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「ICO」での崩れる橋のシーンは,「この先も手を繋いでくださいね」というメッセージ。上田文人氏も登場した「ICO」「ワンダと巨像」プレミアムイベントをレポート
このキャンペーンは,二作品の好きなシーンをTwitter,Facebook,mixiでシェアすることによって,Web限定のプレミアムグッズが当たるというもの。好きなシーンをシェアするほど当選確率が上がっていくので,「ICO」と「ワンダと巨像」ファンはぜひ参加してみよう。
そして本日(2011年9月3日),「Great Scene Sharing」キャンペーンの一環として,抽選で選ばれた40名が参加できる「ICO」と「ワンダと巨像」のプレミアムイベントが,品川にあるプレイステーションホールで行われた。イベントでは,「ICO」「ワンダと巨像」のHDリマスター版を先行体験できたほか,その2作および現在制作中のPlayStation3用ソフト「人喰いの大鷲トリコ」を手がけるゲームデザイナー,上田文人氏が登場してトークライブを行った。さっそくその模様をレポートしよう。
外山氏は,「SILENT HILL」シリーズや「SIREN」など,名作ホラーゲームを手がけてきた人物として知られており,最近では,PlayStation Vita用ソフト「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動(仮称)」の制作を発表して注目を集めている。
まず,最初のトピックは,「ICO」「ワンダと巨像」のHDリマスター発売についてだ。上田氏によると,PS2の「ICO」は自身が初めてディレクションを手がけた作品ということもあり,「何をしていいのか分からずかなり苦労しました」と当時を振り返る。そして「あの当時に志したものは,今も変わらず評価されると思っているので,PS3版ではそういうところを懐かしんでもらいつつ,新しい部分を発見してもらえたらいいなと思っています」とコメントした。
一方「ワンダと巨像」に関しては,「ICO」では「お城の中で,整合性のとれたギミック作りを四年間くらいやっていた」ことから,次はアクションを主軸とした作品を作りたいと考えたと語る。余談ではあるが,もともと「ワンダと巨像」はオンライン対応のゲームだったらしいのだが,だんだん形が変わって,結局スタンドアロンタイプの作品になっていったという経緯があるそうだ。
「Great Scene Sharing」について
上田氏によると,「ICO」で「崩れる橋」を作った理由は,橋が崩れて落ちそうな状態の少女を,少年が手を掴んで引き上げることで「この先も手を繋いでくださいね」というメッセージを入れたかったのだという。これには,来場者一同,納得している様子だった。
上田氏によると,ここは,イコとヨルダの旅を見てきている多くのプレイヤーなら「ジャンプしてくれるんだろう」と思っているけど,その選択をあえてプレイヤー自身に委ねるというシーン。上田氏自身は発売当時,「みんなきっとジャンプしてくれるだろう」と思っていたそうで,実際に発売後のレビューなどを見たら,「迷わずジャンプしました!」というコメントが多くを占めていたという。そのとき上田氏は,「レベルデザインとしては大成功した」と思ったという。
参考までに,2011年9月1日の時点のGreat Scene Sharingで一番多くシェアされている「ICO」のシーンは,「囚われの少女」だそうで,「このシーンで一気に『ICO』に引き込まれた」「自分の中の遊びの価値観を変えた大好きなシーンです」といった熱いコメントが挙がっていたという。
一方「ワンダと巨像」で一番シェアされているのは「最後の一撃はせつない」,二番目にシェアされているのは「友とともに大地を揺るがす」とのことだ。
ビジュアルイメージから始める上田氏,ハードの弱点も表現に生かす外山氏
一方,外山氏は,「SILENT HILL」の1作目ではハードの性能上,近景しか描けないため,霧でぼかすなどして,ハードの弱点を逆に生かしたゲーム作りをしていたと話していた。
そして,今後の活動について,上田氏は,「満足のいく形で『トリコ』を完成させなきゃいけないと思っています。お客さんに,『トリコ』がほかのゲームよりも優れたものであると感じてもらわなきゃいけません。仕事としてやっている以上それがまっとうできないこともあるりますが,できるだけ抗っていきたいです」と語った。
イベント終了後には上田氏と外山氏の囲み取材が行われたので,本稿の締めとしてご覧いただきたい。
――イベントを終えての感想を聞かせてください
上田氏:
普段から一緒にゲームの話をしている外山さんが一緒だったので,あまり緊張することなくできたかなと思います。
外山氏:
本当は緊張してたんですけど,終わってみると,もっともっと喋り足りないくらい楽しいイベントだったと感じました。
――ファンの方を前にして喋るというのはあまりない経験だと思うのですが,実際にファンの声を聞いた感想はいかがですか?
上田氏:
最初は「本当に来てくれるのかな?」と不安でしたので,実際に会場に来られてる方を見て安心しました。「ICO」も「ワンダと巨像」も長く愛される作品にしたいと思って作ったタイトルでしたのですごく嬉しかったです。
――お互いの作品の好きなところはどこですか?
上田氏:
ゲームデザインとして共感する部分が大きいですね,「SIREN」でいうと,「視界ジャック」というアイデアをベースにゲームを組み立てていくと,どうしても難度が上がってしまいますよね。でもそこで,あえて難度を下げないところにシンパシーを感じます。
上田さんの作品って,ゲームルールの表現とかじゃなく,実際にゲームに触れたときの気持ちの変化とか,そういう部分をすごく掘り下げてますよね。なかなかそういうのってほかでは見られないので,非常に希有な作り手だなって思います。
――PS3の「ICO」と「ワンダと巨像」は3D立体視にも対応していますが,ぜひ,ここは見てほしいというシーンがありますか?
「ワンダと巨像」では2か所あります。一つは馬で草原を走っているシーンですね。3D立体視で見ることによって,奥行きを感じつつスピード感を表現できていますし,馬が石ころを飛ばすシーンなどは,それがいい感じに手前に跳んできたりしますし。あとは巨像戦で,上を見上げた状態で攻撃を受けたときの迫力や臨場感はずいぶん上がっています。「ICO」は高さのある3D立体視を効果的に使っていると思います。
――本日はありがとうございました。
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