なるGOD EATERの発表が行われるんじゃないか……などと妄想しているのだが,どうだろうか。
ともあれGOD EATER BURSTは,極めてポジティブな意味で,次回作にも大いに期待したいタイトルだ。ハンティングアクションが好きな人は,ぜひ一度,この“チーム連係型ハイスピードハンティング”をプレイし,爽快感溢れるアクションを体験してみてほしい。
「GOD EATER BURST」公式サイト
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(C)2010 NBGI
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